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手塚治虫『七色いんこ』

2018-01-31 05:37:00 | ノンジャンル
 朝日新聞で紹介されていた、手塚治虫さんの’81~82年作品『七色いんこ』全5巻を読みました。天才的代役・七色いんこが、代役をやりながら観客の中から高価な宝飾品を盗み出すという物語で、1話完結ものです。それぞれの話に実際の劇の名前が使われていて、ストーリーも実際の劇と重なり合うように作られていました。七色いんこを追う若い女性刑事が鳥アレルギーで、鳥と聞いただけで体が小さくなってしまうところとかも、同じく’73~’83年の手塚さんの作品『ブラック・ジャック』のピノ子を思わせ、主人公が並外れた能力の持ち主ということでも似た設定となっているのですが、話の終わりがほっこりとした感じで終わる回が多く、ジャグも豊富で、読んでいてとても幸せな気分になれる作品でした。

 なお、第4巻の解説を女優で著作家でもある斉藤由貴さんが書かれているので、一部引用させていただきたいと思います。
「私が手塚さんの作品と初めて出会ったのは、『リボンの騎士』というテレビアニメでした。
 そのころ、私は小学生。大好きなサファイア姫にものすごく憧れていて、テレビは毎週欠かさず見ていましたし、マンガの本もずいぶん買いました。
 それ以来、とにかくマンガは好きで、高校時代にはマンガ研究会にも入っていました。ただ読んでいたのは、もっぱら少女漫画ばかり。(中略)
 少年マンガにはあまり興味のなかった私でしたが、そのなかで例外的に読んでいたのが、手塚さんの作品でした。
 この『七色いんこ』はわりと最近になって知った作品ですが、主人公の七色いんこは、私にとって、ある種、羨望のまなざしで見てしまうキャラクターです。
 というのも、彼、七色いんこは名だたる名優が挑戦し、いろんな逸話まである有名な戯曲に次々に出演して、しかも、その度ごとに世紀の名優だと絶賛されるからです。
 私自身が俳優として活動しているからかもしれませんが、正直、とてもうらやましく感じました。だって、そうじゃないですか。俳優なら一度はやってみたいと思うような名作に次次と挑戦できるなんて、普通ではめったにありえないことなんですから。
 天才役者の七色いんこ。でも、彼はそれだけの存在ではありません。見事な演技で観客を感動させつつも、裏では泥棒もしてしまうんです。
 けれど、それこそが、手塚さんの作品の特徴かもしれません。人を純粋に感動させる芝居をしながら、犯罪行為である泥棒もしちゃう。そんな“背中合わせみたいな感じ”が、手塚さんの作品には欠かせない要素になっているような気がします。
 手塚さんの描くキャラクターはみんな独特です。それぞれ必要な役割をきちんと担って登場し、人物関係の在り方やキャラクターの置き方さえも絶妙で緻密。ものすごく完成された構成力みたいなものを読んでいて感じます。(中略)
 そして、驚くべきことは、それらが今の時代にあっても、全然古くないことです。
 例えば、お金持ちの御曹司でハンサムという男の人がいる。実は、その男、裏では別の顔を持っていて……なんて、そんな設定の仕方っていうのは、すごく古いような気がするんですけど、でも、手塚さんが描くと、なぜか心に残る。なぜかいつまでもいつ見ても新鮮さのあるキャラクターになっているんです。
 それはストーリーにしても同じことがいえると思います。
 なんでなんでしょう。
 それもこれも、手塚治虫という人のすごさに、私が飲み込まれているのかな?
 手塚治虫が描いたものなんだから間違いはない、みたいな目で見ちゃう部分っていうのが、もしかしてあるんじゃないかな?
 そんなふうに考えもしました。でも、そうじゃないんです。
 この『七色いんこ』にしても、ほんおちょっと演劇をかじったからって描けるものじゃないと思います。医学のことも歴史のことも雑学にも詳しい。手塚さんはお医者さんでもいらっしゃったから、医学のことは別と考えても、その知識量に敬服しました。よくまぁ、本当にたくさんのことを知っていらっしゃるなぁと。
そんな膨大な知識に裏打ちされて語られる話は、絵空事のようでただの絵空事ではないドラマとして存在できる。だから、今でもこうして古さを感じることなく読めるのだと思います。だけど、それだけじゃない。
 やはりなによりも素晴らしいのは、この作品にも描かれていますが、『究極的に一番大切なものは、博愛的な広い人間愛なんだよ』っていう手塚さんのメッセージが、話の根底に一本、力強く流れているからじゃないかなって思います。
 作品自体が面白いということだけでなく、私は、手塚さんの人徳とかそういうもので好かれ、慕われて、ずっと指示され続けているんじゃないかという気がしてなりません。(後略)」

