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宮田珠己『ポチ迷路』

2008-07-31 17:24:17 | ノンジャンル
 このところ雷鳴を毎日のように聞きます。先日は久しぶりに生の雷を見ました。雷は金属に落ちやすいと思っていましたが、どうも俗説らしく、高さにのみ関係しているそうです。したがって外で雷に会ったらすぐに地面に伏せるのが有効とのことです。

 さて、宮田珠己さんの'07年作品「ポチ迷路」を読みました。
 この本、他の宮田珠己さんの本と同じようにノンフィクションを期待して買うと、とんでもないことになります。何とこの本、迷路の本なのです。それも紙の上の迷路、新聞の日曜版などによく載っている紙上で鉛筆を持ってやる、あの迷路です。段階が10段階あって、段々難しくなっていくのですが、その難しさというのが半端ではありません。最後のStep10では16ページに及びます。それもただ道を辿っていくだけではなくて、ワープポイントがあり、それを使わないとゴールできなかったりします。ただし、行き方は1通りではないらしく(この辺がどうもあやふやで、「迷路によっては解答が複数ある場合もあります。」と書かれていて、著者自身がその辺を把握できていないのでは、という気がします)、解答はとりあえずのものが1通りずつ掲載されているだけです。
 そしてこの本の最大の特徴は、迷路が物語になっていることです。どの迷路もポチが何かをし始めるところから始まり、ポチが考えること、出会うものが迷路の形となっています。ほとんどポチの妄想からなっていてとんでもないものが次から次へと現われ、へたうまな著者の絵がその異次元さに拍車をかけています。
 絵本として読んでも楽しめますが、あっと言う間に読み終わってしまいます。やはり迷路好きな方のための本なのでしょう。ということで、買う際にはご注意ください。

高野秀行『西南シルクロードは密林に消える』

2008-07-30 16:13:41 | ノンジャンル
 高野秀行さんが'03年に発行した「西南シルクロードは密林に消える」を読みました。
 フリーライターとして息詰まりを感じていた著者は、3000年前にあったという世界最古の街道、西南シルクロードを陸上で辿る旅に出ることによって、今の事態の打開を図ります。
 出発点の中国の成都で見た三星堆文明の出土品の美しさに驚き、山椒をやたらにかけた四川料理で腹をやられ、宣賓では崖から突き出した角材の上に棺が乗っている遺跡を見ます。おとなしいことから極貧生活を強いられる苗族のむらを訪ね、帰りに纏足の老婆に会い、美しく清潔な古都・大理での観光と伝統の見事なミックス具合がバリ島を思わせたりもします。白族の鵜飼いを見物した後、知り合いの紹介で出会った反ミャンマー政府ゲリラのカチン族の腐敗している幹部の家で盗難に会い、70万円の全財産を失います。日本から補充の金を持ってやってきたカメラマンとともにカチン軍の将校たちとミャンマーへ密入国し、ジャングルを避けるため、再度中国に密入国したところを検問で捕まり、警察署へ連行され、取調べで凶悪な顔つきの刑事によって著者たちの嘘がばれたにも関わらず釈放され、自分たちがついていた荒唐無稽な嘘に一同が爆笑したりします。旅を再開し、捕まった検問を迂回し、ミャンマーへ再密入国し、カチン軍のナンバーワン、ナンバーツーの人の良さそうな老人たちに協力を求め、予定より2ヶ月も早く始まった雨期の中、ミャンマー政府の検問所を避けるため、ジャングルを徒歩と牛車と象で踏破し、謎の病気を中国気功整体で治してもらい、途中からはインド・ミャンマー付近の少数民族ナガの協力を得てインドに密入国し、インド側のナガ人のVIPたちに混じってインド軍に護衛されながら終点のカルカッタへ到着します。そして日本の領事館に行きますが、2度も密入国しているのでどうしようもないと言われ、領事に付き添われてインド警察に出頭し、強制送還されて日本に帰ってくる、という話です。
 麻薬売買で潤おうミャンマー軍事政権と、麻薬を禁止することで森林伐採で生計を立てざるを得ない少数民族カチン族の反政府ゲリラとの関係が生々しく語られ、現在のミャンマー政権が少数民族が暮らしてきた地域で採れる翡翠を自分たちの物にするため、少数民族に自治を約束していたアウン・サン将軍(現在自宅軟禁されているアウン・サン・スーチーさんの父)を暗殺し、強引に少数民族の土地を奪ったことなどを教えてくれます。そして、この世のものとは思えないミャンマー北部の農村の景色の美しさや、まっすぐな眼差しのカチン軍の兵士の表情などが写真で見ることができます。
 著者が何度も命の危険に脅かされながらも貫徹した旅の記録が350ページを超える量で書かれている本書は、読みごたえ十分で、おそらく著者の代表作となるのだと思います。ノンフィクションが好きな方には、文句無しにオススメです!

