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青山真治監督『空に住む』

2022-06-27 00:03:00 | ノンジャンル
 青山真治監督・共同脚本の2020年作品『空に住む』をWOWOWシネマで観ました。

 サイト「映画.com」の「ネタバレあらすじ」に加筆修正させていただくと、
「小早川直実(多部未華子)28歳、両親を亡くし、叔父夫婦が暮らすタワーマンションに愛猫ハルを連れて引っ越してきます。叔父夫婦はかなり裕福そう(何をしているかは不明)で、その部屋は投資用に買った39階のタワーマンションです。
 叔父夫婦は奇妙な馴れ馴れしさと能天気さを振りまいています。直実の前のふたりは仮面夫婦のようにみえます。妻明日子(美村里江)は夫雅博(鶴見辰吾)をマーちゃんと呼び、直実にもそう呼ぶことを半ば強要します。雅博はそれを楽しんでいるようです。
 明日子は直実の部屋の鍵を持っており、時々訪ねてきたり、勝手に入ったりします。その時の表情は時に疲れた表情を見せたりします。直実には異様な馴れ馴れしさで接し、家族だからとか、子供が欲しいとか欲しかったとか、直実の子どもを育てるんだとか本心なのか適当なのかわからない話をします。
 そのマンションは(その部屋だけということもありうるが)リビングも靴を履いたまま生活する様式です。また、叔父夫婦も直実も、食事であれ、くつろぎの時間であれ、必ずワインを飲みます。
 直実の職場は郊外の民家を事務所にしている文芸書の出版社です。仕事場は座卓に座椅子で、数人の社員が和気あいあいと働いています。和服が板についた人の良さそうな社長が時々どこからか仕事場を覗きに来ます。編集長は作家にも見える雰囲気を持っており、別室の同じく和室で布団を敷いたままにも見える籠もり部屋で仕事をしています。
 後輩に愛子という女性がいます。今にも生まれそうにもみえるお腹をしています。結婚式を控えています。しかし、その子の父親は結婚相手ではなく作家の吉田です。愛子はそのことを直実にだけ話しており、最後まで騙し通すと力強く言い切っています。
 都会のタワーマンションと郊外の民家を行き来する生活が始まります。
 ある日、直実はエレベーターで人気タレントの時戸森則(岩田剛典)に出会います。それまで興味があったわけではありませんが、愛子に知ってる?と尋ねたり、週刊誌を見たりします。
 そして、再び出会います。時戸がオムライス作れる?と言います。直実は一瞬戸惑いますが、作れますと答え、自室でオムライスを作りふるまいます。電話番号を聞かれ教えます。
 後日、佐藤錦があるけど食べる?と電話が入ります。時戸がやってきます。佐藤錦を食べながらワインを飲み、そしてキスをします。
 直実は編集長から売れる企画を求められています。直実は時戸にあなたの哲学の本を一緒に作らない?と持ちかけます。
 そうした関係が続くある日、ふたりでベッドにいるとチャイムがなります。明日子です。いないのかあ、入っちゃおといつもどおりに合鍵を使って入ろうとします。しかし玄関先で気配を感じ出ていきます。
 時戸「今の何?!」「萎えるなあ!」と出ていってしまいます。
 ハルの調子が悪くなります。獣医に見せますと、ストレスが原因のリンパ腫と言われ、直実は、慣れないタワーマンション暮らしや(ハルが)人見知りの性格なのに時戸や叔父夫婦の出入りの多さに思い当たります。
 ハルの病、時戸との別れ、明日子の馴れ馴れしさからのいらだちが重なり、直実はうつ状態になり会社を休むことになります。
 ハルが死にます。
 編集長に求められている売れる企画、そして時戸に持ちかけた時戸の哲学の本の企画書をかきあげます。
 仕事に復帰し企画書を編集長に見せる直実です。編集長に、あなたは時戸となにか関係がありますかと尋ねられた直実は、はい、だからこそやれる自信があります、そしてこれはハルのためなんですときっぱりと答えます。
 直実のマンションを訪ねようとした愛子が途中で破水します。救急車を呼ぶという直実に、愛子はダメ、まだ産まない、最後まで騙し通すと聞きません。しかし結局病院に運び込まれ出産します。
 後日、直実は自室で時戸にインタビューをします。その録音と取材データは作家の吉田に託されます。
 ハルの処分を決心し移動火葬車を呼び海辺で火葬に付します。
 タワーマンションの自室の窓際で大きく背伸びしながらも、その目には気だるさが漂い、空を見るわけでもなく、東京の街を見下ろすでもなく、何も見ていないようにみえる直実です。
 そして、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの「空に住む ~Living in your sky~」が流れます。」