 今まで私の中での手塚作品ナンバーワンは『アドルフに告ぐ』か『火の鳥』だと思っていましたが、これからは『七色いんこ』と言おうと思いました。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto

P.S 昔、東京都江東区にあった進学塾「早友」の東陽町教室で私と同僚だった伊藤さんと黒山さん、連絡をください。首を長くして福長さんと待っています。(m-goto@ceres.dti.ne.jp)

黒沢清監督『クリーピー 偽りの殺人』その3

2018-01-30 05:38:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 高倉家。高倉「お待たせしました」谷本(笹野高史)「警視庁の谷本と申します。原因はガス漏れでした。3体の遺体が発見されまして、田中親子と、あなたの元部下だった野上さんでした。心当たりは?」「西野です。あの中、平然とテレビを見ていました。あいつの言うことは全部嘘です」「高倉さんに先に話を聞くように、と言ってましたよ。信頼できる人だからって」。
 高倉「これを見てください」サキ「これ以上苦しめないで」「あと一つだけ。これが最後です。この人に見覚えは?」「水田さんじゃない」「思い出せないと言っていた。それが違うと言うことは思い出したんですね」「あなた、それでも人間ですか?」。
 路上でヤスコ「私、帰ります」西野「ヤスコさん、握手していいですか?」。ヤスコ、嫌々握手する。「絶対にうちに来て下さい。約束ですよ」となかなか手を離さない。逃げるようにして帰宅するヤスコ。
 自宅の扇風機の前で茫然となって座るヤスコ。
 テレビを見る西野。遺体をビニール詰めにするミオ。「お母さんに打ってあげていい?」「ああ」。苦しむミオの母を見て「ミオ、何やってんの?」。
 床下に遺体を運ぶミオと母親。
 高倉、ヤスコに「ちょっと出かけて来る。具合悪いの?」「ううん」。ヤスコの腕には無数の注射の痕。
 ミオの母、ナイフで西野を襲う。「何やってんだよ。ミオ、お前ちゃんと打ったのか?」。棒で反撃し、ミオの母を撃退する西野。拳銃を取り出し、ミオに「お前がやれ。お母さんが悪い。撃ち方、練習したろ? 頭だ」。ミオの母、上半身を起こす。「お父さんはどこ?」。西野、ミオから拳銃を奪い、ミオの母を射殺。西野「何でこんなことをやらせる? 面倒なことに巻き込むな。後始末をしとけ」。西野が去り、泣くミオ。(中略)
 ヤスコに西野「初めてでしたよね。どうぞ。どうぞ」。金属の扉を開くと、ミオの母の死体。動揺するヤスコ。「ミオがやっちゃったんです。ミオが逮捕されちゃう。ヤスコさんの責任です。ミオと相談して後始末をしてください」。ミオ「パックして、それから埋めるの」。
