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居酒屋さすらい 0659 - 真夏の光跡 - 「俺のイタリアン」(港区新橋)

2013-07-12 23:57:20 | 居酒屋さすらい ◆立ち飲み屋
池袋駅から山手線に乗った。
週末の車内は池袋駅の喧噪が嘘のように静かだった。

品川に行くのに、内回りでいくのがいいか、それとも外回りで行くのがいいか分からないけれど、適当にホームに行き、適当に電車に乗った。
結局、新橋で降りた。
外の空気は少しだけ冷えていた。

ウィークデイの新橋とは違い、週末のSL広場には人気がなかった。
バーボンのせいで喉がひりひりと痛い。冷たい白ワインを飲もうと思い、烏森の奥へと向かった。
何か分からない焦燥感に駆られている。それがなんだか分からなかった。
桜田小学校の跡地を横切り、ふと夜空を見上げたが、星はひとつも見つけられなかった。

いつか、あなたにこんなことを尋ねたことがあった。
流れが速く川幅の細い上流と川幅が広くなり、流れが遅くなった下流の川のどちらが好きなのかって。
あなたは上流と答えたし、それはあなたらしいもっともな答えだと思った。

池袋から品川に行く道すがらがこれほど寂しい夜はなかったと思う。これまでは新宿、渋谷を通り過ぎると、品川まではわりとすぐに着いた。
きっと、果てしなく話題が尽きないおしゃべりのせいだったのかもしれない。
だから、今夜のボクは、もしかして堪らなくなって新橋まで来てしまったのかもしれない。

「俺のイタリアン」に着いた。
こないだ行ったmarcheからは数分ほど南に行った店だ。
こっちの店の方が広い。だが、土曜日といえども、店はやはり混んでいた。

わたしは白ワインを貰った。
よく冷えたワインだった。

店の喧騒は池袋の「HUB」ほどではなかったが、それでも静かとはいえなかった。
ボクは上流と下流の話をあなたにするだけして、実は自分は全くそれについて自分の意見を言っていなかったことに気がついた。
後で、それを言おうと思った。
ボクは海と街が近くなる下流の方が好きだと。

「パルマ産の生ハム」を頼んだが、なかなか出てこなかった。
そのせいで、ボクはつまむものがないまま2杯目のワインを飲んでいた。

ここに辿りつくまで。
この孤独のような闘いはある意味で自分の目指した荒野だったのかもしれないと思った。
池袋から品川。或いはその逆。
その道すがらは時には優しく、だが時には孤独に。でも、そのいずれも真実かもしれないと思った。
それがここじゃないどこかを目指した軌跡のひとつだから。

「生ハム」がボクの目の前に供されるのと同時に、メールが来た。
品川に行かねばならない。
ボクは隣りに仲睦まじく談笑するカップルに、「全然手をつけてないけど」と前置きして「もしよかったら」と彼らの前に「生ハム」の皿を置いて、店を出た。

店を出ると、自分がもう烏森の南端まで来たことに気がついた。
新橋のガードまで戻るとちょうど山手線の内回りが東京駅の方に向かって走り出すのが見えた。
ハノイ行きの前夜。
それはどこか寂しい真夏の夜。
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