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カレル・ゼマン監督『鳥の島の財宝』

2010-06-30 15:58:00 | ノンジャンル
 カレル・ゼマン監督の'52年作品『鳥の島の財宝』をDVDで見ました。
 風にたなびく枝。秋になり、ツバメの仲間が飛び去っていきます。留まりたいのですが、親切な人々は巣を壊すことがないので、安心して仲間に合流すると言うツバメ。何日も休まず飛び、やっと島へ着きます。鳥の言葉を解する漁師のアリチェクは、渡り鳥たちがいなかった間に起こったことを語ります。鳥たちがいなくなり寂しくなった中、ひたすら働く人々。唯一残った鳥であるペリカンは、しょっちゅうアリチェクの獲物をかすめ取ります。ある日遠出をしたアリチェクは王様の船に出会い、働かなくていい生活に憧れるようになり、財宝を得るため真珠取りに精を出しますが、結局サメに食べられそうになり、断念して漁師に戻ります。嵐に会った後、瀕死の海賊イブラヒムを助けると、自分が死んだと思い込んでいるイブラヒムは宝のありかをアリチェクに教え、そのおかげでアリチェクの村は皆が大金持ちになります。やがて財宝を争ってケンカが起こり、アリチェクは何とかしようと海に漕ぎ出しますが、不審に思った村びとたちは財宝を持って彼に付いていきます。そして嵐にあった彼らは財宝をすべて海底に沈めてしまい、元の生活に戻ってしまいます。しかしアリチェクは平和な生活を取り戻し、鳥たちが乱舞する中、美しい海にまた船を浮かべるのでした。
 人形アニメの作品ですが、その幻想的な造形に魅せられました。音楽も最良のソ連映画といった趣きで、聞きごたえがあったと思います。チェコの人形アニメに関心がある方以外にもオススメです。

百田尚樹『リング』

2010-06-29 14:22:00 | ノンジャンル
 百田尚樹さんの'10年作品『リング』を読みました。ボクサー、ファイティング原田に関するノンフィクションです。
 ファイティング原田というボクサーが傑出したボクサーであり、世界のボクシング史上でも希有のボクサーであったことが語られています。私は幼少時に生テレビで試合を見ていますが、凄いという印象はあったものの、ここまで優れたボクサーであることは知りませんでした。また、初めて知ったこととして、ファイティング原田が現役時にはプロボクシングには8階級しかなく、しかもそれぞれひとりずつしか王者が存在せず、現在の17階級、主要4団体の60人を超える世界チャンピオンとは重みが全く違っていたこと、戦後日本人最初の世界チャンピオンになった白井義男は戦時中に受けた傷で鳴かず飛ばずのボクサーだった時に、当時GHQの将校だったカーン博士に見い出され、白井を見た時の第一声は「あれはチャンピオンか?」だったということ、そして白井は4度タイトル防衛したが、それは当時のフライ級のタイ記録だったこと、カーン博士は生涯結婚せず、白井家でともに暮らしたこと、そしてシカゴの御曹子だったカーン博士は遺産のすべてを白井に譲ったこと、原田のタイトル挑戦は、直前に矢尾板が引退したため、急遽マッチメイクされたこと、現在に至るもフライ級とバンタム級の二階級を制覇したのはファイティング原田しかいないことなどなど、多くのことが書かれていました。また、バンタム級王者を奪取した時のレフリーと務めたバーニー・ロスの感動的な逸話も語られています。
 解説者としてしか原田さんのことを知らない方には必読の本です。オススメです。

澤井信一郎監督『日本一短い「母」への手紙』

2010-06-28 18:49:00 | ノンジャンル
 澤井信一郎監督・共同脚本の'95年作品『日本一短い「母」への手紙』をスカパーの東映チャンネルで見ました。
 「福井」の字幕。目の不自由な義母(加藤治子)を見舞うタエ(十朱幸代)は夫の手紙を持参します。街角のラジオからは福井の新聞社が主催する「日本一短い『母』への手紙」の入選作が発表されています。「松本」の字幕。東京の下宿先から帰郷している宏は姉の真紀(裕木奈江)に入選の知らせが入ったのを知らせます。彼らの母であるタエは彼らが幼い時に愛人と家を去り、男手一つで彼らを育てた父は最近亡くなっていました。東京に戻った宏はスナックで金を持ち逃げしたとして追われている由美子を匿うことになります。宏は銀座でママとして働くタエを訪ねて行き、タエを松本に呼びますが、タエは真紀に話しかけることができません。真紀は東京へタエに会いに行き、18年間自分たちを放っておいたことをなじり、二度と宏と会わないでくれと言います。馴染みの小説家の前で酔うタエは希望を失い死を望みます。倒れたタエを病院に担ぎこむ宏。タエは強引に退院しますが、その時たまたま子猫を救おうとした宏はトラックにはねられ重体になります。真紀と真紀が思いを寄せる坂田が駆けつけたところで意識を取り戻した宏は、タエを呼び、泣いて駆け寄るタエと抱き合う宏の姿を見た真紀は、坂田に促されて去って行くタエを呼び止め、許しを請います。和解する二人。冒頭のシーンに戻り、義母は息子が3年前に死んでいて、タエが代わりに手紙を書いてくれていたことを感謝します。宏は全快し、タエを呼んで由美子と真紀、坂田と会うことにしますが、タエは今回の思い出を胸にシンガポールで仕事をする決心をし、宏に一目会った後、真紀と電話で話すのでした。
 デビュー作『野菊の墓』での見事な夕日が印象的だった澤井監督は、ここでもタイトルバックと、ラストでタエがシンガポールに向かう飛行機の場面で素晴らしい夕日のシーンを見せてくれています。意識を取り戻した宏が母を呼ぶシーンも感動的なのですが、悪名高い裕木奈江の声の出し方と演技はここでも健在で、彼女の登場シーンはとても居心地の悪い思いをしました。最近もあまり活躍されていないようですが、実際のところどうなのでしょう? いずれにしてもマキノ監督の直弟子である澤井監督の映画としてオススメです。

