育児短時間制度の利用等によって標準報酬月額が低下した場合に、それが将来の年金受給に際して当人の不利にならないよう、年金額の計算においては「低下する前の標準報酬月額」を用いることとする措置が設けられている。
この措置は「養育期間標準報酬月額特例」と呼ばれ、「3歳未満の子供を養育し、かつ、標準報酬月額が養育前よりも低下した場合」に対象となるものだ。
ここで注意しておきたいのは、この特例が適用されるのは「“標準報酬月額”が養育前よりも低下した場合」という点だ。
つまり、ただ「残業が減って収入が少なくなった」というだけでは「標準報酬月額の低下」に該当しないため、次の定時決定(算定基礎届)または随時改訂(月額変更届)により標準報酬月額が変更されるまでは対象にならない。
また、意外な盲点であるが、この特例は、妻が専業主婦である夫も(夫婦とも被保険者であれば夫婦揃って)適用対象となりうる。
それともう一つ、これも盲点と言えそうだが、必ずしも育児短時間制度を利用した場合だけに限らず、例えば転居に伴い通勤手当の額が変更され、そのため標準報酬月額が低下したような場合も対象となることにも要注意だ。
ところで、この特例措置を受けるためには、事業主経由で「特例申出書」を提出しておかなければならない。会社は、該当する従業員から申し出が有ったら、管轄年金事務所にこれを届け出る義務を負う。
もし担当者がこの制度を知らなかったために当人が将来受け取れる年金の額が少なくなってしまったら、大問題となるだろう。訴訟沙汰に発展したトラブル事例はまだ無いようだが、会社としての責任を問われる事態になる話でもあるので、担当者の認識不足の無いようにしておきたい。
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