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スティーヴン・ジェイ・グールド『ワンダフル・ライフ』

2010-02-28 14:47:00 | ノンジャンル
 朝日新聞で紹介されていた、スティーヴン・ジェイ・グールドの'89年作品「ワンダフル・ライフ」を読みました。
 1908年、カナディアン・ロッキー山中のバージェス頁岩から5億年前の奇怪な化石動物群が発見されます。その発見者で当時のアメリカ古生物学界の権威であったC・D・ウォルコットは、このカンブリア紀の生物たちを、現生する節足動物のグループとして分類しました。しかし、約半世紀後に展開されたH・ウィッティントンら三人の学者による研究は、彼の解釈に異議を申し立て、バージェス動物群を既存の分類体系のどこにも収まらない、奇妙奇天烈、妙ちくりんな動物だったとしました。それは5つの眼が前方に突き出ていて、?ノズル?状の物が顔にくっついているオパビニア、当時としては最大の動物で円盤のようなあごを持つ恐ろしい捕食者アノマロカリス、幻覚という意味の学名にふさわしい形状をしたハルキゲニアなどでした。この本ではウォルコットの仮説、ウィッティントンの仮説がそれぞれどのような背景から生まれてきたのかを丁寧に論述していきます。
 著者も古生物学者なだけに説明は専門的で最初の数十ページを読んだところで先を読むのを断念しましたが、ウィッティントンらによって再現されたカンブリア紀の動物たちの図がふんだんに掲載されているので、それを見るだけでも相当楽しめました。それらはまさに宇宙生物といった感じで、私たちが生きているこの世界とは全く相容れないものであり、それが過去に確かに実在したというのが信じられない思いでした。生物の多様性に興味のある方にはオススメです。

フレデリック・ワイズマン監督『高校』

2010-02-27 15:56:00 | ノンジャンル
 今日のスピードスケート女子チームシュートの準準決勝の日本チームの応援に、チーム青森のメンバーが来ていました。本橋さんが大っきな日の丸を手に満面の笑み、他のメンバーも応援を楽しんでいるようでした。ちょっとホっとするとともに、閉会式が少し楽しみになってきました。

 さて、フレデリック・ワイズマン監督・製作・編集の'68年作品「高校」を川崎アートセンターで見ました。フィラデルフィア郊外にある高校の日常を追ったドキュメンタリーフィルムです。
 スペイン語の授業。フランス語の授業。医師の指示で体育に参加できないという生徒に対し、無理矢理体育着に着替えさせようとする教師。女子の体操の授業。黒板の音符に従って声を出す女生徒たち。試験で誉められたにもかかわらず成績が悪いことを抗議する、女生徒の父親。体育館に集められた男子生徒の前で面白おかしく性教育の話をする産婦人科医。巨大な風船を取り合いする男子生徒たち。兵役に行っていた卒業生と話す教師。現在兵役についていて将来ベトナムの孤児の面倒を見たいという卒業生からの手紙を披露する女性教師。
 ここでも出演者はカメラをまったく意識していず、どうやって撮ったのか不思議に思いました。また、教師たちの顔がまさに'60年代という時代を反映していたようにも思いました。60年代のアメリカのハイスクールについて興味のある方にはオススメです。

森深紅『ラヴィン・ザ・キューブ』

2010-02-26 15:29:00 | ノンジャンル
 朝日新聞の特集記事「深いテーマ 忘れえぬ一冊」の中で挙げられていた、森深紅さんの'09年作品「ラヴィン・ザ・キューブ」を読みました。
 大手ロボット会社のプロジェクトリーダーとして働く28歳の女性・依奈は、ある日会社の創業者である会長に呼ばれ、新たなプロジェクトに参加することを命じられます。そのプロジェクトとは、アメリカの会社と共同で短期間の間に最先端の女性アンドロイドを開発するもので、その開発中は依奈と外部との連絡は一切遮断され、プログラムは極秘扱いでした。自社からはカスタムメイドの開発を専門とする特装と呼ばれる部門が参加することになりますが、そこでは通常の開発チームであれば数十人の規模でやる仕事を、天才的な開発者である一方、一切会社の規定には従わず自分の開発したアンドロイドのアリーに管理のすべてを依存している室長の佐原と、肉体的刺激を嫌うあまりに毛布を頭から被って仕事をしている孫、そしてヤンの3人だけで仕事を進めていました。今回のプロジェクトでは情報漏洩を防ぐため、情報伝達機能を持つアリーが使えないため、その代わりとして依奈が抜擢されたのでした。殺人的にハードな仕事が続き、神経を病むなどして脱落者が続く中、最先端の女性アンドロイドは完成しますが、それは敵を誘惑して敵がセックスをしかけた時に爆発するという兵器であり、米軍ユダヤ財閥の資金によって米軍に提供されることが依奈らに明らかにされます。依奈は無力感に捕われますが、佐原の心が自分に対して少し開かれているにの気付くのでした。
 ロボット開発の話だけに、部品の品番の管理とかの話が多く、かなり退屈しました。登場人物にもリアリティが感じられず、幻想は愛しいとか、教理問答のような様々な言説にもついていけませんでした。それでも最後まで読み進めることができたのは、筆者の筆力のおかげなのかもしれません。企業小説が好きな方にはオススメかも。

