gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

ルイーズ・アルシャンボー監督『やすらぎの森』

2021-07-31 07:13:00 | ノンジャンル
 ルイーズ・アルシャンボー監督・脚本の2019年作品『やすらぎの森』を、「あつぎのえいがかんkiki」で観ました。フランス語で語られたカナダ映画です。

 パンフレットのSTORYに加筆修正させていただくと、

「カナダ・ケベック州の広大な森林地帯。
その人里離れた湖のほとりの小屋で、3人の年老いた男性が愛犬たちとひっそりと質素な暮らしを営んでいた。
自由な生活を望み、家族と離れたチャーリー、元さすらいのミュージシャン、トム、そして最高齢の画家テッドである。
それぞれこころに傷を抱え世捨て人になった彼らは、社会のルールやしがらみに縛られず、自由気ままに人生の晩年を送っていた。
そんなある日、具合の悪そうなテッドの様子を確かめにやってきたチャーリーは、小屋の中で息を引き取っていた彼を発見する。

 その頃、弟の葬儀へ参列を終えた80歳のジェルトルードは、送迎役の甥っ子スティーヴを困惑させていた。
16歳の時に厳格な父親によって精神科療養所に入れられて以来、60年以上ずっと施設内に閉じ込められてきた彼女が「戻りたくない」と言い出したのだ。
森のホテルで雇われ支配人をしているスティーヴは、ケベックの豊かな自然を懐かしむジェルトルードの切なる心情を察し、施設に到着するやいなや車を引き返し、自身が働くホテルへと案内する。

 チャーリーらのまえに見知らぬ来訪者が現れた。その若い女性写真家ラファエルは、地元の美術館からの依頼を受け、かつてこの地域一帯に甚大な被害をもたらした大火事の生存者への取材を行なっていた。
家族全員をその大火災で亡くした“伝説の生存者”テッドの消息をたどっていたラファエルは、彼がすでにこの世を去ったことを知って落胆するが、テッドの小屋を撮影したいと申し出る。
チャーリーは自分の話すらしなかった彼を敬い、「ほっといてやれ」と言い放つ。

 スティーヴはジェルトルードを、いつも食料や日用品を届けている顔なじみのチャーリーとトムのもとへ連れて行くことにする。
スティーヴから事情を聞いたトムは警察沙汰になるのを恐れるが、チャーリーは他界したテッドの小屋を修理してジェルトルードを住まわせることを提案する。
「新しい人生だ、新しい名前にしよう」。甥っ子にそう促されたジェルトルードは、しばし考えたのち「マリー・デネージュと呼んで」と答えるのだった。

 おそるおそる森での新たな生活をスタートさせたマリー・デネージュは、ジェルトルードと名乗っていた以前とは見違えるほど、日増しにきらめきを取り戻していった。その陰にはチャーリーの支えがあった。不安で眠れない夜の話し相手となり、湖で泳ぎ方を教えてくれたチャーリーの無償の優しさを受け入れたマリー・デネージュは、80歳にして初めての愛撫、初めての優しいキスを体験し、真実の愛の喜びを知る。

 ラファエルはふたたび森を訪れ、テッドがアトリエ代わりに使っていた小屋で驚くべき発見に出くわした。
そこにはテッドが自身の壮絶な被災体験を投影した絵画が所狭しと並んでおり、若き日の彼が愛したと思われる女性の肖像画もあった。それらの鬼気迫る筆致の絵画には、長年の親友だったチャーリーとトムさえも触れたことのないテッドの深い苦悩と孤独感がありありと滲んでいた。

 やがて、密やかな温もりに満ちあふれた森の共同生活を揺るがす事態が勃発した。
北部で発生した山火事が間近に迫り、州警察と森林警備隊があわただしく避難を呼びかけ始めたのだ。
肺を病んで自らの身体の限界を悟ったトムは、愛犬とともに青酸カリを飲んで、死を選ぶ。
そしてともに未来へ歩みだそうと誓い合ったマリー・デネージュとチャーリーが静かに湖を眺めているシーンで映画は終わる。」

