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溝口健二監督『雨月物語』その2

2017-07-31 06:06:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 若狭が着替える影。
 舞う若狭。やがて男の歌う声も聞こえてくる。若狭「あの声のうれしそうなこと。亡くなった父の声です」従者「憎むべき信長に殺されたのです。ご祝言をお喜びになっているのです」。
 眠る源十郎。源十郎の顔を間近から見る若狭。目覚め、驚く源十郎と微笑む若狭。
 湯に入る源十郎。若狭「私は魔性の女でしょうか? 私のために命を尽くしてもらわねば」と自分も裸になり湯に入っていく。
 野原。源十郎と若狭、ふざけ合い、源十郎「もう放しませんぞ。天国だ」。
 女の声「誰か、助けて!」野武士「食うものはねえのか?」宮木、源一に「早う、早う、しっかりしなさい」村の女性、宮木に「これは弁当代わりのお餅です。裏街道を行くように」宮木「ありがとうございます」。略奪する野武士。
 山道で野武士「食い物はねえか?」宮木「これは子供の食べ物です」。野武士たち、宮木から無理やり餅を奪い、宮木は一人から槍で刺される。倒れる宮木。その背中で泣く源一。
 藤兵衛、落武者の一人を背後から槍で刺して殺し、その胸元にあった書状を奪う。
 藤兵衛、武士の大将に「これをご覧ください」大将「お前みたいな下郎が、あれを殺したのか」「確かに私が突き殺しました」「では褒美を取らせる」「馬をもらい家来にしてほしいのです」「よし、かなえてやろう」。
 兵士の行列の先頭を馬に乗って進む藤兵衛「この足で国に帰る」。部下からの要求で宿を取ることにする。立派な武士になるコツを問われた藤兵衛は「知恵と腕と明敏な頭脳だな」と演説をする。座を離れた藤兵衛は阿濱に出会う。「立派な侍になったわね。私もこんなに出世したわ。さぞ満足でしょうね。今夜私をお買い」「お前のためにやったことなんだ。立身出世すれば褒められると思って」「私は穢れてしまった」「元のお前にする」「死にきれなかったのよ」と泣き出す阿濱。
 着物屋で朽木屋敷にものを届けてくれと源十郎が言うと、「帰ってください」と言われる。
 道すがら、源十郎は僧から声をかけられ、よく顔を見せてくれと言われる。僧は死相が現れていると言い、怪しい者に会ったりしなかったか、妻子はないのか、いるのならこのままさまよっていれば命がなくなる、死霊をはらってやるから来なさいと言う。
 若狭「まあ、美しい。こんなに立派な瓔珞を。あんまりお帰りが遅いので心配していました」従者「もう外に出ないでください」若狭「この屋敷を捨てて、私の国に行きましょう」源十郎「許してください。私は嘘をついていました。妻子がいるのです」従者「すべて忘れてください」源十郎「帰らせてください」。源十郎に近づいた若狭は驚いた様子で身を引く。「何て恐ろしいことを」。源十郎の上半身には梵字が書かれている。若狭「いつまでもおそばに」従者「若狭様は不幸のままでお亡くなりになりました。そこでせめて一度でいいから幸福な日々を過ごさせてあげたかったのです。お心にお咎めはないのですか? 末長く姫様と」。源十郎、刀を振り回して暴れ出す。逃げ出す2人。やがて源十郎は庭で大の字になって寝る。
 目覚めると、侍たちが源十郎を囲んでいて、刀を盗んだのはお前だなと言って、刀とともに源十郎が持っていたカネも没収される。廃墟をふらつく源十郎。
 帰宅する源十郎を宮木は迎える。源一を抱き、「大変な過ちをしてきた。やっと目が覚めた」と源十郎。宮木「そんなお話はおやめになって。お酒もできています。お鍋も食べごろに煮えていますから」「心が晴れた。格別の味だ。いやに静かだなあ。源一を寝かせてやろう」。源十郎も一緒に眠ってしまう。それに布団をかけ、繕い物をし始める宮木。
 朝になって村長が訪ねてきて、宮木は野武士に殺されたことを源十郎に伝え、それ以降源一を自分が預かってきたのだが、昨日から姿が見えず心配していたと言う。どこかで父の帰りを知ったのだろう、と言う村長。
 橋の上から武器を捨てる藤兵衛。そばには阿濱。
 宮木の墓参りをする源十郎は「なぜ死んだ?」と泣く。宮木の声「死んではおりません。いつもおそばにいます。本来の場所で本来の姿になられ、早くお仕事をされてください」。
 宮木の声「まあ、きれいな形だこと。早く焼き上がりましたね。薪も用意してあります。安心して立派な焼き物を作ってください。今やっと私が思っていた人になってくれました。これが世の中というものなのでしょうね」。
 畑を耕す藤兵衛。「一服おし」と阿濱。
 源一は母のお墓に参り、カメラが上昇して映画は終わります。