宮田珠己『ふしぎ盆栽 ホンノンボ』

2008-07-29 18:46:44 | ノンジャンル
 宮田珠己さんの'07年2月に発刊された「ふしぎな盆栽 ホンノンボ」を読みました。
 ホンノンボとは、筆者がベトナムで発見した盆栽のようなもので、特徴は(1)本体が石(岩)であること、(2)ミニチュアがのっていること、(3)水を張った鉢の中にあることが特徴です。石(岩)が凸凹し、ミニチュアは東屋、塔、橋、囲碁をしている老人たち、西遊記の一行がほとんどのホンノンボに見られるものです。囲碁は通常の時間の外にある桃源郷を表現していて、囲碁を打つ老人たちは故事から寿命を司る神と見なすことができます。
 著者は面白いホンノンボをベトナムで探し、主に道教のお寺で、ありったけのミニチュアを乗っけたものや、巨大なもの、ミラーやアンテナが刺してあるものまで見つけます。
 何でこんなものを作るのかを聞いてみると、風水で魔除けの効果があるとか、いろんな説を聞くことができますが、本当のところは分かりません。単なる趣味として作っている人もたくさんいるようです。
 ホンノンボ製作の本拠地ニンビンは、田んぼの中に巨岩が盛り上げっている、まさにホンノンボのような景色を持つところで、ここでホンノンボが生まれたというのも納得できました。ここではホンノンボの製作に必須の凸凹した岩が多く採取されていました。
 著者は知り合いからここにもホンノンボがあると聞き、香港と中国にも行きますが、ミニチュアが精巧すぎて芸術的な香りがし、違和感を感じます。が、佛山でのミニチュア陶器はバラエティに富んでおり、50体近くも購入してしまいます。中には現代のアメリカ人までありました。
 そして再びベトナムを訪れた著者は、民間で作られているホンノンボを見せてもらい、素晴らしくバランスのとれたホンノンボを発見し、またホンノンボでは植物の根を石の穴から水面に届かせることにより、いちいち水をやることなく、一旦作ってしまえば手間がかからないものであることを知ります。
 そしてベトナムでのミニチュア製作の中心バチャンで、いいかげんなミニチュアを多く発見して呆れ(私はここで一番笑いました!)、最終的に究極のホンノンボなどなく、その時その時でホンノンボに惹かれたり、ミニチュアなどがない盆栽に惹かれたりする自分を発見するというところで本は終わります。
 宮田珠己さんの「四次元アジア日記」や「ジェットコースターにもほどがある」と同じように、面白い写真が満載で、これも是非ご自分の手に取って読んでいただきたいと思いました。面白さに関しては二重丸です。ぜひ書店でお買い求めください。(ポプラ社から税込1575円で絶賛発売中です。)

ドン・シーゲル監督『第十一号監房の暴動』

2008-07-28 18:35:21 | ノンジャンル
 WOWOWでドン・シーゲル監督の'54年作品「第十一号監房の暴動」を見ました。
 「暴動の嵐が全米の刑務所で吹き荒れる」という字幕の後、各地の刑務所の暴動のニュースフィルムが流され、それに連続して映画が始まります。ある刑務所の第11監房で夜、看守をだましてやっつけ、カーニーが独房から出て、両隣りの独房の囚人も解放し、4人の看守を人質に取ります。他のすべての囚人も解放すると、興奮した囚人は独房の中のものを外に放り投げ始めます。リーダーのダン(ネヴィル・ブラント)が看守長に第11監房を占拠したことを伝えます。ダンは他の囚人たちに環境の改善を勝ち取ろうと告げ、同意を得ます。ダンは所長と直談判し、記者を呼ばせます。カーニーは看守を慰めていた囚人の眼鏡を踏みつぶし、凶暴な面を露わにします。記者たちと現われた所長にダンは働かせてほしいと要求しますが、所長と一緒に来た知事の脅しにダンは怒り、カーニーはナイフを投げつけ、知事にケガを負わせます。夜が明けると、15分後にすべての要求を伝えると言うダンに、所長は即答しようとしますが、知事が長引かせようとして、所長と衝突します。そして看守が少ない第4監房でも暴動が起き、それをきっかけに第5監房でも暴動が起きます。第5監房の囚人たちは人質を取り、最後の扉まで迫りますが、州警察の放つ催涙ガスに後退を余儀無くされ、ダンは仲間を殺した数だけ看守も殺すと所長に言います。暴動は第11監房以外は鎮圧されますが、銃撃で負傷していた囚人が死に、ダンは看守を1人殺すと言います。所長は記者たちと共にダンの元に駆けつけ、ダンから環境の改善に関する要求をすべて聞きます。それは所長が前から主張していたものと同じでした。所長は人質の解放を条件に要求を飲むことにし、知事と交渉するため6時間もらいます。精神異常の囚人に襲われてダンがケガをすると、カーニーが以後は俺がボスだと宣言し、看守の一人に遺書を書かせ、看守の妻に電話でそれを読み聞かせます。そして看守を殺そうとしますが、それにインテリの囚人とその仲間たちが反対し、騒動になります。ダンが止めに入ったところで、彼らは壁が爆破されようとしていることを知ります。その壁に看守たちとインテリの囚人たちを縛りつけ、そうとは知らない知事の命を受けた看守たちが壁を爆破しようとした時、看守長から知事が要求書にサインしたという知らせが入り、爆破は中止され、ダンと所長は書面を交換します。翌朝の朝刊で要求が認められたことを確認したダンらは看守たちを解放し、また独房へ帰っていきました。2週間後、ダンは所長に呼ばれ、囚人たちとの同意書が州議会によって否決され、ダンは扇動罪と誘拐罪で30年の罪になるだろうと言われます。所長は世論を動かせば、市民の間で英雄となっているダンを救うことができると言い、そのために全力を尽くすと言われ、ダンは仕方なく独房に帰っていくのでした。
 悪役専門の俳優ネヴィル・ブラントを主演に置き、他はほとんど無名の俳優ばかりで作られたドキュメンタリー・タッチの映画で、後年シーゲル監督がクリント・イーストウッド主演で撮った「アルカトラズからの脱出」よりもっと生々しい映画です。特に、独房から囚人たちがものを放り投げるシーンは、ジャン・ヴィゴの「操行ゼロ」での羽毛を放り投げるシーンをも想起させる見事さで、他のシーンも撮影が素晴らしいと思いました。文句なしにオススメです。

