そろそろ来春卒業予定者の採用内定(「内々定」と言うべきか?)を出している会社もあるだろう。
ところで、内定学生に対して、現場実習等をさせる場合(※)、参加した学生に賃金を支払う義務はあるのだろうか。
※これを「内定者インターンシップ」と称する例もある。
採用活動(就職活動)における「インターンシップ」という用語には、
① (主に学校主催の)単なる職業体験
② 企業が優秀な学生を見極めるための採用活動の一部
③ 内定者に対して入社前教育の一環として実施するもの
④ 採用後の見習い期間
といったさまざまな意味があるが、本稿では③の意味として「内定者インターンシップ」と呼ぶこととする。
さて、内定者インターンシップを有給とすべきか無給でよいかは、「会社の指揮命令下にあるか否か」という基準で判断される。すなわち、会社の指揮命令下にあるなら賃金支払いが必要となり、会社の指揮命令下になければ賃金は発生しないことになる。
具体的に見れば、まず、参加を強制され、欠席・遅刻・早退に対し何らかのペナルティーが科せられるなら、「指揮命令下にある」と言えるだろう。
そして、実作業に携わったなら、それはもう、労務の提供に他ならない。会社としては「まともな仕事はやっていない」と言いたいかも知れないが、業務に必要な知識・能力を習得するのも労働であるから、そこに賃金は発生する。
また、「現場での注意事項を入社前に説明しておく」というケースも多く見られるが、これも、その“説明”が労働安全衛生法第59条の「雇入れ時の安全衛生教育」に該当するなら、労働時間とするべきとされる(昭47.9.18基発602号)ので、要注意だ。
逆に、参加が任意であって、見学や体験程度のもの、あるいは親睦を目的とするものであれば、「指揮命令下にない」ということになり、賃金支払いの義務は生じない。
ただ、そういったものを「内定者インターンシップ」とは呼べるのかは甚だ疑問ではあるが。
内定者の入社前教育に関しては、会社ごとに方針が異なって然るべきだ。
しかし、会社の指揮命令下に置く以上は、内定者と言えども「労働者」であって、最低賃金以上の賃金(当該内定に係る雇用契約は未発効であるので初任給額に基いて算出した賃金でなくてもよい)を支払わなければならない。また、労災の対象になることも、覚えておきたい。
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