 猫の演技が秀逸な映画でした。

斉加尚代監獄『教育と愛国』

2022-06-26 02:42:00 | ノンジャンル
 先日、今の話題の映画である斉加尚代監獄の2022年作品『教育と愛国』を「あつぎのえいがかんkikiで観てきました。
「維新の会」の正体は日本会議でも右の右、極右団体で、教科書の書き換え「従軍慰安婦」を単なる「慰安婦」に変えさせたり、やはり教科書の「軍による強制連行」から「軍による」という部分を削除させたり、学術会議でも、そもそもは大阪府知事のツイートが火をつけ、数日間で100万人のフォロアーを得たとの話でした。
 例えれば、「維新の会」は現在の「ナチス」です。
 とても危険な存在です。
   「税の無駄使いをなくす」というのも、
「仕事もせず生活保護を受けたり、福祉のお世話になっている奴らを、この世からなくそう」という演説を大阪で堂々とし、熱狂的な人気を得たのだそうです。
 ナチスによるユダヤ狩りと手口は同じです。
「税の無駄遣いをなくす」という部分だけを読んで 「維新の会」を支持している善良な国民が多いので、テレビでの討論会、あるいは選挙中のアピールでも、「間違っても維新の会には入れないでください」と必ず言ったほうがいいと思いましが。。



黒沢清監督『スパイの妻』その2

2022-06-25 09:19:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

 結婚記念日にかこつけて二人は、監視の目をかいくぐりながら、現金を貴金属や高級腕時計に換えて出国の準備をする。優作は聡子に神戸港から貨物船でサンフランシスコまで行くように言う。一方、優作は上海に行ってからサンフランシスコに渡る。今彼らが隠しているフィルムは、オリジナルの鮮明な証拠フィルムが映写されたスクリーンを撮影したものであり、オリジナルのフィルムは上海のドラモンドに託されていた。そしてドラモンドが金を要求しているので優作は彼と会って交渉しなければならなかったのだ。聡子は優作と一緒に行きたかったが、優作は離れていても二人の絆は深まると説得する。
 駒子と執事の金村(みのすけ)に見送られて聡子と優作は屋敷を自動車で後にし、神戸港で聡子は優作と別れて貨物船のコンテナに身を隠す。ところが憲兵隊が貨物船にやってきて、聡子の身を託されていた船員ボブも聡子の隠れ場所を教えざるを得なかった。
 憲兵分隊本部で泰治は、密航の通報があったが、密航者は優作だと思っていたと言う。そして聡子の容疑は死刑相当だとも。直ちに聡子がもっていたフィルムが映写される。聡子は泰治にフィルムに国家の機密が隠されていると言い、そう信じていた。だがスクリーンに映し出されたのは忘年会で上映した映画だった。優作は聡子を欺いたようだ。聡子はスクリーンの前に歩み出て「お見事です」と言って気を失う。
 1945年3月。聡子は精神病院にいた。患者の女たちは東京や各地が空襲に遭っているといううわさ話をする。その日は野崎医師が聡子に面会に来た。野崎は優作をインドのボンベイで見た人がいるという情報を伝える。だが、彼が乗ったロサンゼルス行きの船が日本の潜水艦に沈められたとも。そしてそれも不確かな情報だった。聡子が退院できるように取り図ろうと言う野崎に聡子は「先生だから申しますが私は一切狂っていません。それが狂っているということなのです。この国では」と言う。
 深夜目を覚ました聡子は机の上のものが不思議な振動をするのを見る。間もなく病院付近も空襲にみまわれたことがわかり、患者たちは逃げ出す。最後に大部屋の病室を出た聡子は廊下の先が既に焼け野原となっているのを見る。これで日本は負ける。戦争も終わる。お見事。聡子はひとり海辺へと逃げて嗚咽する。
 1945年8月、終戦。翌年優作の死亡が確認されるが、報告書には偽造の疑いがあった。数年後、聡子はアメリカに渡った。

