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斎藤美奈子さんのコラム・その5

2016-06-01 12:38:00 | ノンジャンル
 恒例となった、水曜日の東京新聞に掲載されている、斎藤美奈子さんのコラム「本音のコラム」の第5弾。
まず、5月18日に掲載された、「呪われた五輪」と題されたコラム。
 「ある日、側近を呼んで黒幕はいった。『あいつは目障りだ。今のうちに潰したほうがいい』
 標的にされたのはI知事だった。Iは東京五輪招致でそれなりの働きをしたが、招致活動が終わればもう用はない。
 2013年11月、国会は特定秘密保護法の審議のヤマ場を迎えていた。Iの一件は国民の目を国会からそらすのにも役立つだろう。Iは医療法人からの資金提供疑惑で追い込まれ、辞任した。
 次のM知事は、党を割って出た要注意人物だった。が、先々を考えて党はMを支援し、当選させてやったのである。
 ところが、Mも勝手な振る舞いが目立ちはじめた。14年7月、韓国を訪問したMはP大統領と会談し、16年3月、新宿区の都所有地を韓国人学校増設に充てるといいだした。黒幕はいった。『あいつも邪魔だな』
 5月、Mは政治資金の使途が明るみに出て窮地に立たされた。パナマ文書や五輪招致の裏金問題は二番手、三番手の話題に降格した。仮にMが辞任し、7月の参院選と知事選が重なれば、知事選候補者を巡る報道一色になって国政選挙はかすむだろう。投票率は落ち、与党が大勝し、そして次の知事の席には…。
 国立競技場、エンブレム、二人の知事、裏金疑惑。ああ、呪われた東京五輪! ちなみに黒幕の正体は誰も知らない。(この物語はフィクションです)」
 また、5月25日に掲載された、「別の地位協定」と題されたコラム。
 「沖縄県うるま市の女性遺棄事件。報道によると『最悪のタイミングだ』と述べた閣僚がいたらしい。沖縄は怒っている。
 沖縄タイムス21日の社説は〈日米両政府の『迅速な対応』がどこか芝居じみて見えるのは、『最悪のタイミング』という言葉に象徴されているように、(略)沖縄の人々に寄り添う姿勢が感じられないからだ〉と書く。
 誰だよ、こんな暴言を吐いた『閣僚』って、と思っていたのだが、某民放キー局19日のニュース原稿をウェブサイトで読んで絶句した。
 〈アメリカのオバマ大統領が歴史的に広島を訪問する直前のタイミングというだけに、日本政府は困惑しています〉。ここまでが前ふりで、以下、政治部記者のリポートが続く。〈政府・与党内からは『本当に最悪のタイミングだ』という声が相次いでいます。政府としては、オバマ大統領の広島訪問で悲惨な歴史を乗り越えた日米の同盟関係を世界にアピールしようとしていた矢先の事件で、友好ムードに水を差された状況です〉
 そうですか。わかったよ。閣僚の一人二人の問題じゃない。政府目線の報道を疑問も持たずに流す局。これが東京のスタンダードなのだ。翁長知事は首相に『日米地位協定の下では日本国の独立は神話であると思いませんか』と語ったという。本土と沖縄の間にもある別の地位協定。嘆かわしい。」
 また、6月1日に掲載された、「米騒動の町」と題されたコラム。
 「富山県の魚津に行ってきました。魚津といえば蜃気楼、埋没林、ホタルイカ。私にとっては『日本之下層社会』の著者・横山源之助の生地。そして、忘れちゃいけない米騒動の発祥地だ。
 ことの発端は1918年、米価が高騰したことだった。原因は都市人口の急増と、シベリア出兵だ。米の需要増を見越して、一部の商人が米を買い占めたのである。
 そんな中、魚津には北海道に米を運ぶための蒸気船『伊吹丸』が寄港していた。漁師町の女性たち数十人が銀行の米倉前に集まって、米の積み出しをするなと要求。当時の新聞によれば『群衆せる細民と争うは危険なりと考え』、船は空のまま出港した。以上が魚津の米騒動の概要。女房たちが米倉を襲ったのかと思ったら、ちがったんですね。ごめんなさい。
 現地の案内板には『魚津の米騒動は、暴力的ではなく、話し合いで収まったことが大きな特徴である』という文章が添えられ、別の説明板には、彼女らの叫びが『日本の民衆に、人間の生存の権利の何たるかを自覚させた』とあった。ここから全国に波及し、時の寺内正毅内閣を退陣させ、大正デモクラシーのきっかけとなった米騒動。
 それを郷土の誇りにできる町って素敵。寺内は陸軍出身の長州閥で、人の意見を聞かぬ超然主義者だった。その内閣を倒した民衆。今の日本はどうかな。」

 3つとも面白いコラムでした。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/