気功瞑想の先生ミリアムとクラスメイトのマリアン、そしてわたしの3人で、ニュージャージー州の最北にある町で行われるワークショップに行ってきた。
早起きが超~苦手のわたしだけども、ほんでもって、なんだかイヤ~な疲れがどんどん増してきた感じがする週末だったけれども、
さらにさらに、もしショーティが生きてくれてたら、キャンセルする気まんまんだった行事だったけれども、
ずいぶん前から計画していたことだし、泊まるモーテルの予約もしてくれてあったし、なにより大好きな友だちと一緒に行くのだからと、
うじゃうじゃ考えてる自分の背中をエイッと押して、5時に目覚ましをセットして寝た。
でも、興奮してるのか、ほとんどちゃんと眠れぬままに朝になり、シャワーを浴び、車の中で食べる朝食用に、3人分の梅干しおにぎりを作った。
まずはマリアンの住むアパートに到着(写真は、彼女のアパートのお向かえにある教会。数年前の夏に、バイトで演奏した)。
彼女の荷物といったら……コーヒーメーカーにミントの葉っぱ一束、クッキー各種にスイカ、山奥に1週間キャンプしに行くような勢いである……。
次にミリアムを拾って、ひたすら北に向かう。
会場は、森の中の一軒家。
レジスター待ち。
太極拳、気功、そして瞑想の世界。
こんな素晴らしい自然を目の前にして、この檻は気の毒過ぎる……と思ったけれど……。
大好きな友だち、ミリアム&マリアン♡
再び、太極拳、気功、そして瞑想の世界の数々。
ここのテントの中では、講師たちが書いた本やCD、DVDやTシャツ、その他もろもろの関係グッズが売られていた。
チャイニーズ・ヨガ(すご~くおもしろかった)のJianye先生。
どうやって自分で自分の整体をするか、を教えてくれたJohn先生。
太極拳パフォーマンス。
関節をリラックスさせるクラス。
5分でできる、簡単自己治癒力を向上させるマッサージを教えてくれたSiobhan先生。
この丘を下りていった所に、めちゃくちゃきれいな川が流れてた。
マスター・ジョーの遺影が飾られている一角。
まだまだ長生きするはずだった彼は、スーパーから出てきたところでトラックに轢かれて亡くなったらしい。
このセミナーの講師はみな、マスター・ジョーのお弟子さん。
その中でもとりわけ彼女の講座は、どれもこれもとても分かりやすくて興味深かった。
足裏のマッサージの説明中。
ここが食堂。1700年代に建てられた家。
ちょいとベンチに寝そべる。
お泊まりのモーテルに行く途中の信号待ちに、突如現れた消防車。
サイレンとクラクションの合間に、若者の歓声が聞こえる。
なにかで優勝したお祝いだね。子どもたちがニコニコ笑いながら、トロフィーを高く掲げている。
モーテルまで、迷いに迷った。
一緒のモーテルに泊まる、ミリアムの水曜日のクラスの生徒ジョーは、あまりに迷い過ぎている我々の後を付いて来るのに嫌気が差して、
「これからはボクが先導するから付いてきて」と行って先を走ったけれどもやっぱり迷い……、
結局は、丘の上にあるモーテルから、グルグルと同じ所を走っている我々を見下ろしていた従業員さんの誘導に従って、無事到着……やれやれ……。
その夜の目的だったお月見。
直前に、真っ黒な分厚い雲に覆われたかと思うと大雨が降り、そのあとみるみる雲が散っていって……。
プッシュハンズの講座で、見知らぬ人とペアになり、ただただその人の目を見つめるという練習をした時の混乱と居心地の悪さを話すと、
そこからどんどん話が広がっていき、アメリカ人のマリアン(両親はアイルランドからの移民)、イスラエル人のミリアム、黒人のジョー、そして日本人のわたしの、
それぞれの国のこと、世界のこと、そして自分自身のことなど、満月の光の中に、いろんな言葉が飛び交った。
そして突如、マリアンが、椅子ごと倒れた!