 ミオの母の手足をガムテープでぐるぐる巻きにする2人。ビニール袋を被せ、液体をその中に撒き、掃除機で中の空気を抜く。(中略)
 自宅で頭を抱える高倉。「ヤスコ?」。チャイム。「ミオです」。家に逃げ入るミオ。チャイム。ドアを叩く音。「西野です。ミオ、お父さんが謝るから戻っておいで」。高倉、ミオに「警察に電話して」。鍵を開けて西野は入ろうとするが、高倉がチェーンをかけたので、入れない。「これって誘拐ですよね」「何でうちの鍵を持ってる? こいつは西野じゃない」。パトカー、やって来る。ミオ「警察に電話してない」。警官、高倉を連行する。高倉「そいつは偽者だ」。
 谷本「野上の件ですが、借金をしていて、高倉さんを訪ねたところ、留守だったので、自暴自棄になって隣家に火をつけたと」「そんなバカな」「それに署の拳銃も一つ奪われています」高倉「西野は水田である可能性が高い。あの男に殺害された」「野上のパソコンには西野の検索をした跡がある。そういえば西野が来てます」。西野に会いに2人が部屋に入ると、警官「先ほど帰りました」。高倉「家に妻が一人でいる!」谷本「私も同行します」。
 高倉、自宅で「ヤスコ! ヤスコ!」
 谷本、西野宅へ。「ちょっと失礼」と言って家に入る。落とし穴にはまり、出された手につかまると、注射をされる。
 高倉、金属の扉の奥にヤスコがいるのを見つける。ヤスコ「あなたまでここに? 私はすっかり諦めた」「君の気持ちを全然理解できなかった。もう一度やり直そう。ちょっと待ってて」。部屋の奥に谷本を見つける高倉。西野、拳銃を持って現れ、「ヤスコさんの自由意思だ」と言って拳銃をヤスコに渡す。ヤスコは拳銃を西野に返し、「ほら」。高倉「あんたはそうやって皆人にやらせる。ヤスコ、こっちに来い。来てくれたら全力で君を守る」。ヤスコ、高倉の背後へ。「その拳銃を床に置け」。西野、逃げ出す。「たまにいるんだよ、おまえみたいなサイコパス。頭の病気だ。可哀そうに大学の事務の竹内さんなんて、おかしいと思っていたんだ。綱渡りの人生は終わりだ」。ヤスコ、高倉に注射をし、高倉、倒れる。
 ナンバープレートを外す西野。ミオ「ただいま」「引越しだ」。(中略)
 ヤスコが運転する車に全員乗っている。「とりあえず16号線を北上だ。よし。まだまだ行くぞ」。
 西野、建物の屋上から家並みを双眼鏡で見る。
 「新しい家が見つかった。高倉さん夫婦は僕のいとこ夫婦ということにしよう。皆、家族だ。だけどやっぱりマックスは邪魔だな。高倉くん、これ、やって」と拳銃を渡す。「これがあんたの落とし穴だ」と高倉は西野を射殺する。ミオ「ザマあみろ」と笑う。ヤスコは高倉と抱き合い、泣き叫ぶ。

