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吉田修一『空の冒険』

2011-03-31 08:45:00 | ノンジャンル
 マキノ雅弘監督の'68年作品『新網走番外地』をスカパーの東映チャンネルで見ました。飛躍の多いストーリーにはついていけませんでしたが、主演の高倉健の仲間である長門裕之や山本麟一はいい味を出していました。

 さて、月刊『ソトコト』で紹介されていた、吉田修一さんの'10年作品『空の冒険』を読みました。12の短編と11のエッセイが収められた本です。
 短編『女が階段を上る時』は、人生の浮き沈みを一緒に経験した元アイドルが店にやって来て、店主みつこ自らが料理を出しに行く話、『緑の光線』は、夫から潔癖性だと言われてきた麻美が旅先のベルンで川に流され遊んでいる人を見て自分の殻を破る話、『居酒屋』は、親に反抗していた子供たちと今では親しくなったことを出張先の居酒屋で武井が語る話、『火まつり』は、年末決まって届け物をしてくれる大学の後輩が楽しみにしている火まつりに高垣が妻子を連れて見に行こうとする話、『オール・アバウト・マイ・マザー』は、多香子が友人と空港で搭乗を行っている間、娘や母のことを話す話、『山の音』は、山のハイキングコースを歩きながら隆志が過去の様々な会話を回想する話、『恋人たちの食卓』は、香港人の恋人の家族たちと航が夕食をした話と、大学の新入生に相席を誘う話、『ドライ・クリーニング』は、洗濯代行業をしている文子のところでバイトしている俳優の卵の米谷が本格的な役をもらう話、『青の稲妻』は、会社へ自転車通勤している京平が飲み屋での会話を思い出す話、『赤い橋の下のぬるい水』は、自分と結婚する前に3年別の女性と付き合っていた夫が買ってきたバラを景子が浮気の罪ほろぼしではと疑う話、『ほえる犬は噛まない』は、7年付き合ってきた彼にふられた里佳がソウルタワーへ登っていく話、『桜桃の味』は、前日に会った女性が今頃飛行機に乗っていると思って、祥太がメールを打ち、その返事をもらう話、そしてエッセイは、フランスのリゾートでの催しに参加しに行った話、ニューヨークでの礼儀の話、正月を過ごす場所とブータンについての話、ぎっくり腰の話、釜山映画祭の話、海外で見る映画の話、家電音痴の自分が家電を買う話、地方の美術館の話、中国の深せんの話、自分の作品の舞台を旅した話、映画『悪人』の撮影見学をした話です。
 短編はどれも上記のあらすじには収まりきれない複数のエピソードが含まれている、日常の点描のようなものでしたが、題名の『空の冒険』から期待していたような内容のものはありませんでした。気軽に読める短編やエッセイをお探しの方にはオススメです。

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ジャン=リュック・ゴダール監督『小さな兵隊』

2011-03-30 08:42:00 | ノンジャンル
 ジャン=リュック・ゴダール監督の'60年作品『小さな兵隊』を、スカパーの洋画★シネフィル・イマジカで見ました。
 フランス情報局の通信員としてジュネーヴで働くブリュノは、友人から紹介されたヴェロニカ(アンナ・カリーナ)に一目惚れします。彼は上司からアラブの二重スパイと疑われ、パリヴォダという男の暗殺を指令され、殺したくないと言って拒否しますが、脱走兵であるブリュノをフランスに強制送還して軍事裁判にかけさせると、同僚のジャックは脅します。ブリュノはヴェロニカとブラジルに逃げようと、ビザを手に入れようとしますが、彼には既にジャックらの監視がついていました。ヴェロニカの部屋を訪れたブリュノは、様々な質問をぶつけながら彼女の写真を撮りまくります。ジャックらはブリュノの車を盗み、それで当て逃げをして、ブリュノをトラブルに巻き込み、暗殺を承知させます。ブリュノは暗殺に何度も失敗した上に結局あきらめてしまい、監視のポールを海に突き落として逃げます。チューリッヒに逃れたブリュノでしたが、そこでアラブ側の組織に捕えられ、惨殺された仲間らの写真を見せられた上、水責めや火責め、そして電気ショックの拷問を受けますが、情報を渡そうとはしません。すきを見て窓から飛び下りると、たまたま部屋が2階だったので命が助かり、ヴェロニカに匿われます。ブリュノは彼女とブラジルへ逃げるため、ジャックに連絡し、パスポートを2枚用意してもらう代わりに、アラブのアジトの場所を教えます。ヴェロニカはフランスが負けるだろうと言いますが、ブリュノは持論を延々と展開し、大義がなく自分個人しかない状況を訴えます。ヴェロニカがアラブ側の人間だと知ったジャックは、アジトは既に空だったとブリュノに言い、パリヴォダの暗殺を再度命じます。暗殺のため、ブリュノが部屋を出た直後に、ジャックらはヴェロニカを拉致し、激しい拷問を加えます。ブリュノはバリヴォダの暗殺に成功しますが、その時既に、ヴェロニカはジャックらに殺されていたのでした。
 ブリュノの独白のナレーションが常に背景に流れている構成を取り、オールロケーションで撮影されている映画でしたが、淡い光線の中、美しいアンナ・カリーナのドキュメンタリーを見ているような気になりました。アンナ・カリーナのゴダール映画初出演映画として、記憶に残る映画です。

