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イェジー・スコリモフスキ監督『早春』

2011-01-31 06:10:00 | ノンジャンル
 イェジ-・スコリモフスキ監督・共同脚本の'70年作品『早春』をWOWOWで再見しました。
 15才で学校を中退し、プール付きの公衆浴場に就職したマイケルは、セックスの場と化している職場で奇妙な体験を重ねていきます。同僚のスーザンに好意を持つ彼は、彼女が婚約者とポルノ映画館に入るのを見ると、その後列から彼女の胸を触り、婚約者が映画館の支配人を呼びに行っている間に彼女からキスされ狂喜します。客同士でセックスしようとする現場を見てしまい、気持ちの整理がつかず、つい火災警報を押してしまうマイケル。スーザンをモノにしようと狙っているボイラー係が彼女を車で連れ去ろうとするのを制止しようとして、自分の自転車を車に轢かれてしまいます。ガールフレンドだったキャシーが職場にやって来て、裸になり、好きにしてと言いますが、マイケルは相手にしません。スーザンと婚約者が会員制のクラブに入っていくと、外で何回もホットドッグを買って待つマイケルは、ストリッパーの看板がスーザンに瓜二つなのを見て、その看板を盗み、売春婦の部屋に匿ってもらいます。看板を持ったまま、地下鉄に乗ったスーザンを追い、車内で彼女に迫るマイケル。マイケルは深夜のプールに看板を持ち込み、全裸になって飛び込み、看板を抱きます。翌日、学校の雪中マラソンに飛び入り参加した後、スーザンが乗って来たボイラー係の車をパンクさせたマイケルは、スーザンに殴られて歯を折りますが、その時、スーザンは前夜に婚約者から貰ったダイヤを雪の中に落としてしまいます。二人は雪ごとビニール袋につめこみ、水を抜いたプールに持ち込むと、ヤカンを使って溶かし、ダイヤを探します。婚約者に遅れると電話するスーザンに、ダイヤを見つけたマイケルは腹を立て、ダイヤを呑み込もうとしますが、スーザンは全裸になって思いとどまらせ、そのままマイケルは童貞を失います。事が終わると、すぐに婚約者からの電話に出るスーザン。マイケルは去ろうとするスーザンに、自分とのセックスの感想をしつこく聞き、それでも去ろうとするスーザンに天井からぶら下がるライトをぶつけると、スーザンは頭から血を流して、プールにたまりつつある水の中に倒れます。マイケルは水中で彼女の死体を抱き締めるのでした。
 ジャン=ピエール・レオの映画を見ているような、まさに『マイケル氏の不思議な国の奇妙な冒険』とも言える魅力的な映画でした。次から次へと繰り出されるアイディアは、瞠目すべきものだったと思います。ロンドンのドキュメンタリーを見ているような気にもなりました。文句無しにスコリモフスキの代表作の一本です。

アルフレッド・ジャリ『ユビュ王』

2011-01-30 09:41:00 | ノンジャンル
 山田宏一さんが著書『ゴダール、わがアンナ・カリーナ時代』の中で紹介していた、アルフレッド・ジャリの1896~1901年の作品『ユビュ王』を読みました。4つの戯曲とジャリの講演記録などからなっている'70年に刊行された本です。
 『ユビュ王』は、妻の「ユビュおっ母」に焚き付けられたユビュ親父が、伯爵に任じてくれたばかりの王を暗殺して王冠をせしめ、息子たちも殺しますが、末っ子のプーグルラスだけが生き残り、亡者たちから復讐の剣を授けられます。財産を没収するために全ての貴族を自ら死刑にしたユビュ親父は、次に司法官と財政家たちも全員墓穴へ落とし、自ら税の徴収に向かいますが、ユビュ親父に加担するも後に親父によって投獄された大尉が脱獄して、ロシア皇帝の元へ馳せ参じ、共に親父を倒さんと兵を起こし、それに対抗して親父がロシアに向けて進軍してる間に、親父の財産を横取りしようとしていたユビュおっ母はプーグルラスによって追放され、ロシア軍から逃げて来た親父と出くわし、船でフランスへ逃げるという話。
 『寝とられユビュ』は、多面体の研究者アクラスの屋敷を乗っ取ったユビュ親父が、おっ母を寝とった男を串刺しにするため、その実験台になる者を探し、金持ちを捕らえるという話。
 『鎖につながれたユビュ』は、それまでの行動を反省したユビュ親父が、自ら奴隷となり、無理矢理伯爵とその姪の召使いとなり、姪の婚約者に牢獄に送られ、望み通り裁判で奴隷船送りとなりますが、結局最後には立場が逆転し、奴隷船の主人となってトルコへ向かうという話。
 『丘の上のユビュ』は、『ユビュ王』を短縮したものです。