フレデリック・ワイズマン『DV―ドメスティック・バイオレンス』

2010-02-25 18:31:00 | ノンジャンル
 フレデリック・ワイズマン監督・製作・編集の'01年作品「DV―ドメスティック・バイオレンス」を川崎アートセンターで見ました。フロリダ州最大のDV被害者保護施設「スプリング」についてのドキュメンタリーフィルムです。
 フロリダの高層ビル群。住宅街の道を静かに走るパトカー。上半身裸で後ろ手に手錠を掛けられ連行される男。別の家では口を裂かれ全身血まみれで助け出される女性。「スプリング」で保護した直後に最初のカウンセリングを受ける女性たち。保護された幼児たちと遊戯をする男性スタッフ。青年が混じる中行われる小学低学年対象の授業。ディスカッションで自分の体験を語る被害者の女性たち。小児性愛の罪で刑務所に送られている父と兄と弟から性的虐待を受けた11歳の女児と、虚言癖のあるその母の扱いについて論議するスタッフたち。再びディスカッションする被害者の女性たち。夜に住宅街をゆっくり進むパトカー。前日眠っていないので今晩は寝せてほしいという妻と、どうしても今夜家庭の問題を話したいと譲らない夫のところへ呼ばれた警官が二人を説得するうち、夫が以前妻の車に向けて発砲し、拘留されたことがあることを妻は暴露します。そして夜の高層ビルの風景で映画は終わります。
 ディスカッションしているDV被害者たちが目に隈を作っていたり、鼻梁を切られた傷を持っていたり、頬に傷跡があったり、中には長年に受けたDVで顔の形が変わってしまっていたりということが何気なく写されていること、また命を削るかのごとく自分の体験を息せき切って話す女性など、胸に迫るものがありましたが、この映画も出演者がまったくカメラを意識していないことについて、どのようにして撮影されたのか謎ででした。シーンの間に挟まれる無人の風景も一つの特徴でしょう。DVに興味のある方だけでなく、映画一般に興味のある方にオススメです。

ポール・オースター『トゥルー・ストーリーズ』

2010-02-24 15:55:00 | ノンジャンル
 バンクーバー・オリンピック、女子カーリングは予選敗退が決まりましたが、中継の中で解説の小林さんがチーム青森の財政事情に言及していました。カーリングはお金がかかるため、今回のオリンピック前に初めて海外遠征を行えたとのこと。そうした不利な状況の中でランキング上位の国とここまで渡り合えたのは快挙と言えるのではないでしょうか? カーリングは競技生命の長いようなので、スキップの目黒さん始めチーム青森の皆さんを長い目でこれからも応援していきたいと思います。

 さて、ポール・オースターの'04年に刊行されたエッセイ集「トゥルー・ストーリーズ」を読みました。
 「赤いノートブック」は、著者が体験したり聞いたりした偶然の一致の話。
 「なぜ書くか」は、偶然の一致の話を中心とした忘れられないエピソード。
 「その日暮らし―若き日の失敗の記録」は、著者が生まれてから30代前半までの半生。
 「事故報告」は、偶然の一致の挿話3つ。
 「スイングしなけりゃ意味がない」も、偶然の一致の挿話3つ。
 「折々の文章」は、チャールズ・レズニコフから受けた温情、サルマン・ラジュディを讃える文章、ニューヨークでうまく暮らしていく4つの方法、ムミア・アブ=ジャマルの助命をペンシルヴェニア州知事に嘆願するスピーチ、ピエール・クラストルの翻訳本のあとがき、サッカーが戦争の代替物になっているという話、ホームレス排除に反対する文章、9・11に関する覚書、ブッシュに反対するニューヨークの民主主義の話、ニューヨークの多様性に関する文章を含んでいます。
 現実に起こった不思議な話のオンパレードですが、事実ということがかえって嘘くさく思えてしまうのはどうしてなのでしょうか? しかし、最後のニューヨークのリベラルぶりには深く共感しました。オースターの小説の面白さを期待して読むと裏切られた思いに襲われるかもしれませんが、単に読み物として読めば十分楽しめると思います。オススメです。