gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

阪本順治監督『団地』その6

2018-02-28 10:27:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 テレビ「ご主人が行方不明なのに平然としておられると」。井戸端会議のメンバー「これ疑いそのままやん」「決めつけたも同然でひどいわ」「団地の評判が下がる」正三「ったく」君子「あんたが情けないからよ。あんたが調べて何もなかったら全て収まるんよ」。(中略)
 正三「自分が行きまーすって志願者いないのかよ」「しっかりね」「じゃあ行ってくるよ」ヒナ子「あんた行徳さんが」「そうか、来はるか」「報道はやっぱりえげつない。真城さんに連絡しとくで」「終わったからな」「終わった。終わった。僕のこと、しつこう聞かれるで」「任しといて」。訪ねてきた正三「これは漢方薬の臭いかね」「はい、生薬の。主人、2年やったんです。ナオヤがあないなって私がおかしくなり、そうなって、もう頼むから廃業してって言ったんです。悪いことしました。生きがいでしたから。主人にとっては。そやから生薬捨てきれずに全部ここに移したんです」「でも清治君は今?」「雲南省かと」「えっ、中国の?」「漢方の道を極めたいと」「偉い! 久しぶりに偉い!」。
 正三「ということで、清治君は雲南省」「アホな」「相手の言うこと鵜呑みにして」「鵜呑みじゃないよ。あんた。相手の表情に動揺がないかしっかり監視した上でだよ」「ヒナ子さん、いつ聞いても主人は裏の林ですって。雲南省のことなんか一言も。あれ、嘘やったん?」「雲南省の林のことじゃないの?」吉住「何でやねん? 臭いは?」「死臭はせえかったんですか?」「俺ベーヤンだしさ、その漢方の臭いがきつくて」「それともドライアイスで凍らせたから?」「冷蔵庫も臭い臭います」「主婦だけやな、それ分かんの」「主婦の話じゃないだろ? 雲南省の話をしてんだよ」「雲南省?」「凍らせたんは細菌や。臭いがきつなって。あわてて凍らして。凍らした方が切りやすいしな。絶対まだ臭うはずや。せや。換気扇にまだ臭い、残っとんとちゃうか?」「あんた、もういっぺん行ってきて。臭いもしっかり嗅いでね」。
 正三「済まんねえ。何度も。いやあ夕日がきれいだろうねえ」。換気扇の当たりをクンクンする正三。「夕日はあっちですけど。そんなに皆さんは私を人殺しにしたいんですか?」「雲南省にいる証拠ないかな?」「待ってください。国際電話します。あっ、もしもしあんた、いまそちら何時?あっ、そう。明け方にご免やでぇ。ほな、寝て。ほれ」「ほれって、一人芝居に見えたけど」「疑い深い」「突き上げ食らったんだ。このままだとまた突き上げ食らっちゃうんだよ」「あっ、もしもし、何べんもごめんやでぇ。何か大きな声で言うてぇ」。ヒナ子、携帯を正三の方にかざす。「コケコッコー、ビビンバ食べたい」。「ほら、今度こそ」。「こっちから声がしたような。それに今の、韓国料理だし。電話通じるの早すぎない? 怖い顔してる」「もうどうでもよろしいわ。人殺しでも何でも」。
 正三「って、捨て台詞みたいに」「ホンマにヒナ子さんがそう言うたの?」「開き直ったんよ。これ以上逃げきれないと思って」「まあそう決めつけるのはまだ早いだろ」吉住「何悠長なことを。決まりや。皆気をつけた方がええで」正三「俺はヒナ子さんが人間を殺すような人には見えない!」「見える」「見える」「見える」「見える」「君子、何か言ってやれよ」「見える」「ゲフッ」「あたしがアホやった」「アホやったって」「あとは遺体をどこに隠してあるかよ」「お前までよせ!」「聞いたことあんのよ。うちも時々しょうもないこと言ってケンカしますって」「うちもってどういうことだよ。そんでお前、テレビ見ながら可哀相とか言ってたろ」「だから裏切られたんよ。あのバカ笑いは変よ」「そやねん。まったくそやねん。殺人犯はカメラ向けられるとごまかし笑いするんや。旦那がそう言ってた」「間違いない。あんた部屋行ってあちこち見たの?」「トイレ行きたくなったから。ちゃんとついでにトイレも見たよ!」「あのね、トイレに遺体隠したら、トイレ行かれへんでしょ。トイレ行かれへんだったら、生活できないでしょ」「妄想はよせ。ありえない。そんなことありえない」君子「ありえないことがありえるのが団地でしょ!」。ヒナ子、現れ「今晩人を泊めます。ちょっとうるさいかもしれませんけど、一晩だけなんで。警察呼ぶなら呼んでください。ついでにマスコミも」。ヒナ子、去る。「これでホンマに決まりや」。正三「もしもし、警察ですか?」。
 真城と宅急便と赤ん坊を抱いた女性、山下宅へ。「あのバッグは何や? ペシャンコやないか?」「バラバラにしたって噂や。どっかに運び出すんや」「これ何の組織や? 宗教か?」。
 警官「来ました」。(明日へ続きます……)

