6) 石炭窯
明治時代になると、ヨーロッパの倒焔式(とうえんしき)円筒窯を、モデルとして、
石炭窯が開発されます。
火力の強い燃料(石炭)が、手に入る様になると、傾斜地に窯を、築く必要も
無くなり、 平坦地に築かれ、連房式の登窯から、焼成室が1個の窯に戻ります。
① 石炭窯が、登窯に取って代わった、最大の理由は、燃料の安さです。
我が国でも、石炭は容易に採掘され、薪に対して、格段に安価です。
(薪を割る手間も、ありません)更に、熱量の違いも、大きいです。
② この石炭窯により、完全な倒焔式の窯に成ります。
(尚、登窯は、不完全な、倒焔式の窯です。)
③ 薪による焼成と比べ、釉調(色相)に、違いが見られるそうです。
即ち、薪より「ねっとり」感があり、天目釉に適しているとの事です。
④ 磁器を焼く場合には、問題があるようです。
a) 京都で、一時期石炭窯が、使用されていましたが、石炭に含まれる、
硫黄や炭素によって、釉が 変化したり、 素地が、汚れる事もあり、直ぐに、
廃(すた)れていきました。
b) 瀬戸、多治見、有田などの、磁器を大量生産される、窯場では、石炭窯が
盛んになります。
京都系の透明釉が、石灰釉や、柞(いす)灰釉であるのに対して、他の窯では、
タルク(滑石)を加えた、石灰タルク釉や、滑石釉を使う為です。
タルクは、硫黄や炭素を、吸着し難い性質を、持っていますので、釉に「悪さ」を
しないのです。
⑤ 石炭窯の種類
a) 角窯 (かくがま): ドイツから、技術が伝わり、明治時代以降に、
普及した新しい構造の、焼成窯です。平面が四角く、窯の両側に設けられた
沢山の焚口から、炎が壁と焼成室との隙間から、噴き上がり、天井にぶつかり
床下の通炎孔を通り、煙突へ抜ける、割合簡単な構造です。
均一で高温度の焼成が、可能な様に、工夫されています。
ⅰ) 大正から、昭和の前半にかけて、瀬戸の主力窯として、活躍しました。
瀬戸では、方形の石炭窯が、明治時代の終わり頃から、築かれ初め、
大正・昭和にかけて普及しました。
ⅱ) 釉薬を掛けた物が多く、 食塩釉も出現し、土管、焼酎瓶、建築陶器
(煉瓦、タイル)、 衛生陶器も、作られる様になりました。
b) 丸窯(円筒窯、円窯 )
耐火煉瓦を用いた、直立円筒形の、焼成室を持つ窯です。
円筒形の窯の周りに、放射状に、複数の焚口があります。
ⅰ) 角窯と比較して、温度分布が均一に成り易く、燃料消費も、少なくて済む、
利点があります。
ⅱ) 角窯より耐用年数が長く、熱効率がよい反面、窯を築く為の費用がかかり、
窯詰め、窯出し等作業の能率が、悪いと言われ、角窯ほど普及しませんでした。
石炭燃料は、粉塵や煤煙(ばいえん)等の、環境問題と、多くの労力を、
必要とする為、次第に、他の燃料に、置き換わっていきます。
7) 固形燃料より、他の燃料(重油、灯油、ガス、電気)へ
以下次回に続きます。
石炭窯 角窯 丸窯