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山田詠美『カンヴァスの柩』

2006-07-31 16:38:04 | ノンジャンル
 山田詠美さんの「カンヴァスの柩」を読みました。
 第一話「オニオンブレス」。女子便所のドアに「あの人の臭い息(オニオンブレス)には我慢できない。誰か私を助けて」とある落書きに、たまたまそれを見つけたシドニーが「君を助けたら、僕のことも助けてくれる?」と落書きの返事を書きます。それから二人の間で便所の落書きの文通が始まり、最後にその二人は自分の夫と妻であることが分かり、再び愛し合うようになる、という話。第二話「BAD MAMA JAMA」。男遊びを散々してきたマユコは、ある時から夫デイヴとのセックスに情熱を感じなくなる。そんな時、出会ったキースという男に恋してしまうが、デイヴへの思いが断ち切れず、なかなか彼と二人で会うことができない。そんなある日たまたま街頭で出会った二人は、次ぎに会った時にセックスをする。がマユコにとってそれは特別なものではなかった。彼女は夫のもとへ戻って行く。第三話「カンヴァスの柩」。南の島での、日本からの自由奔放な女性と現地の純情な青年の画家との恋の物語。
 語り手は第一話と第三話が第三者で、第二話が主人公のマユコ。結婚している主人公というのは、この作品が初めてなのではないでしょうか?一番面白かったのは、しゃれたショートショートの第一話かな?気軽に読める短編集だと思いました。

山田詠美『熱帯安楽椅子』

2006-07-30 16:31:18 | ノンジャンル
 昨日WOWOWでロバート・ゼメキス監督の'02作品「ポーラー・エクスプレス」を見ました。実写をCGで作る、ということに挑戦した作品で、時々実写と見間違えるほど、動きや表情が本物そっくりの部分もあったのですが、人間の肌の表現がCGだとろう人形になってしまい、そこがこれからの課題だと思いました。映画自体は、スリル満点で面白かったです。

 今日の山田詠美作品は「熱帯安楽椅子」です。
 小説家である私は、彼に別れを告げ、バリ島をめざします。熱帯のその島ではすべてがおおらかで、着くとすぐタクシーの運転手と親しくなり、雨の中の車で愛しあい、次にまた雨が降ったらあいましょう、と彼は言います。私はホテルのウェイターと毎日愛しあうようになるのですが、それをじっと見ている少年のことが気になります。少年は口がきけないので、私を美しい夕日の見える所へ連れて行き、私を好きであることを伝えようとします。しかし、その翌日少年はサーフィンの際大波に飲まれて死んでしまいます。私は帰りの飛行機の中で、少年のことを改めて考えます。
 肉体の愛を素直に受け入れる南の島の風土と口のきけない少年の心。そうしたものがストレートに伝わってくる、読んでいて気持ちの良い作品でした。あらすじの詳細は「Favorite Novels」の「山田詠美」にアップしてありますので、ご覧ください。

山田詠美『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』

2006-07-29 16:44:49 | ノンジャンル
 ここ神奈川県厚木市では、昨日から蝉が鳴き始め、祭り太鼓の練習の音が響いてきます。もう夏ですね。

 ということで、いよいよ山田詠美さんが直木賞を取った「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」です。8編の短編集で、それぞれが独立した内容です。
 別れた夫と再会し、また新しい生活を始める話。尻軽女と呼ばれている女から愛を教えられる男の話。婚約者がいない時に知り合った男と愛するようになるが、婚約者が戻ってきた夜、彼は酔って車を運転し事故死する話。ハイスクールの入学パーティーで一目惚れした女性から卒業パーティーで今までずっと自分のことを思っていたのを知っていたと告白される話。父の新しい女とちょっとした間違いで寝てしまう主人公は、「私のような女に気をつけなさいよ」と言われ、家を出る。家に帰ってきた彼は「あんたに言われたこと守ったぜ」と言うと女は泣き出す、という話。DJと彼が一目惚れした客の女との話。死んだ恋人が忘れられない女と、その男の友人が愛し合うことによって、新しい人生を始める、という話。休暇中のマイアミでクリスマス・カードにと住所だけ教えた男が、クリスマスに訪ねてきて、強引に部屋に入り、女を愛する。そして数日すると「クリスマス・カードを届けに来たのに長居しちゃったな」と言って出て行く話。
 それぞれの話が良くできていて、ほとんどの話がちょっとおしゃれな話を聞いた感じにさせてくれます。しかし中には義理の息子に抱かれる母の話とか、せつない話もあって、バラエティに富んでると思いました。

山田詠美『蝶々の纏足』

2006-07-28 17:21:11 | ノンジャンル
 山田詠美さんの4作目「蝶々の纏足」を読みました。
 「十六にして、私、人生知り尽くした。」の一文で始まるこの小説は、麦生という青年との愛の体験によって、こうした言葉が出ているのか、著者得意の男女の性愛の話なのか、というとそうでもなく、この話の中心を占めているのは、私と、隣に引っ越してきたえり子という同級生の少女との関わり合いの話です。
 えり子は、生きる意欲に満ち、独占欲が強く、人の気持ちを手玉に取り、私を親友として私の人生に介入してきます。そして最後には彼女に決別の言葉を述べ、二人は別々の人生を歩いて行くことになります。
 ここで著者本人を思わせるのは、えり子の姉であり、著者の言葉が語られるのは、この姉を通してだけであって、そうすると、この作品は一人称で語られているようであって、実は三人称で語られている、というのが正解かもしれません。内容も、前作での少年と私の関係から、少女と私の関係へ、という関連性が見て取れます。
 相手が女性だけあって、前作のようなはらはらする暴力性は感じられませんが、えり子のキャラクターを楽しく読めるのでは、と思う作品でした。

山田詠美『ジェシーの背骨』

2006-07-27 16:36:57 | ノンジャンル
 水曜深夜1時41分からテレビ朝日系列で、パフィの番組をやってます。アメリカでヒットしたパフィのアニメの時間が長いのですが、生のパフィも見られます。結婚しても、出産しても、亜美はやっぱりかわいい!

 ということで、山田詠美3作目「ジェシーの背骨」です。彼女、変えてきました。3作目はこんな話です。
  主人公のココは男遊びの生活から足を洗い、今はリックという男とその12歳の息子ジェシーと暮らしていますが、ジェシーは少しもココになつきません。そんなある日、リックは親戚の葬式で1週間ほど家を空けるので、その間のジェシーの世話をココに頼みます。両親の憎しみの間で育ったジェシーは素直な愛情表現ができません。ココが彼の好きなメニューの夕食を用意しても、ハンバーガー屋にでかけてしまうし、彼女が困るようなイタズラを際限無く続けます。最後にはとうとう彼女の顔に火傷を負わせ、彼女の憎しみを買ってしまいます。そんなある日、彼の母がやってきてジェシーを連れて帰ろうをしますが、ジェシーは「今は、ここにいる」といい、追い返します。その後、今後のことをリックと私とジェシーで話しているうちに、ジェシーは母として私を必要としてるのでは無く、淑女としてもてなそうとしているのだ、と分かり、ジェシーとココは初めて心の通った会話を交わします。
 少年と私のコミュニケーションの話なのですね。しかも少年はただの少年でなく、憎しみの中で育った愛情表現をしらない少年。山田さんの初めての変化球、とても楽しく読みました。次がまた、楽しみです。