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三羽省吾『イレギュラー』

2006-11-30 16:15:18 | ノンジャンル
 三羽省吾さんの「イレギュラー」を読みました。
 暴風雨による山崩れのため、壊滅状態に陥った村の人々が、町の仮説住宅で住むようになります。その町の高校の野球部は、選抜でベスト4まで進んだ強豪校で、率いる監督は若く、一時低迷していた高校に赴任後、次々に悪癖を追放し、新しい方法を取り入れて、かつての高校野球名門校を復活させたのです。一方、仮説住宅に住む村にも高校があり野球部もありましたが、練習するグランドがなく困っています。そこで村の高校の野球監督に声を掛けてきたのが、かつては村の監督の教え子だった町の監督で、町の高校のグラウンドを一緒に使って、合同練習をすることになります。村の高校のエースは球は滅法早く、町の高校の野球部員に勝負を挑みますが、完璧に打ち込まれます。そして、単なる早い球でなく、球威のある早い球を投げる練習が始まって行きます‥‥。
 高校野球の話が中心で、球を投げる動作の描写などは、一読の価値があります。個性ある村の人々、村の高校のエースの屈折したキャラクターなども楽しめ、次はどうなるのだろうか、とどきどきはらはらしながら、読めました。
 そしてラストも感動的で、「野球っていいなあ」「スポーツっていいなあ」と思えるようなラストでした。
 三羽省吾さんは「厭世フレーバー」も素晴らしいと思いましたが、この「イレギュラー」もそれに劣らない素晴らしい作品だと思いました。まだ読んだことのない方、ぜひ読んでみてください。損はしません!

Sweet Blue Age

2006-11-29 16:40:57 | ノンジャンル
 「厭世フレーバー」を読んでファンになった三羽省吾氏の短編が掲載されているということで、「Sweet Blue Age」という短編集を読みました。
 三羽氏の短編「ニート・ニート・ニート」は、中学時代の友人だった大人3人が女性問題がこじれて、車で逃げ回るというものでしたが、それほど面白くありませんでした。
 それよりは、以前に「海の底」を読んでいた有川浩氏の「クジラの彼」と坂本司氏の「ホテルジューシー」の方が面白かったです。「クジラの彼」は、潜水艦の乗組員を恋人に持つ女性の話で、「海の底」のエピソードも出てきます。「ホテルジューシー」は、夏休みに石垣島で理想的なバイトをしていた女子大生が、那覇の不思議なホテルへ出張させられ、様々な体験をすると言う話です。ユーモアがあって、最後の台詞も決まっていました。
 逆につまんなかったのは、桜庭一樹氏の「辻斬りのように」と森見登美彦氏の「夜は短し歩けよ乙女」でした。「辻斬りのように」は、辻斬りのように男遊びがしたいと思った女性が一ヶ月の間に6人の男と寝て、誰の子が分からない子供を妊娠するという話で、全然感情移入できませんでした。「夜は短し歩けよ乙女」は、京都で行われた結婚式に出席した男女がそれぞれ夜の京都を交錯しながら、最後に主人公の女性が京都で伝説の酒飲みと酒飲み勝負に勝つ、という話なのですが、今ひとつ乗れませんでした。
 その他にも、大学生時代の8ミリフィルムを見て昔を懐かしむという、角田光代氏の「あの八月の、」や、都会からド田舎に引っ越してきた女子中学生が体験する様々な軋轢を描く、日向蓬氏の「涙の匂い」も収録されています。
 今年の2月に発行された単行本ですので、まだできたてほかほかです。今の小説がどうなってるか知るにはいいかもしれません。

