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緊急事態宣言後、今どうなっているか。最も気になっていたのが、新橋の烏森だった。あの盛り場がどうなっているか、4月10日の仕事帰り、訪ねてみることにした。
SL広場には人の姿がほとんどなかった。いつもは待ち合わせの場所として、人でごった返すにも関わらず。
ニュー新橋ビルは開いていたが、地下に降りようとは思わなかった。ある意味密閉空間だから。
ニュー新橋ビルと烏森の間の道は、帰宅の人の流れが多かった。17時30分、寄り道もせず、家路につく。金曜日とは思えない。
道を渡り、烏森に入った。人影はまばら。時折、テレビの報道がいて、閑散とした烏森をレポートしている。
立ち飲みの「あじろ」は開店していた。客は3人。牛タンの店も営業。客は2人。「まこちゃん」は営ってるかなと思ったが、全ての店舗が閉まっている。
更に奥に進むと、可愛い女性が立っている。笑顔で「いかがですか?」と。2階にあるお店らしい。大店の居酒屋では、「たぬき」が店を開けている。全ての店舗が自粛という訳ではなさそうだ。一番、人が入っていたお店が、立ち蕎麦の「おかめ」。5人の客が蕎麦をたぐる。客引きの兄ちゃんらが数人いる。どこの店かは分からないが、営ってるらしい。
その筋を奥まで進む。奥まで行くと店はまず開いていない。ただし一軒を除いて。その店は「門」。一度も入ったことはなかったが、よく店の前を通る。立ち飲みといいながらも、スツールがあるので、「立ち飲みラリー」ではすっ飛ばした。店の前を通り過ぎようとしたところ、店舗の隙間から声をかけられた。
「寄ってって」。
ひとまず、もう少し烏森を見てから。
この日、東京都の自粛要請の業態が決まった。居酒屋は部分的な自粛となり、19時ラストオーダー、20時閉店の要請がなされた。不要不急の外出は控えろというスタンスとは相容れない。
まだ、夕方の日射しは残っており、閑散とする烏森の異様さは伝わってこない。夜が訪れたら。光がない烏森はきっと死の街のようになっているかも。
烏森をぐるりと回ったが、開いている居酒屋はざっと数えただけで6軒だった。さてどこへ行こうか。せっかく、声をかけてくれたからと、「門」へ行くことに。
扉を開けるとL字のカウンター。あ、そうなのか。Lの短い編の方が立ち飲みになっていたか。これは店外からは見えないのだ。立ち飲みの触れ込みに偽りはなかったのか。そのポジションに立ち、「ホッピー 白」をいただくことにした。ちなみに自分以外に客の姿はない。
新橋、汐留、虎ノ門。大きな企業は軒並み、テレワークに切り替えているらしい。しかも、感染リスクを低減するため、飲みに行くこと自体、禁止のお達しがでているようで、常連さんがほとんど来ないと「門」のマスターは嘆く。
「なんか、お店を開けてること自体、悪いみたいでさ」。
本当に、世の中はそんな雰囲気だ。いや、店側もそうだが、そこに行く客の方が悪人扱いされるバイアスを感じる。いやいや、もっと言うと、通勤も悪だと。
少し前に、オリンピアンの為末大氏が、通勤する人を指して、こんなツイートをして賛否を呼んだ。
「通勤しちゃうんだ」。
この人は競技としての高いハードルは越えてきたが、社会人の行く手を阻む、高くて厚い壁のことはよく知らないらしい。しかし、実社会は矛盾だらけであることも確か。不要不急の外出は避けてと言うのに、居酒屋は20時以降の営業を自粛せよと。
お店のラジオからは、その張本人の声が聞こえてくる。とうとう東京都はラジオのCMで緊急事態の要請を始めたようだ。
カウンターの上にいくつかのおばんざいがある。ほたてと青菜を炒めたものなど、どれもおいしそう。揚げ物が食べたかったので、白身魚フライをいただくことに。
すると、一人の客が入ってきた。颯爽とした女性である。煙草を吸いながら、生ビールを一杯飲み、近況を報告して出ていった。週に一度は出勤しなければならず、その時に、「門」に立ち寄るらしい。
「ホッピー」の「中」をおかわりした。この「門」のマスターは話が好きな人だが、実に丁寧な人で、おしゃべりも楽しい。いつ見ても、多くの酔客でごった返しているのも頷ける。お店には飲み物のメニューしかなかった。いや、つまみのメニューもあるのかもしれなかったが、少なくとも店の壁には何も貼られてはいない。
結局、「中」を3杯おかわりした。つまり、ホッピー1本で焼酎4杯。お会計は2,200円。2,000円の消費税である。多分、席料もあるのだろう。お通しが出てきたから。「ホッピーセット」が500円で「中」300円だと計算が合う。すると、白身魚フライは300円か。2尾ついてたのはサービスだったのか。
今の今まで、この立ち飲みをスルーしてきたが、これで宿題が一つ片付いたような気がした。マスターも人が良さそうだ。もし、声をかけてくれなかったら、「門」に入ることはなかったかも。これも何かの縁である。この厳しい状況、何かと応援したい。
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