阪本順治監督『団地』その5

2018-02-27 06:34:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 ヒナ子、ロウソクに火。真城「一度だけやったことがあります。お参り」「衝突したトラックの運転手から何か言ってくるどころか、謝罪の手紙もない。ただ運転会社の部長やらが来て、報道陣も連れて来て。みんなで謝罪の儀式。それだけ。私らも取材受けました。荷重労働させた会社に何か言いたいことありますかって。泣き寝入りするんですかって。何が何やら分からん。静かに抜く暇もない。と思ったら、いつの間にかニュースでも取り上げられなくなって、やっと抜けると思ったら、これが中で疲れ切って、ただ悔しくて」「それで廃業なさったんですね」「近所にお悔み言われるのも、つろうてな」。3人の写真。「店舗を処分してここへ。で、今日は?」「大事なお願いがあって来ました。同郷人5000人分の漢方薬をお願いしたいと」「5000人?」「はい。みんな免疫力が落ち、私の妹ももう骸骨みたいで」「それなら漢方薬じゃなくて、ちゃんと検査を」「化学薬品は我々の体が受け付けない」「私たち? 受け付けない?」「はい、自然に即した医薬でないと」「それならもっと大きい漢方薬局が」「日本中の薬局を歩き回り、あらゆる漢方薬を試しました。その上で山下さんの薬がもっとも私たちの体に適していると。本場の中国にも行きました。でも私たちには強すぎた。それに高い。やはり山下さんの漢方薬が」「ありがたいけど5000人分は」「同郷の住人を救えるのはあなたしかいません」「そう言われてもなあ。断る時も断れへん。一月はかかるよ」「はい、2週間だけお待ちしましょう」「強引な人やなあ。第一材料の生薬が足らん。蜂蜜も」「明日には届きます。抜け目ありません」「ほう、そう」「準備万端です。バルタン星人です。あっ、今のはこの土地独特の言い方をマネしてみました」ヒナ子「頭痛薬飲みたい」「はい、どうぞ。それに私たちは一人分わずかな分量で効きます。虚弱ですから」「ほな一回分20丸のとこ2丸でもええの?」「はい。ご連絡いただけたら同郷の者が取りに行きます」「あの同郷っていつも送らせてもらう琵琶湖のそばですの?」「いえ、あの住所は架空です。そやけど宅配便に兄ちゃんが」「3番目の弟です」「弟? いつも下痢をしていたでしょう?」「それが証拠です」「それが証拠と言われてもなあ」「3分以上立っていると体に異変が現われ、放っておくと泥酔状態」「脱水状態」「それです。これまで偽ってすみません」「ほな、どこがほんまの郷土なん? いやいや、あなたはどなた?」「どこの誰とは言いづらいです」「どこの誰とは言いづらいの?」「ここに5千万あります。どうかこれで」「僕はお金じゃないんです」「でしたら提案があります。盆返しをさせてください」「恩返し?」「私も初めての子を亡くしました。だから…」。3人の写真。
 調剤をする山下夫妻。ヒナ子「ここに置いときます」「うん」。
 寝る2人。
 調剤をする山下夫妻。
 眠る2人。「蜂蜜の分量を増やそうか?」「はい」。
 錠剤にしていく2人。
 「温度と湿度は?」「27度、67%です」「クーラーを除湿にしようか?」「はい」。
 作業する2人。
 清治の背中。
 作業する2人。
 間食する2人。
 息が荒い清治。布団なしで眠る2人。清治はいびきをかき、ヒナ子は夢で粉を手でこねている。(中略)
 路上で吉住「いいおっさんが何泣いてるん。泣くな、アホ!」「落ちました」「これでええねん。はよ出せや」男性の財布から金を抜き取る吉住。女「悲しい男や」吉住、ヒナ子に「何を見とるんじゃ」。体操を始める井戸端会議のメンバー。「えらいことです」「まあまあ」「これは推測ですけど、小さなタッパーに入るように細切れに」「まあまあ」「私の想像ですけど、ドライアイスで凍らせて」「まあまあ、妄想かもしれん」「けど、みなさんの耳に入れておかなかって。これは殺人です」「まあまあ」(中略)
 箱に入れてあるドライアイス。
 ベランダにキタローを出した吉住「はよ、せんかい! うるさい、おら」。頭をこずく。ヒナ子「やめて! そんなことやめて!」「こいつが逆らうんや。ほっとけ」。ベランダで正座するキタロー。『ガッチャマン』の歌を歌うキタロー。歌い終わると金属バットを手にする。ヒナ子「きれいな歌やったで。ほんまに。きれいな歌やったで」。キタロー、バット落とす。
 ヒナ子「君子さんが相談して児童相談所が行ったら、ただの親子ゲンカやって帰されて」清治「あの子は強い。(中略)明日があることをちゃんと分かってる」。
 ヒナ子、ゴミ出し。「山下ヒナ子さんですか?」とマイクを持った男が現れる。「これは?」「ご主人が行方不明のようですが。もっぱらの噂で」「どんな?」「様子がおかしいと」「誰が?」「ご主人が行方不明なのに平然としておられると」。女性スタッフ「顔にはボカシを入れますから」。ヒナ子、笑いだす。(また明日へ続きます……)

