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高野秀行『世にも奇妙なマラソン大会』

2011-04-30 07:50:00 | ノンジャンル
 高野秀行さんの新刊『世にも奇妙なマラソン大会』を読みました。3つの中編と7つの短編のノンフィクションが収められた本です。
 『世にも奇妙なマラソン大会』は、西サハラの難民キャンプで行われたマラソン大会に参加した話。『ブルガリアの岩と薔薇』は、ブルガリアのソフィアへのバスで隣に座った中年男性から自家製のワインと手料理に誘われ、彼の家に行き、今までに味わったことのない厚いもてなしを受けながら、ホモ行為に誘われ続けるのを断る話。『名前変更物語』は、インドからの国外退去のブラックリストに乗ってしまった著者が、名前の読み方を変えることによって、新しいパスポートを手に入れようと画策する話。『謎のペルシア商人』は、インドで知り合ったイラク人が、日本に最初にペルシア絨毯を紹介したのは自分だと言って、手のこんだ嘘をついた話。『中米の種付け村』は、著者の知り合いが中米の町に滞在した際、夜毎若い娘の夜ばいを受け、後になって種付けに来ていたのではと疑う話。『It(イット)』は、妻とタイのホテルに滞在していた時、部屋に邪悪な存在を感じた話。『沖縄の巨人』は、中学の同級生が高校の修学旅行で沖縄に行った際、3階の高さの巨人を目撃した話。『犬好きの血統』は、妻の犬好きの祖父が亡くなった際、飼い犬以外に飼っていた生き物がすべて死んでしまった話。『人体実験バイト』は、投薬実験バイトをした際、シベリア帰りの男性の話を聞いた話。『二十年後』は、大学の探検部の先輩が20年前に願った願いごとが、願っていたちょうど20年後に叶っていたという話です。
 ろくに準備もせず、思いつきでいきなり砂漠のマラソンに挑戦するなど、相変わらずのはちゃめちゃぶりに楽しませてもらいました。意外に面白かったのは『名前変更物語』で、戸籍に名前の読み方が書かれていないというのは、初めて知りました。気軽に読めるノンフィクションとしてオススメです。

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清水宏監督『母情』

2011-04-29 03:14:00 | ノンジャンル
 昨日、奥多摩の日原鍾乳洞に行ってきました。細い山道を延々行った先にありましたが、鍾乳石は少なく、巨大な洞窟といった趣きでした。
 
 さて、清水宏監督・共同脚本の'50年作品『母情』をスカパーの日本映画専門チャンネルで見ました。
 2人の男の子と1人の女の子を連れた母・トシコ(清川虹子)は、結婚するために子供を預かってもらうため、実家の兄(古川緑波)の家を訪ねますが、兄の子供が6人もいると聞いて落胆します。子供は全員父が違い、兄はこれまでトシコがどのような生活をしてきたか聞きますが、彼女は答えません。1人なら預かるという話になり、兄は順番からいったら長男だなと言いますが、その直後長男のフサオが兄の子供を泣かせ、結局女の子が預けられることになります。トシコは次に教師をしている叔父を訪ね、ここでも1人だけ預かってくれることになりますが、寝小便をしたフサオは嫌われ、下の男の子が預けられます。叔父は教え子で結婚して10年になるのにまだ子供がいない夫婦がいるので、そこに紹介してくれることになり、トシコらも一緒に行きますが、そこの妻は妊娠中でした。トシコは自分が子供の頃に子守りをしてくれていたおトキの元を訪ねることにします。おトキは峠の茶屋をやっているのですが、峠の麓の温泉に辿り着くと雨になり、トシコらは足留めされます。彼らはそこで以前バスで一緒だった絵書き(黒川彌太郎)に再会し、フサオは絵書きになついて楽しい時を過ごします。やがてトシコは病気になり、心配した同僚のミツコ(山田五十鈴)がやって来て、二人がバーを始めるために子供を預けようとしていることが明らかになります。ミツコは絵書きとともに姿を消し、トシコはやっと峠の茶屋のおトキ(浦辺粂子)を訪ねることができますが、おトキに事情を話す段になって、フサオは何でも言うことを聞くからお母ちゃんのそばに置いてくれと懇願し、トシコはフサオを抱きしめます。結局トシコは3人の子供をそばに置いておく決心をし、フサオは寝小便をしないよう満天の星空の下、立ち小便をするのでした。
 人物をフルショットよりも引いたカメラの位置で捕らえるショットや、シーンの導入部での横移動などが頻繁に見られました。屋外のシーンはオールロケと思われ、戦後まもなくの日本の風景を見ることのできる映画です。

