雲の上には宇宙(そら)

 雪国越後にて、30年ぶりに天体写真に再チャレンジ!

ポン・ブルックス彗星お別れ撮影、二夜目に奇跡の大逆転。

2024年03月19日 | 天体写真(月・惑星・彗星)
前日の15日夕方 ポン・ブルックス彗星 のラストショットに挑戦したのですが、
良い空に恵まれずに手も足も出ずに完敗。
( 前日の挑戦の様子は → ポン・ブルックス彗星お別れ撮影、一夜目は手も足も出ず。 )

迎えた翌16日の雲予報は21時ころまで雲は無いというものでした。
機材も二階に設置したままなのでリベンジするしかないわけで、
前日の失敗の教訓を思い起こして、明るいうちにこんな小細工を。
最初はトイレットペーパーの芯だったのですが、太すぎて視界が定まらず
趣味部屋をひっかきまわして昔のファインダーをみつけました
運よく星が見えたとき迅速にレンズを向けられるようにと・・ 彗星は時間が勝負ですから。
撮影してステラショット導入補正でエラーが出なければしめたもの。
「ここはどこ?」状態から抜けられれば、あとは大口径ヨンニッパレンズにおまかせ。
結露防止もかねてF4相当の自作絞りを付けていても、まだ口径100mmもあります

この日の薄明が終わるのは19時21分。
薄明が終わる前からステラショットを使って彗星に近い明るい星を導入しようとするのですが、
もともと赤道儀の極軸がずれているので
導入したはずの星は全く写らず。
たまに明るめの星が写るとステラショットにお伺いをたてるのですが、
「こんな場所 知らん!」の繰り返し。
気が付いたら昨日と同じ繰り返しで、19時近くになっていました。

空の方は昨日よりは良さそうなのですが
レンズを向けられる窓枠の高度20度以下の範囲内には肉眼で見える星なし。
( 今回から低倍率の双眼鏡も活用しています )
そこで運任せのステラショット操作はやめて、昼間張り付けたファインダーで低空を捜索。
すると山際にポツンと一つ暗く赤っぽい星が目に入ったので赤経・赤緯環をロック。
ステラナビで確認すると、
この時刻に見えるとしたら 高度からδ And(ミラク)の下方にある3等星かも?
ステラショットで撮影して「導入補正」をかけたところ
なんと星図が表示されて位置移動を開始してくれました。

まだ何かのまちがいかもと思いながら、
すぐ近くにいるはずのポン・ブルックス彗星の導入をして、撮影してみたところ ・・ ↓
昨年12月にも撮っているので初対面ではないのですが、今回のお別れ撮影としては感動の対面でした

この対面を果たしたのが19時13分、ステラショットが現在位置を認識できれば あとはひたすら撮るだけ。

ただ撮影を始めてみると想定しなかった事がおきました。
電動の赤道儀なので日周運動で動く星はもちろん、動きの小さいこの彗星も
画像の定位置でほとんど動かないはずなのですが、
極軸(日周運動の中心軸)がずれているため 時間と共に動いて行き、
じきに画像からはみ出してしまうのです。
その都度位置を戻してやるという方法もあるのですが、
下手にまた見失ったらせっかくの幸運が水の泡に。

そこでとった手段が、できるだけ高感度に設定して露光時間を短く枚数を多く撮る。
具体的にはASI 533MCのGainを500(これまで最高)、露光時間は10秒、
それを30枚を1セットとして彗星が沈むまで撮り続けるという作戦に。

19時05分から始めたこの撮影方法で彗星が山に隠れた20時01分までに、8セット撮影できました。
撮影枚数はおおよそ240枚になり、寝る時間を惜しんで画像処理に励んだ結果
完成した画像がこちらです。 ↓

 さようなら 12P ポン・ブルックス彗星 
( 元画像の 50%に縮小 かなりトリミング )
( 一応 上 が 北 になっています )
撮影DATA : 2024/ 3/16 19:05’~20:01’ canon 改・NFD 400mm F2.8(手製絞りF4) 
露出 10秒 × 132枚 (Gain500  Offset1) LPS-D1フィルター ASI533MC Pro(冷却-10℃)
 タカハシ EM-200 Temma2M  ステラショット3(導入・撮影・オートガイド) ステライメージ9(画像処理)
ダーク処理のみ行っています
彗星が右に偏ってしまったのは 極軸のズレから、1セット連続撮影中の5分間で星と彗星が右に移動してしまい、
コンポジット(重ね合わせ)すると 彗星が一番端の画像が基準になってしまうから


お見せした処理画像には彗星が沈む間際の写真は使っていませんが、
沈むまで撮影していたという証拠のGifアニメです。 ↓


今回は撮影できたので、めでたく「只今撮影中」ショットになります。↓
2024年 3月16日 19時13分~ Tamron Zoom(fl17mm F2.8)10秒×6枚 ISO1600 
ソフトフィルター使用 kiss DX(SEO-SP2) 三脚固定撮影
( 四角い枠が今回の撮影範囲になります)

前夜よりは少しましだったようですが、この6枚重ねた写真の画像でも彗星はまったく確認できませんでした。


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ほぼ徹夜も含めて丸二日画像処理に費やしました。
撮影枚数の多さもありますが、処理を複雑にしているのが
極軸ずれによる画像の移動・回転です。
今回は星に対する彗星の移動量が小さかったため、
まずはセット単位(30枚・5分間)でコンポジットを行い、
更にセット毎のコンポジットをおこなったのですが、
やっと完成したかと思ったものが、
まだ画像回転による傾きの補正が残っていることがわかり、
ピタゴラスの定理でtan-から画像回転角度を算出し、
その結果をステライメージでセット単位で回転補正して今回の画像が完成しました。

赤道儀の極軸設定がいかに重要か思い知らされました。


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2 コメント

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執念で「男心と春の空」を・・ (さすけ)
2024-03-19 07:48:47
執念で「男心と春の空」を克服しましたね~(^^)/~~~。

バタバタしてる雲上さんの姿が目に浮かぶようです。

この彗星の事もよく知りませんが「さよなら」なんですか?「いってらっしゃい」なんですか?
返信する
「さよなら」の理由 (雲上(くもがみ))
2024-03-19 11:24:59
さすけさん 只今「J-APA」月例会の会場から返信しております。
執念というより意地で撮影したものですが、
一夜目は失敗してもブログネタになるのですが、
二夜目失敗したら笑いものになるので・・
撮れてほんとに良かった。

この彗星しばらくは夕方西の空に見えるのですが、これから月は満月に向かうので空が明るくなることと。
薄明が終わる時刻が遅くなって撮影可能な時間が少なくなること。
彗星が昼間の時間帯に移動すること。
などから撮影できるのは今回でさよならかな?
返信する

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