 ジャリ本人が言っているように、ユビュの心を占めている三つのものとは、「形而下学」(物質的な物)と「ゼニっこ」と「くそったれ」であり、はちゃめちゃなキャラクターであるとともに、使われている文体も、卑語、造語、掛詞、シャレなどのオンパレードで、ジャリがシュールレアリスムやダダイスムの先駆者と言われているのもうなずけるものでした。『ユビュ王』の冒頭で、いきなりユビュ親父が「くそったれ!」と叫ぶというのもすごく、初演の時にその一声で大騒ぎになったというのも目に浮かびます。彼はジャン・ヴィゴやボリス・ヴィアンが早くして世を去ったように、アル中で34才で亡くなっているのですが、こうした話を聞く度に、やはりフランスというのは文学の国なのだなあと思ってしまうのでした。19世紀末にこんな戯曲が書かれていたというのはまさに奇跡だと思います。文句無しにオススメです。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/^m-goto)

ジュールス・ダッシン監督『街の野獣』

2011-01-29 07:19:00 | ノンジャンル
 ジュールス・ダッシン監督の'50年作品『街の野獣』をWOWOWで再見しました。
 フィルの経営するロンドンのナイトクラブで客引きをしているハリー(リチャード・ウィドマーク)は、大物になりたいばかりに様々な儲け話に手を出して失敗を重ね、恋人のメアリー(ジーン・ティアニー)の世話にばかりなっています。ある日偶然に会った伝説のプロレスラー・グレゴリウスに取り入ったハリーは、彼でプロレス興行を行う話をフィルに持っていきますが、相手にされず、フィルの愛人でナイトクラブを実際に切り盛りしているヘレンに、200ポンド自分で作れたら残りの資金をフィルに出させてやるとからかわれます。怒ったハリーは金策に走りますが、集められず、結局ヘレンのところに戻ると、ヘレンは黙って200ポンドを差し出し、それをフィルに見せて彼から金を引き出し、合わせた金で自分が買った営業停止中のナイトクラブの営業許可証を手に入れ、一緒にそのナイトクラブを経営しようと提案します。一刻も早くフィルと別れたがっているヘレンの勢いに飲まれて、ハリーは同意し、その金をフィルに見せに行きますが、フィルはすぐにその金がヘレンによって盗まれた自分の金であることに気付きます。しかしフィルは気付いたそぶりを見せず、ハリーを陥れるために残りの資金を出します。ハリーは営業許可証を偽造し、金をプロレス興行に注ぎ込みますが、最後になってフィルは金をもう出さないと言い出し、グレゴリウスが毛嫌いしているプロレスラーのストラングラーを出演させるなら金を出そうと言い出します。ハリーはストラングラーを焚き付けて、彼がグレゴリウスに対戦を直談判させるように仕向け、グレゴリウスもそれを受けざるを得なくなります。ハリーは再びフィルのところに行きますが、フィルはハリーの行為を、彼の目の前で、ロンドンのプロレス興行を牛耳るグレゴリウスの息子・クリストに知らせ、ハリーを追い詰めます。ハリーはメアリーの部屋を家捜しして彼女が苦労してためた金を持ち出し、彼女はそれを知って泣き崩れます。その頃、練習場でグレゴリウスとストラングラーはケンカとなり、やがて本気の勝負となって、ストラングラーは倒されますが、そこに駆けつけたクリストの腕の中でグレゴリウスも息を引き取ります。その場を逃げ出したハリーに対し、クリストは父の仇を取るために賞金をつけて彼を捕まえ殺そうとします。追いつめられたハリーは、昔からの知り合いの老婆に匿われ、それまでの人生を悔いているところへ、足音が近づいてきますが、現れたのはメアリーでした。彼女の優しい言葉に返す言葉のないハリー。やがてハリーが自分を売ってクリストから懸賞金を貰ってくれと言い出すと、彼女は別れの言葉を言って去ります。それを追ったハリーは、近くにいたクリストを見て、メアリーを裏切り者呼ばわりし、結局ストラングラーに絞め殺されて海に捨てられます。メアリーは親切な隣人の若者アダムの腕の中で号泣するのでした。
 コントラストの効いた見事な画面で、全編ロケとは思えないほどの滑らかな美しさでした。構図もカメラワークも見事で、暗い情念を描いた50年代映画の傑作の一つと言えるでしょう。ウィドマークにとってもティアニーにとっても代表作の一つであると思います。必見です。なお、詳しいあらすじは、私のサイト「Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)の「Favorite Movies」の「その他」のところにアップしておきますので、興味のある方は是非ご覧ください。