阪本順治監督『団地』その4

2018-02-26 07:22:00 | ノンジャンル
 『ヒッチコック劇場』のうちの1編『兇器』の原作であるロアルド・ダールの『おとなしい兇器』を田村隆一さんの訳で読みました。刑事の妻が冷凍の鶏肉の塊を使って夫を撲殺し、殺人現場の自宅に集まった刑事たちに、その鶏肉をふるまうというブラックな話で、大きい活字で25ページほどの気のきいた短編でした。

 さて、また昨日の続きです。
 台所の床下の収納から生薬を出し、替わりに自分が入る清治。「何するつもり?」「死んだことにしてくれ」「死んだことって死にたいんですか?」「言うても分からんからええ」「平凡な私が分からんということは、世間の誰も分からんということでっせ」「どうせ僕は人望がないんや」「うわー、おいしそうなトンカツ。スーパーで残り物のトンカツもろうてきたんや。(中略)」「トンカツで僕がなびくと思うんか? アホか!」「生まれて初めてアホ言いましたね。許しませんで」「そりゃ悪かったな。謝るけど、この通りや」「この通りって見えへん」「やろ? 僕は団地から消えるんや」「分かりました。どうぞ」「誰か来てもおらん言うといてくれ」「一言いいか?」「何や?」「だ~れもおらんのに隠れてもしゃあない思いまっせ」「そやな」。清治、収納から出てくる。「トイレ行きたかったんや。あれっ、トンカツは?」。ブザー。清治、急いで収納へ。訪ねてきた君子にヒナ子「あっ、どうしたんですか?」「ちょっとええ?」「今日は早番だったので。散らかってますけど」「(仏壇見て)息子さんの?」「あっ、はい」「先に拝ませてもらっていい?」。お参りする君子。
 泣く君子。「そうなんよ。除草剤撒いたらね。旦那の声が聞こえた。それでシートの上見たら、あの佐伯とかいう女とケンカしてんの」「どんなことで?」「決まってるやん。俺はもうすぐ離婚するからって。そんなこと言うてあの女をなだめてんのよ。皆に見られててもう私限界」「ああ、もう限界」「何、今の?」「さあ」「何か聞こえたけど」「君子さん、大分疲れてはるんやね。さあ、一部始終全部洗いざらい最初から言うてください。そもそも佐伯さんのことの始まりって?」。清治、股間を押さえて「おーい、そこから聞くんかい」「(中略)みんな何噂されるか分からんでしょ」。
 玄関で「ほんま、ありがとう」「またいつでも来てください」「あっ、清治さんによろしく」。君子、帰ってゆく。収納から出て来た清治に「我慢せんで声出したらよかったのに」「我慢しすぎると~が小便臭い。~体の神秘や」「何があったかしらんけど何いじけてますの?」「心配するな。僕はお前と漢方薬あったら、それでええんや。僕かて行きたいよ。ナオヤのとこへ」。