 マリー・デネージュを演じたアンドレ・ラシャペルさんは、「カナダのドヌーヴ」とも呼ばれた女優さんとのことで、遺作となった本編で、全裸で見事なセックスシーンを演じられていることに尊敬の念を強くしました。美しく静かな画面とともに、厳しくも優しい、なんとも言えない良い映画だったと思います。
 ちなみに監督のルイーズ・アルシャンボーさんは女性の監督で、長編第一作ではトロント国際映画祭で最優秀カナダ長編映画賞、長編第二作目ではかのロカルノ国際映画祭で観客賞を受賞、カナダ・アカデミー賞で作品賞と主演女優賞を受賞、アメリカのアカデミー賞でも外国語映画賞でカナダ代表に選ばれるなどの実績のある監督さんで、その後は人気テレビシリーズを手掛けるなど、映画に限らず多方面で活躍されているとのことでした。

斎藤美奈子さんのコラム・その90&前川喜平さんのコラム・その51

2021-07-30 06:13:00 | ノンジャンル
 さて、恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。

 まず7月21日に掲載された「時代の価値観?」と題された斎藤さんのコラムを全文転載させていただくと、
「女性差別発言で森喜朗氏は五輪組織委の会長を辞任した。女性タレントを侮蔑(ぶべつ)した演出案で、演出統括役の佐々木宏も辞任した。そして今度は楽曲担当・子山田圭吾氏のドタンバ辞任劇。
この件がショックだったのは、常軌を逸した虐待の内容もさることながら、小山田氏の過去は一部で有名な話で、雑誌のインタビュー(1994年の「ロッキング・オン・ジャパン」と95年の「クイック・ジャパン」)も読もうと思えばいくらでも読める状態にあったことだ。掲載誌の版元のロッキング・オンと太田出版は謝罪文を出し、NHKは彼が関与した番組の放送を見合わせた。が、もし五輪がなければ、過去は不問のままだったのだろうか。
 「当時の雑誌がそれを掲載、許容し、校閲を通っている」「その時代の価値観を知りながら評価しないと」と太田光氏は語ったが、「その時代」にもいじめを許容する価値観など断じてなかった。差別に関しては今より厳格だったとすらいえる。ナチのガス室はなかったとする記事で「マルコポーロ」が廃刊になったのは95年だ。当時この件が大々的に報じられていたら二誌も廃刊に追い込まれたかもしれない。
 三人も辞任者を出した組織委は、人権感覚が根本的に欠落した組織と判断せざるを得ない。ってことはトラブルもこれで終わりとは限らない。大丈夫か。」

 また、7月28日に掲載された「非多様性と不調和」と題された斎藤さんのコラム。
「「レディース・アンド・ジェントルマン」というアナウンスは性の多様性への配慮から近年廃止されつつある。本邦でも日本航空やディズニーランドほかが廃止し、エブリワンなどに変更した。
 その古めかしいアナウンスが何度も流れる五輪開会式だった。これでテーマが「多様性と調和」とは。発表時の演出チームは23人中22人が男性。共生をアピールする機会として地元から要請が出ていたアイヌ民族の舞踏も琉球舞踏もプラグラムにはなく、セネガル出身の打楽器奏者は直前になって外されたと訴え、人種差別的な新作歌舞伎で物議をかもした歌舞伎役者が登場した。
 入場行進で「ドラゴンクエスト」の楽曲が使われたことへの疑問も噴出している。作曲者のすぎやまこういち氏は慰安婦問題や南京虐殺を否定する修正主義的歴史観の持ち主で、数年前にはLGBT差別に同調する発言もしていた。事前に辞任や解任が続いたのに、なぜ彼はOKなのか。
 当然の疑問だと私は思うが、組織委員会は意に介さないだろう。なぜって氏の思想は五輪招致を牽引(けんいん)した石原慎太郎元都知事や安部晋三前首相の思想とも、政府与党の方針とも合致するからだ。彼らは負の歴史と向き合おうとせず、LGBT差別がノーならば杉田水脈議員はとっくに辞職していなければおかしい。口先だけの多様性。類友五輪。」

