わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代の陶芸237(市野茂良)

2012-11-13 20:55:57 | 現代陶芸と工芸家達

兵庫の丹波立杭焼(たんば たてくい)は、瀬戸、常滑、信楽、備前、越前とともに、日本六古窯の

一つに数えられている焼き物です。丹波は丹波笹山藩の城下町で、白壁の武家屋敷と、妻入型の

商家が古い町割に沿って軒を接している町です。

1) 市野茂良(いちの しげよし) : 1942年(昭和17) ~ 2011年(平成23)

  ① 経歴

    1942年 兵庫県丹波立杭の窯元、丹窓窯(たんそうがま)の家に生まれます。

           父は陶芸家の市野丹窓(たんそう)氏です。

    1967年 兵庫県美術展に入賞します。

    1969年 英国セント・アイブスの陶芸家、バーナードリーチ氏の招きにより渡英します。

       4年間研修を重ねながら各地の美術展に出品し。仏国ヴィルノックスに築窯します。

    1973年 帰国し、丹波古陶館にて帰国展を開催します。

    1974年 セントラルギャラリーにて個展を開催。

    1988年 篠山王地山焼陶器所に登り窯を築く。 英国スコットランドにて個展を開催。

    1996年 阪急うめだ本店(大阪)にて、20回記念個展を開催。

    2002年 「神戸市美術展」の審査委員になります。

    2008年 バーナード・リーチ工房オープン記念展(英国)に出品します。

       過去に同工房に在籍したことのある陶芸家(ジョン・ リーチ、ジョン・ベディング、

       ジェイソン・ウェイソン、トレバー・コーサー、ニック・ハリスン、 濱田晋作、市野氏7名)の

       作品展です。

   ② 丹波立杭焼(丹波焼、立杭焼)

    ) 兵庫県多紀郡今田町を中心とした窯場の焼き物で、開窯は鎌倉時代初期(又は、平安

       末期)の十二世紀末と言われています。

       茶褐色の素地に、ビードロ状の自然灰釉が肩に掛かった重厚な作品が多いです。

     ・ 古窯跡からは、三筋壷や甕(かめ)、瓶子、鉢などが出土し、常滑などの東海地方の窯の

       影響を受けた事が解かります。

    ) 主に生活用品の器が焼かれ、初期には壺や甕、擂鉢(すりばち)などを作っていました。       

       中世には轆轤を用ず、紐作りの手法で形を整え、窖窯で焼成し釉を用いず、焼き締め

       (器)て作られています。尚、窖窯時代には小野原焼と呼ばれていた様です。

    ) 江戸時代に入り、登窯が用いられ、大量生産品で堅牢な擂鉢が作られ、17~18世紀  

       にかけ、中部や関東以北に急速に普及します。      

       登窯時代に、「丹波焼」或いは「立杭焼」と呼ばれる様になります。

      ・ 登窯は大甕を焼く為に、規模が大きな共同窯で、「鉄砲窯」や「蛇窯」と呼ばれる細長い

        竹割り式で、長さが60mの窯もあった様です。

    ) 江戸期の寛永年間(1624~44)の一時期、小掘遠州好みの茶器も焼かれ、茶人の間

       では遠州丹波と呼ばれています。

       茶碗、茶入、水指などの施釉された茶器の分野で、数多くの銘器を生み出しています。

   ③ 市野茂良の陶芸

    ) 大学を卒業後の1965年、バーナード リーチ氏の招きで、単身で英国に渡り、リーチ氏の

       窯で4年間修業を続けます。

       滞在中は、ヨーロッパ各地の美術展に出展しながら、フランス・ヴィルノックスに窯を築き、

       作陶の指導などをしています。

    ) 帰国後、父親の丹窓窯を引き継ぎ、大阪、東京やヨーロッパで個展を開き、独自の

       丹波焼を発表します。彼の作る作品は、食器 、茶器、 菓子器 、花器などが主ですが、

       大きなモニュメントも制作しています。重厚感のある壷や皿など、民藝調の作品もあります。

    ) 特に古丹波の技法を用いながら、斬新な作風の作品を発表しています。

      その為、兵庫教育大学講師を務めながら、丹波篠山藩御用窯の復活に力を貸し、

      王地山陶器所の登窯を築きます。

    ) 丹波焼きの技法

       丹波焼きの装飾方法として、型押、釘彫、イッチン(筒書き。スポイト掛け)、鉄絵、白泥絵、

       貼付文、墨流しなどがあります。

       市野氏は、立杭焼の技術と文化・歴史の伝承に力を入れている作家です。

      ・ イッチン(筒書き)は、市野氏が得意とする技術です。

        素地と異なる泥状の色土を竹筒に入れ、細い口から絞り出して、文様を盛り上げて描く

        方法です。

現在、今田町上立杭、下立杭、釜屋地区の窯元は約60軒あり、今田以外にも丹波立杭焼を名乗る

窯元が多数存在しています。

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