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クリント・イーストウッド監督『荒野のストレンジャー』その1

2013-08-31 07:14:00 | ノンジャンル
 クリント・イーストウッド監督、マルパソ・カンパニー製作の'72年作品『荒野のストレンジャー』をスカパーのBSイマジカで再見しました。
 砂漠の蜃気楼の中から白馬に乗って現れる男(クリント・イーストウッド)。無気味な音楽。タイトル。巨大な湖沿いの町。「ラーゴ」の看板。男が酒場に入ると、3人の男が難癖をつけ、男が床屋で髭を剃ってもらっているところを襲ってきますが、男は自分に掛けられていた白布の下から3人を撃ち殺します。わざと肩をぶつけてきた女・カリーを馬小屋で犯す男。男は夜、路上で3人に鞭打たれ、それを傍観する人々と3人に呪いの言葉を吐く夢にうなされます。
 翌朝やって来た保安官のモーガンは、昨日の暴れん坊の3人の殺人は咎めないと言い、以前町の鉱山会社に雇われていたステイシー(ジェフリー・ルイス)と2人の手下が会社の金塊を奪って捕まり、その際ステイシーらが自分たちに騙されたと言っていたことを伝えます。そこへやって来た町長は、もうすぐ釈放されるステイシーらから町を守る仕事を男に依頼し、何でも男の言うことは聞くという条件で、仕事を引き受けてもらいます。男はそれまで町の人々の使い走りをしていた小人のモーデカイに保安官と町長を兼任させ、町の男たちでラーゴ志願隊を組み、待伏せの練習をさせます。元保安官とモーデカイらが引く馬車に乗せられた人形に、町の男たちの放つ弾丸は少しも当たらず、ため息を吐いた男は3発で2つの人形の頭とモーデカイの帽子を吹っ飛ばします。歓声を上げるモーデカイと元保安官。男はインディアンらに好きなだけ布を持っていくように言い、やはりインディアンの大工にステイシーらを出迎えるためのパーティ用の大テーブルを作るように言い、テーブルの材料にするため、ホテルの納屋を壊します。それに抗議するホテルの経営者・ルイスに男は、シーツ35枚と牛の丸焼きと赤ペンキ200ガロンも用意しろと命じ、ホテルの客も避難させるように言います。一方、刑務所から釈放されたステイシーらは、ラーゴへの途上で3人の男を襲い、3頭の馬と3人分の服を手に入れます。
 相変わらず、待ち伏せの練習をさせる男。1人の人形の頭がやっと飛びます。鉱山会社の社長デイブは、男に町を掻き回されていることに対し、部下のモーガンが、以前ステイシーらの鞭に打たれて死んだダンカンという男を保安官にしたことがそもそもの問題だったとモーガンを非難します。町中があの殺しに手を貸したと反論するモーガン。一方、ホテルの客が追い出され、それに抗議した牧師は、男から自分が引き受ければ言いと言われ、ホテルの客にホテルと同じ料金で自分の家に泊まるように言います。一方、町長らに「威張れるのは今だけ」と言って突き飛ばされたモーデカイは、ステイシーら3人がやって来てダンカンを路上で鞭打ち、町の人々がそれを黙ってみていたことを回想します。
 男はホテルに1人残ったカリーとディナーを食べ、モーデカイは元町長が床の下に隠していたワインを見つけてきてくれます。一方、死体が見つかり町の人々が逃げ出す前に町に着こうと強行軍をした結果、足を傷めた馬を1頭射殺するステイシー。ディナーの後、男はカリーと寝ますが、カリーは服を着て、眠っている男の元を去ります。男の部屋から出て来たモーデカイを路上で殴りつけ、男の部屋を見上げるモーガン。教会の集会ではホテルを売春に使われたルイスが男を糾弾します。モーガンは手下を連れて男の部屋に向かい、カリーと入れ替わるようにして部屋に入ると、男が寝ているはずのベッドを棍棒で叩き続けますが、男は部屋の外からダイナマイトを投げ入れ、部屋を爆破し、逃げ出したモーガンの手下3人を射殺します。爆音に教会から現場へ駆け付ける町の人々。モーガンはホテルの従業員のサラを人質に取りますが、男に腕を撃たれ、サラにかばわれて馬で逃げ延びます。現場に到着し、破壊されたホテルを見て呆然とするルイスと、彼を睨みつける男。男は元保安官に「野良犬が迷いこんだみたいだ」と言い、襲われたことでやる気が失せたとも言うと、そこにいた元町長は耳一つ500ドルという男の要求を受けます。約束と実際の払いは違うとデイブに言う元町長。男はホテルで唯一無事だったサラの部屋にしけ込みます。(明日へ続きます‥‥)

