gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

アルフレッド・E・グリーン監督『ジョルスン物語』

2012-03-31 08:38:00 | ノンジャンル
 和田誠さんが盛んに言及されている、アルフレッド・E・グリーン監督の'46年作品『ジョルスン物語』をWOWOWシネマで見ました。
 「20世紀初め ワシントン」の字幕。芝居小屋で弦楽器を弾く芸人・スティーヴは、客席で美しい歌声を聞かせる青年エイサ・ヨルセンに目を止め、エイサを芸人にするため彼の両親に会いに行きますが、敬虔なユダヤ教徒の父親は反対します。エイサは家出をし、ボルティモアにスティーヴを訪ねていきますが、親の承諾なくしてはダメだとスティーヴは言い、駆けつけた両親はエイサの決心の堅さに折れて、スティーヴに彼を預けます。
 全米の各地を巡業するスティーヴとエイサ。声変わりの時を迎えると、エイサは見事な口笛でそれを乗り越え、芸名をアル・ジョルスンとします。ある日、酔った歌手のトムの代わりに、スティーヴに無断で黒塗りになって舞台に出たアル(ラリー・パークス)は、その歌声をオスカー・ハマースタインと興行主のドックステーダーに見い出され、スカウトされますが、アル一人だけを入れたいとドックステーダーが言うと、アルは断ります。スティーヴはアルの出世のために身を引く決心をし、アルを騙してドックステーダーの列車に一人だけ乗せます。
 ドックステーダーのショーの中で次々に出世するアルでしたが、新しい曲を歌いたいと言い続けるアルは、ニューオリンズで聞いたジャズがきっかけとなり、ドックステーダーの勧めもあって、彼のショーを辞め、自らの曲を追及することになります。
 1年後実家を訪れたアルのもとへ、今ではブロードウェイの劇場主となったトムから出演依頼の電話があり、アルは快諾しますが、その依頼電話は今では失業中のスティーヴの差し金でした。ショーで出番をカットされそうになったアルは強引に舞台に立ち、観衆やスタッフから激賞されます。アルは失業中のスティーヴをマネージャーに迎え、客席を明るくして観衆の顔を見るという積年の夢をかなえ、花道も作ります。ワシントンを訪れ、両親と幼馴染みのアンと教会の会長をボックス席に迎えるアル。アンが他の男と結婚すると知っても、くよくよしている暇はなく、歌を歌う仕事を謳歌するアル。
 やがてトーキー映画の第一作にという話が来ると、慎重に考えろというスティーヴに対し、5千万という観客の数を聞いて出演を即答するアル。映画プロデューサー・ジーグフェルドと一緒にアルのショーを見に来た女優ジュリーに一目惚れしたアルは、舞台上から彼女に歌いかけます。ハリウッドへ旅立つアルのお別れパーティでプロポーズするアルに対し、田舎に家を持ち家庭を大事にしたいと言うジュリー。
 撮影中のアルは、ブロードウェイで初舞台を迎えるジュリーのために飛行機で駆けつけ、緊張のあまり踊れなくなったジュリーを客席からの歌声で励まし、それをきっかけに二人は結婚します。アルの映画『ジャズ・シンガー』も大成功し、2作目にすぐ取りかかり、カリフォルニアに家を建て、ジュリーも映画に誘い、彼女の『42番街』も大成功。共演作も成功し、休暇をとって旅行に行くことになりますが、映画会社を作りたいと旅立ちを延ばそうとするアルに、ジュリーは泣きだしてしまい、アルは初めて仕事ばかりでジュリーをないがしろにしていたことに気付き、引退を決意します。
 それから2年。自分の家で両親の結婚記念パーティを開いたアルは、父に乗せられて封印していた歌を歌い、そこへ訪ねて来たトムに誘われて行った先のナイトクラブでも、オーナーや客に乗せられて歌い出したアル。その生き生きとした姿を見て、やはり彼は歌とともに生きるべきだと悟ったジュリーは、一人秘かに彼の元を去るのでした。
 