ポール・オースター『オラクル・ナイト』

2011-01-28 06:38:00 | ノンジャンル
 ポール・オースターの'03年作品『オラクル・ナイト』を読みました。
 34才でブルックリンに住む私は死の寸前まで行く大ケガをした後、5月に退院し、毎日散歩をしながら徐々に回復を目指していました。そして1982年の9月18日、私は、ふと立ち寄った文房具店「ペーパー・パレス」で、青いポルトガル製のノートを見つけ、気に入ってしまいます。言葉は皆が使うので文房具店を開くのが夢だったという店主のM・R・チャンは、今後も欲しい物があったら取り寄せると私に約束するのでした。そしてその日から、私は書くことを再開することになったのです。
 私は以前に、友人であり尊敬する先輩作家でもあるジョン・トラウズから、若い頃にジョンが熱愛していた作家の何人かの作品を読み直していることを聞き及んでいて、中でもダシール・ハメットの『マルタの鷹』第7章のフラット・クラフトのエピソードについて面白く語っていたことを覚えていたので、そのエピソードの続きを先ず自分で書いてみようと思いました。そのエピソードとは、ある日頭上の梁が落ちてきて危うく死にそうのなった男が、それまでの人生を投げ打って忽然と姿を消してしまうという話でした。
 私は書き始めます。「主人公の編集者ニックは、敬愛する作家シルヴィア・マクスウェルの未発表作品『オラクル・ナイト(神託の夜)』の原稿を彼女の孫娘ローザ・レイトマンから持ち込まれる。彼女に一目惚れしたニックは、その晩、妻を誘ってレストランで食事をしている最中、口論となって気まずい雰囲気になった時、近くにローザがいるのに気付く。その夜、散歩に出たニックは、上方の壁面から落下してきたガーゴイルの彫刻の頭部であやうく殺されそうになり、そのことが新しい人生への直感となって、その足で飛行機に乗りカンザスシティへ向かい、今までの人生を捨て去ってしまう。」
 とそこまで書いたところで、妻のグレースの存在に気付きますが、彼女は執筆中に私が部屋にいなかったと言います。
 その夜、ジョン・バロウズとの恒例の会食をするために、いつものレストランではなく、彼の自宅を妻のグレースと訪ねますが、バロウズは、彼の死んだ二番目の妻ティーナの弟の話を始めます。弟は段ボール箱の中から3Dビュアーを見つけ、それを見たところ、ティーナが16才の時の誕生パーティを撮影したものであることが分かり、弟は一気に30年前に戻され、喪失感を味わった直後に、その機械は壊れたと言うのです。その話を聞いた私は、鼻血を出してしまいますが、その直後、ジョンの机の上に青いポルトガル製ノートがあるのを発見し、ジョンもまたそのノートを愛用しているのを知るのでした‥‥。