 そして、7月25日に掲載された「パンケーキを毒見する」と題された前川さんのコラム。
「30日に全国で公開される映画『パンケーキを毒見する』。さまざまな証言から菅義偉首相の人と政治をあぶり出す、バラエティー系政治ドキュメンタリー映画だ。企画・製作した河村光庸氏は、2019年に日本アカデミー賞作品賞などを受賞した映画「新聞記者」を製作した人だ。監督の内山雄人氏はテレビ出身で、映画を監督したのは初めてとのこと。内山氏に依頼するまでに、河村氏は数人の監督に断られたという。
 内山監督は菅首相に近い「ガネーシャの会」の政治家や横浜市議会議員に取材を試みたが、ことごとく断られた。登場するのは、自民党の石破茂氏、村上誠一郎氏、立憲民主党の江田憲司氏、共産党の小池晃氏などの政治家や古賀茂明氏、森功氏、鮫島浩氏などの言論人。僕も出ている。
 権力を獲得し拡大してきた「博打(ばくち)打ち」としての菅氏が描かれる一方、学術会議問題で追及されスカスカの答弁をする菅首相の姿も、上西充子法政大学教授の解説付きで面白く見せてくれる。
 アニメが秀逸で笑えるのだが、極寒にさらされた羊が次々に倒れるシーンは笑えない。コロナ禍に耐える国民を思わせるおとなしい羊たち。その目が赤くぎらつき出す時何が起きるか…。
 今のテレビでは絶対に見られない映像作品。総選挙の前に一度見ておく価値がある。」

 これだけ思い切って物言いとしてくれると、胸がスカッとします。

増村保造監督『卍』その2

2021-07-29 02:50:00 | ノンジャンル
 昨日の東京新聞の夕刊において、政治家の江田五月さんの訃報が掲載されていました。江田さんは法相時代に死刑執行を1件も行なわなかった方で、尊敬すべき政治家の一人でした。まだ80歳だったとのこと。あまりにも早い死期を迎えられたことに大いなる悲しみを覚えるとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 さて、昨日の続きです。

 しかし、しつこく狡猾な綿貫は秘密にするはずのその誓約書を孝太郎に見せて、園子と光子の中を裂こうとする。夫に問いただされた園子は秘密を一切合切しゃべる。孝太郎は光子との仲の清算を妻の園子に迫る。園子と光子は二人の真剣な気持ちを孝太郎に理解させるために睡眠薬による狂言自殺を試みる。園子は朦朧とした意識の中、光子が男と絡み合っているのを見る。夫の孝太郎と光子が肉体関係をもってしまったのだ。夫は光子と肉体関係を持ってしまったことを園子に謝るが、夫は光子との過ちをその後も繰り返す。すべては光子の企んだことだった。園子は光子に魅せられる夫の気持ちを理解し、三人で幸福に過ごそうということになるのだった。夫は、悪いのはすべて綿貫一人のことだったことにし、これまでの証拠の品すべてを10万円で買い取る。光子は自分をめぐって園子と夫が言い争いをしているところに現れると、自分がいるのだから夫婦喧嘩のようなことはしないでほしいと怒る。そして園子と夫の二人で夜寝る日には、光子は二人に睡眠薬を飲ませ、自分がいない間二人が関係を持たないようにする。自分だけが眠らされるではないかと疑心暗鬼になる園子と夫。それに対し光子は自分に忠実を誓ったのは嘘だったのかと、ひどく悔しがる。夫は賭けにでようと言い、園子と自分の薬を交換して飲もうと提案し、薬を飲んだ二人が眠るのを確認してから光子はにこやかに去る。そうした間に園子と夫はお互いに疑い合い、嫉妬し合う。なぜ毎日薬を飲まされるのかと問い合う園子と夫は、光子の真意を図りかねる。薬は徐々に強くなっていき、目覚めた後も体がしびれて病人のようになっていく園子と夫は、お互い、光子を太陽のように崇めて生きるようになってきていると言い合い、二人とも綿貫に似てきたと述べ合う。光子が二人を衰弱させようとしているのではないかと言う夫に、その可能性を否定できない園子。光子のためなら死もいとわないと言う夫に、自分と一緒になってしまったと答える園子。
 ある日、自分たちのことが載っている新聞を綿貫から送りつけられた夫は、もう自分たちが社会復帰できなくなったと悟る。いよいよ最後の時が来たと言う園子。同意する夫。訪ねてきた光子も新聞記事を手にしていて「死のう」と言う。うなずく園子と夫。綿貫にやられたけれど、いずれは人に知られることだったと言う光子は、どうしてもあの男から逃れられないとも言う。園子と光子の間に交わされた手紙は、記録を残すために全て園子に預けられる。園子が描いた観音像の前で、三人は線香をあげ、園子は「あの世に行ったら喧嘩せずに、みな仲良く過ごそう」と言う。薬を飲んだ後、白装束で中央の光子と手をつなぎ、横たわる三人。やがて園子は目を覚ますが、その時は既に光子と夫は手をつないだ状態で亡くなっていた。すぐに二人の後を追おうとも思ったが、最後まで二人に騙されていたとも考え、もしそうだったら、あの世でも自分だけがのけ者にされると思い、今まで生きてきたと園子は言う。今でも光子のことを考えると、悔しい、悔しい、恋しい、恋しいと思うと園子は語る。語り終え、涙にくれる園子の姿で、映画は終わる。