高橋源一郎『これで日本は大丈夫 正義の見方?』

2010-06-27 18:32:00 | ノンジャンル
 内田樹さんの『ためらいの倫理学』の中で言及されていた、高橋源一郎さんの'95年作品『これで日本は大丈夫 正義の見方?』を読みました。'94年1月20日号から'95年11月16日号までの『週刊アサヒ芸能』に連載されたエッセイが収められている本です。
 自社政権が誕生し、また阪神大震災、地下鉄サリン事件などが起こった時期に書かれたもので、時事ネタに対して「正義の味方」的視点から論ずるという趣旨のエッセイなので、そうした事件に対する「しごくまっとうな」意見が述べられているのですが、そこは源一郎さんだけに、軽妙洒脱、楽しく読ませてくれます。特に、「'94年に元気のあった男性が約2名ほどおられた。」と書かれていて、その2名というのが「『巨人人気』をはじめて打ち破った」イチロー選手と「政界を牛耳っていた『自民党政権』を打ち破った」小沢一郎選手(?)であるという記述、悪魔という名前を親がつけようとした問題で、ワイドショーのスタッフはなぜデーモン小暮のところにインタビューに行かないのかという指摘、チャーミングな名前がうけるという文脈で、吉本ばななに倣って自ら「高橋みかん」という名前はどうかという提案、赤ちゃん雑誌における「パパ・ママ&赤ちゃん 春のファッション特集 春のおんもカジュアル」や「明るい肌色を作りながら、シミ・ソバカスをカバーする春の『おんも』メイク」という見出しへの注目、などにはそのセンスの良さが伺えますし、'95年の段階で、国民年金は信用できるのだろうか、と疑問と呈していたり、国家の倒産にまで言及しているのは、先見の明があると言うしかないでしょう。
 15年という歳月が経っていても、少しも古びていない文章です。気軽に読める「常識本」をお探しの方にオススメです。

愛と不思議と恐怖の物語 7人の監督がおくる7つのショートストーリー

2010-06-26 17:20:00 | ノンジャンル
 『愛と不思議と恐怖の物語 7人の監督がおくる7つのショートストーリー』をDVDで見ました。
 鶴田法男監督・脚本『瀕死体験』は、肉体を抜け出てしまった霊魂の一人称カメラ、下村勇二監督・脚本・編集『KACHOSAN』は、さえない新任課長がぼったくりバーで超人的な大立ち回りをする話、片岡美子監督・脚本『「暮らし」と「住まい」』は、洗濯物のパンティを見つけた男の話、鴻上尚史監督・共同脚本『宇宙に一番近い場所』は、自殺した恋人が書いた落書きをたどり、自分も死のうとして思いとどまる女の話、中田秀夫監督『進路指導室』は、急に就職しようと言い出した高3の娘と父の進路指導室での口論と和解、ケネディ・テイラー監督・脚本『浴槽の死美人』は、死体発見現場をビデオ撮影するクルーの話、黒沢清監督・脚本・撮影・編集『タイムスリップ』は、タイムスリップについての講義をする男(大杉漣)が自分の話の通りにタイムスリップしていくうちに精神がぶっ壊れていく話です。
 面白いのは圧倒的に黒沢監督作品で、最後に大杉漣がヒトラーのように手を挙げて「タイムスリップ」と連呼し始め、学生にもそれを強制するラストには爆笑しました。南津軽を舞台にしたしみじみとした中田作品も捨てがたかったと思いますが、それ以外は正直楽しめませんでした。黒沢作品のためだけでも見る価値はあると思います。腹を抱えて笑いたい方にはオススメです。