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『第2版 日本・中国・韓国=共同編集 未来をひらく歴史 東アジア3国の近現代史』

2013-08-30 05:35:00 | ノンジャンル
 昨日の朝日新聞の朝刊に『永さんのラジオ46年で幕』という見出しの記事が載っていました。関係者によると、1社提供で番組を支えた桃屋から降板の意思が伝えられたのが打ち切りのきっかけとのことで、永さん自身パーキンソン病を患い、歯切れのいい語りはできなくなっていたのですが(心ない人は、「あんなしゃべりしかできない奴をラジオに出すな」と言ってきたそうです)、一昨年、足を骨折したときも病室で収録し、休まなかったとのことで、この番組にかける永さんの思いは並々ならぬものだったのだと思います。先日偶然テレビで「夢で逢いましょう」の回顧番組の中での永さんをお見かけしましたが、これも何かの縁だったのかもしれません。改めて「お疲れさま」と言いたいと思います。
 
 さて、日中韓3国共通歴史教材委員会編集の『第2版 日本・中国・韓国=共同編集 未来をひらく歴史 東アジア3国の近現代史』を読みました。日・中.韓3国の学者・教師・市民がともに参加して編集した日中韓の近現代史に関する教科書です。
 この本で初めて知ったことは多くありましたが、特に記しておきたいことは、満州族(満族)の前身の女真族が建国した「後金」が明と戦う一方で朝鮮にも侵攻していたこと、日清戦争中、日本軍は旅順で非戦闘員である市民に対する虐殺事件を引き起こしていたこと、日露戦争中、日本軍は韓国の土地を鉄道用地や軍用地として取り上げ、人・馬・食糧などを戦争のために供出させたこと、福沢諭吉は「脱亜論」を唱え、今後はアジアの文明化をすすめるのではなく、アジアとは縁を切って、西洋諸国と同じような仕方でアジアの支配をすすめていこうと主張したこと、自由民権運動は、日本国内の改革運動が次第に行きづまりを見せるようになると、その目を海外に向け、日本が外国に勢力を拡大していくことを主張するようになったこと、1885年には、武器をたずさえて朝鮮に渡り、朝鮮で政治の実権をにぎっている勢力を殺害して清国との関係を断ち切らせ、それをきっかけに起こるはずの清国と日本との対立を利用して、日本国内で革命を実現しようという自由民権家たちの計画が、事前に発覚するという事件さえ起きたこと、朝鮮政府は1897年に国号を「大韓帝国」に変え、民間でも1896年、開化派の官僚と知識人たちは独立協会をつくって独立門を建て、「独立新聞」を発刊したこと、しかし大韓帝国政府は彼らの要求を受け入れず、独立協会を解散させてしまったこと、東学農民戦争を指導したチョン・ポンジュンのことを歌った歌が今でも韓国全国で歌い継がれていること、清朝が滅亡する前の10年間に留学した人の90%以上は日本への留学だったこと、日本では当初学校の建築費や授業料は民衆が負担することになっていたこと、中国語や韓国語は横書きであること、日露戦争中に日本に対して韓国で行われた義兵闘争には各界各層からの参加があったこと、日本が韓国で鉄道を敷設する際、用地買収の費用は2%しかなく、日本国内での13%という数字と比べても、ただ同然で奪ったことが分かること、日本と「満州国」政府は、抗日勢力を孤立させるため、村々を合併させ、村民たちを強制的に「集団部落」に移住させ、周囲を高い塀と深い堀で囲み、軍隊と警察が門を警備して自由な出入りを許さず、民衆と抗日軍との連絡を切断したこと、日中戦争中、日本軍に拉致され、38日間にわたって、毎日7回も10回も強姦され、重い性病を移された18歳の少女がいたこと、サンフランシスコ講和条約では、東南アジアの4ヶ国にだけ賠償が行われたが、どれも実態は「賠償」という名の経済協力ないし貿易で、被害者個人への補償は行われなかったこと、在日朝鮮人や台湾人は「国籍上、日本人ではない」として、国民年金や児童手当などの社会保障や、就職・住居などで国籍差別を受けることになったこと、BC級戦犯の中に「元日本兵」として裁かれ有罪とされた朝鮮人148名、台湾人173人がいたこと、日本と違い、ドイツ・フランス・アメリカ・カナダは国内の民間人、旧植民地出身者、戦争被害者個人へ補償を行っていること、第二次世界大戦まで靖国神社の最高役職である宮司には代々陸軍大将が就任してきたこと、などなどでした。
 日本軍に対しては中国、朝鮮ともに抗日運動が盛んに行われ、その度ごとに日本軍は虐殺で応えていたことがよく分かりました。自民党で靖国に堂々と参拝している政治家も、きちんとこの本で歴史を学んでほしいと思ったりもしました。