 ワンシーンワンカットが多用され、森雅之の演技が光っていました。

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溝口健二監督『雨月物語』その1

2017-07-30 06:06:00 | ノンジャンル
 WOWOWシネマで、溝口健二監督の’53年作品『雨月物語』を再見しました。
 「雨月物語 第一部 蛇性の~ 第二部 浅茅の宿」のタイトル。“「雨月物語」の奇怪幻怪は現代人の心にふれる時、更に様々な幻想をよび起す。これはそれらの幻想から新しく生まれた物語です”の字幕。
 “戦国時代 ある年の早春 近江國琵琶湖の北岸”の字幕。荷車に俵を乗せる源十郎(森雅之)と宮木(田中絹代)の夫婦。銃声が聞こえる。源十郎「柴田軍の間者だろう。長浜に行ってくる」宮木「私も」「女はダメだ。それに源一がいる」。隣の家から藤兵衛(とうべえ)(小澤榮)が飛び出して、妻の阿濱(水戸光子)に「立派な侍になって帰ってくる。貧乏な生活は嫌になった。源十郎、一緒に連れていってくれ」と言って、2人で出かける。
 荷車を力を合わせて坂を登らせる2人。
 宮木「カネが手に入れば、また欲が出る。それよりも戦の支度をしなければ」。源十郎、帰ってきて「見ろ、ほら、あんなものがこんなに売れた」と銭を見せ、「これが商いというものだ」と言う。
 藤兵衛は立派な侍の後を追っていき、部下にしてほしいと訴えるが、具足と槍がなければだめだと言われる。
 源十郎「うれしいだろ?」宮木「お盆とお正月が一緒に来たみたい」「着替えが出来て、うれしそうだな」「いいえ、買ってくださるあなたの心がうれしいの」「万事はカネだ。焼き物をもっと作って、もっと儲けるぞ」「もうおよしなさい。柴田の軍勢が来るそうですよ。この次もうまくいくとは限りません」「取り越し苦労さ。さあ、一杯お飲み」。阿濱「藤兵衛は村一番の大バカ者だよ」。
 源十郎「焼き物を早くしなきゃ」。ろくろを回す宮木は、子供におっぱいをねだられて、「まるで人が変わったみたい。気楽に夫婦で共稼ぎをと思っていたのに」。
 色付けをする源十郎。
 窯に焼き物を入れる源十郎。
 源十郎「こんなに働いたことはない。この窯の中に何もかも入っている」。銃声。村人「柴田軍が来たぞ」宮木「危ない。早く逃げましょう」源十郎「火を消すわけにはいかない」。
 逃げ回る村人。「男は皆人夫にされるらしい」。宮木「早く逃げましょう」源十郎「命に代えられない」。米を略奪する柴田軍。
 逃げる村人たち。山の中で食事。