 全体が複文的な構造を取っており、物語の細部を語るための著者による注釈も多く、「人間の思考自体が複文的構造を取っている」という訳者の柴田元幸さんの指摘にもうなづけるものがありました。ここに収まりきらないエピソードもまだまだあるのですが、特に54ページにある、「私」が作ったグループ「青組」の定義、つまり、「ユーモアのセンス、人生の皮肉を楽しめる目、世界の不条理さを認める能力、けれどさらに、ある種の謙虚さと思慮深さ、他人に対する思いやり、寛大な心(中略)鋭敏な観察者にして、微妙な道徳的判断も下せる人間、正義を愛する者」には深く共感するものがありました。面白い小説というだけでなく、人生の深いところに響いてくる小説でもあります。文句無しにオススメです。なお、あらすじの続きは私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)の「Favorite Novels」の「ポール・オースター」のところにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。

サム・ライミ監督『死霊のはらわた』

2011-01-27 06:18:00 | ノンジャンル
 サム・ライミ監督・・共同製作総指揮・脚本の'81年作品『死霊のはらわた』をWOWOWで見ました。
 紅葉した湿地帯の森の中を、無気味な音とともに、カメラが猛スピードで前進していきます。その森の中の打ち捨てられた木造の別荘に5人の若者がやって来ます。シェリルは深夜に柱時計をデッサンしていると、時計が止まり、「来るんだ」という声が聞こえ、手が勝手に顔を描き出し、床板の蓋がひとりでに開きます。5人が集まって乾杯を始めると、床板の蓋がまた勝手に開き、スコットとアッシュはそこから通じる地下の奥にライフル、無気味な本、テープレコーダーを見つけ、一階に運びます。テープを再生すると、人の肉と血によって作られた「死者の書」の呪文を読むと、死霊が蘇り、古家にはびこると声が語り、テープの先にはその呪文が録音されていました。その呪文が流れると、地面の下から赤い光が出現します。夜、一人になったシェリルは気配に誘われて森の中へ行くと、木のつるに手足を縛られ何者かに犯されそうになり、何とか家の中に逃げ込みますが、ケガを負っていたことから悪霊に乗り移られてしまいます。スコットらは変わり果てた姿のシェリルを何とか地下室に押込めますが、その後、窓を突き破って侵入してきた悪霊にシェリーが乗っ取られ、暖炉の火で燃え上がりながらスコットに襲いかかり、手首を切断され、ナイフで腹を刺されても蘇るので、最後にはスコットによって斧でバラバラにされます。スコットらが彼女を埋葬した後、眠っていたリンダも悪霊に乗っ取られ、哄笑し続けるリンダをアッシュがライフルで撃とうとすると、リンダは一旦は正気に返り助けを求めますが、結局また悪霊に乗っ取られたため、アッシュは彼女を家の外に引きづり出します。シェリーから受けた傷がもとでスコットは死に、アッシュは家に戻ってきたリンダに襲われ、腕を剣で突かれますが、何とかやっつけます。彼女を埋葬しているとリンダは蘇り、アッシュの足にケガを負わせますが、アッシュは角材でメッタ打ちにし、最後には、飛びかかって来た彼女の首をスコップで切断し、やっつけます。部屋に戻るとシェリルは床から抜け出した後で、アッシュはライフルの弾を取りに地下室に行くと、そこで血の雨を浴びます。部屋に立てこもろうとしますが、壁を突き抜けてきたシェリルの手に襲われ、彼女の顔をライフルで撃ち抜きますが、スコットが襲いかかってきます。スコットの目を押しつぶし、彼の腹に突き刺さっていた棒を抜くと、そこから血がほとばしり出て、スコットは倒れます。しかしその後もスコットはアッシュの足を掴み、侵入してきたシェリルは金棒でアッシュの背中を乱打しますが、アッシュは「死者の書」を暖炉に投げ入れることに成功すると、スコットとシェリルは動きを止め、体が溶け出し、最後にはそれぞれの体から巨大な手が突き出して、粘液を出しながら無数の虫が這い出します。朝を迎え、外にでる血まみれのアッシュ。しかしカメラはまた無気味な音とともに森を猛スピードで前進して行き、アッシュに辿り着くと、彼は恐怖の眼差しでカメラを一瞬見て、画面は暗転します。
 悪霊のおどろおどろしい声、生首は飛び、四肢は切断され、その仰々しいほどの残酷さには、かえって清清しささえ覚えました。デビュー作からライミ監督、飛ばしに飛ばしているといった感じです。映画好きの方には文句無しにオススメです。