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鈴木清順監督『ハイティーンやくざ』その3

2021-06-30 00:00:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。

 学生の一人、次郎に「ケンたちは小林って野郎を担ぎ出したんだぜ。競友クラブを作るんだって」「俺たちも作ろう。ブロックを」。嫌がる次郎。「やなのかよ? お前が会長で俺とシゲルが副会長。どうだい。いいだろ?」「やだよ。俺は御免だよ」「何でだよ?」「この野郎、就職組とは付き合わねえって言うんかい?」「バカ野郎。ヤクザの真似はしたくないんだ」。恵子をからかう二人の学生に、自転車で突っ込む次郎。「でけえ顔、するんじゃねえ。この野郎。やんのかよう。やるならやろうじゃねえか」。(中略)
“競輪新聞”。中華店の店主「かっ、買うよ。車券を買えばいいんだろう」「買う? 俺たちで売るんじゃないんだぜ。俺たち、お客さんに頼まれて代わりに車券を買ってくる。間違わないでもらいてえなあ」。次郎、現われる。「次、頼んだぜ」。ヤクザ、出て行く。店主「助かったよ。次郎ちゃん」和子「ねえ、あたしが言った通りでしょ? 自分より強い者には絶対に手出しできないんだ。あいつら」次郎「警察へ行ったらいいじゃないか」店主「あんなチンピラには、かまっちゃくれないよ」。窓から見てた野次馬の学生たち。店主「何だ、お前たちは!」。歌いながら去る学生たち。和子「ねえ、次郎ちゃん、少しいてよ」「だめだよ。バイトがあるんだ」「~より早いわよ。ねえ、父ちゃん」「ん? うん」「ねえ、どうすんのよう。また仕返しに来たらさあ」。店主、次郎に「はずむよ」。
 恵子、中華屋の店内の様子を伺う。
“競友クラブ”の看板。小林「どうした?」「それがさっぱりなんで」「パチンコ屋は?」「それは俺の方でも…」「バカ野郎! ショーイチ、ケン」。何やら小声で相談する3人。
 パチンコ屋。ヤクザたち、入ってくると破壊の限りを尽くす。店主に「じじい!」店主「やめてくれ」。「次郎、早く早く」町民「おう、ケンかだ。ケンカだ」。集まる野次馬たち。次郎、一人でヤクザ全員を倒す。「おい、ずらかれ」。「やいやいやいやい、見世物じゃねえや」。そのヤクザも逃げ出す。
 パチンコ屋の店主「次郎ちゃん、感謝の気持ちだよ」「何だよ、これ」。封筒の中には紙幣。「いいからいいから」。(中略)