 藤兵衛は具足と槍を盗もうとするが失敗する。宮木、源十郎に「窯はもうあきらめて」。
 家に戻った源十郎「しまった、火が落ちた」。柴田軍の兵隊「何だ? なんだ、瀬戸物か」。
源十郎、宮木に「見ろ、できてる。ありがたい。あーよかった。船で湖水を渡ろう。尾上の浜で船を探そう」。
 船に俵を積む4人。銃声。
 歌を歌いながら船を漕ぐ阿濱。深い霧。藤兵衛「大水に着けば、長浜よりもっと繁盛しているらしい」源十郎「俺は倉を建てる」藤兵衛「俺は具足と槍を買う」。
 船が流れて来る。藤兵衛「幽霊船か?」男「幽霊ではない。海賊にやられたのだ。命も財産も取られる。女は特に気をつけろ」。男の船、離れていく。宮木「これは行ってはいけないという印。すぐ戻りましょう」源十郎「お前は源一と一緒に残す」。
 宮木と源一を降ろした源十郎「カネを持ったらすぐ帰る。10日もあれば帰れる」宮木「ご無事でね。気をつけてくださいよ」源一「お父ちゃーん」。
 人でごった返している道。源十郎と藤兵衛「さあ、買わんか、買わんか」と次々と焼き物を売っていく。そこへ老女の従者を従えた姫(京マチ子)が現れ、「その壺と徳利と皿を山影の屋敷に届けてくれ。おカネはその時に」と言って去る。藤兵衛は侍の後を追い、武器屋で具足と槍を買う。
 阿濱は山中を1人で歩いていたところを5人の野武士にさらわれ、お堂の中で犯され、銭を払われる。「馬鹿野郎、この私の姿を見るがいい。出世のために女房にこんなことをされて、藤兵衛の大バカ野郎!」。
 着物屋に来た源十郎は、着物に見とれる。店主「買うのかい?」源十郎「値と相談だ」。喜ぶ宮木の姿を思い浮かべる源十郎。そこへさっきの姫と従者が現れ、「案内がないといけないので」と言い、源十郎を自分の屋敷に連れていく。
 従者「さあ、お上がりなさい。若狭さまがお待ちです。ご苦労さまでした。(部屋に導き)お入りなさい」。各部屋に次々と明かりを灯す女たち。「さ、どうぞ」「へい」若狭「あなたは北近江の源十郎様ですね」「何でご存じで?」「焼き物を見てです。父に教えられて見る目はあります。あのきらびやかな焼き物を作るには何か秘伝でも?」「長年の手慣れだけです。あ、それは私の作ったものです」「是非あなたにお酒を飲んでもらおうと思って」「百姓の片手間で作ったものの、自分の子供のようで、こんなご立派なところで使っていただくなんて、嬉しい限りです。自分の作ったものがこれほど美しく見えるのは初めてです」「あなたは持っている才能をもっと豊かにしないと」従者「若狭様の家入にすればいい」。(明日へ続きます……)