 井戸端会議。君子「それでうち言うてやったんよ。うちの面倒見てくれる人やったらどうぞどうぞ、持って帰ってくださいって。ほんで旦那の前立腺の薬、玄関先に投げつけて帰ってきてやったの」「思い切ったことやりましたねんなあ」「それなのにねえ、にやにや笑ってるだけなんよ。あの佐伯キョウ子」「恐ろしい女ですね」「もうぞーっとしたわ」「さぶいぼ立ちます」「そやろ?」「ほんまに」「ほんまに」「そうやね、もう」。
 ヒナ子の職場。「山下さん、何べん言うたら分かってくれんの? バーコードついてる方を読み取り機につけな。コードの意味ないやろ。あれただの線ちゃうねん。それと客とペチャクチャしゃべんな。ここ喫茶店とちゃうねん。やめてもろてええんやで」。主任去る。「ピッ、ピッ、細かいのお持ちじゃないですか? あっ、ありがとうございます。あらー、今日スキヤキですか? 私と息子も大好きでした。ピッ、ピッ、細かいのお持ちじゃないですか? 細かいのお持ちじゃないですか、あっ、ありがとうございます。あらー、今日おでんですか? 私と息子も大好きでした」。微笑みながらヒナ子去る。
 ゴミの収集場で井戸端会議。「めちゃごめんな。主婦は助け合わにゃ」「山下さん、いなくなって3ヶ月」「そやけど遺体の隠し場所ないのでは? 臭いもするし」「切り刻んだんじゃないでしょうか。で~で梱包して」「あなた怖いわね」「既に捨てた」「捨てた?」「えっ、ここに?」君子「ゴミは私が調べてるから、ありえへん」「そんなこと、あの、中身まで見るの、やめてください」君子「妄想で変な噂出さんといてよ。ヒナ子さんがそんなことする訳ない」「ほな自治会長さんが動いてくれな」「もう警察呼ぶべきです」「やめてよ、そんな物騒な」。
 真城、ブザー押す。ヒナ子「あー、真城さん」「ご無沙汰です」「お薬、おととい宅配便で」「はい、受け取りました。ありがとうございます。今少しいいですか?」「あっ、どうぞ」床をドンドン。「あんた、真城さんや。出てきなはれ」真城「どうしてこんなところに?」ヒナ子「前世ゴキブリなんで」清治「いらっしゃい」。(また明日へ続きます……)

阪本順治監督『団地』その3

2018-02-25 06:07:00 | ノンジャンル
 WOWOWライブで「原田知世35周年アニバーサリー・ツアー“音楽と私”in 東京 2017」を見ました。彼女のオリジナル曲以外にもノラ・ジョーンズの「Don’t Know Why」やビートルズの「I’ve Just Seen A Face」なども歌ってくれ、大いに楽しませてくれました。

