わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代の陶芸239(小川幸彦)

2012-11-16 21:21:14 | 現代陶芸と工芸家達

日本の陶磁器の原点である、須恵器の事を徹底的に研究し、須恵器の作品を作り続けた作家が

静岡県島田市に住む、小川幸彦氏です。

  注: 須恵器とは、古墳時代~平安時代に生産された陶質土器(器)で す。青灰色で硬質です。

    5世紀に朝鮮半島南部から、窯と伴に伝わったと言われています。

1) 小川幸彦(おがわ ゆきひこ): 1942年(昭和17) ~1998年(平成10)

  ① 経歴 

    1942年 東京渋谷に生まれます。

       1962年 明治大学を中退し、造形美術に進む決心をします。

          知人の紹介で、京都の陶芸家、岩淵重哉氏の内弟子として師事します。

    1967年 沖縄での南蛮焼き、栃木県益子での民藝陶器、愛知県の常滑での、平安・鎌倉      

          時代の古陶の研究をする為、各地を廻り作陶を続けます。

    1969年 日本工芸会正会員に推挙されます。この頃より、工房と窯を築く場所を探し求める

           様になります。

    1971年 静岡県島田市阿知ヶ谷に窖窯の「天恵窯」を築きます。

    1972年 その窯で信楽、常滑の土や地元の陶土を使い、須恵器を作り始めます。

    1978年 地元の古陶「志戸呂焼(しとろやき)」の、素材・材料の研究を行い、独自の灰釉の

          表現を駆使し、次々に精力的な作品を制作し発表します。

      1980年 灰釉研究の為、新たな窯を設計し窯を築き、独自の灰釉の作品を作り始めます。

   1987年 窖窯の構造を工夫して、須恵器、自然釉、南蛮などの作品を作り、発表しています。

   2005年 七回忌の回顧展が、地元「島田市博物館」で開催されました。

  ②  小川幸彦氏の陶芸

    彼は古代美術に詳しく、その鑑識眼と造詣に深い人でした。彼の作品は、「土の声」を聞き、

    「土との対話」によって、薬壷(やっこ)や大壷を小さな轆轤や、手捻り等の「手」によって制作

    しています。

   ) 灰釉薬壷: 灰釉の掛かった、蓋付きの円形(球状)の壷です。

       大きさ(H xW xD cm): 34x37x37。

       灰釉の作品には、灰釉瓶子。灰釉耳付長頚瓶。灰釉輪花鉢などの作品があります。

   ) 自然釉壷類

     ・ 自然釉蓮弁大壷: 叩き技法による叩き板の文様のある大壷で、中段に釘やヘラで描いた

       団子状の円で蓮弁を表しています。 45x47x47。

     ・ 自然釉大壷: 下部には叩き板の文様が鮮明に見えます。中段から上段に掛けて三本の

       平行線が描かれ、その間には大雑把な丸や、ニョロニョロした線が描かれている作品で、

       肩には、灰色っぽい自然釉が濃い目に掛かっています。40x43x43。

   ) 器(せっき)類:英語の"Stone ware"の訳語。。「焼き締め」ともいう。 施釉はせず、

        焼成で自然釉が掛かる焼き物です。

     ・ 器壷、器リンゴ壷、器梵字文瓶子、器板皿、(無釉の焼き締め陶器)

     ・ 器赤絵扁壷、器赤絵花器: 器の表面に青、濃紺、赤絵が施された作品です。

    ) 南蛮の作品:

     ・ 南蛮大ノ字文壷: 熔けきっていない灰が壷の肩に積み重なって、凸凹した器肌に成った

       作品です。胴部に「大」の文字が、へらで大書してあります。 21x22x22。

     ・ 南蛮線文「大日如来」壷: 平らの面を持つ偏壷で、平らな面に座す「大日如来」が線で描

       かれています。  

   ) 志戸炉(しとろ)釉の作品:

      志戸炉焼きとは、静岡県遠江(とおとうみ)国 志戸呂で産した陶器で、赤みがかった器に

      黄色釉や黒釉を掛け、独特の侘びた味わいがある作品です。茶器が好まれています。

     ・ 志戸炉釉花器: 筒型で上部には褐色の釉が、下部には黒釉が掛かった作品です。

       大きさ: 30.5 x 18 x 18 cm

     ・ 志戸炉釉大鉢: 逆円錐形の鉢で、白い器肌に黒釉が斑(まだら)に掛けられています。

       大きさ: 22 x 36 x 36 cm

   ) その他: 志戸呂徳利、南蛮徳利、信楽徳利、自然釉徳利、ぐい呑、麦杯酒盃などの酒器や

      山茶碗などの茶碗類と、灰釉灯火器(中に蝋燭を入れた明かり取り器)なども作っています

次回(山田和氏)に続きます。

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