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雲の上には宇宙(そら)
雪国越後にて、30年ぶりに天体写真に再チャレンジ!
異なる鏡筒・カメラの画像をコンポジット その2(作業手順)
2024年07月25日
|
画像処理のはなし
前回記事
に続き、今回は過去に撮った「
鏡筒・カメラの異なる画像のコンポジット
」の
作業手順
について。
使用するのは
ステライメージ9
と 関数電卓。
コンポジット
(重ね合わせ)
というのは撮影時に何枚も撮っておいて、
それを画像処理時に重ね合わせる事によりノイズを低減するという基本的な方法ですが、
”同じ
鏡筒
(
含む
補正レンズ)と同じ
カメラ
” で撮影したものであれば
画像毎の多少のずれがあっても
ステライメージ
などを使って重ね合わせることができます。
しかしながら同じ撮影対象であっても、鏡筒の焦点距離やカメラが変わると重ね合わせはできません。
(わたしが知らないだけで、世の中にはこれができるソフトもあるのかも・・)
今回、この通常はできない
”異なる鏡筒と異なるカメラ” で撮った撮影画像の
コンポジット
(重ね合わせ)
に挑戦した理由は、前回記事にも書いたように
●この十余年で同じ対象を撮った画像は増えたが、撮影鏡筒
(補正レンズを含む)
および
カメラが異なっているため過去画像の有効活用ができない
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
●年間を通じて夜間晴天日数の少ない日本海側では、総露光時間で10時間も撮るには
何年もかかってしまう
(
その間ずっと同じ光学系・カメラというのはつらい
)
・・・・・・・・・・・・・
そして、もっとも大きな理由が
■現在 「
星のふるさと館
」で展示中のわたしの写真展で、9月に予定している差し替え画像の準備で、
過去画像を加えた画像の再処理が可能なら活用したい、というもの。
前置きが長くなりましたが、それでは 今回行った作業手順について説明します。
□ 過去の撮影画像の選択
9月からの「秋・冬
編
」の対象でもある、
NGC7331 & ステファンの五つ子
から 2017年・2020年に撮影したものをピックアップ。
詳細な撮影データは画像拡大で見てもらうとして、「異なる鏡筒と異なるカメラ」に関するデータについては
◇
2017
/ 9・・VC200L(旧レデユーサ) fl=
1,278
㎜
Cooled60D
4.3
μ/pixel
総露光時間 130分
◇
2020
/ 8・・VC200L(レデユーサHD) fl=
1,386
㎜
EOS6D(HKIR)
6.5
μ/pixel
総露光時間 92分
鏡筒の焦点距離
が長いと
画像解像度
は大きくなり、
カメラの1ピクセルのサイズ
が大きくなると
画像解像度
は小さくなる。
*
画像解像度
・・・ある写野角をどれだけのピクセル数で描いているか ということで、
画像解像度が合っていない画像ではコンポジットでズレが発生する
。
上の二つの画像を比較すると、焦点距離では
2020
年の方が 画像解像度 が大きく
他方、カメラの1ピクセルのサイズでは
2017
年の方が 画像解像度 は大きくなります。
結局のところ、この二つの画像をコンポジットするにはそれぞれトータルでの画像解像度を正確に求める事が必要となります。
STEP -
Ⅰ .各画像の画像解像度を求める
以下の作業は
ステライメージ9
と 関数電卓 を使用しました
(
*
左側が2017年、右側が2020年の画像で、それぞれダーク・フラット処理およびコンポジットまで終えて保存されていた画像を利用しました)
手順
①
ステライメージ
の
基準点指定
を使って、両画像に共通な2つの星をマーキングします
手順
②
画像を拡大してそれぞれ(4つの星)の(X、Y)のピクセル座標を読み取りメモします
手順
➂
次に
画像解像度
算出のもとになる2つの星の間隔(ピクセル数)を、直角三角形の斜辺算出でおなじみの
「ピタゴラスの定理」を使って求めます。
(お忘れの方はこちら)→ 2星間のピクセル数(斜辺)=√ ΔX(底辺)² + ΔY(高さ)²
上の2017年の例では √ (2942-395) ² +(4422-568) ² =4619.58 となります