 見事なワンシーンワンカットがいくつか見られました。

黒沢清監督『スパイの妻・劇場版』その1

2022-06-24 08:45:00 | ノンジャンル
 黒沢清監督・共同脚本の2020年作品『スパイの妻・劇場版』をWOWOWプライムで観ました。
 サイト「映画ウォッチ」の「ネタバレあらすじ」に加筆修正させていただくと、
「1940年.神戸生糸検査所にやってきた憲兵たちが、イギリス人のドラモンドを軍機保護法違反容疑で逮捕する。その日、津森泰治(東出昌大)は軍服を着て、幼なじみの聡子の夫、福原優作(高橋一生)を彼の経営する福原物産のオフィスに訪れる。神戸憲兵分隊に分隊長として赴任した挨拶のためだけでなく、ドラモンドの友人である優作に注意を促すためでもあった。しかし優作は、ただの商人にすぎないドラモンドへのスパイであるという嫌疑を笑い飛ばす。
 横浜から神戸に引っ越し、今は洋館に妻と暮らす優作。妻に仮面の女スパイの役をさせたアマチュア映画を甥で福原物産に勤める竹下文雄(坂東龍汰)と作って楽しみながらも、優作はドラモンド釈放のために手を尽くし、ドラモンドは福原家に挨拶に来てから上海へと去った。
 本当に危なくなる前に大陸を見ておきたい。優作は聡子(蒼井優)の心配をよそに、文雄をともなって満州へ出張する。撮影機材も一緒だった。夫の留守中、聡子は女中の駒子(恒松祐里)を連れて山に自然薯を掘りに行った時に偶然、天然の氷を取りにきた泰治と会う。福原邸に通された泰治は、聡子も女中も執事も洋装、ウィスキーも舶来ものという福原家の暮らしぶりに、世間の目が厳しくなると心配する。
 予定より二週間遅れて優作と文雄が帰国する。港に出迎えた聡子は、しかし、二人が一人の女を日本に連れてきたことに気づかなかった。
 その年の福原物産忘年会。社員たちに優作が聡子や文雄と作った映画が披露される。その後、文雄は社員たちを前に退社することを告げる。いつ軍隊に入れられるかもわからない、その前に有馬温泉の旅館たちばなにこもって小説を執筆することにしたと言うのだった。
 聡子は泰治に神戸憲兵分隊本部へ呼び出される。旅館たちばなの草壁弘子(玄理)という仲居が殺された。嫌疑がかかっているのは文雄だが彼女を満州から連れてきて仲居の仕事を世話したのは優作だと言われる。帰宅した優作は自分を信じてほしいと聡子に言う。そして自分は聡子に嘘をつけないようにできているから問い詰めないでくれと頼む。
 夫と弘子の仲について疑惑の消えない聡子は旅館たちばなに文雄を訪れる。快活さの消えた文雄は聡子に対して「あなたは何も見ていない」と言って多くを語らない。そして、ある包みを優作に渡すように頼む。中身は見ないように、「英訳が終わった」とだけ伝えるようにと言う。旅館の外には文雄を監視する男たちがいた。
 しかし、聡子は包みの中身を見ずにはいられなかった。包みの中のノートについて問いただされた優作は真実を話す。満州で彼と文雄は死体の山を目撃する。それは関東軍の細菌戦研究の犠牲者の死体だった。それを告発しようとした医師は殺害され、草壁弘子は看護婦で彼の恋人だった。優作は細菌戦研究の証拠をもちかえり文雄に英訳をさせた。それをアメリカで公表すればアメリカとの間で戦争が始まり日本は負けるだろう。それは売国奴のすることではと問う聡子。自分はコスモポリタンだと優作は答えるのだった。
 優作が帝大で野崎医師(笹野高史)と会うために出張したとき、聡子は会社の倉庫にある金庫から文雄から託されたノート、そしてその側にあったフィルム缶を盗み出す。そして和装で憲兵分隊本部に泰治を訪れる。弘子殺しの犯人は横恋慕した旅館主人であったことを知るが、それでも文雄から託されたノートを泰治に渡す。
 優作は会社で金庫からノート等が持ち去られたことに気づくが、すぐに憲兵に参考人として連行される。逮捕された文雄が爪をはぎ取られる拷問を受けてスパイ活動を自白したことを知る。通報者は聡子しか考えられない。帰宅した優作は妻を密告者とののしるが、聡子は、文雄が夫を売らないことをわかっていて、夫を守るために泰治にノートを渡したのだった。渡したのは日本語の原本だけで、英訳と、細菌研究の様子や原本のページが撮影されているフィルムはまだ手元にあった。
 聡子と優作はアメリカ行きを考えるが、アメリカからの石油輸出が禁止される。もはや亡命以外にアメリカに行く方法はない。「あなたがスパイなら私はスパイの妻になります」と言い放つ聡子にとって今までになく人生が輝いているようだった。

