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おすすめ度 ☆☆☆
デンマーク・アイスランド・フランス・スウェーデン合作
珍しいアイスランド出身の監督によるアイスランド映画である。国名のとおり凍てついた土地。またつい先ごろ火山の大噴火で話題となったように火山国でもあり、人々は厳しい自然の中での暮らしを強いられている。
歴史的には長くデンマークの支配下に置かれており、本作の時代背景もデンマーク統治下の19世紀末ということになっている。その辺境の土地に布教のため教会を建てるという使命を受けた牧師ルーカスの視点で描かれるのだが、カメラはアイスランドの峻厳な大自然を活写することに余念がない。
目的の土地にたどり着く前に馬から滑落、瀕死の状態で運ばれるルーカス。そこに聖職者としての礼節や気高さは微塵も感じられなくなっている。旅の途中で早々に弱音を吐き、また土地の言葉を見下し、覚える気もないルーカスに我々もこれが聖職者かと呆れてしまう。
心は祖国デンマークに帰りたがっているのだろう、教会の建築が始まっているけどどこか傍観者的なルーカス。近所の姉妹やその父の世話にもなるがどうにも心ここにあらずである。一番象徴的だったのはガイドを務めたアイスランド人のラグナルとの確執だろう。何とかコミュニケーションを取ろうとルーカスに語りかけるラグナル。それを「言葉がわからない」と相手にもしない牧師。
デンマークという文明国家が持ち込んだキリスト教的な“神”と対峙する、荒々しい手つかずの自然の中に息づく神々の姿。霧に煙るゴツゴツとした岩山、飛沫をあげながら落水する大滝、強風に耐えられるよう砂地に張り付くようにして生えている植物におおわれた草原、黒々とした岩肌を切り裂くように流れ出る真っ赤な溶岩....そんな大自然のダイナミズムの中に監督は“神”を見いだしていたに違いない。
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