 電気屋の前。店主「次郎ちゃん、ステレオ持ってって下さいよ。~してほしいんですよ」「おじさん、うまいね」「へへ」「中川さんのところのように、うちの女房も喜ばせて下さいよ。内緒でね」。ケガしたヤクザたち、戻ってくるが、次郎を見て逃げ出す。
 微笑みながら堂々と商店街を歩く次郎。
「やあ、こんにちは」「やあ、次郎ちゃん、いいお天気で」。
「何! また次郎か」。さらしを巻いてもらっている小林。「その次郎って奴を呼んで来い」「来ますかねえ」「来ますかあ?」「連れて来るんだ。待て。俺がやる」。
 恵子「私から次郎ちゃん、に頼んで、お金を取り立ててもらったこと、兄さん怒ってるらしいの。あんな兄さんじゃなかったんだけど、父さんが死んだり自分もケガしたりして、変になっちゃったのよ。ホントに御免なさい」「そんなことはいいよ」「兄さんが話がしたいって言うから聞いてやってくんない?」「うん。よっちゃんだって悪い奴じゃないんだから」「次郎ちゃん、あたし今度勤めることにしたのよ」「へ~え、どこに?」「食料品店よ」「そいつはいいや。よっちゃんのことは心配することはない。悪い奴が来たから失敬する」。次郎、去る。
 次郎「どうしたんだよ。改まって」芳夫「ヤクザに盾突くの、やめた方がいいと思うんだがな」「盾突く?」「お前がいくら頑張っても勝ち目はないさ。相手は人数も多いし、新宿の野村興業っていう大きなバックがいるんだ」「何か勘違いしてるんじゃないかい? 俺は盾突くつもりでやってるんじゃねえぜ」「店から頼まれる。だから連中とケンカするって訳か?」「もちろんさ。それに俺、ヤクザが大嫌いなんだよ」「じゃあ競友クラブに入る気は全然ないんだな? お前ぐらいの腕がありゃ、すぐ勘弁してもいいって小林さん言ってたんだぜ」「小林さん? お前、小林に頼まれたのか?」「お前が言ってるほど悪い人じゃねえよ」「あいつはヤクザなんだぞ。あいつらは金を巻き上げるのが目的で、よっちゃんを沼へ引きずりこんだんだよ」「お前だって金がほしかったんじゃないのかい。仲間になった方が得なんじゃないのか。結局は…」「バカ!」。次郎、芳夫を殴る。芳夫は殴り返し、ケンカに。次郎「よっちゃん」。倒され、棒を手に持つ芳夫。次郎「ごめん、俺はよっちゃんとケンカする気はねえよ」。芳夫、棒を投げ捨てる。ビッコを引き、去る芳夫。困る次郎。
 派手な音楽。ステレオ。初子の許嫁が店に入ってくる。母「いらっしゃい」初子「こんちは。あら、いらっしゃい」。次郎の背広のポケットに大金を見つけ、とまどう母。