(明日に続きます……)

南波克行責任編集『スティーヴン・スピルバーグ』

2022-06-23 08:25:00 | ノンジャンル
 2019年に刊行された南波克行責任編集『フィルムメイカーズ18 スティーヴン・スピルバーグ』を読みました。
 まず、目次から。
・「刊行にあたって」
・「巻頭言 新批評方針宣言」南波克行
・「ライフストーリー 少年スピルバーグが監督スピルバーグになるまで━━『激突!』までの道のり」南波克行
・「スティーヴン・スピルバーグ インタビュー1『未知との遭遇』
はドラマチックなアドベンチャー・ストーリーだ」原田眞人
・「スティーヴン・スピルバーグ インタビュー2 自分たちの歴史、祖先の苦しみを私の魂こめて作った映画 『シンドラーのリスト』で子どもたちに語り伝えようと思った。」成田陽子
・「作家論 スピルバーグと外国語」篠儀直子
・「作品論『激突!』『未知との遭遇』」佐々木敦
・「作品論『続・激突!カージャック』『タイタンの冒険/ユニコーン号の秘密』『レディ・プレイヤー1』」切通理作
・「作品論『1941』『ミュンヘン』」黒岩幹子
・「作品論『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』」三留まゆみ
・「作品論『E.T.』『A.I.』」佐藤亜起
・「作品論『カラーパープル』『アミスタッド』」佐藤利明
・「座談会 それぞれのスピルバーグ体験」宇田川幸洋/南波克行/モルモット吉田
・「音楽論 スピルバーグ監督とジョン・ウィリアムズ━━2人の創作から見えるもの」宍戸明彦
・「作家論 アンブリンの星のもとで━━スピルバーグ製作総指揮作品の時代」大久保清朗
・「作品論『太陽の帝国』『シンドラーのリスト』『戦火の馬』」鬼塚大輔
・「作品論『オールウェイズ』『宇宙戦争』『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』」真魚八重子
・「作品論『フック』『リンカーン』」荻野洋一
・「作品論『ジュラシック・パーク』『ロスト・ワールド/ジュラシック・ワールド』」樋口尚文
・「作品論『プライベート・ライアン』『ブリッジ・オブ・スパイ』」西田博至
・「作品論『マイノリティ・リポート』『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』『ターミナル』」金原由佳
・「完全データ・ファイル」
・「コラム スピルバーグと識字障害」金原由佳
・「コラム スピルバーグとアカデミー賞」西田宣善
・「執筆者紹介」

 以上が目次です。
 「新文芸坐シネマテーク」を行ない、オンライン授業も週に1回、約2時間30分のオンライン授業も行っている大寺眞輔さんの文章に触れることもできますし、各映画のシーンの写真も満載でした。特に私が牽かれた文章はスピルバーグとジョン・ウィリアムズの関係に触れた文章で、その中では私が敬愛する映画音楽作家、バーナード・ハーマンとアルフレッド・ニューマンにも触れていて、読んでいて興奮しました。この本が出版された後、スピルバーグは『ウエスト・サイド・ストーリー』のリメイクを撮っていて、つい最近まで映画館で上映されていたので、「あつぎのえいがかんkiki」にリクエストを出して、上映に至ったら、そこでパンフレットをゲットしようと思っています。
とにかく、今出版されているスピルバーグ本としては最良の一冊であることは確かです。スピルバーグ好きでまだこの本を所有されてない方は、ただちにアマゾンへゴー!です。