 若尾文子さんと岸田今日子さん、それに船越英二さんも加わり、最強のトリオによる最高のドラマを観させてもらいました。

増村保造監督『卍』その1

2021-07-28 06:13:00 | ノンジャンル
 増村保造監督、谷崎潤一郎原作の1964年作品『卍』をDVDで観ました。

 以下、サイト「映画ウォッチ」のあらすじに加筆修正させていただくと、

「「先生…」と、和服の柿内園子(岸田今日子)は老作家に自分が関係した事件の顛末を語り始める。夫の孝太郎(船越英二)が大阪で弁護士事務所を開いたのをきっかけとして園子は女子美術学院に通って日本画を学び始める。ある日他の生徒たちと共に観音像を描いている園子に校長が、顔がモデルに似ていないと指摘する。園子は、顔は自分の理想で描いたと校長をやりこめて評判になるが、観音の顔のモデルが洋画のコースにいる、織物会社社長の令嬢の光子(若尾文子)であるのは衆目の一致する所であり、二人について同性愛のうわさが立つ。しかしそれをきっかけに園子と光子は仲良くなり、園子は光子に夢中になっていく。光子をモデルにして園子の描いた観音について、光子が自分と体が似ていないという。そこで、園子の家で光子は彼女の裸を見せる。園子は光子の体の美しさに取り乱し、光子も「姉ちゃん」と呼ぶ園子に服を脱がせ、その裸の体をほめる。園子は「こんなにきれいな体をしていて、殺してやりたい」というと、光子は園子に「あなたに殺してほしい」と言う。そして園子も自分の裸を光子に見せる。それから園子と光子は手紙のやりとりを始め、園子は老作家にその膨大な数の手紙をすべて読んでほしいと言う。その後、園子は光子を愛するあまり夫をないがしろにするようになっていく。
 ある日光子から、井筒屋という連れこみ宿で着物を盗まれたという電話が園子にかかってくる。園子は光子のために自分の着物をもっていくが、光子に綿貫栄次郎(川津祐介)という「婚約者」だと名乗る男がいることがわかる。光子の裏切りを悔しがり一度は彼女との縁を切ろうした園子だったが、光子が園子からもらった避妊薬を飲んでも妊娠してしまったと言い、よりを戻そうとすると、園子は光子の見え透いた芝居と気づいても彼女を許してしまう。二人は、孝太郎には妊娠した光子を見舞うと嘘をついて、井筒屋で逢瀬を重ねるようになる。
 だが、光子につきまとう綿貫は、二人だけで仲良く光子を愛そうと園子にかけあう。綿貫と園子は互いの血をすすり合い、血判を押して姉弟の契りを結ぶ。すると光子は園子に、着物の騒動は狂言で、園子が光子に愛想をつかすためのものだったことを白状し、あんな男とは絶対に結婚しない、頼りになるのは園子だけだと訴え、園子の光子への愛情は以前にも増して湧き起こる。

(明日に続きます……)