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谷崎潤一郎『金色の死』

2011-04-28 02:37:00 | ノンジャンル
 谷崎潤一郎の1914年作品『金色の死』を読みました。
 岡村君は私の少年時代からの友人で、私は全ての学課で首位、彼は次席という状態を十年続けましたが、次第に岡村君は理数系の科目と歴史が苦手となる一方、語学には優れ、特にふらんす語に親しみ、日本の文学を疎んじ出しました。彼は機械体操にも優れ、凡ての文学と凡ての芸術はことごとく人間の肉体美から始まるという自説を唱えて、私はそれに対し、肉体よりも思想が第一と考えるのでした。中学卒業前に私の父が死に、その前の営業不振もあって、私にはわずかな財産しか残されないこととなりました。一方、岡村君は相変わらずの膨大な資産を持ち、より傲慢に、お洒落になっていき、やがて爵位がほしいと言うようになり、そんな世俗的な欲求を持つようになった彼は私を落胆させました。私は東京の第一高等学校に進学しましたが、彼はあまりに数学ができないので入学試験に失敗し、落第することとなります。しかし彼は中学の束縛を離れると、まずますお洒落になり、翌年にはしっかり一高にも入学します。私は勉強に打ち込むことで血行悪く強度の近視となりますが、岡村君は直に感じる美しさでなければ価値がないと言い、瞬間の美を文学で表現してみたいと言い出します。高等学校の3年になった頃から私は詩や小説を投稿するようになり、じきに新進作家として認められます。岡村君は自己の肉体を美とすることにばかりに精進し、豪奢と放蕩を尽くし、やがて学校から姿を消します。私の小説の評判はやがて下火となり、次第に生活のために小説を書くようになっていきます。久しぶりに岡村君の家を訪ねてみると、彼は叔父の監督を離れて財産を自由にすることができるようになったと言い、彼独特の芸術の創作に乗り出すことにしたと告げます。彼は箱根に、千態万状を極めた山水の勝景に古今東西の様式の粋を集めた幾棟もの建築物と無数の彫刻物を建てますが、これはまだ準備に過ぎないと言い、翌年になって芸術の創作が出来上がったことを通知してきます。行ってみると、そこには生きた人間を以って構成されたあらゆる芸術が表現されており、それから十日ばかり後、彼は全身を金箔に塗られて、歓楽の絶頂に達した瞬間に突然死ぬのでした。
 サドの幻想小説を思わせる、夢のような世界が描写されていて、面白く読みました。おどろおどろしいファンタジーが好きな方にはオススメです。