(また明日へ続きます……)

鈴木清順監督『ハイティーンやくざ』その2

2021-06-29 05:01:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

“コーヒー ロビン”の看板。“祝開店 輸入コーヒー チモトコーヒー”の立て看板。店内はほぼ満員。「いらっしゃいませ。いらっしゃいませ」。
“中華そば”の暖簾。「まいどありー」和子「(注文を取っているセリフ)」店主「あいよ」。
 芳夫「次郎ちゃん」次郎「よお、どこ行くんだい?」「次郎ちゃんちのコーヒー飲みに行こうと思ってな」母「そう、混んでますよ」芳夫「そりゃいい。父さん、俺、次郎ちゃんと話があるから帰っててくれる?」「じゃあ父さんも今度にしようか。芳夫、~に回るからってお母さんにそう言っといてくれ」「ああ」「次郎ちゃん、奴らが分かったんだ。金、返してもらおうよ」「どこの奴らだい?」「町田から流れこんできたヤクザだ」「ふ~ん」。(中略)
 中華そばの店主「奴らにはどの店も手を焼いているんですよ」「警察に行ってもダメかしら」「ダメでしょうね。ハエと同じですよ。ハエと。ま、私は税金と同じで諦めてるんですよ」。
 テーブルの上で紙幣を数える手。「どうもありがとうございました」「どうもご苦労様」。店を出てきたヤクザをやっつける次郎ら。「やめなさい。次郎ちゃん」「こんな奴らに食い物にされて黙ってられるか」「畜生。覚えてろ」「おい、待て」和子「ケンカよ! ケンカよ! 早く、早く、あっちよ」。大勢の野次馬。
 ヤクザ「勘弁してくれ」。芳夫、足を刺され、倒れる。
 バイクに乗ってきた男「旦那、よっちゃん、ヤクザにやられて重体だよ」。
 芳夫の父を乗せたバイク、疾走。ダンプと正面衝突。“ダンプとオート激突、建築店主即死”の記事。
“中川建設”の看板。恵子に次郎「君もよっちゃんも学校に来ないから、どうしてんのかと思って。災難がいっぺんに来ちゃったからな。よっちゃん、どう?」「母さんとお金を集めに行ってるけど、なかなかうまくいかないらしいわ」「もう出歩いていいの?」「じっとしてられないのよ。留守番してる私の方が滅入っちゃうほどだから」「大変だなあ」「兄さんも私ももう学校へ行けないわ」「そんなに困ってんの?」。うなずく恵子。「元気だせよ。よっちゃんが帰ってくる頃また来るわ」。
「申し訳ありません。一日も早くお払いしようと思っていてつい」「いえ。こちらでもいろいろご都合がおありでしょうが、何分にも事故が重なりまして」「大変でございましたねえ。でも芳夫ちゃんが元気になって」「まあ脚ぐらいで、かわいそうですが、この子にももう働いてもらいませんと」芳夫、おもむろに席を立ち、「母さん、行こう」。母「よっちゃん!」と後を追う。芳夫、ひどいビッコを引いている。
次郎「よっちゃん、なぜ逃げるんだよ。恥ずかしいのか? お金取りに行くの。当然の権利じゃないか。もっといばって取れよ」「どこも払ってくれないんだ。俺が子供でおまけに、おまけにチンバときているからな。みんなバカにするんだよ」「それは君の思い過ごしだよ。自意識過剰って奴だ。よっちゃん」「放っといてくれよ!」。泣き、歩き去る芳夫。見守る次郎と芳夫の妹・恵子。
 ラッキーボール屋。ヤクザ、犯人の仲間に「おい、保釈の間、おとなしくしとけよ。だからラッキーボールやって普通にしてんじゃねえの」「おい、行こう」。尾行する芳夫。
“シャネル”の看板。ダンスクラブ。芳夫、犯人を捜す。やがてナイフを手に。果物を取る男の手。光るナイフ。犯人を刺そうとした芳夫は肩を触られる。「あっ」「坊や、ナイフを貸してくれないか?」。芳夫、男を振り払おうとするが、逆に倒される。
 リンゴの皮を剥きながら男「訳があるんだろ? 話してみなよ。力になれることだってあるんだよ」。
 去ろうとする芳夫にヤクザら「待て!」。芳夫、ヤクザらを叩きのめす。男、芳夫を助ける。「どうだ? 腹の虫がおさまったか?」。うなずく芳夫。「よーし、貸し借りなしだ。あんたも男ならさっぱりするんだな。おめえたちもいいな。本当なら命がなかったのかもしれねえんだぜ。(芳夫に)体を大事にするんだぜ。債権取りだって、この体じゃ無理だ。俺に任せとけ」。芳夫はうなずいて、去る。男、ヤクザたちに「ご苦労だったな」「はい、いただきます」「お前ら、よかったら、シャネルの2階に来ないか? 面白い仕事があるぜ」。(中略)
 町民「中川建設の未払い分? 冗談じゃないわよ」。次郎「お願いします」「昨日全部払ったわよ」「どんな奴が来たんですか?」。
 次郎「無理言ってすいません」「そう泣きつかれると。はい」と紙幣の束を渡す町民。
 次郎「何度も来た甲斐があったな」恵子「でもごめんなさい。忙しいのに」「なに、さてあと何軒だ? 今日中にさっぱりしちゃおう」「ええ」。(中略)

(また明日へ続きます……)

