おすすめ度 ☆☆☆
韓国、北朝鮮の他に存在し、これまであまり注目されることのなかった中国朝鮮民族を題材に取り上げ、父と子の物語という切り口で描いたドキュメンタリー。
本作の角田龍一監督は中国・延辺朝鮮民族自治州内で生まれ、両親の離婚で祖父母に育てられ、10歳の時に母と一緒に来日した。やはりアイデンティティを探る気持ち
は強いのだろう。監督はビデオカメラを持って、幼い時に別れた父親を探しに、吉林省延辺に入った。
中国で暮らす親戚に父の行方を尋ねるが、父の消息を知る者はおらず、親戚たちは父の話題に触れようとはしなかった。そんな中、叔父の助けによりなんとか父との再会を果たすが、韓国で暮らす父は不法滞在者として借金取りに追われながら日雇い労働でなんとか日々を送っていた。息子への虚栄心、そして自己満足的な愛情をお金で表現しようとする父の姿を前に、息子は困惑を隠すことができず……。
父親と息子。望む、望まないにかかわらず、決して消すことの出来ない血縁の重さ。カメラはその重さを撮り続けた。