わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 38 匣鉢焼成(古信楽風)?

2014-11-30 21:36:08 | 素朴な疑問
焼き締め陶器である古信楽焼きは、昔より大変人気のある焼き物です。大型の壷も有りますが、

特に小型の種壷である「蹲る」(うずくまる)は、匣鉢焼成に適した作品です。

一般に 古信楽焼きは、窖窯や登窯の様に薪を燃料にし、緋色や自然釉の流れ、灰被りなどの景色が

特に見所となっています。匣鉢を使う事によって、電気やガス窯でも古信楽風の作品を焼く事が

出来ます。作品は「はぜ石」と呼ばれる、長石の粒子の入った肌理の粗い白色の古信楽土を使うと、

より効果的です。

尚、作品の作り方は省略します。作品は必ずしも素焼きを行う必要はありませんが、素焼きした方が

強度が増しますので、破損する危険は少なくなります。

1) 匣鉢詰め前の作品処置。

 ① 作品に灰を掛ける。

   薪窯では燃料の灰が降り掛かりますが、匣鉢を使う場合には、意図的に灰を塗りつけたり

   灰を振り掛ける必要があります。

  ) 灰は天然の灰を使うのが理想的ですが、合成灰でも十分です。

    灰の種類は、松灰や土灰などを使います。いずれも陶芸材料店で手に入ります。

    尚、松灰は緑掛かり、土灰は黄色味掛かると言われています。灰の種類によって、発色に

    微妙な差が有りますので、色々な灰を使って見るのも価値があります。

  ) 灰は乳鉢を使い細かくすると、良く熔ける様になります。

    良く磨り潰した灰に水と「CMC」(化学のり)を加えて、ドロドロの状態にします。

    灰に「CMC」を添加することで、灰をより濃くする事が出来ます。

  ) 筆や刷毛を使い、作品の所定の場所に盛る様にして塗って行きます。

    作品の下部に塗ると、高温になり灰が流れ落ち底まで届いてしまい、下の台に溶着して

    しまいすので、作品の上部は厚く多めに、下部には量を減らすか、塗らない様にします。

  ) 灰の濃淡を考慮して塗ります。厚く塗る処、薄く塗る処、まったく塗らない処などを、

    熔け具合(流れ具合)を考慮して塗ります。

  ) 濃く塗る場合は上記の通りですが、灰を振掛けて塗る方法はやや灰が薄くなる方法です。

    「CMC」で作品の表面を霧吹きし、すばやく灰を掛けます。掛ける方法は茶漉しを使い

     振るか、手で摘んで置いていきます。但し振り掛ける方法では、匣鉢詰めまでに灰が

     剥がれ易いですから、多目に掛ける事と、灰の掛かった所は持たない事です。

2) 匣鉢に詰める。

 ① 珪砂と藁(わら)を敷く。

  ) 使用するのは、匣鉢の他、珪砂(3号など)、木炭、藁、道具土です。

  ) 匣鉢に珪砂を敷き詰めます。平らに均し作品が安定した状態で置ける様にします。

  ) 更に藁を敷きます。 藁は緋色を出す為に入れますが、緋色は灰の掛からない場所に

    出易いですので、灰の無い部分を中心に置きます。

  ) 作品を匣鉢に入れます。入れる際、匣鉢に当たると灰が剥がれる場合が多いですので、

    慎重に扱います。なるべく灰を塗った所は持たない事です。

 ② 木炭を入れる。

  ) 作品と、匣鉢の隙間に木炭を入れます。隙間が狭いですので、木炭は平たい形状にすると

    入り易いです。

  ) 灰を塗った部分は木炭を多目に入れます。これは灰を熔かす為には、高温が必要だから

    です。更に作品の底の部分にも多く入れ、焦げを出します。

  ) 作品の外側や首や肩に、藁を巻き緋色が出る様にします。

  ) 匣鉢に蓋をしますが、蓋との間に空気穴を設けます。 即ち、2~3cmの道具土を紐

    (又は団子)状にし、蓋と匣鉢の間に詰めて空気が通る道を設けます。紐などにアルミナを

    塗ると匣鉢との癒着を防ぎます。空気の通る場所を設ける事で、木炭が良く燃焼させ高温に

    する事ができます。

3) 窯出し。必ず軍手などの手袋を使います。

 ① 蓋と道具土を取り除きます。

 ② 作品の表面にある藁の燃えカスを取り除き、作品を匣鉢の外に出します。

 ③ 作品の表面や底には燃えカスの他、「バリ」など異物が付いている場合が多いですので、

  紙ヤスリ等で擦り仕上げます。

 ④ 温度が十分上昇していれば、灰は熔けて流れ落ちているはずです。

 ⑤ 作品の表情は、灰が熔け緑や黄色の部分、藁で巻かれた緋色の部分。更に空気が良く入った

   白い部分(素地の色)などに分かれ、独特の景色(表情)が現れているはずです。

 
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