わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代の陶芸233(吉田明)

2012-11-08 21:58:22 | 現代陶芸と工芸家達

「七輪陶芸」や「紙窯(かみがま)」などを考案し、手軽に楽しめる陶芸を提案している人に、新潟県

十日町に在住する吉田明氏がいます。

1)  吉田明(よしだ あきら): 1946年(昭和23) ~ 2008年(平成20)

 ① 経歴

  1946年、東京都青梅市に、三代続く陶芸家の家に生まれます。

  1962年 14歳の時、中学の授業で体験した焼き物が昂じて、独学で窯を作ります。

  1965年 愛知県立陶磁器試験場に練習生として入所し、轆轤の基礎を江崎一生氏に学びます。

  1972年 東京都八王子市 美山町御屋敷に窖窯を築き独立します。地元の土を採取し始めます。

  1973年 佐賀県有田町の対山窯で、陶器の制作指導をしながら磁器を学びます。

    同年 唐津、伊万里の古窯跡を発掘調査をしています。

  1974年 八王子で第一回個展を開き、八王子の土を使い三島、粉引、焼締めの作品を展示。

  1981年 本格的に茶陶に取り組み、新宿柿傳ギャラリーで第一回茶陶展を開催します。

  1994年 東京都青梅市 沢井に青梅窯を開き、奥多摩で陶芸活動を始めます。

  1997年 青梅市柚子木町に「やきものショップ陶」を開きます。

  1998年 東京都西多摩郡日の出町大久野に、「日の出窯」を築きます。

  1999年 日の出工房に朝鮮式竹割窯を築きます。            

  2001年 縄文土器、黒陶、須恵器に新境地を開きます。

  2004年 アメリカ・ニューヨークにて茶陶展を開催。

  2005年 新潟県十日町に移住します。

  2006年 「大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ2006」で、十日町芋川地区、清津川

     河川敷にガラスと陶の作品 「エターナル」を展示します。

     同時に越後妻有(つまり)の粘土層を発見し、「妻有焼」としてスタートします。 

  2007年 イギリスで、第11回国際陶芸祭に参加し、ミニ窯を紹介します。 

  2008年 妻有焼陶芸センターがオープン。 12月5日心筋梗塞にて死去。 

 ② 吉田氏の陶芸 

  ) 若い頃は、愛知県や九州有田などの各地で、修行をし経験を積みます。

     我が国の陶芸の原点である韓国へ毎年出掛け、古窯跡を踏査し、朝鮮古陶の調査研究を

     長年に渡り行っています。そこでは主に三島、粉引、刷毛目の技法を研究しています。 

  ) 東京都八王子市 美山町に「御屋敷窯」、東京都青梅市に「青梅窯」、東京都西多摩郡

     日の出町に「日の出窯」。新潟県十日町など各地に窖窯や、朝鮮式竹割窯を築いています。

  ) 東京都青梅市から新潟県十日町へ移り住んだのは、2006年の夏に、「大地の芸術祭-

     越後妻有アートトリエンナーレ2006」に参加した際、同市内で良質な土と出合ったのが縁で

     工房を十日町に移します。

     又、国宝の「火焔型土器」が、新潟県の妻有り(つまり)地域(現、十日町市津南町)で出土

     している事も原因になっています。即ち、「火焔土器」は約4500年前に制作されたと推定され、

     それ以来途絶えた焼き物を、地域振興の新しい窯場とし、「妻有焼」と命名した焼き物を作り

     ます。2008年10月に、旧野中小学校舎を利用した「妻有焼陶芸センター」を、 オープン

     させまが、その直後に吉田氏は逝去します。

  ) 七輪陶芸、ミニ窯について。

   a) 七輪(しちりん)とは、持ち運びの出来る調理器具の一種で、鍋や釜を載せて煮炊きする

     石製(天然珪藻土岩)の道具です。燃料は一般に炭(木炭)を使用します。

     七輪の下部にある空気孔から、風を強制的に送り込む事により、1200℃程度の高温に

     する事もできます。

   b) 七輪陶芸では、その日の内に、成形、乾燥、素焼き、本焼きの全てを行う事が可能です。

     但し、小さな七輪ですので、ぐい呑みや箸置程度の小物に限られます。

   ・ 一般に成形した作品を乾燥させるには、1週間程度掛ます。しかし、成形品を灰の中に入れて

     置くと、灰が水分を吸収し、直ぐに乾燥するそうです。乾燥するに従い白っぽくなります。

     尚、温かい灰では乾燥が早まります。

   ・ 素焼きは熱い灰の中に埋め込む事で可能です。約2時間程度で完了するそうです。

   ・ 本焼きは、作品の周りをおき(木炭の燃えカス)や灰で覆い、更に周囲に木炭を置いて着火し、

     徐々に温度を上げていきます。(急に昇温すると割れが起こり易いです。)

     木炭が真っ赤になってから、風を送り込み温度をあげます。木炭が赤くなってから1時間

     程焼き続けると、ほぼ焼き上がりです。七輪の中から引き出して、自然冷却か、水冷します。

    ・ 施釉する場合には、七輪内に直に置くか、簡単な容器や匣鉢(さや) に入れて焼成します。

    ・ 灰は燃料店などで1kg、1000円程度で購入できるとの事です。

   c)  ミニ窯とは、「ミニサイズの陶芸用薪窯」の事です。

     陶芸用道具土を使い、薪窯を作ります。一般には耐火レンガを積み上げて作ります。

   ・ 燃料は主に木炭を使いますが、窯の構造は、 窖窯・登り窯・昇焔式・倒焔式 など、自由に作る

    事ができます。

   d) 詳しい事を知りたい方は、以下の吉田明の著書を参照して下さい。

    ・ 「やきものをつくる-すべてができる七輪陶芸」(二葉社)を出版(1999年)。

    ・ 「やきものをつくる-ミニ窯」(二葉社)を出版(2000年)

    ・ 「決定版-七輪陶芸入門」(主婦の友社)を出版。(2002年)

    ・ 「やきものをつくる-ギョ!紙窯」(二葉社)を出版。(2002年)

    ・ 「縄文-室内陶芸」(二葉社)を出版。(2003年)

    ・ 「十分陶芸」(二葉社)を出版。(2006年)

    ・ 「やきものの絵本」(農山漁村文化協会)を出版。(2008年) 

  その他、ネット上でも「七輪陶芸」等についての記述を見つける事が出来ますので、

  参考にして下さい。

次回(金田鹿男氏)に続きます。

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