手順
④
算出した2星間のピクセル数から、
2017
年の画像の方がトータルで
画像解像度
が高い事がわかりました
STEP -
Ⅱ .二つの画像の画像解像度を合わせる
ステライメージ
の 画像 メニューの「
画像解像度
」を使って両画像の画像解像度を合わせるのですが、
そろえる方法が二通りあります。
(
方法
A) 画像解像度の低いほうを上げる(低い方の画像が拡大される)
(
方法
B) 画像解像度の高いほうを下げる(高い方の画像が縮小される)
わたしが選んだのは(
方法
A)でした。(
理由
. 縮小するのは後でも可能だから)
(
ステライメージ9
の画像解像度変更の画面 )
手順
①
手順Ⅰで求められた2星間のピクセル数の値から、解像度の低い
2020
年の
画像解像度
を高くします。
では現在のピクセル数をどれだけ増やせば画像解像度が同じになるのか比率を求めます
4619.58 ÷ 3227.16= 1.43146・・・
現在の「幅」または「高さ」のピクセル値を ×1.43146・・倍 すれば2017年の画像の解像度と同じになるはずです。
*
「縦横比」が”
固定
”になっていれば、縦・または横のピクセル数を変えるだけで もう一方も自動的に変わります
手順
②
画像解像度
変更後の両画像を比較します。
表示拡大率をそろえて2星間の間隔を比較すると大きな計算間違いはないようです
STEP -
Ⅲ .二つの画像をコンポジット
(重ね合わせ)
する
関数電卓まで使ってここまでやってきたのは、鏡筒もカメラも異なる画像をコンポジットするためでした。
はたしてピッタリ重なってくれるのか
?
実はコンポジットを行う その前に、もう一つ選択しなければならないことが。
それはコンポジットする際に「
加算平均
」か「
加算
」か?
いつもなら「加算平均」なのですが、鏡筒が異なれば画像の明るさ(F値)も大きく違います。
おまけに設定感度も様々で、極端に撮影画像の明るさに差がある事も考えられます。
それを撮影データから推測することはかなりやっかいなので、
画像の明るさが大きく異なっても無難そうな「
加算
」で行くことにしました。
実際にコンポジットで
加算
をおこなった画像です。 ↓
これまで5、6タイトルほど実施したのですが、不思議とズレずにうまく重なってくれました。
ズレる事もありましたが、その原因は星のピクセル位置の読み間違いでした。(老眼なもので)
ここまでやれれば、あとはコンポジットができた範囲をトリミングして
ステライメージ
などで画像処理を行うだけ。
画像処理を終えた統合画像になります。↓
総露光時間が220分に増えたことにより、従来よりきつめの画像処理が可能となりました
肝心なのは、これだけ手間をかけて元の画像より改善されたかどうかですが ・・
画像の一部を切り取って比較してみました。
NGC 7331
付近
左から 2017年・2020年の完成画像 そして右側が今回 両画像を統合して処理した画像です
ステファンの五つ子
画像の順番はNGC7331と同じ
実は画像解像度を上げる際の画像拡大でダメージが出るのではと思ったのですが、意外に健闘しています。
ただ、鏡筒・カメラの組み合わせによっては画像解像度に差がありすぎて破綻することも考えられます。
そこで 鏡筒・カメラの組み合わせによる画像解像度を推定できる一覧表を作ってみました。
これまでに撮影した画像が多そうなVC200L(HD)とEOS 6D(HKIR改造)の組み合わせを基準として作成してあります
数値が近い組み合わせ同士なら、画像解像度の変換も控えめに済むのではないかと考えています。
引き続き差し替え用画像に使える画像が得られるか検証を進めていきます。
= = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = =
余り期待していなかったのですが、もしかしたら・・という結果が。
すべての画像とはいかないでしょうが、過去の画像もコンポジットに使えるとなれば
少なくともプリントが必要な写真展示には活用できそうです。
現在使用している真四角センサーのカメラ ASI533MCはプリントが苦手です。
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