 テクニカラーの色が美しく、ラリー・パークスの生き生きと歌う様子にも魅せられました。彼の歌う顔のアップに、笑顔で彼の歌を聞く観客の顔が移動でオーバーラップしていくという、和田さんが言及しているシーンも印象的だったと思います。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

アヴィ・スタインバーグ『刑務所図書館の人びと ハーバードを出て司書になった男の日記』

2012-03-30 18:23:00 | ノンジャンル
 朝日新聞で紹介されていた、アヴィ・スタインバーグさんの'10年作品『刑務所図書館の人びと ハーバードを出て司書になった男の日記』を読みました。
 著者は敬虔なユダヤ教徒でしたが、ハーバード大学を出た後、将来への展望など特になく、新聞の死亡記事を書く仕事に就き、その後、健康保険に入れる仕事に就くために、刑務所の図書館司書の仕事を得ます。
 著者が言うには、受刑者の中で、いちばん司書に向いているのが風俗の男。逆にまったく向いていないのがサイコキラーと詐欺師。ギャング、銃器密輸人、銀行強盗は群衆整理がうまく、少人数の協力者と手を組んで、慎重に練った計画を抑え気味のテンションで実行するのが得意。ということは、司書の基本的技能に長けています。しかも、刑務所の図書室の魅力は本だけじゃなく、誰かを見かけたり、誰かに見かけられたり、本棚の間では、年配の受刑者が定期的に集まって討論したり、新しい笑いのネタを試したり、熱弁をふるったり、思い出話をしたり、情報を交換したり、知恵比べをしたりしています。古顔が回想録を書いていたり、野心家が大ヒット間違いなしのピンク映画の脚本を書いていたりもしています。刑務所の図書館は、しんと静まり返っていることはほとんどありません。大勢の人間が入り乱れ、著者も走り回っていることが多いのです。また「カイト」と呼ばれる受刑者間の手紙が大量に交換されるのも図書室の特徴です。
 朝一番でそろいの囚人服を着た25人ほどの受刑者が押し寄せてきます。まずは時間をかけてお互いに挨拶し、その後、どの受刑者も雑誌か新聞かその両方を読みたがり、また、たいていの受刑者は「ストリート系の本」を求めます。また、受刑者は一斉に雑多な要望をぶつけてきます。例えば、内緒で電話をかけさせてくれという要望は、どれも却下。小声で、エイズや血尿について教えてほしいとか、手紙を読んでほしいといってくる者もいますが、その手の要望にはすべて応じます。著者のパソコンで「一瞬」インターネットを見せてほしいという要望は、はねつけます。そして1時間が過ぎると、受刑者たちはようやく図書室を出て所属するユニットにもどり、また違うユニットの受刑者のグループがやって来ます。司書は二交代制で夜の9時まで働き、9時になると受刑者は全員テレビの前に集まり、刑務所からの脱出をめぐる人気ドラマを見ます。
 刑務所で働くストレスは大きく、著者は背中の激痛に悩まされることになります。情緒面の発育が止まったままの刑務官とのいざこざは小学生のけんかレベルでしたが、次第に手に負えないほどこじれ、無実の罪で懲戒処分まで受けることになります。深夜の公園では、元受刑者に強盗に会い、相手が「そういや、まだ二冊、本を借りていたっけ」と言ってゲラゲラ笑いながら夜の闇に消えていったこともありました。
 著者が受刑者の中でも特に強く記憶の残っているのは、幼い頃に捨てた息子が受刑者となって中庭でバスケットをしているのを見下ろすことに熱心だった、普段は無口で、出所後結局自殺してしまったジェシカ、将来はコックになり、テレビで自分の料理番組を持つのが夢で、受刑中から熱心にレシピを考案していながら、出所後すぐに射殺されてしまったチャドニーなどなどです。

 詳細な描写が多々なされ、よくここまで会話の内容などを覚えていたと感心するほどでした。受刑者や刑務官の姿も見事に描かれていたと思います。「刑務所図書館」という特異な空間に興味のある方にお勧めです。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

