おすすめ度 ☆☆☆★
Pg12
森達也が自身初の劇映画作品として、関東大震災直後の混乱の中で実際に起こった虐殺事件・福田村事件を題材にメガホンを取ったドラマ。
関東大震災の折、朝鮮半島出身の人たちがデマによって殺されたというのは有名な話だが、殺されたのは朝鮮人だけではなかった。日本人の被差別者たちや思想家たちもまた殺されていたのだ。その事実を脚色を交えて丁寧に映像化したのが本作。疑心暗鬼に陥った人が何をするのか、その醜悪さが強烈に浮き彫りになっている。
人種差別、部落差別、政府の嘘、警察の横暴、メディアの欺瞞、集団の暴走、そして「普通の人々」に潜む狂気と偏見など、これら諸相は今現在にも通じるもの。
まず、福田村の日常が、前半を費やして描かれる。
そして、関東大震災、デマによる朝鮮人殺害事件。
天皇のために戦えばこの国は一等国になりどこよりも強い国になるという空気感が漂っている。村長が、デモクラシー、デモクラシーと言っても誰もが無視する。そしてたびたび聞かれる被国民という言葉。映画の冒頭からこの不穏な空気感がスクリーンを覆っているのに恐怖をいだいた。
香川から薬売りの行商団十五人のうち妊婦や幼児含めて九人が殺害された。同じ日本人に。理由は讃岐弁を喋っていたことと朝鮮人が使用する扇子を持っていたからだ。