鈴木清順監督『ハイティーンやくざ』その1

2021-06-28 05:49:00 | ノンジャンル
 DVDで、鈴木清順監督の1962年作品『ハイティーンやくざ』を観ました。白黒映画です。

 ブルドーザーや疾走するダンプをバックにタイトル。
 母、息子の次郎(川地民夫)に「ガツガツ食べるんじゃありません」次郎の姉・初子「どうしたの?」「姉さん、俺の靴、知らない?」「知らないわ」。母に左官「初めての喫茶店にしてはいい設計だ」「何です? この“チモトコーヒー”ってのは?」「素人がコーヒー店を始める時、営業から店の設計までしてくれる便利な会社だ」。次郎「あった、あった。昨日の雨で濡れたのを乾かしてあったんだ。行ってきます」。母「出て行くまで何かしらこうなの」左官「どこも同じだよ」母「学校から帰ったらピラ貼りよ」次郎「そんな暇ないよ。そんなことして大学落ちたら後悔するぜ」左官「次郎ちゃん、暇がないのに、うちの芳夫とよくアルバイトしてるな。わかってんだぞ」「うちの手伝いをしても一銭にもならない。おじさん、金で人が動くってよく知ってるじゃないか。あっ、よっちゃん、もう行ったかな?」左官「寄ってみな。次郎ちゃんと同じように靴を探してるかも」。
 自転車に乗った次郎「よっちゃん、新しいアルバイト、どうする? なかなかいいとこ見つからねえんだよ。ちぇ、明日で競輪もおしまいだぜ」「補習はどうするんだよ」(中略)「いいよ。俺一人で探すから」。(中略)
「恵子、恵子、帰りに母さんが買い物して来いって」。紙片を渡される恵子(松尾嘉代)「オッケー」。
 競輪場。次郎「8400円もついたぞ!」。
 町民「ああ、町も大きくなるな」。疾走するダンプカーの列。
“中華そば 珍来軒”の暖簾。店主(佐野浅夫)「5枚で4万円か。いいとこだなあ」次郎「親爺さん、そば屋より予想屋やった方がいいんじゃない? 猛烈に勘がいいんだからさ」「おだてんな。ハハハハ。特別手当だ」「どうも。ごっつぁんです。実はねえ、俺たちも1枚ずつ買ったんです」「買ったのかね。それじゃ、こっちが配当をもらうところだ。ハハハハ。(客に)毎度あり。お勘定は?」、やくざの男、金を払わずに店を出ようとする。店主の娘・和子(田代みどり)「食い逃げよ」男「関係ねえ。ごっそり儲けたんだろ?」店主「おい、なめんなよ」「何を? 店をガタガタにしてもらいたいのか?」。男、去る。店主「まったく困ったもんだよ。あんなのが増えて」和子「次郎ちゃんよ。次郎ちゃん! 銀座通りにシャネルって店できたの知ってる?」「シャネル?」「いかーす店よ。行かない?(中略)今日はたんまり稼いだんでしょ? 私、買い物があるのよ」「ちぇ」。ウクレレを弾き出し、歌う次郎。店主「うちはジャズクラブじゃねえんだ」。「こんちは」。次々に入ってきては踊る若者たち。店は満員に。店主「いい加減にやめねえか!」。
 電気店。次郎、店主に「何とかお願いしますよ。月賦で払います。ていっても月4000円。いくらバイトで稼ぐっていっても」店主「まだすねかじりでしょ? うちの人の保証がないとね」「おふくろと姉さんをびっくりさせてやりたいんですよ。だからうちの人の保証人にしたくないんだ。(中略)(店員に)おい、クーラーと冷蔵庫、友川さんに」和子「豚を飼ってる家よ」次郎「何が豚だ。ブー。な?」。笑う和子。
 堤防の上。芳夫「よう、あのステレオほしいなあ」次郎「そのうち競輪で儲けるさ」。「イヤッホウ」バイクに乗ったヤクザ、ハンカチを手で回し、縄投げの真似をする。「金貸してくんないか?」「姉さんを紹介するんならな」。次郎、男の首根っこをつかみ、パンチ。「何だい?」。食い逃げ男が口髭を取り、帽子に土を入れて、男に加勢。次郎「この野郎!」。
 子供を抱え、妻を従えている男「何? 1万円? そんな大金になるアルバイト、あるのかね?」次郎「競輪をやったんです。でも車券は人に頼まれて買ったんです」「しかし君たちが買ったのは確かなんだろうな? 大体君、高校生のくせに車券を買うなんて、とんでもないことだ。襲った奴は、お前たちの仲間なんじゃないのか?」「仲間?」「分け前のことから喧嘩でもしたんだろう。そうだろ? うん?」次郎「よっちゃん、行こう」。
 次郎の姉の初子「でも何となく寂しいわ。銀行を辞めて」初子の許嫁「サラリーマンより、よっぽどいいよ」「毎日寄ってくれる?」「毎日?」「当たり前でしょ」「照れるな」「照れる?」「アハハハハ」。
 母「4つ、5つの子じゃあるまいし」次郎「うるさい。自転車で転んだんだよう」「うっかり物も預けられないね。お前には」初子「ただいま」母「お帰り」「どうしたの?」母「ケンカでもしたんだろう。きっと。競輪場のアルバイトなんかするんじゃないよ」「アルバイトしてんの? 次郎ちゃん。大学大丈夫?」「けっ、鬼が笑わあ」。次郎、二階へ。初子「はい、これしかないの。退職金」母「これで助かるわ」。