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福岡伸一さんのコラム・その2

2017-07-29 06:24:00 | ノンジャンル
 福岡伸一さんが朝日新聞の木曜日に掲載している恒例のコラム「福岡伸一の動的平衡」で、「命の美しさ 感じる心こそ」と題するコラムを書いていました。全文を引用させていただくと、
「子どもの育ちにとってもっとも大切なものはなんだろう。それは早々と九九を言えたり、英語がしゃべれたりすることではないはずだ。知ることよりもまず感じること。そう言ったのは、卓越した先見性をもって環境問題に警鐘を鳴らした生物学者レイチェル・カーソンである。彼女は『センス・オブ・ワンダー』という言葉を使った。驚きを感じる心、とでも訳せようか。何に対する驚きか。それは自然の精妙さ、繊細さ、あるいは美しさに対してである。
 自然とは、アマゾンやアフリカのような大自然である必要は全然ないと言う。ほんの小自然でよい。近くの公園や水辺? いや、コンクリートに囲まれ、空調の中に住み、電脳世界に支配されている私たちにとって、もっとも身近な自然とは、自分自身の生命にほかならない。私たちはふいに生まれ、いつか必ず死ぬ。病を得れば伏し、切れば血を流す。これこそが自然だ。そして私の生命はいつもまわりの自然と直接的につながっている。
 心臓の鼓動でセミしぐれの声に、吐く白い息が冷たい空気の中に、あふれた涙がにじんだ夕日に溶けていくことを感じる心がセンス・オブ・ワンダーである。それは大人になってもその人を支えつづける。私の好きな高野公彦に次の歌がある。〈青春はみずきの下をかよふ風あるいは遠い線路のかがやき〉」
 また、7月20日に掲載されたコラム「外来種 一番迷惑なのは…」の全文を転載させていただくと、
「南米原産のヒアリが日本各地で発見された。まるでエイリアンが襲撃してきたかのような騒ぎだが、少し冷静になった方がよいかもしれない。
 我々はなぜかムシの話題に過敏だ。数年前、デング熱ウイルスを媒介する蚊が潜んでいるとして代々木公園が一時封鎖された。もう少し前には、セアカゴケグモという毒グモの日本侵入が連日ニュースをにぎわせた。
 蚊は今も飛び交じっているはずだが、代々木公園には平穏が戻り、セアカゴケグモも着実に日本各地へ分布を広げているのだが、私たちはすっかり忘れている。
 ヒアリは毒針を持つが、アリはそもそもハチの一種なので、アリが刺すくらいのことはいくらでもアリうる。そして人が指先でつまみでもしないかぎり、好戦的に攻撃をしかけてくることもない。それをいうならスズメバチの方がよほど凶暴だ。いちど、私は巣の様子を見ようとちょっと近づいたところ、いきなり警戒バチにスクランブルをかけられた。慌てて逃げようとしたが、悲しいかな運動音痴、一気に耳を刺された。
 どんな固有種でも、最初の生命が海で生まれた以上、もとは外来種である。そして、1億年以上前からこの地球に生息しているムシたちにとって、一番迷惑な外来種はヒトである。ヒアリの移動も人間のせいだ。私たちはもっと謙虚であるべきなのだ」
 また、7月27日に掲載されたコラム「作ることは、壊すこと」の全文を転載させていただくと、
「伊勢神宮と法隆寺、どちらが生命的だろうか? ある建築家と話していて、こんな奇妙な議論になった。私が、生命を生命たらしめているのは、絶えず分解と合成を繰り返す動的平衡の作用である、と言ったからだった。20年に1回、新たに建て替えられる伊勢神宮の方に一見、分があるように思える。が、法隆寺の方は、世界最古の木造建築といわれながら、長い年月をかけてさまざまな部材が常に少しずつ更新されてきた。その意味で、全とりかえをする前者よりも、ちょっとずつ変える後者の方がより生命的ではないか。これが私の意見である。
 ところで世間では、しばしば、解体的出直し、といったことが叫ばれるが、解体しなければニッチもサッチもいかなくなった組織はその時点でもう終わりである。そうならないために、生命はいつも自らを解体し、構築しなおしている。つまり(大きく)変わらないために、(小さく)変わり続けている。そして、あらかじめ分解することを予定した上で、合成がなされている。
 都市に立ちならぶ高層ビル群を眺めながら思う。はたしてこの中に、解体することを想定して建設された建物があるだろうか。作ることに壊すことがすでに含まれている。これが生命のあり方だ。そろそろ私たちも自らの20世紀型パラダイムを作り替える必要があるのではないだろうか」