 香川照之さんの怪演ぶりが印象的でした。
 
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黒沢清監督『クリーピー 偽りの殺人』その2

2018-01-29 06:37:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 路上で西野「あっ、奥さん、今度本当に妻に会ってやってください。鬱病でどうすればいいのか。もう精も根も尽き果てました」。
 高倉「サキさん、思い出したことを教えてください」。サキ「失踪前後の家族のことです。母が誰かと電話していました。見てはいけないものを見てしまったような気がして。母はいくつかの金融会社から借金をしていたので、相手に支配されていたのだと思います。別の日にも母は電話していました。ひそひそと。ふっと笑ったり甘えてみたりして。警察にはこの話はしていません。父は仕事が忙しく、ほとんど会いませんでしたが、やはり深夜に電話しているのを見ました。ごく普通に、笑ったりちょっと怒ったり。あれも母と同じ相手かもしれません。どうしてそう思うかは分かりません。兄は高校生で、たまに遅く帰ってきて酒の臭いをさせていました。誰かに無理やり飲まされたようで。それも同じ人だった気がします」(中略)
 高倉「ただいま」ヤスコ「お帰り。西野さんに料理を教えることにしたの。ミオちゃんにかな?」。4人、食卓につく。高倉「俺、ワインを取ってくる」西野「おいしい。奥さん、料理の天才ですね」「それはミオちゃんが作ったんですよ」「これもうまい」高倉「西野さん、仕事は何を?」「ちょっとした協会の理事です」「どんな協会?」「株式関係の」「具体的には?」「この仕事はきれいごとでは済まないものなんです。娘の前で話すことじゃないし、また改めて。その時には面白い話もできますよ」。
 高倉「変わった人だ。信用できない。勘だが」「刑事の? あなた、変わらないわね」。
 サキ「修学旅行に行く前の日、居間で3人が話し合っていたんです。ちょうどいい。一週間家を空けるのでと。誰かと会うつもりだったのでは?」高倉「その人を見かけたことは?」「その人がじっと見つめていたような」「もっと具体的に」「その人は見上げていました。私は見下していてちょうど目が合って。そう、この窓からです。隣の庭から見上げていました」野上「水田の家です。今は空き屋です」サキ「あまり親しくしていませんでした。名前も記憶にありません」高倉「これで少しは近づけた。3人はどこかで生きているでしょう。多分」。
 電車内。老人に席を譲る西野。目が合い、会釈する西野と高倉。
 高倉「西野さんも電車に乗られたりするんですね」西野「週に一回会合があって。以前は毎日乗っていました。大検出版の営業をしてました」「私は東洛大学の教師をしています」「事務に竹内さんっていましたよね。懐かしいなあ。それじゃあまた。一杯やりましょう」。
 水田宅を捜索する野上。異臭に鼻をハンカチでふさぐ。やがてビニール袋に包まれた遺体を発見する。
 アナウンサー「廃屋で遺体が発見されました。失踪していた家族の隣の家で、遺体は5体。身元は不明です」。野上「本田家の3人と水田家の2人だ。これで全員ってことになると、サキが言っていたのは誰のことだ?」。
 ペットの犬のマックスがいないのに気づくヤスコ。マックスは公園で西野といる。「逃げ出したみたいだったので、保護してました。これからは奥さんのことをヤスコさんと呼んでもいいですか? もっと自由に話し合いましょう。(自分の顔をヤスコの顔に近づけて)ご主人と僕とどっちが魅力的ですか?」。
 野上「水田は失踪前に会社に行っていなかった。死んだのは水田じゃない」。
 路上でミオに声をかけられた高倉「何?」ミオ「高倉さん、あの人お父さんじゃないの。全然知らない人」。西野、ヤスコと現れ、「あっ、どうも」ヤスコ「マックスが逃げて西野さんが捕まえてくれたのよ」(中略)。
 階段で電話するヤスコ。高倉「なんで居間でしない?」。キレるヤスコ。高倉「急にどうした?」ヤスコ「分からない」。
 食卓。ヤスコ「さっきはごめんなさい。どうかしてた。電話の相手は高校時代の友達。新しい環境になかなか慣れなくて」「実は俺も昔の事件に関わっている。分かってる。自分が刑事に向いてないって」。
 マックスを散歩させる高倉。
 高倉、野上に「西野雅之について調べてほしい。変なことに気づいた。本田家と水田家の位置関係と、我が家と西野家との位置関係が同じなんだ」。
 高倉、近所の人に「西野さんのご主人はずっとあの人でしたか?」「あれは鬼よ。人間じゃない」。
 書類。「水田文夫 職業;協会理事」「西野雅之 職業;協会理事」。
 野上、西野宅を訪れる。西野「ちょっと待っててください」。野上、西野雅之の免許証を見ると、西野と別人。西野がなかなか出てこないので、「失礼します」と言って家の中に。金属の扉を引き開ける野上。
 帰宅する高倉。いきなり隣家の田中宅が爆発。
 翌朝。現場検証。(また明日へ続きます……)