(明日へ続きます……)


斎藤美奈子さんのコラム・その87&前川喜平さんのコラム・その48

2021-06-27 06:58:00 | ノンジャンル
「ゴジラとともに 東宝特撮VIPインタビュー集」という本を読みました。インタビューされているのは、宝田明さん、小泉博さん、土屋嘉男さん、佐原健二さん、佐藤充さん、夏木陽介さん、久保明さん、藤岡弘さん、若林映子さん、水野久美さん、ゴジラの中に入っていた中島春雄さん、特撮スタッフだった井上泰幸さん、やはり特撮スタッフだった開米栄三さん、スクリプターだった鈴木桂子さん、特撮監督だった中野昭慶さん、円谷英二没後、その役割を継いだ川北紘一さん、平田昭彦さん、河内桃子さんという面々でした。

 さて、恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。

 まず6月23日に掲載された「失敗への道」と題された斎藤さんのコラムを全文転載させていただくと、
「開幕まで一カ月。誰が何を言おうと観客を入れてやる気なんだ、というところまで東京五輪の状況は来てしまった。
 中止か開催なのかの議論はウヤムヤになり、有観客か無観客かの議論も飛ばして気がつけば上限一万人、開会式は二万人、IOCとスポンサー関係者は別枠、あと酒も…みたいな話になっている。
 すでに指摘されているように、主催者側のやり口は旧日本軍にそっくりだ。敗戦の原因を分析した『失敗の本質』は日本軍の特質を〈やってみなければわからない、やれば何とかなる、という楽天主義〉と評している。
 〈日本軍の戦略策定は一定の原理や論理に基づくというよりは、多分に情緒や空気が支配する傾向〉が強く〈一見科学的思考らしきものがあっても、それは「科学的」という名の「神話的思考」から脱しえていない〉。
 その結果、先の戦争は日本人だけでおよそ三百万人の犠牲者を出した。日本軍は同胞も簡単に裏切った。そのもっとも悲惨な例が、沖縄戦における集団自決だろう。
 かくてこの国は再び敗戦に向かって歩き出している。菅首相は「緊急事態が出されたら無観客も辞さない」と語ったが、五輪ありきで進んできたこれまれの経緯を見れば、誰が信用できますか。失敗は繰り返すまい。犠牲者を増やさないため、ぎりぎりまでギャンギャン言い続けよう。」

 また、6月20日に掲載された「鈴木安蔵」と題された前川さんのコラム。
「18日付の本紙夕刊は、福島県南相馬氏の鈴木安蔵の生家を記念館とする計画を伝え、鈴木を「日本国憲法の間接的起草者」と紹介していた。
 鈴木は京都帝大在学中に治安維持法違反で投獄された。出獄後の1933年、吉野作造の支援による研究成果「憲法の歴史的研究」を著すも即日発禁処分とされる。
 1936年、鈴木は自由民権運動の思想家植木枝盛が起草した「日本憲法」を発見する。そこには「日本国ノ最上権(主権)ハ日本全民二属ス」と書かれていた。
 敗戦後、鈴木は「憲法研究会」に参画し、「憲法草案要綱」を起草。この時「(植木)ら祖先以来の伝統を生かして本当の民主国家を造らなければと意欲に燃えた」と後に語っている。GHQはこの憲法草案の自由主義的・民主主義的内容を高く評価し、GHQ草案を起草する際の参考とした。
 研究会の一人、森戸辰男にも獄中体験があった。衆議院議員となった森戸は帝国議会の委員系で生存権の追加を提案。今の25条になった。
 憲法97条は「この憲法が日本国民に基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」であり、「過去幾多の試練に堪へ」たものだと言う。そこには植木枝盛や吉野作造、森戸辰男や鈴木安蔵の努力と試練が含まれている。この憲法は決して押し付け憲法ではない。」

