わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 16 釉の濃度の調整は?

2014-11-02 21:56:11 | 素朴な疑問
特殊な場合を除き、釉は粉末状態の釉の原料を、水に溶いて液状にしてから使います。

 (特殊な場合とは、草木灰を作品に振り掛けて釉の一部とする方法等です。)

それ故、加える水の量によって、釉の濃淡が出来ます。

市販されている各種の釉は、粉末状または、すでに水に溶かした状態で販売されています。ご自分で

釉を調合する場合は、ほとんど粉末状の材料を使います。

1) 釉に加える水の量。

 ① 水に溶かされている状態で購入した釉は、ポリ容器などに密封された状態になっています。

  これらは、最適な濃度に成る様に、水の量が調整されていますので、そのまま直ぐ使う事が

  出来ます。但し、釉は沈殿し、水と分離していますので、十分攪拌する必要があります。

  但し、二回目からは、濃度の確認が必要に成ります。

 ② 粉末状の釉は御自分で、水を加え濃度を調整します。

  一般に、釉の原料1Kgに対し、水の量は0.8~1.0ℓ(リットル)とされています。

  濃くしたい時は水の量を減らしますが、一般的には1Kgに対し水1ℓが標準的な量と言えます

2) 現在使用中の釉の調整。

  ① 釉はバケツなどの容器で保管している場合が多いです。釉を新たに購入したり、作ったり

   した場合は、上記の通りですが、保管中の釉は、当初の濃度が変化しています。

   即ち、保管中では水の蒸発が起こり、濃度が濃くなったり、使用の際水分が作品に吸収され

   濃くなる場合もあります。逆に薄くなる場合もあります。柄杓掛けの様に、他の器具を使う

   場合には、その器具を洗う際出た水を、元の容器に入れる事があるからです。

  ② 施釉する際、釉を掻き混ぜ濃度を均等にする必要があります。

   その釉を直前に他の人が使っている場合は、意外と簡単に均等にする事が可能ですが、しば

   らく使用していない場合には、釉が沈殿し水と分離しているはずです。

   施釉は素焼き後に集中して行いますので、前回の施釉時間から日数が経っていますので、

   沈殿は強固になっています。沈殿防止剤なるものが市販されていますが、余り効果があり

   ません。

  ③ 掻き混ぜる際の注意点。

   電動の釉攪拌機なるものも、市販されていますが、大量の場合以外は、一般には手を使って

   攪拌します。

   ) 攪拌前に分離している容器の水分を、掬い(すくい)取っておきます。

    釉を薄める事は容易ですが、釉を濃くする為には、新たに材料を加える必要があるからです

    水を取り除き攪拌しながら、濃さに応じて水(冬場はお湯)を加える事で、濃度を調節する

    事です。

   ) 長く使われていない釉は、簡単には均一に成りません。

    金属製の「へら」や「カンナ」を使い、底に固着した塊を引っ掻きながら、少しずつ溶か

    します。十分容器が大きくなければ、作業がし難いです。均一に成る前に施釉すると、

    斑(まだら)文様になってしまいます。

    但し、完全に水が蒸発し、乾いた釉ならば、水を加える事で簡単に溶かす事ができます。

   ) ポリ容器に入っている固まった釉を、均等に溶かす事は難しいです。容器を振った

    位では、均一に溶けません。一度口径の大きい器に入れ替える必要があります。

   ) 少量を使う場合には、小さな器に釉の塊を少量取り、水を加えます。

    大きな容器に入っている釉を全て均一に溶かすには、かなりの時間が必要です。その為、

    少量の場合は、必要量を溶かします。

3) 比重計(ボーメ計)を使う方法もあります。

  釉の濃度を測る計器として、比重計が市販されています。水で溶いた容器に比重計を投げ込み

  その浮き具合で、濃度が測定できます。丁度釣りの細長い「浮き」の様な形をし、容器の中で

  垂直に立ちます。目盛りが振ってありますので、その数値を読む事で濃度が解かります。

4) 一般には、掻き混ぜた時に手に付いた釉を見て判断します。

  濃過ぎる場合は、泥の様に手に纏わり付きます。薄過ぎる場合は、手の色が見えます。

  施釉の仕方によっても、濃度に差を設ける必要があります。

 ① 吹き掛けの場合は、若干薄めにしないと、霧吹きなどが目詰まりします。

 ② 刷毛塗りの場合は、若干濃い目にしないと、綺麗に発色しません。

 ③ 流し掛けの際には、傾斜を付けた作品の表面を、釉が流れ落ちる必要がありますので、やや

   薄めの方が良い様です。薄過ぎる場合には二重掛けして濃さを出します。

 ④ 漬け掛け(浸し掛け)の際には、ある程度の自由度があります。

   即ち、漬ける時間の長さは、釉の濃淡の効果と同じ働きになります。

5) 容器に入っている釉は、前回の濃度と同じことは稀な事ですので、一回一回濃度の確認が

   必要です。
    
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする