訪問着の別誂えをお願いしている工房から、下絵の写真が届きました
下絵とは、仮絵羽(着物の形に簡単に仕立てた状態)になった白生地に、
青花と呼ばれる植物の汁を使った染料で図案を書き起こす作業です。
この染料は水で消えるので、出来上がる着物には一切出ません。
実際に友禅をするための下絵なので、紙に書かれた図案の状態と比べ、
柄の精密さが全く違います。熨斗の中に描かれた文様も繊細で美しく、
花々も生き生きと描かれ、格段に豪華になりました
こちらは裾部分です。上前から流れるように描かれた、大きな束ね熨斗。
熨斗にはそれぞれ違った文様が繊細に描かれ、金彩や刺繍が施されます。
周りは菊と牡丹を中心に、梅・楓・笹・桔梗・松と藤・桜・菖蒲が描かれます。
こちらは後ろの右肩~袖部分。
松・梅・菊・椿・撫子・桐など、四季折々の花が大きな束ね熨斗を彩ります。
束ね熨斗から流れるように伸びた菊と桐の絵は、背中心を通って左肩まで。
後ろにまでこんなに豪華に、そして繊細に描かれた訪問着は初めてです
そして前の左肩~袖部分。
こちらは上記の後ろの右肩側よりも更に伸びやかに束ね熨斗が描かれ、
松・菊・梅・楓・牡丹・鉄線がリズミカルに周りを囲んでいます。
特に束ね熨斗の中に描かれている松竹梅・青海波・菊唐草はおめでたく、
晴れ着にふさわしい吉祥文様です
明るい黄色系の地色に、友禅で美しく描かれる束ね熨斗と四季の草花。
そこに金彩と金駒刺繍で華やかさを加えた、超豪華な着物になりそうです。
それほど多くない予算の中で、本当に素晴らしい着物が出来そうな予感
この訪問着の下絵を担当してくださった伝統工芸士さんは、なんと今月末、
公共的な業務に長年従事し成績を挙げた方に授与される「瑞宝単光章」
を叙勲されるそうです。また、京の名工の1人でもいらっしゃいます。
素晴らしい技術を持った方に製作に携わって頂けて、本当に幸せです
この次は糸目・糊伏せの工程に入ります。
この訪問着の製作を請け負ってくださった「公庄工房」さんについては、
以前のブログで掲載していますので、そのままの転載でご紹介します
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昨年から私が訪問着の別誂えをお願いしているのは、こちらの工房です。
今までは許可を頂いていなかったので名前を掲載していませんでしたが、
先日京都に行ってお話をして許可を頂いたので、ご紹介させて頂きます
「公庄工房(ぐじょうこうぼう)」さん
http://www.yuuzen.jp/
今までの職人悉皆仲間問屋前売り問屋小売店顧客という、
驚くほどに多くの中間業者を通して行われてきた古い慣習的流通を見直し、
職人顧客というダイレクトな流通にする事により、中間マージンを抑え、
着物をより身近なものにするとともに、職人さんの生活も支えていくという、
まったく新しい手法を取り入れられた工房です
過去数十年、欧米文化や洋服が入ってきたという背景はあったものの、
着物の値段が上がっていったことも一因となり、民族衣装にも関わらず、
自分で着物を着られる人がほんの一握りとなるほどの着物離れが起き、
それにより仕事を失った職人さん達は、次々と廃業に追い込まれました
そんな中で問屋さんが打った手は、安価な「プリント着物」の量産でした。
最近の安い着物の多くは、インクジェットプリントで作られているのです。
これによりなんとか残っていた職人さん達も更に仕事がなくなってしまい、
このままでは後継者も育たず、数十年後には数えるほどになるでしょう。
そんな状況に異を唱え、新しい風を吹き込もうと頑張っていらっしゃいます
私は百貨店での別誂え経験もありますが、それと比べてもかなり質の高い、
そしてセンスも良い、素晴らしい着物を作っていただけます
気になる事にはとことん答えて下さいますし、密にコミュニケーションを取り、
アドバイスもして下さり、安心して製作をお任せする事ができる工房です。
業界内でも質が高いとされる染匠さんの仕事を任されている職人さんで、
その腕は確かです
何でもそうですが、モノは業者を通せば通すほどマージンで値段が上がり、
最終的に顧客に渡るときには数倍の値段になることもしばしばあります
流通を変える事で、顧客は質の良いものをコストを抑えて買うことができ、
職人さんは「プリント着物」に奪われてしまった仕事を取り戻すことができ、
着物業界は大切な伝統技術を継承し守っていくことができます。
昨年秋に作った流水花筏文の単衣の訪問着も、こちらでお願いしたもの。
現在私が別誂えをお願いしてる訪問着も、百貨店を通せば150万以上の
値段になるものだとおっしゃっていました。
私のような庶民が数百万単位の着物をちょくちょく作ることはできませんが
こちらの工房でお願いできるくらいの予算であれば、毎年でも可能です。
(そこは夫の理解があるので、ありがたいと思っています。ありがとう)
きちんと予算に合わせて、その範囲内で最大限の努力をしてくださいます。
百貨店では最初に伝えた予算から十万以上あがることもしばしばですが、
こちらではそんなことはありません。
それでも洋服と比べると数十万という価格は大きく感じるかもしれませんが、
着物は洋服と違い数十年単位で着られますし、子供に譲ることも出来ます。
私は着物が大好きなので、「プリント着物」は苦手ですし(持っていますが)、
私の子供の世代まで、手描きの着物が残っていって欲しいと願っています
私は公庄工房さんの考えに全面的に共感し、その新しく素晴らしい活動を、
今後も着物をお願いする事で、出来る限り応援していきたいと思っています。
小紋以外は、今後こちらに一任するつもりでいます。
店頭に置いてある在庫の中から選ぶことが普通になっている現代ですが、
昔は多くの着物が別誂えでした。好きな柄を好きな色で好きな生地に。
そんな楽しい着物が出来上がったら、本当に大切に出来るものです。
もし別誂えに興味はあるけれども躊躇しているという方がいらっしゃったら、
是非一度、お問い合わせだけでもしてみてください。
きっと誠実にお答え頂けます