 そして、6月27日に掲載された「天皇の公的行為」と題する前川さんのコラム。
「「天皇は五輪開催による新型コロナの感染拡大をご懸念と拝察」。西村宮内庁長官の24日の発言は、天皇の強い思いを代弁したものだ。菅首相は苦々しく思っているに違いないが、西村氏個人の見解と説明することは、事前に調整清みだと思われる。天皇はご自身の五輪開会式への出席が感染拡大を助長しないか心配しているのだろう。5月30日の植樹祭はリモート出席だった。
 五輪や植樹祭に出席して「おことば」を述べるなどの「ご公務」は、憲法上内閣の助言と承認を必要とする「国事行為」ではない。学説上「天皇の公的行為」と呼ばれ、その性質には諸説ある。天皇だって人間だから五輪による感染拡大を心配するのは当然だ。人権を著しく制限されているとはいえ、天皇にだって一定の言論の自由や営業の自由は認められるべきだ。「公的行為」も、常に政府の言うとおりにやらなくてもいい。少なくとも天皇の拒否権は認めるべきだと思う。
 安倍前首相は2013年4月28日「主権回復の日」の式典に前の天皇皇后の出席を求め、最後に「天皇陛下万歳」を唱えた。あれは天皇の政治利用だった。前の天皇自身は内心では出席したくなかったのではないかと「拝察」する。
 今の天皇には、五輪の開会式に行きたくないなら行かなくていいですよと申し上げたい。」

 どれも一読に値するコラムでした。

鈴木清順監督『悪太郎伝 悪い星の下でも』

2021-06-26 05:48:00 | ノンジャンル
 昨日はビル・エヴァンスとスコット・ラファロが1961年にニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードで歴史的な演奏を行った日でした。この日の演奏から『ワルツ・フォー・デビー』を始めとする3つのレコードが残されています。素晴らしい演奏を残してくれたビルやラファロらに改めて感謝したいと思っています。

 さて、鈴木清順監督の1965年作品『悪太郎伝 悪い星の下でも』をDVDで観ました。サイト「MOVIE WALKER PRESS」のあらすじに加筆修正させていただくと、

 昭和初期、鈴木重吉(山内賢)は河内平野で生れ育った。貧農で酒と喧嘩軍鶏にうつつをぬかす父親重兵衛(多々良純)の反対を退けて、第三高等学校に入るため、重吉は八尾中学に進んだ。学費のたしに中川牧場の牛乳配達を始めた。
 ある日、中学で重吉ら四年A組の全員が、風紀部委員に呼び出しをくった。特にA組の三島義夫は、夜若い女と歩いたというだけで、制裁を受けた。重吉は三島に同情したが、風紀委員の大岡(野呂圭介)が、三島の従妹の女学生種子(野川由美子)に横恋慕した腹いせに、三島を苦しめたのを知ると、重吉は、大岡に剣道の試合を申し込み、万座の中で大岡に恥をかかせた。
 五月、重吉は三島に招かれて、彼の家を訪問したが、三島が友人とエロ本をめぐって悪ふざけをするのを見た重吉は、席を立った。だが重吉は玄関で会った三島の妹鈴子(和泉雅子)に強く魅かれた。
 二人の美しい交際が始った頃、秀才で正義感の強い重吉に魅かれた種子は、重吉を誘惑し、派手な遊びにさそった。その頃、重吉が種子と密会する宿屋で、父の重兵衛は、悪質な金神組の開く賭博に加わっていた。そして、金神組の若造に半殺しの目に会わされた。これを知った重吉は、金神の事務所に躍り込み、乱闘を起した挙句、重吉は、天台院にかくれた。
 久しぶりに天台院で鈴子に会った重吉は、鈴子から冷たく拒まれた。鈴子は秀才重吉の裏切りが悲しかったのだ。重吉は尚も言い寄る種子をふりきって、いやがらせに重吉の家に押しかけた金神組を退散させると、自首して出た。
 学校も退学した重吉は、天台院の和尚(三島雅夫)のはからいで保釈となった。帰り途、鈴子の花嫁姿の幻に会った重吉は、新しい生き方を求めて、村を出る決心をした。三高への夢も破れ、重吉は“わいは生きるど”と河内平野を後にした。

 野川由美子さんと和泉雅子さんの魅力が横溢していた映画でした。