[小出氏]
わたしはまずは、皆さんに謝らなければいけない。
こんな事故を防ぐことができなかった。
ほんと、自分でも力の無さが情けないし、こんな酷いことを起こして、子供達に重荷を乗せてしまったということに関して、本当に申し訳ないと思っています。
[松田氏]
3.11以前は、全然原発のことを知らなくて、わたしのような方がほんとに多いと思うんですけど、そういう方が今回、いろんなことを知り始めて、これは例えば、ものすごく大きなショックを与えて、初めて一般の人にも伝わるようなことになったわけじゃないですか。
[小出氏]
そうですか……。
そうであって欲しいと願うけれど、本当にそうなんだろうかと……考えると……まだまだこれでも、きちっと皆さんはわかってないんじゃないかなと、わたしは不安です。
少なくとも今現在、わたしの目から見ると、戦争よりもひどいことが進行していると思うんですよ、まあ、福島……で。
そのことにでも、ほとんどの人は気がついていない……まだ。
皆さんまあ、今日ここに来てくださって、ここは関西ですけれども、関西の人達は、ほとんど他人事……です。
やっぱり電気が欲しいから原子力は必要だと思っている人も、今だにたくさん居る、と思います。
[松田氏]
政治家の方々は、言ってはいけない。マスコミの方は、言わない……。
ほんとになんか、どんどんこういうことをしていても、わたしも空しくなるばかりで、
先生なんか、こんだけ長い間、この活動をされていて、わたしはほんと、想像しただけで胸が痛くなるぐらい立派だな、と思うんです。
先生は、理解してくれないってことに、もう放り投げるみたいな気持ちにはならないですか?
[小出氏]
うーん……自分の力があまりにも小さいことに、何度も何度も絶望しかけましたね。
でも、絶望したら、その時が最後の負け、じゃないですか。
だから、自分ができることがある間は、やはりやり続けるしかないと、思いましたし……、
人間て、一回しか生きられないんですよね、自分の人生って……。
やっぱり、やりたいことやるしかない。
言いたいことを言うしかない。
[松田氏]
例えば多くの人も、じゃあ、一回しかない。
それだったら、住みたい所に住んで、危ないと言われている物でも、美味しい物でも食べて、それでいいじゃないか、
と思っている人も多いと思うんです。
[小出氏]
いいですよそれで結構です。
例えばチェルノブイリの原子力発電所の事故が起きて、40万人の人が強制避難、ということで、故郷を追われた。
もちろんわたしは、放射能汚染地帯に人々が住んで欲しくないから、避難して欲しいと思いました。
でも、どうしてもやっぱりイヤだと、自分の故郷で住みたいと、
健康が損なわれようとなんだろうと、この場所で生きたいと思っていた人達は、戻ってきた。
もちろんお年寄りが中心だけれども。
わたしはそれでいいと思う。
その人にとっての、たった一回の人生で、その土地と切っても切れないという、そういう生き方をしてきた人達はいるはずですから。
仮に、放射線で被害を受けるということがあったとしても、それを覚悟で、自分の人生を生ききるという生き方は、いいと思います。
でも……、子供達は、汚染地から逃がさなければいけない。
でも、逃がそうと思えば、皆そうだろうと思うけれども……、家族があるわけですよね。
子供だけ逃がして親は逃げなかったら、家族が崩壊してしまうわけで……、じゃあ家族ぐるみで逃げられるかと、いえばなかなか多分、実際には難しい。
それぞれが……、すでに汚染してしまった世界の中で、どういう選択をするかということなんですね。
わたしは、夢を追って原子力の場に来た人間ですけれども、途中でこの原子力はダメだと思って、それをやめさせるための仕事をしようと思った人間なんですね。
もともとその教員の中で6人の仲間がいて、で、原子力に反対をして活動していたんですね。