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黒沢清監督『クリーピー 偽りの殺人』その1

2018-01-28 08:15:00 | ノンジャンル
 WOWOWシネマで、黒沢清監督・共同脚本の’16年作品『クリーピー 偽りの殺人』を見ました。
 青年「やりもしないで諦めるのは嫌い。どうせなら楽しい方がいい」刑事(西島秀俊)「それは例えばどんなこと?」「何でもいい。本人がやりがいを感じられれば」「犯罪でも?」「そこまでは言ってない。僕にもモラルがある。刑事さんが理解するのは難しいかも」「残念だな」。
 「高倉さん、今から松岡を拘置所へ移送します」「野上、彼は完璧なサイコパスだ。あんな貴重なサンプルはめったにない。8人も殺してる」「単なる馬鹿としか思えませんが」「あと1日あったら聞いてみたいことが山程ある」「松岡が逃げました!」。人質の首にナイフを当てる松岡。高倉「ここからは逃げられない」と両手を上げて松岡に近づく。「やってみないと分からない。どうですか? 俺のモデルぶりは」と言って、高倉の腹を刺し、人質の首も裂く。射殺される松岡。
 高倉「ヤスコ、マックスはこれからは外だな」ヤスコ(竹内結子)「ええ、何年振りでしょう。こんなにのんびりしたの」「警察を辞めて、大学で学生と話していると結構楽しいよ」「お隣への挨拶に行きましょう」。
 ヤスコ、隣に住む中年女性の田中に「これ、つまらないものですけど」「うちはいいわ。近所づきあいは義理を生むし。寝たきりの母もいるしね」。ドアを閉められる。高倉「次へ行こうか」。やはり隣の西野宅。ヤスコ「今度はあなたがチャイムを押してよ」「もう遅いから今度にしようか」。
 高倉の大学の講義。「連続殺人犯は3つの類型に分かれる。秩序型、無秩序型、混合型。最初の2つはFBIが完璧に解明しているが、最後のは分析不可能だ」。
 高倉「大川さん、授業後、先生方は何をしてるんですか?」「自分の分野の研究ですね」「大川さんは今何を?」「ここ10年に関東で起こった凶悪事件です」「この一つ、離れているのは?」「日野市一家失踪事件です。6年前に3人が失踪しました」「なぜ事件扱いなんですか?」「一人妹が残されていて。当時は中3でした。証拠能力がないとされて」「彼女は今どこに?」「さあ、現場に行ってみますか? 本物の刑事が現場検証に行くところを見てみたいので」。
 西野宅。ヤスコ「昨日越してきた高倉です」西野(香川照之)「中身はチョコ?」「ええ」「嫌いじゃないです。犬は飼ってます?」「ええ」「犬も好きです」「ちゃんとしつけはしてますから」「しつけなんて必要ないでしょう」。
 大川「あそこが失踪した本田家です。今では誰も住んでいません。何かピンと来ますか?」(ヤスコの独白)「分からないが、これ以上介入すべきでない」。
 高倉「ただいま」ヤスコ「おかえり」「隣の西野さんち、灯りがついてるぞ」「はい、お待たせ」「今日の料理は凝ってるな。うまい!」「良かった。今日何かあった?」「大したことじゃない」「西野さん、感じ悪かったわ」「凶悪犯は皆近所の人は感じが良かったって言うよ。その点、安心だな」。
 大学の講義。
 高倉「よくここがわかったな」高倉の元部下の野上「電話してもつながらなくて」「携帯の番号は変えたんだ。今さら何の用?」「日野市の現場に行かれたそうですね?」「ああ、行ったよ」「なぜ事故なんでしょう?」「女の子が一人残されたのが気にかかる。中学生なら結構大人だ」「犯罪心理学なら高倉さんが頼りになると思って。会いませんか? 彼女に。高倉さんなら会ってくれるかも」「その前にもう一度現場に。犯罪現場特有の雰囲気がしたんだ」。
 犬が西野に襲いかかる。駆け寄るヤスコ。西野「こないだは申し訳ありませんでした。感じが悪くて。この辺の人は近所づきあいがないものだから、つい自分も。おーい、ミオ(と女子中学生に呼び掛ける)。今度は是非奥様も」「それはどういう意味ですか?」。
 野上「ここに来るのは初めてです」高倉「嫌な感じだな」。そこに来ていた女性に高倉「本田サキさんですね。こっちは助手の野上です。今日はどうしてここに?」サキ(川口春奈)「前に住んでた家ですから」「何か助けが必要なら」「失礼します」「無神経なことを警察やマスコミに訊かれたでしょう。なぜ戻ってきたんですか?」。
 路上。西野「高倉さん? 西野です。うちのこと根ほり葉ほり訊かないでください。信頼できそうだから言っているんです」。
 ヤスコ「あなた、何かあった?」高倉「隣の西野さんに言いたい放題言われたよ。近所づきあいはやめとけ」。
 本田サキ宅。サキ「正直言って私にもよく分からないんです。記憶があいまいで。それでも最近断片的なイメージを思い出すようになってきて」「10のうち、1つは真実ですよ」。
 ヤスコ、西野に「シチューを作り過ぎたので、よかったらと思って」「ありがとうございます。会いますか、妻に? さあ、どうぞ。何か変ですか?」ミオ「お母さん、友達いないから」「今日は帰ります」「ご主人は素敵な方ですね」。(明日へ続きます……)

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斎藤美奈子さんのコラム・その16 & 山口二郎さんのコラム・その2