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高橋秀実『おすもうさん』

2011-03-29 08:41:00 | ノンジャンル
 竹中直人監督の'09年作品『山形スクリーム』をWOWOWで見ましたが、演出意図がよく分からない場面がかりで、見ていてとまどいました。

 さて、高橋秀実さんの'10年作品『おすもうさん』を読みました。相撲とは何かについて書かれたノンフィクションです。
 この本を読んで初めて知ったことは、総勢12人で呼び出しが土俵を掃くこと、相撲の稽古は号令ひとつなく、自然に流れるように事が進んでいくこと、稽古中練習しているのは土俵の中の二人だけであり、他の力士は外で休んでいること、入門の動機は頭が悪く体がでかいからという消極的なものがほとんどであること、相撲部屋で食べるものは全て“ちゃんこ”と呼ぶこと、歴史上一番初めの相撲は、天皇が女性たちを裸にして取らせたものであること、しこ名とは、大地を踏みつけて地中の邪気(しこ)を追い払う神事を行う者の名称を指したということ、相撲の世界には書がなく、すべて言い伝えであること、ラジオ放送以前には「待った」を54回、立ち合うまでに1時間37分もかかった仕切りがあったこと、土俵の東西南北は建物の玄関を正面として決められていて、実際の方角とは関係ないこと、相撲が国技となったのは、国技館の名前が由来で、それは建物の完成案内状にたまたまその名が書かれていたからだということ、そして相撲が国技とされたことにより、力士は相撲道や品格を求められるようになったことなどでした。また、面白いと思ったのは、放送のアナウンスが七五調であること、取組の合間に流れる各社の宣伝文句も七五調であること、正面からぶつかるのを力士は怖がっているということ、体重を増やすには昼寝をするのがいいと言われているのに、昼寝をすると夜眠れなくなるからと言って昼寝をしない力士がいること、稽古中の黒海はほとんど何もしていなかったこと、3月以外に入門してくる者は、遊んでいた子や、仕事をせずにブラブラしていた子が楽かなと思って入ってくることなどでした。
 いつもの高橋さんの本と同じく、読んでいてつい笑ってしまう箇所がたくさんありました。楽しく相撲について知ることのできる本としてオススメです。

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鈴木則文監督『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』