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増村保造監督『濡れた二人』その6

2013-08-29 06:54:00 | ノンジャンル
 今週の火曜日、横浜そごうの9階にある「よこはま新都市ホール」にて行われた、中井貴惠さんの「音語り/お早よう」に母と行ってきました。松本峰明さんのピアノの伴奏に合わせて、小津監督のプロデューサーだった山内静夫さんが映画の脚本を潤色して作った1時間余りのストーリーを中井さんが朗読するというもので、一人で何役もこなさなければならないのに、映画がそのまま中井さんの頭の中に入っているようで、特に杉村春子さんと高橋トヨさんと長岡輝子さんの意地の悪い科白が本人そっくりで、楽しめました。(肝心のおならのシーンが佐田啓二のアパートでしか味わえなかったのは残念でしたが‥‥。)次回はやはり新都市ホールでの「秋日和」と円覚寺での「お早よう」だそうです。(円覚寺での朗読会は、小津監督と中井さんの父である佐田啓二さんの墓があるということで、毎年行われているそうです。)小津ファンの方だけでなく、朗読劇が好きな方にも是非お勧めしたいイベントでした。

 さて、またまたまたまた昨日の続きです。
 乱暴に障子と雨戸を閉め、手をはたくカツエ。シゲオは茂みの中で立ち上がり、胸をかきむしり、ペンダントを引きちぎると、それを地面に叩きつけます。去るシゲオ。部屋の中で足を組み、頬杖をつくマリコ。
 翌朝、スーツケースを持ちスーツ姿で一人去るマリコ。岸壁にいた清江は「来たわよ、奥さんが」と言い、マリコとシゲオは対面します。マリコがスーツケースを下ろすと「何しに来たんだよ? 帰れよ。俺はあんたみたいに遊んじゃいられないんだ。漁に出るんだよ!」。マリコは無言で微笑みます。「これまでのことはみんな嘘だ! それぐらい分かってるはずだ。いい年して本気にしたのかよ! あんただって旅先だ。暇つぶしにやったんだろ? 東京へ帰りゃ、すぐ忘れるさ! 俺結婚するなら、もっとまともな女と結婚するよ! あんたみたいにふしだらな女なんか、誰が相手にするもんか!(清江を抱き)俺来年こいつと一緒になるんだ。(清江、不敵な表情)もう3年も前から決まってるんだよ。あんたとはちょっと遊んだだけさ」。マリコ、歩み寄り「あたし、これを返しに来たのよ」とペンダントを見せます。「夕べ、来てくれたのね。嬉しかったわ。それだけでいいの」。シゲオ、清江を投げ捨て、ペンダントをマリコの掌から取り、地面に叩きつけます。「帰れよ!(マリコの両肩に手をかけ)お願いだ! 帰ってくれよ。(マリコ、無表情になる)頼むよ!(マリコの両肩を押して進みながら)あんた! 俺はあんたが好きだ。でも一生‥‥畜生!(マリコの胸に頭をつけます)う~、どうしようもないじゃないかよぉ。(マリコとともにしゃがみこみながら、面と向かい)帰ってくれよ。(マリコの肩を揺らしながら)頼む! 頼むよ!(頭下げる)」。マリコ、自分の肩からシゲオの手を放し「いいわ、帰るわ。(シゲオの肩に頭寄せ)さようなら」。マリコ、立ち去ります。うなだれるシゲオ。「馬鹿野郎!」と言って、とも綱を外し、投げ捨てるシゲオ。マリコは冷静に清江に「さようなら」と言うと、それを見送った清江は、すぐに悪戯っぽい表情を取り戻して「ふん」と鼻を鳴らし、背筋をピンとさせたまま、うなだれるシゲオを見ます。
 バス停。地面に座り込むマリコ。「おばさ~ん」とカツエの2人の子供が走って来ます。「これ、東京の旦那さんからの電報。お母ちゃんが渡して来いって」「そう、ありがと」「帰ろうよ、早く」「うん」。帰っていく子供たち。電報には「リコントドケ、オクッタ。ハン、オサレタシ」と書かれていました。「これでいいのよ」と一人ごちるマリコ。電報をバッグにしまい、「もうすぐ冬が来るわ」とマリコは言ってカバンの上に腕を置きます。彼女の姿をロングショットが捕え、映画は終わります。

 マキノの映画のように、演出と構図が完璧に行われている“ショット”の連鎖からなっている“映画”の傑作でした。ここでもたくましい女性に対して、弱い男性という図式が当てはまっていたようです。間違いなく、若尾さんの代表作の1本でしょう。