 さて、また昨日の続きです。
 山下宅。「僕、自治会長にならん」「もし投票で選ばれても断ったらええやん」「推薦されても困る」「私、思うで。裏の林に散歩行くのもいいけど、他にやることあった方が。なっても辞退するかどうか、その時考えたらええやん」「そうはいかへん。僕がなったら緑地化を進める」「考えてるやん。ちゃんと」「もしなったらやん。(中略)」「恨んでる? 私が廃業させたようなもんやから」「しょうがなかった」「未練あるでしょ? 台所の収納に生薬が一杯。道具もそのまま」「真城さんが時々頼んでくれるから、それで充分。今も僕の漢方薬を必要としてくれている人がいる。そのことだけで充分や」「頼られたら断れへんもんなあ、あんた」「断る時は断る。そやけど自治会長をするんは、お前がやってくれていいって言ってくれるんなら」「断る時も断らへん。あんたの性格なんよ。それでいいんちゃう?」「僕がなったら緑地化と、そして3ヶ月にいっぺん、集会所で集いをするんや。それも堅苦しい集いとちゃうで」「ほな、どんな集い?」「フォークダンスの集いや」。踊る人々。「それええなあ」「ええんか? あかんと思っとったけど」「私、歌っていいかな?」。ヒナ子、『時代』を歌う。歌ってる途中で息子の写真を見、歌い終わると泣く。「もう泣くな。終わったことや」「何が終わったんや。何が終わったんや」「しんどいのはお前だけちゃう」。(中略)
 “自治会の改革案 1、災害時の連絡網と誘導係 2、高齢者への声かけ運動 3、……”と紙に書いてある。ヒナ子「パート、行ってきます」「すまんな。職場うまくいってるんか?」「なんでもテキパキできる女じゃない。要領悪いんや、私」「その悪い方へ、悪い方へ考える癖、やめてくれ」「ええ方へ考えまっさ」「まっさって何やねん。心配してるんや」「そう聞こえんけど」「昨日のこと謝ったらええんか?」「もうよろし」「ああ、やめよう」「ナオヤが笑ろうとるわ。ほな3時には帰ってきます」「行ってらっしゃい」(中略)
 洗濯物を干すヒナ子。下で井戸端会議。「選挙の話?」「なら山下さんが」「人まとめる力あるかな?」「行徳さんが無難やろ」「偉そうにしてても滑稽やもんな」。笑い。
 投票箱。「立候補の吉住将太さん、他薦の行徳正三さん、同じく他薦の山下清治さん、前へ」。拍手。正三に目くばせするキョウ子。むせる正三。吉住「おっさん、辞退したら? もうええ年なんやから」「黙れ」。
 投票結果が黒板に。行徳「俺とお前を抜いたら3人だけ」「あんなに最中配ったのに」。
 解散する人々。正三、清治に上機嫌で「引き際が逃げてく」。
 山下宅。「飲みすぎちゃうん?」「ウコン飲んだ」「団地っておもろいなあ」「何がおもろいんや?」「宇賀さんのコインロッカーや」。
 でかける清治。キタローを追いかけてきた吉住に「君、殴ったんか?」。笑って戻っていく吉住。
 林の中。『ガッチャマン』の歌を歌うキタロー。「不思議なことがあるもんやな。ここに来るとな、僕は君くらいの年になった気がする」「一人にしといてほしい」「僕かて一人になりたい」「そやかて2人やん」「そやな」。一歩離れる清治。キタロー「意味分からん」「湿布あるから後でうちにおいで」「いらん」「目つぶって深呼吸したらいろんなこと忘れる」「ほんまにほっとけや」「ほな1人になるか」また一歩離れる清治。「ほんまに一人にしてくれや。おっさん何ふざけとんねん」「君から離れたらええやないか」。キタロー、去ろうとして「おっさん、気にせんでええよ。俺のことなんか。ここで人を待ってるだけやから」「へえ、どこの誰や?」「どこの誰でもない」「どこの誰か分からんのに、その人待ってんのか?」「そやねん」。空を見上げる2人。
 井戸端会議。「結構票開きましたね」「吉住に5票も入ると思えんかったな」「君子さん、旦那さんに票入れなかったって本当?」「私は清治さんがええと思ったから」「けど思ったより人望なかったのね、清治さん」「いい人やけど、ちょっと暗い」。(また明日へ続きます……)