2011-03-28 00:36:00 | ノンジャンル
 鈴木則文監督の'73年作品『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』を、スカパーの東映チャンネルで見ました。
 「明治19年(1886)東京」の字幕。少女の目の前で刑事が刺殺されます。タイトル。「明治38年(1905)金澤」の字幕。清心会総裁の黒川(河津清三郎)は中央政界を牛耳るために上京しようとするところへ、記者を装った修之助が短刀を持って斬りかかります。修之助は追手に追いつめられたところをお蝶(池玲子)に助けられます。お蝶は父の仇である猪鹿蝶の刺青をしている者を探すうち、地元の親分の稲村(遠藤辰雄)にいかさまを頼まれたものの、それがばれて殺された男から、妹のゆきを女郎から救うための貯金通帳を預けられ、それを知った稲村に風呂で襲われますが、逆に裸で稲村らを皆殺しにします。「浅草」の字幕。黒川のパートナーである建設会社の社長・岩倉(名和宏)はゆきの初物を奪おうとしているところへ、お蝶が現れ、自分がゆきを見受けすると言いますが、岩倉はバクチで決着をつけようと言います。洋館でイギリス人のスパイ・クリスチーナとポーカーで勝負するお蝶。そこへ黒川を狙って修之助が乱入し、彼はクリスチーナの拳銃によって排除されますが、彼が元恋人だったクリスチーナは動揺して勝負に負けます。岩倉はお蝶に引き渡す前に、媚薬を使ってゆきを犯し、背中の鹿の刺青をゆきに見られます。修之助はアジトを警察に急襲されて仲間を失い、自らはお蝶に匿われます。岩倉は修之助を匿っているとしてお蝶の仲間を捕え、お蝶をおびき出し、お蝶は岩倉に抱かれる前に全身に毒を塗って岩倉を殺し、自分の父である刑事を殺した3人のうちの一人目の復讐を果たします。クリスチーナは軍事機密を得るため黒川の元へ行かされ、レズプレイの後、彼に抱かれます。列車内で黒川を襲ったお蝶と修之助でしたが、修之助は列車から突き落とされ、お蝶は捕えられてクリスチーナの拷問に会います。黒川の妻は自分がお蝶の母であると告白して彼女を救おうとしますが、黒川に見つかり、背中の蝶の刺青を明かされて、黒川に絞殺されます。クリスチーナは修之助といるところを自分の上司に見つかり、二人は射殺されます。捕縛から逃れたお蝶は黒川宅に殴り込み、血みどろになりながらも、背中に猪の刺青のある黒川を殺し、復讐を遂げるのでした。
 全裸で殺陣をする池玲子のシーンが、地面に落ちる腕や壮絶な血しぶきとともに印象に残りました。荒唐無稽な話ながら、池玲子の魅力とともにそれなりに楽しめたと思います。河津清三郎が3Pをやり、名和宏がねちっこいセックスをするのも、見物でした。珍品ながら掘り出し物です。

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内田樹『態度が悪くてすみません―内なる『他者』との出会い』

2011-03-27 08:17:00 | ノンジャンル
 増村保造監督・脚本の'72年作品『音楽』をスカパーの日本映画専門チャンネルで見ました。兄との近親相姦に悩む女性とその恋人、精神科医をめぐる不思議な映画でしたが、後年の『曾根崎心中』の梶芽衣子のような、切羽詰まった台詞回しが既に主演女優に見て取れました。

 さて、内田樹さんの'06年作品『態度が悪くてすみません―内なる『他者』との出会い』を読みました。著者が注文を受けて書いた文章を集めたものです。
 収録されている文章の題名は「時の守護者」「『合理的な人』は結婚に向かない」「シャイネスの復権」「若い人と話が通じないと思ったらどうすべきか」「語法の檻」「喫煙の起源について」「待つことの功徳」「コミュニケーション失調症候群」「喧嘩の効用」「ご飯はえらい」「言語と身体」「響く声・複数の私」「大学のダウンサイジング」「哀しみの平成無責任男―『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』より」「『排毒』という物語」「天皇制と芸能者―長嶋茂雄と車寅次郎の国民的人気にひそむもの」「フリーターが危ない」「『老齢』を迎えたアメリカ」「池上先生のこと」「甲野先生の不思議な趣味」「知性が起動する瞬間」「しあはせ考」「私はどうして散歩しないのか」「漫画を読もう!」「本が読む」「フランス語と私の切ない関係」「私のハッピー・ゴー・ラッキーな翻訳家人生」「断固たる曖昧さ―書評『昭和の劇』笠原和夫・荒井晴彦・けい秀実著」「証言と主体―書評『身体から革命を起こす』甲野善紀・田中聡著」「速度と祝福 God speed you―書評『蝶のゆくえ』橋本治著」「脱力する知性―私の小田嶋隆論 解説『人はなぜ学歴にこだわるのか。』」「史上最強の批評装置『タカハシさん』―あるいはたいへん前置きの長い高橋源一郎論」「卑しい街の騎士―解説『敗戦後論』加藤典洋著」「ごく私的な解説―解説『構造主義とは何か』J=M・ドムナック編」「大瀧詠一の系譜学」「死者の無権利―靖国論争をめぐって」「生と永遠」です。
 面白いと思ったのは、私たちが自分について知りたいと思うことは他者を経由してしか入手されないということ、自然が教えてくれるのは時間だということ、見ず知らずの人から煙草はもらってよいとか、見知らぬ人から一献差し出された時に拒むのが非礼とされるのは、起源的に「共同体立ち上げの儀礼」であったことの名残なのではないかということ、明治時代の人は早口だったこと、構造主義は今が一番進歩している段階であるという歴史主義を否定していることなどでした。以前読んだ気がする文章が多々あったことも記しておきたいと思います。

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