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増村保造監督『濡れた二人』その5

2013-08-28 05:58:00 | ノンジャンル
 またまたまた昨日の続きです。
 夜。雨。雨戸開け、立って待つマリコ。カツエ、走って来て雨戸を閉めます。厳しい顔で「お嬢さん、困りますよぉ。どうして旦那様と帰らなかったんですかぁ」。両腕を組んで「どうしてか、私にも分からないの。あ~あ、息苦しいわ」と雨戸を開けます。「開けたってダメですよ。いくら待ったってシゲオは来ませんよ」「どうして?」「さっきシゲオの親爺さんが怒鳴り込んで来ましたよ。お前んとこの女は、うちのシゲオを誘惑するつもりかって」「そう」「お嬢さん! あなたは気が狂ったんですか? 昨日舟に乗ってシゲオと何をしたんです? 山の上の畑から丸見えだったんですよ」「そうだったの」「狭い村ですからねぇ。もうみんな知ってますよ。一体どうする気持ちなんです? シゲオと結婚するつもりですか?」「結婚‥‥」「止めてください。そんなバカなこと! 年が七つも違うんですからね!」「カツエさん、皆さんが何を言ってるか知らないけれど、私はただ、もう一度シゲオさんに会えたら、それでいいのよ」「会ってどうするんですか?」「分からないわ」「子供みたいなこと、おっしゃらないでください。お嬢様もう32ですからねぇ」「でも分からないの」「兎に角、うちからすぐ出てって下さい。東京へ引き上げてくれませんか? 車を呼びますから」「今すぐ?」「そうですよ。年がいもなく若い男を引っ張り込むなんて、あんまりですよ。ここは私のうちですからねぇ」「カツエさん、お願い。今夜会ったら帰るわ。だからもう一晩だけ泊めてちょうだい。お願いします。ねっ、一晩だけでいいの」「ふん、じゃあ今夜だけですよ。どんなことがあっても明日一番のバスで帰ってもらいますから」「そうするわ」「立派な旦那がいるのに火遊びもいい加減にして下さい」。カツエ、去ります。
