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福島第一原発事故が収束しない中、核融合実験を進めようとする動きがある。環境に優しく、従来の原子炉より安全というが、7日に岐阜県土岐市で行われたシンポジウムでは、トリチウムによる内部被ばくを心配する声などが上がった。
『暴走』はしない原子炉
一昨年事故を起こした福島第一原発など、既存の原子炉は核分裂反応により発電するもの。これに対し、核融合炉では、太陽の内部と同じく『核融合』を起こすことで、エネルギーを創り出す。
反応が連鎖的に起きる核分裂と違い、核融合では高温高圧など一定の条件が保たれなければすぐに停止してしまうため、『暴走』の危険は小さい。
理論的には無限のエネルギーが取り出せる、とされる。ただ発電に利用するまでには、まだクリアしなければならない問題が多く、可能性は未知数。もんじゅの例もあり、理論上可能なことが、運用など社会的な原因で実現できないこともありえる。
誘致したい自治体 「危険」の声も
国内でこの核融合炉の実現を目指し、実用化実験を行おうとしているのが、岐阜県土岐市にある核融合科学研究所(核融研)だ。県、土岐市、多治見市、瑞浪市などと協定を結び、早ければ3年以内に実験を行う予定。
7日には多治見市でシンポジウムが開催され、賛否両論が寄せられた。核融研側は安全性を強調するが、元名城大学教授の槌田敦氏は実験によって生じるトリチウムの危険性を指摘。核融研が「微量」とする漏出量についても、疑念を示した。
トリチウムは三重水素とも呼ばれ、体細胞に取り込まれやすいことから、もっとも危険な内部被ばく物質ともいわれる。
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核融合 重水素実験は安全ではない ⇒ こちら
「多治見を放射能から守ろう! 市民の会」(井上敏夫代表)▽「子どもを外で元気に遊ばせたい母の会」(佐合美穂、小川昌代代表)▽「菜の花会」(和田悦子代表)の3団体が21日、多治見市内で記者会見し、土岐市下石町の核融合科学研究所で計画されている、重水素を燃料に使用したプラズマ生成実験(重水素実験)に反対する署名活動を開始したと発表した。活動期間は14日から2月20日まで。多治見、土岐、瑞浪の3市のほか、フェイスブックなども活用して1万人の署名をめざすという。
県と3市は、大多数の市民が重水素実験の内容を知らないにもかかわらず、2月7日に予定されている「重水素実験の安全性に関するシンポジウム」を経て3月末に実験に同意する協定書に調印しようとしている、と井上代表らは批判。実験同意を認めないよう中学生以上を対象にした署名活動を展開するという。
署名する文書は、古川雅典・多治見市長にあてたもので、(1)実験装置から膨大な量の中性子やトリチウムが発生する(2)核融合エネルギーはクリーンではなく50年以上かけても実現できるか分からない(3)安全評価委員会は核融研の内部組織や推進の立場の委員が半数以上を占めていて公正ではない−−との内容。今月末に中間集計を行う。