サム・ライミ監督『XYZマーダーズ』その2

2012-03-29 10:00:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 浴室でヴィクターにお礼を言うナンシーでしたが、そこへ押し入ったアーサーはナンシーを締め上げます。ファロンから逃げ出したヘレンは、非常階段で逃げ出し、そこを通りかかったレナルドは揺れる階段で頭を強打して倒れます。「世界一安全なドア展示場」に逃げ込み、次々に扉を閉めて逃げるヘレンを、次々に扉をぶち抜いて追うファロンでしたが、最後のドアが巨大な金属製で、それをファロンの方にヘレンが倒すと、ドイノ倒しとなった壁に襲われて、ファロンは逃げ出します。やっと逃げおおせたと思ったヘレンでしたが、ウルグアイ行きの箱の中に落ちてしまい、すぐに蓋をされてしまいます。
 ナンシーを担いだアーサーは玄関で女性の飼い犬に襲われ、逃げ出したナンシーはトレンドの死体を乗せたトレンドの車で逃げ出します。それを追うファロンらの車。愛する人を追うと言うと、車を貸してやるとゆきずりの人に言われたヴィクターも、それを追います。ナンシーの車に飛び乗ったアーサーとヴィクターは乱闘し、ヴィクターはアーサーの感電装置を破壊すると、アーサーは陸橋にぶつかり転落します。怒ったファロンは自分の車をナンシーの車に激しくぶつけると、ファロンの車は横転して爆発し、ナンシーの車も橋から落ちそうになります。ファロンはヴィクターと乱闘しますが、結局橋から落ち、その上にナンシーの車も落下します。すんでのところで車を脱出したナンシーは、橋にぶらさがっていたヴィクターをつたって助かますが、ヴィクターは崩れた橋の欄干ごと川に転落し、意識を失います。
 そして今、電気椅子に縛り付けられたヴィクター。到着した知事は、単に見学するために訪れたのでした。それでも処刑直前に尼僧となったナンシーが到着します。ナンシーは証言をしようとしますが、尼僧は沈黙の誓いがあることに気付き、これまでとなったところ、新聞記事が画面に現れ、ナンシーが沈黙の誓いを破り、ヴィクターを助け、彼と結婚することになったことが示されるのでした。そして最後、ウルグアイの草原の真ん中で、箱の中でヘレンが助けを呼んでいるところで映画は終わります。

 『死霊のはらわた』シリーズほどではありませんでしたが、ファロンとアーサーの殺し屋のはちゃめちゃぶりがライミらしさを見せていました。次作に期待です。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