 清江とシゲオと父。父「シゲオ、どうしてもカツエのうちに行くというのなら、2度と戻ってくるな」「分かったよぉ」シゲオ、行こうとします。父は腕を取り「この馬鹿野郎! 東京の、それも人の女房にうつつを抜かしやがって!」。平手で顔を殴ります。「シゲオ、結婚はな、一生のもんだぞ。あの町の女をこれから何十年もしょっていけるのか? 今ちょっとばかりキレイでも、5年経ってみろ! しわくちゃのババアだ。それでもいいのか?」「いいよ!」。去ろうとするシゲオを父が引っ張り返し「お前はまだ町の女に懲りんのか? 町の女なんて着飾って厚化粧でごまかしているが、一皮剥げば、とんでもない化けもんだ。それが分からんのか?」「分かってるよ!」。また引き戻し「この清江がいるのに、どうしてあんな女に惚れるんだ?」「好きなんだ。好きなもんは仕方がねぇ」。また引き戻し「あの女はな、亭主と6年も暮らしてるんだ。他人の手垢で汚れきったお古だ。お前に我慢できるか?」「できるよ!」「どうやってあの女を食わすんだ? うちを出りゃ、お前なんかチンピラの漁師だ。稼ぎなんか、たかが知れている。一生貧乏暮らしをしたいのか?」「余計なお世話だ」。また引っ張り返し「この野郎! どうしても分からねえのか!」。父は突き飛ばし、蹴り飛ばそうとして、首絞める。「お前みたいな大馬鹿野郎は性根を叩き直してやる!」。シゲオは父を倒し返し、逃げます。父「バカ!」。
 シゲオ、濡れそぼって赤いネグリジェ姿のマリコの許へ。紅差し、香水を振りまくマリコを盗み見るシゲオ。シゲオが植木鉢を倒し、音を出すと「シゲオさん!」と裸足で雨の中へ出て行き「シゲオさん!」。雷。マリコは諦めて部屋に戻ります。全裸で髪を梳るマリコ。電灯をつけ、バスタオルを巻きます。シゲオが進み出ようとすると、カツエが現れ、濡れた赤いネグリジェを床に見つけると「あ~あ」と言ってネグリジェから水をはたき、「お嬢さん! いいかげんにして下さいな! 何ですか、このマネは! そんな格好見せびらかして、また噂の種になりたいんですか? あたしゃ、御免ですよ。これ以上肩身の狭い思いはしたくありませんからね」。後ろを振り向き「閉めますよ、雨戸! うちの主人はね、シゲオの親爺さんに雇われてるんですよ。あたしたちがここにいられなくなったら、どうしてくれるんです? お嬢さんは東京へ帰れるけど、こっちは行く所がありませんよ。お嬢さん! 聞いているんですか?」「いいわ、閉めて」「ふん、当たり前ですよ。どうせシゲオは来ないんだから」(またまたまたまた明日へ続きます‥‥)