三島由紀夫『午後の曳航』

2006-11-28 16:20:21 | ノンジャンル
 山田詠美さんの推薦する三島由紀夫氏の「午後の曳航」を読みました。
 自分たちが天才であると自負する6人の少年たちが、そのうちの1人の未亡人の母と結婚しようとする船乗りの男を、世の中で最も軽蔑すべき父になろうとするという理由で、殺してしまう、という話です。
 話自体がめちゃくちゃで、少年たちの論理についていけない上に、難解な文章が多く散らばっています。
 曰く「二十歳の彼は熱烈に思ったものだ。「光栄を!光栄を!光栄を!僕はそいつにだけふさわしく生まれついている」(中略)「考えれば考えるほど、彼が光栄を獲るためには、世界のひっくりかえることが、必要だった。世界の顛倒か、光栄か、二つに一つなのだ。彼は嵐をのぞんだ。しかるに船の生活は、整然たる自然の法則と、ゆれうごく世界の復原力とを教えてくれたにすぎなかった。」
 曰く「何故って、男なら、いつか暁闇をついて孤独な澄んだ喇叭が鳴りひびき、光りを孕んだ分厚い雲が低く垂れ、栄光の遠い鋭い声が私の名を呼び求めているときには、寝床を蹴って、一人で出て行かなければならないのです。」
 曰く「本当の危険とは、生きているというそのことの他にはありゃしない。生きているということは存在の単なる混乱なんだけど、存在を一瞬毎にもともとの無秩序にまで解体し、その不安を餌にして、一瞬毎に存在を造り変えようという本当にイカれた仕事なんだからな。」
 理解できますか? 特に三つ目の文章は中一の少年が述べる台詞です。こんなこと言う中一、いないでしょう。小説というのはフィクションだっていうことはもちろん分かっていますが、それでもねえ。
 ということで、私は三島由紀夫氏とは相性が悪い、ということが分かりました。三島ファンの方々、数々の御無礼、何とぞご容赦ください。

バイオミミクリー

2006-11-27 16:20:05 | ノンジャンル
 月刊誌「ソトコト」で紹介されていた、Janine M.Benyus著「自然と生体に学ぶバイオミミクリー」という本を手に入れました。
 バイオミミクリーとは、自然界で動植物が行っている様々な化学変化に学んで、人間も環境に優しい技術を学んで行こう、という考え方で、この本がバイオミミクリーの現在を学ぶには最適な本だそうです。
 目次を見ても、この本の主旨が分かると思います。ということで、紹介すると、第一章「自然界のこだまを返す~なぜいまバイオミミクリーなのか」第二章「いかに食べて行くか~大地に合った農業・大草原のように作物を育てる」第三章「いかにエネルギーを活用するか~太陽光を生命に変える・木の葉のようにエネルギーを集める」第四章「いかにものづくりをするか~形を機能に合わせる・クモのように繊維を編む」第五章「いかに自分で病を治すか~自然界の専門家・チンパンジーのような治療法の発見」第六章「学んだことを、いかに蓄積するか~分子とつきあう・細胞のように計算する」第七章「いかにビジネスをやりとげるか~クローズドループの商業・レッドウッドの森のように経営する」第八章「われわれはどこに向かうのか~自然界の不思議を絶やさずに・バイオミミクリー的な未来に向かって」、以上です。
 当然読むためにこの本を買ったのですが、びっしり書かれた小さい活字を見て、一気に読む気をなくしてしまいました。どこのページを繰っても、同じです。ということで、主旨だけ理解すればいいや、という結論に達し、私よりも読むのに相応しい人にお譲りすることにしました。定価だと税別で3200円もする本ですが、ヤフーオークションでは安く手に入るかもしれませんよ。(笑)ということで、興味のある方、ぜひ買ってやってください。

伊坂幸太郎『陽気なギャングの日常と襲撃』

2006-11-26 15:52:59 | ノンジャンル
 アリtoキリギリスさんの推薦で伊坂幸太郎氏の「陽気なギャングの日常と襲撃」を読みました。
 市役所の役人の成瀬がリーダーで、バーのマスターの響野、そこの常連客ですごいドライブテクニックを持つ雪子、フリーターの久遠を含めた4人は普段は普通の市民を装いながらも、実は銀行強盗を行う犯罪集団なのです。ひょんなことがきっかけで、マンションでの強盗の犯人を捕まえる事になり、また成瀬の部下の恋人で大企業のオーナーの娘の誘拐事件の解決にも乗り出し、結局、黒幕だった暴力団の組長をやっつける、という物語りです。
 話は面白いのですが、ギャグが空回りしているようで、読後感は今一つでした。ただ、題名からも分かるように、犯罪小説として割り切って読めば、もっと楽しめるかも知れません。
 犯罪小説がお好きで、軽い読み物がお好きな方にはオススメです。