その活動を始めた頃が、丁度、中国の文化大革命が終わった頃の時代で、中国の四人組という連中が、ものすごい悪党だと言って、指弾されていた時代だったんですけど、
で、わたし達は6人だったんで、六人組と呼ばれていたんですよ。
で、学生でも、わたしと一緒に仕事をしたいという学生がいたんですよ実は。
でもわたしは、その学生を受け入れなかった。
受け入れてしまうと、その学生は就職できない。
この日本という社会の中では。
僕の所に居てはいけない、と言って、他の大学の教諭に託したりしたこともあります。
[松田氏]
でもそれは間違ってますよね。
(すいません)
間違っていると思います。
(間違っていたかもしれません)
間違っていると思います。
(はい)
間違っていると思いますよ。
やっぱりわたしは、まあ、山本太郎さんも、俳優の仕事ができなくなるとか、いう方がいるんですけど、
わたしはそんなことは絶対無いって思って信じてるんですよ。
やっぱりそれを、認めちゃいけないと思ってて、絶対そんな社会であってはいけない、と思うんですね。
みんながやっぱり、今回の3.11を機に、原子力というものに対してちゃんと意識を持つべきだし、それに対して、ちゃんと訴えていこうという学者が誕生するべきだと思うし、
どうかほんとに、そう言わずに、小出さんが、俺がついてると、みんな来いよと言って欲しいと思うんですよね。
[小出氏]
ありがとう。
そう言ってもらえるとほんと嬉しいし、それだけなんですよね、人生なんて。だと思うし、
間違ってた、だろうなと、今は思います。
[岩井氏]
この事故を、日本中が目の当たりにしたじゃないですか。
まあ、若い世代に、特に子供達の中に、将来、この問題を解決したいと思う子供が多く出てくるんじゃないかっていう、希望っていうか、期待をしてるんですけど、
今はまだ気づかないでしょうけど、これから五年十年生きていく中で、これを天職にしたいと思う子供達が出てくるんじゃないかと、僕なんかは思うんですけど……。
[小出氏]
そうなってくれれば、ものすごく嬉しいと思いますね。
ただ、わたしは少なくとも、原子力というものにね、夢を抱いて、この原子力という場に足を踏み込んだ人間なんですよ。
で、その当時は、わたし以外にも、たくさんの若い人達が、原子力に夢を抱いて入ったんですよね。
ところが、残念ながら原子力ってこんなもんだった、んですよね。
ですから次々と、原子力に夢を持つ人達は減ってきたわけだし、今もう、原子力を勧めるということに関しては、ほとんど若い人達も夢を失っているんですよね。
ですから、原子力はいずれにしても衰退します。
これ以上はできなくなると、わたしは確信していますけども、
でも、原子力が生み出してしまった核のゴミ、百万年に渡ってお守りをしなければならない核のゴミというのは、
もうほんとに、気が遠くなるほど膨大にたまってしまっているし、その一部がすでに、環境に漏れて、人々を被曝させている、という状況なんですね。
だからそれに立ち向かう、どうしても必要な仕事があるので、わたしは若い人に、もう一度考えて、この場所に戻ってきて欲しいと思うけれども、
ほんとにその……ゴミの始末というかね……ものすごい負の面、原子力を選択したが故に生じてしまった負の面が今現れてきて、それに直面してるけど、
そういう負の面のために、自分の命をかけてくれるという若い人が、どれだけ出てきてくれるのかなあと思うと、不安はあります。
でも来て欲しいと思います。
[岩井氏]
まあ、その子達はまた次の、さらに次の未来の子供達の希望になるわけですね。
すごく価値ある尊い仕事ですよねそれは。
[小出氏]
もしわたしがもう一度人生を生きられるなら、この仕事のためなら戻ってきます。
原子力を勧めるなんていうためにはね、二度と足を踏み込みませんけれども、今から出てくる困難な仕事というのは、絶対必要だと思うから、
そのためにもう一度生き直すことができるならやりたいですね。