 どれも大変勉強になるコラムでした。

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石井隆『ヌードの夜』その2

2017-07-28 07:44:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 奈美、自室に紅を迎え入れる。紅「荷物をお届けすれば私は。どこに置きます?」「狭いからとりあえずここに」「なぜこうなったのか説明しろ。俺をはめたんだろ?人殺しの代行なんてやってない」「すみません」「人殺しですみませんって、あんたどういう神経をしてるんだ?」「あたしが殺したんです」「なぜ俺を選んだ?」「看板と留守電の声が優しかったので」「大丈夫かな? 3日経ってる。ドライアイスは入れておいたが」「行方って言うんです。若い者は千堂って」「それよりもこれから先のことを考えろ。自首するとか」(中略)
 紅の留守電「勝手ばかり言ってすみません。もう一度代行をお願いします」紅「関係ねえ」。(中略)
 奈美の散らかしっぱなしの部屋。千堂が入って来て、「どこに兄いを隠したんだ? 何だ、この臭い? お前、臭え」「出てって。生ごみの臭いよ」「お袋が死んだ時の臭いだ。あっ、さっきここに何か置いてあったよな」。部屋から外に飛びだし、「あー」と絶叫。戻って来て奈美に暴行を働き、「何なんだ、てめえは?」。そこに花束を持った男が現れるが、修羅場を見て去ろうとする。奈美「岩田さん、待って」。岩田は奈美を花束で滅多打ちにし、去る。泣く奈美。(中略)
 紅の留守電「白黒つけるから来い。こいつはお前が兄いを殺したと言ってる」。バックで「嘘よ」という奈美の声。(中略)
 裸の奈美の上に裸の紅。千堂の拳銃が紅の頭にめり込んでいき、それを抜いて頭を吹き飛ばす。夢から目覚める紅。(中略)
 会員制のジャズ喫茶にケンゾーを訪ねる紅。「20年ぶりねえ」「拳銃手に入らないか? 10万ぐらいなら前金で」「2時間したら来て」。
 2時間後。「ケンゾー君」「店はおしまい」「だったら金返せ」「トーシローがなめんじゃねえ」。暴行を受ける紅。(中略)
 ゴキブリが走る路地に倒れた紅が気が付くと、脇に拳銃が置いてある。
 千堂、紅に「何時間待たせるんだよ。なんだ、その面。ひでえことするな」「てめえ、説明してもらおうか。行方が心中を持ちかけた。奈美さんは断ったが、はずみで行方を刺殺してしまった。その処理を代行屋に頼んだ。行方にはシャブの跡がある。あんたもだ」「この女には兄いを殺す動機が山ほどある。(中略)何だ、その手は?」。紅、ポケットから拳銃を取り出す。千堂「遊んでんじゃねえ。バーカ。この女は高1の時に犯されて、噂になって東京に出てきた。逆恨みだ。男と女が10年」。紅、一発撃ち、「頭がボーっとしてて、あと何発か撃ちたくなってきた」。千堂、拳銃を手でふさぎ、「てめえらグルだ。2人ともバラす」。紅、拳銃発射。指を失った千堂は「ゆびー!」とのたうち回り、去る。紅、仰向けに倒れる。(中略)
 「犯されたワケじゃない。ちょうどバブルの時で、行方にゆすられ続けた。10万も20万も。私にとっては大事な生活費だったのに。10歳の時イタズラされた。そしたら高校生の時……」。ケンパをして紅の先を行く奈美は、車に乗り、窓を閉め、ドアをロックして、紅が「やめろ、やめろ」と言うのも聞かず、海に突入する。「開けろ、開けてくれ」。海の中で紅を見つめる奈美。紅は拳銃で窓を割り、何とか奈美を助け出す。「救急車を呼んでくる」。戻ってみると、奈美は消えている。
 千堂を訪ねる奈美。「どういう風の吹き回しだ? 2度と会っちゃいけないんじゃないのか?」「自首します」「やめてくれよ」「だから逆恨みしないでください」「待てよ。座って話そう。兄いの好きだったシャンパンで供養をしよう。この店は兄いの代わりに俺が仕切ることになった。サラ金でてんぱってるけど、あんたが稼いでくれたら2人でやって行こう」。そこにサラリーマン乱入。「うちの母ちゃん、死んだ。葬式代も出さなきゃ」と、いきなり拳銃を発砲し、千堂を射殺。奈美も射殺される。
 紅、自室の掃除をしていると、窓際に奈美が立っている。外は雨。「こんばんわ。代行頼みたいんだけど」(中略)「何でもやる。本当だ。今掃除中で」「恋人の代行やっていただけません? ダメ? 結婚してくれなどとは言いません。淋しい時夜中の2時、3時に話の相手をしてほしい」「お安い御用だ」「じゃあキスしてください」。キスする2人。「明かりを消して」。セックスする2人。「俺は本名は村木哲夫。会社を辞めて代行屋を始めた。君に出会えて、もう一度かけてみようと思った」。
 「再出発の門出だ。面白いことをしよう。俺は全然目が回らない」。何回も回転した後、平気に歩く。動かない奈美に「奈美さん、どうした?」仰向けにすると、胸が血まみれ。「面白かったよ。もっとやって見せて」と言って奈美は死ぬ。「救急車を」と言って村木はベッドを離れるが、振り返ると、死体はなく、シーツに血痕が残っているだけだった。泣く村木で映画は終わる。