増村保造監督『黒の報告書』

2021-07-27 04:24:00 | ノンジャンル
 増村保造監督・構成の1963年作品『黒の報告書』をDVDで観ました。

 サイト「映画ウォッチ」のあらすじに加筆修正させていただくと、

「ある夜、富士山食品社長柿本高信が自宅応接間で殺害されているのを息子で舞台演出家の富美夫が発見する。若い地検検事城戸(宇津井健)の立ち合いの元、警察が現場を調べていく。凶器は青銅の壺で、顔見知りによる犯行。やがて、富美夫が嫌う、社長の後妻みゆきが帰宅する。
 城戸は次席検事から、城戸の東京への栄転をほのめかされる。地検では無罪判決が二つ続いていた。この事件では必ず有罪判決を取らなければならない。先輩の草間検事(高松英郎)は城戸が殺人事件担当ときいてうらやましがる。汚職等と違って殺人事件には優秀な弁護士がつかないはずだからだ。
 事件当日社長宅を訪れた社長秘書片岡綾子(叶順子)が調べられた。綾子は社長の愛人。妻の浮気に苦しむ社長をなぐさめていたと主張する。彼女は、社長秘書の前任者でみゆきとの仲を知られてクビになった人見十郎(神山繁)とみゆきが共謀して社長を殺害したと確信していて、城戸に全面的に協力してくれるようだった。さらに、綾子の後に社長宅を訪れた富士山食品の中野経理部長は城戸に、柿本社長が2300万円の浮貸しをしていて、背任になるから早く金を会社に返せと社長に言ったことを教える。そして部長は帰りに人見の姿を見ていたと語る。
 津田刑事(殿山泰司)が今は深町商事に勤める人見十郎に株屋と偽って近づき指紋を取り、さらに床屋に落ちていた人見の髪の毛を拾う。指紋は青銅の壷についていたそれと一致し、髪の毛も殺人現場に落ちていたものと同一人物のものだった。人見は事件の夜バーでホステスにプロポーズしたと主張したが、アリバイ作りをホステスに頼んだことを津田刑事は見抜く。
 一方、柿本社長の弟が柿本社長とひとみとの離婚届をあずかっていた。ひとみが離婚を拒否したので届は出されていなかった。
 拘留された人見は黙秘権を行使する。山室という老練弁護士(小沢栄太郎)が東京から来て人見の弁護を担当することになり、15分の面会時間のうちに人見に指示を出す。山室は、柿本社長から2300万円の浮き貸しの金を借りていた深町商事が不祥事隠しのために雇った辯護士だった。
 辯護士の山室は金の力で検察側証人の買収を図る。ひとみと共に現社長秘書の綾子を訪れ、社長が綾子のために用意していたと言って1000万円の通帳を見せる。会社をやめさせられた彼女にはのどから手の出るほど欲しい金だった。そして山室は、柿本社長の弟には借金の500万円の肩代りをする。この事件を担当している検事・城戸は柿本邸を調べ直し、額縁の裏から人見の名での2300万円の受け取りを発見する。城戸は、人見の拘留期限ぎりぎりに人見を情痴と金(人見が2300万円の返却を渋った)の両方の理由による殺人により起訴するに至る。求刑は死刑。
 公判が始まる。証人たちは城戸の調書と違う証言をする。頼りにしていた綾子までが、城戸には話したことのない1000万円のお手当の話をする。柿本社長が会社から持ち出した金が綾子や社長の弟に渡ったというのが弁護士・山室の作ったストーリーだった。そして凶器の青銅器の指紋、事件現場の髪の毛は、犯行前日に人見が残したことにされる。城戸は控室の綾子に真実を証言してほしいと頼むが、私と結婚してくれるなら真実を話すと言われてしまう。
 判事が城戸の調書の方を信じてくれるという城戸の望みはうち砕かれ、無罪判決が出る。
 控訴のために城戸と津田刑事は新証拠をさがす。綾子は偽証の報酬を100万円に値切られたが、今から本当のことを言っても偽証罪を問われると山室に脅される。富美夫が劇団の練習場をひとみからもらった約800万の金で手に入れたという情報を城戸は得るが、金は父親からもらったと富美夫は言い張る。彼も金で口封じをされていたのだった。
 そして、控訴期限の日の夜、城戸と津田刑事はとうとう事件現場近くの商店主から事件の夜に人見が血のついた服を洗っていたのを見たという証言を得る。商店主は人見に借金をしていたので今まで黙っていたのだった。しかし、既に東京高検から指示があったということで次席検事は控訴を認めなかった。そして城戸の上司は城戸の転勤先が青森に決まったことを言い渡す。
 城戸の転勤の日、綾子が自分を偽証罪で起訴してくれと申し出る。事件は終わったと言って綾子をつっぱねる城戸だったが、草間検事は、自分が綾子の偽証罪を担当して山室や人見を追いつめると約束する。「早く帰ってきてほしい」と言う草間検事に見送られて城戸は青森へ旅立つ。

 宇津井健の迫力が今一つでしたが、叶順子の美しさや殿山泰司の独特の魅力が印象的な作品でした。