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

阪本順治監督『団地』その2 

2018-02-24 06:33:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 林の中。野鳥のさえずり。キノコの写真を撮る清治。
 座り込み、図鑑を見る清治。そこへ『ガッチャマン』の主題歌を歌う男の子が現われ、清治を見つけると、逃げ去る。「団地の子やな」。
 スーパーのレジで働くヒナ子。客「あんた確か商店街の山下漢方の」「権藤さん!」「急に店閉めて殺生なと思うたけどしょうないな。もうすぐ3回忌やな。旦那は元気か?」「日柄一日裏の林で過ごしていて」「気分転換やろ」「あたしもこうしてる方が気が楽で」「そのうち何かいいことあるで。わしが保証する。あれっ、財布忘れた」。
 屋上で鳩にエサをやるヒナ子。主任「立て替えをここではするな。他人の手前示しが付かない。また鳩にエサをやるのも止めて。フンが積もって不衛生になるの分からんか?レジも山下さんのところだけ長蛇の列。どんくさいから、ほんま」。
 林の中を歩く清治。
 “4ヶ月後”の字幕。主婦たちの井戸端会議。「失踪なんとちゃう。いつも暗い顔して裏の林に入っていって、だから何かあったんよ」「山下さん、あったんやろうね」(中略)「失踪届とか普通するでしょ?」「しない」「5ヶ月経っても?」「山下さん、いないなった」「変に明るい」「離婚してせいせいやって感じでな」「悪かったな」「東さんのこと言うたんの違います」「うちの顔見てから言うたもん。離婚て行ったとき」「まあまあ」「まあまあっていつもあんたはいつもそうや。何もかも人に言わして自分はうちにいるだけや」「私かて旦那の父親の介護に疲れてるんです。それにこのことを荒立てて一番偉いんですよ。~さん、どう思う? ずっと黙ったままで」「私、引っ越してきたばかりなんで」「関係ないやん」「私の意見なんか」「何か言ってから行って」「ほな、山下さんて人、殺されてると思う。もしかしたら腐ってます」「あんた、怖いな」「ダンナが報道関係なんで勘が働くんです」。ヒナ子、通りがかり「こんにちは」「こんにちは」。井戸端会議の妻たちがヒナ子の手にサポーターをしているのに注目して、ヒナ子「腱鞘炎なんです」「旦那殺しでし損ねたんや」。
 正三「清治君が腐ってるなんて、ありえへんだろ」「2ヶ月前から誰も見かけんのですよ」「あまり大事にしないでくれ。ただでさえ空き室が多いのに」吉住「何でも言ってください言うけど、やってくれんやろ」正三「聞き捨てならんな。その言葉。俺は皆の犠牲となって無給で尽くしてるだろうが」「ほな、噂の真相確かめに行ってくださる?」「腐ってたら臭いもしてるやろ」君子「吉住さん、あんたねえ、いつでも苦情がばっかりで人任せで。解決したろうって気が全くない。それってどうなん?」「そんな話ちゃうやろ?」「ゴミの分別もせんと、誰が後始末してると思ってるの? 全部君子さんや」「そんな話ちゃうやろ?」正三「俺も時々やってる」「私も言いたい。洗濯物落ちたら、落ちたままで、たまたま拾った君子さんに部屋まで持って来てなんて、あんたの奥さんもどうかしてる」「そんな話ちゃうやろ?」正三「俺も拾って持って行ったことある」「そんな話ちゃうやろ? 人が殺されてるかもしれんのやで。」「はい、吉住さん。子供虐待してます」「え?」「虐待?」「あたし隣に住んでますけど、夜中に声が」「キタローに? 俺が?何ぬかしててんねん」「お父さん、ごめんなさいって何回も聞いた」正三「あほくさ。あーあ、自治会長、辞めたい。清治君がやればよかったのに」「おらんなったのは会長選の後やわね。選挙に落ちたショックで、それで失踪したんちゃう?」「それで奥さんも気持ちが腐ったんやわ」君子「清治さんねえ、いつでもきちんとしてはった。誰に言われた訳でもないのに。冬は階段に舞い上がった落ち葉を一つ一つ拾って。春は排水溝にたまった桜の花びらをきちんと取り除いて。気持ちいいぐらいにきちんとしてはった。そやから私はこんな亭主より清治さんを他薦したんよ」。
 “2ヶ月半前”の字幕。君子、ゴミの収集場で分別している。「何勝手にうちのゴミ袋開けてんの?」「あのね、このままじゃ持っていってくれへんでしょ」「言いに来たらええやん」「何べんお願いしてもあんた知らん顔やったやん」「きっ」と言って吉住の妻、ゴミ袋を持ち帰る。清治「おはようございます」君子「おはようございます」「電池はここですよね」「はい、そこです。清治さん、いつもきちんとして気持ちええわ。」「そんな気持ちええやなんて」「旦那ねえ、自治会長誰かに譲りたい言うてんで、私は清治さんを強力に推してんの」「僕越してきてまだ」「だからええのよ。住み慣れると肝心なことが見えんようになるから。考えといて、立候補」「滅相もないですよ」(中略)「断られへんよ。旦那に恥かかせて」「ってどういうこと?」「離婚するかも(中略)ノイローゼなんよ、私。考えといて。立候補」。(また明日へ続きます……)

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)