 夜と雨のイメージが印象的な映画でした。

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石井隆監督『ヌードの夜』その1

2017-07-27 04:16:00 | ノンジャンル
 WOWOWシネマで、石井隆監督・脚本の’93年作品『ヌードの夜』を見ました。
 葬儀の祭壇で自動シャッターで写真を撮る代行屋(竹中直人)。
 男(根津甚八)の部屋を訪れた黒ずくめでサングラスをかけた女(余貴美子)は、「次から振り込みにする」と言うが、言葉使いに気をつけろと男に言われ、奥にいる若者(椎名桔平)は俺より狂暴だぞと言われると、自らストッキングを脱ぎ、男がベルトを外すと、自ら横たわって、股を開く。
 代行屋・紅次郎の広告。雨。
 階段を登り、部屋に入った女が「こんにちは。ごめんください」と声をかけると、毛布の中から紅が顔を出す。女は「福岡から来たばかりなので、東京のトレンディなスポットを案内してほしい」と言い、紅は「まあいいか」と答える。
 女が羽田でレンタルで借りたベンツを運転する紅。女は行方(なめかた)と名乗り、六本木を通過すると、ここで遊んだことがあるかと聞き、紅はないと答える。
 女「いつもどんなことを?」紅「嫌なことばかり。ペットの散歩とクソの始末。介護のクソの始末。クソクソクソのクソまみれ」。
 水族館。イルカの声。女の写真を撮る紅。
 ジェットコースターに乗る2人。
 「こわかったね。まるで海の底に吸い込まれていくようだった」。
 女「今日はありがとう。なぜ倉庫に?」紅「住めば都さ。これらのベッドは中南米から出稼ぎに来る女たちが使う」
 女「それじゃここで。明日は10時頃に」(中略)
 女は自室に帰ると、すぐ裸になりシャワーを浴び、口紅をつける。「私は誰でしょう?」と言い、枕の下にナイフを隠す。ノックに出ると、冒頭の男・行方が入ってきて、「話ってなんだ?」と言う。「お店はよろしいんですか?」「よろしくない。バブルでポンだ。今度はどういうのとできた? 何べん切れたら気が済む? お前のことを思って別れさせてやってんだろ? 若いのか?」「お願いします」「立ってか?」床にはいつくばって「お願いします。別れてください」「そんなに結婚したいのか? こっちはサラ金地獄だっていうのに」。行方、ナイフに気づく。「これで一緒に死ぬか? 心中するか?」行方、女を叩く。「腐れ縁だな」。キスし、「お前は俺のものだ」。
 紅「あれ、またあのおばちゃんか。旅行の度に子犬の世話をさせるのか」。
 横たわる女。行方はシャワーを浴びる。
 紅、子犬に「明日はディズニーランドだ。タイプの女と一緒に」。
 女、ナイフで行方の腹を刺す。浴槽に落ち込んだ女は行方に首を絞められ、逆襲して、何度も行方の顔や首を刺す。
 紅の留守電「急に帰ることになった。大きな荷物を所定の場所に送ってほしい」。
 女の部屋を訪れた紅。「住所なんてどこにも書いてない。(机の上を見て)十万か。こんなに要らねえ」。浴室で行方の死体を見つけて、手につかまれている長い髪の毛を手にする。電話が鳴り、出るとフロントからのもので「もう一泊する」と言うが断られ、「それじゃ結構」と電話を切り、「フロントに顔を見られてる。ちきしょう」と窓を開ける。
 自宅に帰り、旅行バッグを運び出す紅。
 ホテルで行方の死体を旅行バッグに詰め込む紅。
 ベンツのレンタカーの借り手を探し出した若者は、紅の部屋をノックし、警察だと名乗る。ドアを開けると、若者「兄いの名前をかたったろ? 兄いとは長いのか?」紅「出てってくれ」。若者は紅をひどく殴り、シャドーボクシングをする。ベッドを見て、「何だこりゃ。民宿でもやってんのか?」「人の家を勝手に荒らすんじゃねえ」また紅に暴行を働き、こわごわと冷蔵庫を開け、そこに遺体がないのが分かると「まさかな。どこだ。ざけんじゃねえ。俺から兄いを奪おうなんて」。子犬に「お前も拾われたのか」と言い、去る。
 パーティ会場。男からフィアンセと紹介される女。
 傷だらけの顔を鏡で見て、「私は誰でしょう?」と言う紅。
 パーティ会場。「バツイチってだけで、あんなおばさんをもらうのか?」。ベランダに出る女。(中略)
 レンタカーで女の名前が土屋奈美となっていることを知った紅は、引っ越し先を近所の中年女性に聞くが分からず、「名前も車も全部嘘だ」と言った後、やはり倉庫に住む女性が「全部レンタルよ」と言っていたことを思い出す。
 刑事に扮した紅は、女がトキワ東京商品センターに勤めていることを突き止める。
 地下鉄の中の女。紅は「今晩は。荷物を持ってあがりました。あの若造に送ってやってください。中身は生ものですから」。逃げ出す奈美を「関東~組に電話しますよ」と言い、旅行鞄を持って紅は追いかける。(明日へ続きます……)
 
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