わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代の陶芸234(金田鹿男)

2012-11-09 22:11:31 | 現代陶芸と工芸家達

一生を貫く仕事として、李朝の技法を研究している、茨城県取手市在住の作家に、金田鹿男氏が

います。特に「小紋象嵌」の作品に注目が集まっています。

1) 金田鹿男(かねだ しかお) : 1938年(昭和13) ~

  ① 経歴

   1938年 茨城県取手市の浄土宗広経寺(ぐぎょうじ)の次男として生まれます。

   1954年 茨城県笠間の松井康成氏(人間国宝)に師事し、陶芸の研修を受けます。

   1967年 取手市の生家の寺に窯を築き独立します。

   1974年 第1回伝統工芸武蔵野展に入選します。(以後第8回まで出品)

   1975年 第15回伝統工芸新作展に入選します。(以後第16,18~21回まで出品)

         弘経寺にて第1回「鹿窯会作陶展」(ろくようかい)を開催します。

   1976年 第23回日本伝統工芸展に入選。(以後第24,27,28,30,34回に出品)

          弘経寺にて「金田鹿男作陶展」を開催します。 

          「第2回日本工芸会受賞作家展」(銀座黒田陶苑)に出品します

   1977年 第1回「金田鹿男象嵌小紋作陶展」(銀座黒田陶苑)を開催します。

   1981年 日本工芸会の正会員に成ります。

  ・ 作品の発表の場は、主に個展が中心になります。

    主な個展: 生家の弘経寺、黒田陶苑(銀座・渋谷)、新岐阜百貨店、横浜高島屋、新宿伊勢丹

    など多数。

  ② 金田氏の陶芸

   ) 東京電機大学高等学校を卒業後、英語学校に通いますが、陶芸に興味を持ち、松井康成

     氏に師事します。松井氏は、茨城県笠間の浄土宗月宗寺第23世住職でもあり、金田氏の

     生家も浄土宗のお寺であった事も、弟子入と関係していると思われます。

   ) 松井氏は「練上手(ねりあげて)」の技法で著名ですが、金田氏は松井氏と同じ道を歩まず

     独自の技法を用いる様になります。

      注: 「練上手」とは、二色以上の色土を積み上げ、繋ぎ合わせて所定の文様を表出する

         技法です。一般には轆轤を使わず「手捻り」で行います。

      金田氏は、李朝(李氏朝鮮)の焼き物に惹かれ、「象嵌」や「粉引」などを仕事の中心に

      据えて、活動しています。

   ) 「象嵌」は金田氏の得意な技法です。

       多彩な印花文や削りで、連続文様を作品の表面に多数作り、表面を凹ませます。

       素地とは異なる色土を凹みに埋め込み、乾燥後に鉋(カンナ)等を使って、表面の余分の

       土を削り、凹み部分に模様を表す技法です。

      a) 皿や壷、花生などに、細かく連続した印を捺し、色土を数度に分けて化粧掛けします。

         一度に厚く塗ると、化粧土が剥がれ易いです。

      b) 素地と象嵌部分の色の対比が見所ですので、色の差にメリハリがある色土を選ぶ

         必要があります。黒や褐色の素地に、白土で象嵌した作品が多い様です。

         尚、この技法は手間隙が掛かり、根気のいる割りには、中々上手には行きません。

         凹みの深さが浅いと、削り作業で文様が消えてしまいます。

        ・ 象嵌壺「小紋三島手合子」: 日本伝統工芸展 (1987年出品)

        ・ 小紋象嵌壺(30.5×30 cm) : 現代日本の陶芸家と作品(1996年)

        ・ 有刻彩陶象嵌皿: 茨城工芸会創立70周年記念作品

     ) 「三島(みしま)」、「刷毛目」、「粉引(こひき)」の技法。

       a) 「三島」は印花文を施した作品に、刷毛で化粧土(色土)を薄く塗り、印花文に色土が

          適度に入り込む事により、文様を引き立てる技法です。

       b) 「刷毛目」は印を捺さずに、化粧土を刷毛で塗り、刷毛の通った痕を愛でる技法です。

          意図的に「ムラ」に塗るのが特徴です。

       c) 「粉引」は化粧土を釉の様に、漬け掛け(浸し掛け)や流し掛けする事により、色土を

          厚めに塗る方法です。

     ) 土は愛知(瀬戸)、岐阜(志野)、三重県(伊賀)などから取り寄せているそうです。

        窯は倒焔式のガス窯で、還元焼成しているとの事です。

次回(三輪龍作氏)に続きます。

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