黒沢清監督『叫(さけび)』

2008-07-27 15:35:39 | ノンジャンル
 WOWOWで黒沢清監督の'06年作品「叫(さけび)」を見ました。
 赤い服の女(葉月里緒奈)が埋め立て地の水たまりで男に頭を押さえられて溺死します。刑事(役所広司)が寝ていると地震が襲い、恋人(小西真奈美)は刑事の部屋を出ていきます。刑事は地震で液状化した現場へ行き、自分のボタンが落ちているのを発見します。そして夜になり、ボタンを回収しに行くと、水たまりが波立ち、赤い服の女が現われ叫びます。女の死体の爪についていた指紋は刑事のものでした。一方、量を間違えると筋弛緩剤になる麻酔薬を自分にカバンに入れた医者は、先輩に50万の借金があるので注射器を100本都合してくれという息子に麻酔薬を大量に注射し、水たまりに頭を押し入れ溺死させます。刑事は同一犯の犯行だと言いますが、同僚はいぶかしみます。女の死体から検出された黄色の塗料も刑事の部屋にあるものでした。女の死体発見現場に行くと、医者が現われ、刑事が追うと廃虚のビルの屋上から飛び降り、刑事はなぜ自分に罪を着せるんだと詰問しますが口を割らず、医者は逮捕されます。刑事は取調べ室でも暴行を加え、医者は見えない人影に怯えます。地震がまた起こり、刑事の部屋の壁に亀裂ができ、そこから赤い服の女が出てくる悪夢を見、目覚めても赤い服の女が現われ、すべるように刑事に近づき「また会えてうれしいです」と言います。昼間にも女は現われ「ずっと一緒にいる」と言います。一方、社長に離婚が決まったから結婚しようと言われた部下の女性は、社長を海水を入れた浴槽で溺死させます。刑事は今住んでいるところの近くに昔、脳障害者の収容所があり、海水を張った洗面器に顔を押しつけ窒息させる体罰をしていたことを知ります。赤い服の女の身元が判明し実家を訪ねると、婚約を解消した男が金をせびりに来て、刑事らに逮捕され、女の殺人を認めます。しかし赤い服の女はまた刑事の前に現われ、殺された女とは別人であり、以前に脳傷害者の収容所の廃虚で見た亡霊であることが分かると、女は空へ飛んでいってしまいます。3件の殺しの犯人は皆収容所の裏を通るフェリーに乗ったことがあることが判明します。刑事は恋人を遠くへやり、すぐ後を自分も追うと言います。そして収容所の廃虚へ行くと赤い服の女がいて、「やっと来てくれたのね。あなただけ許します」と言って姿を消し、その後には人骨が山になっていました。そして刑事は恋人を半年前に殺したことを思い出し、自殺しようとしますが恋人の亡霊に止められ、亡霊は消えます。同僚が刑事の部屋を訪れると、洗面器の中の泥水が波立ち地震が起き、赤い服の女とともに洗面器の中に吸い込まれてしまいます。赤い服の女は結局刑事に取り憑くのを止めず、「私は死んだ。だからみんなも死んでください」と言い続けるところで映画は終わります。
 訳が分かりませんが、葉月里緒奈の赤い服の女が怖いです。ひゅーと空に飛んでいくのも怖い。部屋の中の暗がりにぼんやりと立ってるのも怖い。すーと近づいてくるのも怖い。そして最初っから何か感情表現が薄い小西真奈美もやはり幽霊だったのでした。唯一怖くないところはラストで役所広司が小西真奈美を抱き締めるところで、小西が幽霊なので、空間を抱き締めている役所広司の姿がこっけいで、このショットだけはいただけないと思いました。怖い映画を見たい人にはオススメです。