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増村保造監督『濡れた二人』その4

2013-08-27 17:52:00 | ノンジャンル
 またまた昨日の続きです。
 翌朝、坂を下る夫と、その腕に自分の腕をからませるマリコ。彼らに道で出会ったシゲオは夫を睨みます。「社長の息子さんか?」。マリコは頷き「そう、シゲオさん」。夫の手を取ったまま、シゲオを見据えて「あたしの旦那よ。昨日の昼に来たの」「野崎です」。マリコを見据えたまま「東京へ帰るんですか?」「えぇ」「舟に乗らないんですか?」「えぇ」「嘘だ!」。マリコは視線を外し、歩き始め、夫も後に続きます。バス停。オートバイでやって来たシゲオは、エンジンをふかし、マリコの前を行ったり来たりし、夫はマリコをかばいます。やがて二人の周りを回り始めるシゲオ。動揺するマリコに夫「ほっとけよ。バスに乗れば全てが終わるんだ。(マリコの両肩を掴み)見るな! マリコ!(マリコ、首を巡らしてシゲオの後を追い続けます)一時のことで一生を変えちゃダメだ」「一時の方が一生より大事かもしれないわ。今のあたしには」「離婚したいのか? 別れたいのか?」「夕べ、あなたは怒らなかったのに、彼は怒ってるわ」。シゲオの姿。遠くにバスのクラクション。夫「バスが‥‥来たよ」。近づいてくるバス。荷物を手にする夫。バイクにクラクションを鳴らすバス。バス停の周りを回り続けるシゲオ。ついにシゲオは停まり、バスを見据えた後、視線を落とし「うるせぇ」と一言言い、バスに道を譲ります。バスの車掌「下田へ参ります」夫「さっ、乗ろう」。マリコ、バスから遠ざかります。「乗らないのか!」「お乗りの方はお早く願います。乗るんですか? 乗らないんですか?」「僕は乗るぞ」スーツケースをマリコに渡し、バスに乗り「マリコ! 乗ってくれ!」。視線落として立ち尽くすマリコ。シゲオ、バイクの上に突っ伏します。バスが発車します。シゲオがゆっくりと頭を起こし振り返ると、マリコはバス停に立っています。スーツケースを地面に落とすマリコ。マリコを見つめるシゲオ。マリコは表情を緩めます。マリコに駆け寄り、マリコの両肩に手を置いて「あんた!」。マリコもシゲオの両肩に手を置き「あっ」と言って彼の胸に頭を当てます。「残ったのか!」「戻るわ、カツエさんのうちに」「俺が悪かった。東京へ帰っていいよ」「こうしたかったの。あなたのせいじゃないわ」。マリコを見据え「あんた、後悔しないのか?」。シゲオに抱いてもらい「平気よ。どうなったって。さあ、オートバイに乗せて」。シゲオから離れ「ほら、あの岩陰。あなたが私を殴った岩陰に連れていって。好きなの。あの砂浜が」。シゲオは視線を落としたまま荷物をマリコに渡し、バイクを立て直します。後ろに乗ってシゲオを抱き「帰って、早く!」とマリコ。堅い表情のまま走り出すシゲオ。
 岩陰で抱き合う二人。キスし終わると、マリコの横に仰向けに横たわるシゲオ。「私、結婚してもう6年になるけど、今日初めてはっきりあの人と離れたわ。バスに乗れって言うのを、乗らなかったの。こんなこと一生できないと思っていたのに、あなたのおかげだわ」。シゲオの胸に手を置きます。「俺、夢中だったんだ。あんたを旦那さんから取るつもりじゃなかったんだけど」「いいのよ、それで」「俺と結婚してくれるな?」「何も言わないで。あたしはただ自由になりたいのよ。みんな忘れて、めちゃくちゃに遊んでみたいの。やりたいこと何でもやって、くたくたになりたいの。さあ、シゲオさん、抱いて」「ここで?」「そうよ、脱がせて」「ヘヘヘヘヘヘヘヘ」二人をしゃがんで見つめる清江。「どうぞ、ご自由に。ここで見学するわ。(清江、立ち上がります)早く見せてよ」。マリコ、シゲオに身を寄せ「今夜会いたいわ」「どこで?」「カツエさんの離れ、来てちょうだい。雨戸を1枚開けておくから」「カツエさんは?」「誰にも分かりゃしないわ」。清江を見据えながら立ち上がるマリコ。清江、シゲオに歩み寄り「バカ!」。殴ろうとして避けられ、倒されます。バイクで去ろうとするシゲオに清江「あの女、ここに居座る気?」「放せ!」。エンジンがなかなか掛かりません。「あんた、憎い町の女と結婚するつもり?」「うるせぇ」「またひどい目に会いたいの?」「畜生」「アハハハ、あんたたちの思う通りになるもんか。あたしはね、バカじゃないよ。(腕組みし)あんたたちより、ずーっと利口だよ! へっ」(またまたまた明日へ続きます‥‥)

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