ちょっとだけ傾斜があった所に彼女は座っていたのだけれども、彼女が持っていたマグカップが、コロコロと丘を転げていったのを見た直後、
ケラケラと笑う彼女の声が聞こえて、よく見ると彼女は、芝生の上で仰向けになったまま笑っていたのだった。
それを見た我々も、助け起こしに行きながらも、ゲラゲラを大笑い。
もちろん彼女は、体の左側を、椅子の腕とアスファルトでしこたま打ったわけで、笑い事ではないのだけれども、
彼女があまりにも楽しそうに笑うので、我々もそれにつられて大笑いした。
ミリアムがボソッと、
「実は、今日のクラスの途中で、サンドラも椅子ごと倒れたのよ。二度あることは三度ある、ってなことにならなければよいのだけれど……」
と、ちょっと不吉なことを言った。
翌朝も早起き。
近くのダイナーで朝食を食べる。
この建物もめっちゃアンティーク。
店は、バイクのライダーたちで混み合っていた。近くで祭りが行われているらしい。
ブルース&ビリー先生による、太極拳と気功の合体講座。
ボブ先生の、プッシュハンズの初心者向け講座。
そして、関節を広げる講座を教えるスティーブ先生が、なにやら漢字を書き始めた。
この後、一大事が起こった。
どういう経路でその動きをすることになったか、それがどうも思い出せないのだけど、
近くに居る人とペアを組み、向かえ合わせに立ち、ひとりは胸の辺りでクロスし、あとのひとりがそのクロスした腕の部分を押す、という練習をすることになった。
ほとんどの人が、もともとの友だちとペアになり、わたしはひとり残っていた、赤いTシャツを着た男性とペアを組んだ。
わたしが胸の辺りで腕をクロスし、真向かえに立ったその男性が、わたしの腕を押すことになった。
彼はほとんどうつむいていて、何も話さなかったけれど、押す直前にわたしを見つめ、「Are you ready?」と一言聞いた。
「I'm ready」とわたしが言った瞬間、彼は両手を突き出してわたしを押したのだけども、その力があまりに強かったので、わたしは腕を前で組んだまま吹っ飛んでしまった。
そしてそのまま、地面に倒れ、背中と後頭部を強く打った。
ゴツンという鈍い音がして、少しの間何も見えなくなった。
気がつくとわたしは地面の上に仰向けに寝ていて、おでこの辺りが滅茶苦茶に痛み、前歯の付け根がビンビンと痺れて話せなかった。
しばらくまともに答えられなかったので、医者と看護士がやってきて、眼球や首の辺りをチェックしてくれた。
30分ほど寝たままでいて、その間に、さまざまな資格を持つ人が、あれこれと世話を焼いてくれた。
恥ずかしいやら申し訳ないやら……。
あんなふうに、まるで木偶の坊みたいに、手を胸の前で組んだまま立っているべきではなかった。
クラスを台無しにしてしまった……などなど、後悔ばかりが頭に浮かんできた。
だんだんと、寝た状態から上半身だけ起き上がった状態、そこから椅子に座り、そして立つまでに、充分に時間をとってくれた。
最後まで付き添ってくれた、催眠療法や気功治療のドクター、ジョナサン先生の手が、背中を温めてくれていた時、突然泣きたくなってしまった。
「我慢してはだめ」という彼の声を聞いた途端、おいおいと泣き始めた自分に戸惑ったけれども、ここはもう泣きたいだけ泣こうと思い直した。
押した彼だってびっくりしただろう。
だから、わたしはもう大丈夫だと言いに行きたかったけれども、
事態を知ったミリアムが、彼があの後その場から逃げ去ってしまったこと、落ち着いてからも、一度もわたしの様子を確かめに来ないことに怒って、
「誰?どこに居るの?わたしが一発パンチをお見舞いしてやる!」と言ったので、とりあえず誰が彼なのか言わないでおくことにした。
会場のスタッフは皆、とても親切で、いろんな講師の人たちも、それぞれにできる簡単な治療を施してくれた。
痛みや凝りをやわらげるクリームやオイルもくれた。
昼食を、一番に、取らせてくれた。
いっぺんに、どちらかというとあまり格好よくない事情で、すっかり有名になってしまった。
最後の講義(痛みをやわらげるための太極拳と気功)も、とりあえずゆっくりと、座ったまんまで受けた。
帰りの車は、わたしが運転をした。
車中、ミリアムの親友の旦那さんが、12才の娘と一緒に旅行中に、突如、脳梗塞で亡くなってしまったという話を聞いた。
さらに、ミリアムの家族や親族がたくさん暮らしている、ガザのことも話した。
避難できた家族もいる。
仕事を放り出したら、家族を食べさせていけないからと、今だに、ガザにある会社に通勤している家族もいる。
ただの爆弾ならまだいいけれども、攻撃してくるミサイルを追撃するミサイルが空中で爆破した時の爆音は、耐えられないほどうるさい。
そんな話を淡々とするミリアム。
イスラエルが抱えた問題や苦難は、あまりにも複雑で、一言では説明できない。
それを、報道機関は、知った顔をして、善悪、白黒、勝手に口々にしゃべっている。
際限のない愚か者による、際限のない愚行。
もうどうにもならないという絶望と、それでも希望を捨てずに生きることへの渇望が、彼女の心の中で渦巻いている。
家に戻ってから、旦那に事情を話し、治療をしてもらった。
どんどんと悪化しそうだった首の付け根のつっぱりや痛み、それから頭痛が、ずいぶん軽減した。
フェスティバルのスタッフも、旦那が鍼灸師であることを告げると、心からホッとしたような顔をした。
ありがたやありがたや。
とまあ、かなり痛いハプニングに遭ったけれども、そしてそれは、わたしだけではなくて、サンドラもマリアンも遭ってしまったのだけれど、
朝から夕方まで、森の緑に包まれて、いろんな体験をさせてもらった。
ミリアムの水曜日のクラスの、サンドラとデラ、そしてジョーの3人はみな、数年~10年前に脳梗塞を患い、リハビリをしながら暮らしている。
サンドラの症状は、3人の中でも一番重く、言葉が少し不自由で、杖がないと歩けないし、体が常に揺れている。
わたしはどの講義よりも、その3人から、とても大切なことを学んだような気がする。
また来年も行こう。
そして、同じような動作の練習があった際には、少々強く押されても大丈夫なように、ちゃんと後ろ足を踏ん張るように気をつけよう。
まだまだ学ぶことはたくさんあるのだ。