2018-01-27 07:16:00 | ノンジャンル
 恒例となった、水曜日の東京新聞に掲載されている、斎藤美奈子さんのコラム「本音のコラム」の第16弾。
 まず、1月17日に掲載された「同じ日本人」と題されたコラム。
「十四日、杉原千畝を顕彰するリトアニアの『杉原記念館』を訪れた安倍首相は『杉原氏の勇気ある人道的な行動は世界中で高く評価されている。同じ日本人として誇りに思う』と語った。
なんだかなあ。杉原は『日本人』の立場を超えた国際人として行動した点が評価されているわけでしょ。それを自国の手柄みたいにいう?
 一方、政府は来日中の『核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)』のベアトリス・フィン事務局長と首相との面会を断った。これまた、なんだかなあ、である。昨年、ICANがノーベル平和賞を受賞した際にも無視した安倍首相。そんなに『日本人』が好きなら、平和賞の演説を行ったサーロー節子氏や核廃絶運動を闘ってきた被爆者も『同じ日本人として誇りに思う』とコメントすればよかったのに。ノーベル文学賞のカズオ・イシグロ氏には『長崎市のご出身で』『日本にもたくさんのファンがいます』という祝辞を嬉々として出したくせに。
 自分に好都合な人物や事象は『民族の誇り』に矮小(わいしょう)化し、不都合な人物や事象はあからさまに退ける。中華思想っていうんですか。どちらも国際的な評価に耳をふさいでいる点では変わらない。そのうえ、慰安婦問題でこじれていることを理由に平昌五輪への出席を見送る? この人とは『同じ日本人』でいたくないよ。」

 また、1月24日に掲載された「両社の言い分」と題されたコラム。
「『いまごろになってなんで蒸し返すんだよ』がJ社の言い分である。『金まで払って、これでおしまいにしようと合意したんだ。追加措置など受け付けられるかよ』
 『いや、あの合意ではだめだとわかったんだ』がK社の言い分である。
『合意は合意だ。破棄はしない。われわれの要求は彼女たちに謝罪してほしい、それだけだよ』。
 彼女たちとは、かつてJ社の社員のために性の奉仕をさせられたK社の女性のことである。K社では、最近社長が交代した。J社との合意は2年前、前社長のもとで交わされたもの。前社長が事実上更迭された後に、就任した新社長は、被害者の女性たちと会い、当事者の意見も聞かず、社長同士で合意したことを謝罪した。J社はそれも不快だったらしい。
 当時は合意の破棄も視野に入れていたK社だったが、『せめて正式な謝罪を』に落ち着いたのは彼らなりの譲歩だったのだろう。が、J社はその交渉すら突っぱねた。
 以上、慰安婦に関する日韓合意をめぐる、最近のゴタゴタである。ただ謝罪してほしいというだけの韓国の要求を、日本政府はなぜそこまで強く拒否するのか。こちらはどこまでも加害者だ。問題を前向きに解決するだめのアイデアを、両国で出し合えばいいじゃないの。約束が違うといって怒る加害者。盗っ人たけだけしいという言葉を思い出す。」

そして日曜日の東京新聞に掲載されている、山口二郎さんのコラム「本音のコラム」の第2弾。
1月21日に掲載された「独立した良心」と題されたコラム。
「リトアニアを訪問した安倍首相は、第二次世界大戦中、ナチスドイツに迫害され、外国に逃げようとしたユダヤ人にビザを発給した杉原千畝・駐リトアニア公使(当時)を日本の誇りと称賛した。そのこと自体には同感である。問題は、杉原の功績を現代日本にどのように生かすかである。
 当時、ドイツと同盟国だった日本はユダヤ人保護には否定的だった。杉原は外務省の訓令を無視して、個人としての良心からビザを発給し続けた。上位下達を旨とする官僚主義の対極にある人物だったからこそ、危険を冒してまでユダヤ人を助けたのである。この問題は現代社会の大きな問題である。杉原のような良心的人物の対極には、自分の思考を放棄して、非人道的な命令に唯々諾々と従うアイヒマン(ホロコーストに加担したナチス親衛隊将校)もいた。
 日本外務省は長い間杉原を冷遇した。いまなお権力者の顔色をうかがうアイヒマン型官僚が跋扈(ばっこ)する現代日本においてこそ、杉原精神が必要である。首相が杉原をそこまで称賛するなら、公務員研修や学校教育で、組織の規律は順守する一方で、正義、人道に関わる問題についてはしばしば個人としての判断で命令を破ることも必要だと教えるべきである。それは、今の日本政治の方向を百八十度転換することを意味する。」

 どれも胸がすくような、すがすがしいコラムでした。

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