サム・ライミ監督『XYZマーダーズ』その1

2012-03-28 12:46:00 | ノンジャンル
 サム・ライミ監督・共同脚本の'85年作品『XYZマーダーズ』をDVDで見ました。
 大量殺人犯として死刑を執行されそうになるヴィクター。6人の尼僧を乗せて猛スピードで走る車。無罪を主張し、証人のナンシーを探してくれというヴィクターは、死刑執行人に過去の出来事を語り出します。
 オーデガードとトレンドが共同経営する会社の警備員だったヴィクターでしたが、オーデガードはトレンドには内緒でレナルドに店を売り、レナルドはそれをヌード劇場にしようと考えます。それを知ったトレンドは妻のヘレンがそれを知って悲しむことがないように、巨漢ファロンと痩せたアーサーの二人の殺し屋にオーデガードの殺しを依頼します。
 犯行の日、邪魔なヴィクターに今日は仕事を終えて、将来の妻となる女の子を探しに行けと言うトレンド。ヴィクターはファロンらの車に衝突されたナンシーを助け、夜の“ランチ”に誘いますが、そこに現れたレナルドはナンシーにディナーの約束をさせます。
 その夜、オーデガードがアーサーの感電装置により殺されるのを向かいの部屋から見たヘレンが、トレンドに様子を見に行ってもらうと、トレンドも間違ってアーサーに感電死させられてしまいます。一方、ダンスバーでナンシーに無礼に振る舞うレナルドを見たヴィクターは、彼に注意すると、一発のパンチで吹っ飛ばされます。別の女性をナンパしに行ったレナルドに見せつけるため、ナンシを必死に口説くヴィクターにキスするナンシー。店の勘定が払えないレナルドとナンシーは、賞金付きのダンスコンクールに参加しますが、結局レナルドが店の皿洗いをして払うのでした。
 一方、アーサーがトレンドの車にトレンドの死体を乗せているのをヘレンに見られたのに気付いたファロンは、馬鹿力でヘレンの部屋で侵入し、カーペットを引っ張ってヘレンを捕えます。そこへ玄関でファロンに倒された髭剃り中の男ヤーマンが現れますが、ヤーマンは暗闇になった部屋の中、偽のファロンの姿に突進し、3階から転落して死にます。
 最低の夜だったというナンシーに車がハネた泥がつき、服の汚れを取るため彼女を自室に迎えるヴィクター。ヤーマンの死体をエレベーターに入れようとアーサーがしていると、パトカーが来ますが、エレベーターから出て来た男の子が、死体の髭を剃ったのは自分の父だと言っていまい、男の子の父を逮捕して警官は去ります。(明日へ続きます‥‥)

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

西加奈子『ほっと文庫 はちみつ色の』その2

2012-03-27 10:36:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 テンちゃんはもう5日も亀で、その間バナナとハチミツしか食べていません。他のものを出してもダメです。テンちゃんは元々一度これ、と思うものを好きになったら、ずっとそれしか食べなくなり、ある日急に食べなくなることがよくありました。テンちゃんの好物のカレーを作ってもダメで、私はテンちゃんは自分の好きなことをし続ける根性があると思います。
 テンちゃんが亀になって7日目。ママの携帯電話に野村君の着信音。少し高くて鼻にかかった声で話し、髪の毛をくるくるいじり、部屋をうろうろする癖は、野村君と話す時のママの癖です。しかし急に大声で「嘘だろ、野村ぁ!てめぇ!」とわめいて電話を切ると、ママは仕事場にこもってしまいました。「ママ、何があったんだろうね」とテンちゃんに聞くと、テンちゃんは両目をぱっちり開けて、私を見ます。ママの泣き声が聞こえてきて、テンちゃんは不安になったのか、頭を座っている私の膝に押しつけてきました。頭をなでると、髪の毛が乾いて強くなっていて、亀の頭のようです。「野村よ糞野郎、結婚するんだって!!!」思わせぶりな態度に騙されたというママ。私は野村君はママのこと、ちっとも好きじゃなかったと思います。テンちゃんはママが泣くのをやめて怒り出したので安心したのか、部屋中をのそのそ歩きまわっています。私もママが怒ると、聞いたことのないような、ひどい悪口がたくさん出てくるので面白くて、うきうきしてしまいます。失恋したら甘いものにかぎると言って、ママはテーブルに皿を置くと、私は面白くなって皿を床に置き、テンちゃんと同じように亀になってお皿から直接はちみつ入りのバナナを食べました。ママも一緒になって食べると、「あまーい。」と言ってテンちゃんは急に元のテンちゃんに戻ります。「いつかロンサムジョージに会いにいこう」「うん」「亀じゃなくても友達になれるんだよ」「うん」と私とテンちゃんが話したら、笑っていたママがまたうえ~んと泣き出しました。私たちはいつまでもハチミツを舐めました。ロンサムジョージもきっと今、ハチミツみたいな色の月を見ています。

 原文は「ですます」調子ではなく、言いきり調ですが、会話の部分の生き生きとした感じが何とも魅力的で、勝ち気なママと正直な反応を示す私、頑固だが天真爛漫なテンちゃんのキャラクラーにも惹かれました。西さんの最良の部分が出た短編だと思います。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/