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サミュエル・フラー監督『四十挺の拳銃』

2011-04-27 08:39:00 | ノンジャンル
 サミュエル・フラー監督・製作・脚本の'57年作品『四十挺の拳銃』をWOWOWで再見しました。
 グリフ(バリー・サリヴァン)、ウェス(ジーン・バリー)、チコの3兄弟が馬車で進んでいると、牧場主のジェシカ(バーバラ・.スタンウィック)率いる40人の男たちの馬がすれ違っていきます。目の悪い保安官チゾム(ハンク・ウォーデン)に再会したグリフは、ジェシカの部下の一人スウェインを郵便泥棒の罪で逮捕しに来たと言い、チゾムに引退するように勧めます。ジェシカの弟ブローキーは酔っ払ってチゾムをからかって撃ち、彼を失明させ、仲間たちと町で暴虐の限りを尽くし、見かねたグリフによって逮捕されますが、駆けつけたジェシカによってすぐに釈放されます。一方、ウェスは銃砲店の娘と恋に落ちます。グリフはウェスを連れてスウェインの逮捕のためにジェシカの元を訪れると、そこには40人の部下と町の有力者全てと一緒に夕食を共にするジェシカがいました。ジェシカは人払いをしてグリフに町の保安官になるよう頼みますが、グリフは断り、スウェインを連れていきます。ジェシカの息のかかった郡保安官のローガンはスウェインを逃がそうとしますが、スウェインは無罪になるようジェシカに取り次げと言い、そうでなければジェシカの秘密を世間にばらすと言います。ローガンはジェシカの部下のサベージに留置場にいるスウェインを射殺させます。グリフはサベージを逮捕しに行くと、ジェシカはグリフの腕前を見たいと言って案内を買ってでますが、竜巻きに襲われ、ジェシカはグリフに助けられます。ジェシカは自分の身の上話をグリフにして、牧場の共同経営者になってほしいと言います。ローガンは罠にかけてグリフを殺そうとしますが、グリフはチコに助けられ、チコはサベージを射殺します。ブローキーはサベージの死体をグリフらに殺された犠牲者として葬儀屋に展示させ、グリフはジェシカにこのままだとブローキーはおしまいだと警告します。そこへグリフを狙ったローガンの銃弾が襲い、ローガンは今回2人の死者が出て政治家もジェシカに背を向けている今、ジェシカのためにはこうするしかなかったと言いますが、ジェシカはローガンをクビにし、その直後ローガンは首を吊ります。銃砲店の娘との結婚式の最中にウェスはブローキーに射殺され、グリフはブローキーを逮捕しますが、ジェシカは必ず釈放させると言います。脱税で財産が没収されることになったと役人に言われるジェシカ。彼女は釈放することができなかったとブローキーに言いに行きますが、ブローキーは銃を盗みジェシカを人質にして脱獄します。グリフは盾にされたジェシカを撃ち、その後ブローキーに何発も銃弾を放って射殺します。町に保安官として残ることになったチコに、町を離れることを告げたグリフは、ジェシカはどうするのかとチコに聞かれますが、弟を殺された彼女は自分のことを許さないだろうと言います。馬車に乗り町を去り行くグリフを、ジェシカは追いかけ、やがて馬車に飛び乗ると二人で町を去っていくのでした。
 一つ一つのショットの力強さが感じられる映画でした。バーバラ・スタンウィックの代表作でもあると思います。見ごたえのある西部劇をお探しの方にはオススメです。

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谷崎潤一郎『お艶殺し』

2011-04-26 08:34:00 | ノンジャンル
 谷崎潤一郎の1914年作品『お艶殺し』を読みました。
 質屋の駿河屋で番頭をしている新助は、主人の娘・お艶に1年前から惚れ、お艶も彼のことを憎からず思っています。主人夫婦が親戚の不幸で留守にした霙の夜、お艶の強引な誘いによって、二人は深川の知り合いの船頭・清次のところへ駆落ちします。清次は先月の末に二人に、逃げてくれば仲をうまくまとめてやると言っていたのでした。清次は10日ばかりおとなしく隠れていてくれと言いますが、半月たっても吉報はありません。お艶は次第に剽軽になり、ふざけて女郎言葉を使うようにもなります。年も押し迫った頃、清次の子分の三太がやって来て、事が片付きそうだから新助だけ新助の父の元へ来てほしいと言われ、新助は出かけていきます。待っていた清次は、新助の父は駿河屋の主人が承知してくれるなら二人の仲を許すと言って帰っていったと言い、先に帰っていきます。新助は三太と二人で深夜帰る途中で、親分から自分を殺すことを頼まれたという三太に斬りつけられますが、傷を負いながらも返り討ちにし、一目お艶に会ってから自首しようと思って、刀と死体を川へ捨てます。清次の家に帰ると、新助を殺して帰ってくるはずの三太を清次の女房が待っていて、一旦は彼女を縛り上げてお艶の姿を探しますが、杳と知れず、結局ふてぶてしく何も話そうとしない女房を絞め殺してしまいます。新助は盗賊の仕業に見せかけて逃げ出し、父の縁故のある博徒の金蔵のところへ行って、お艶に一目会ったら自首すると言って匿ってもらいます。事件はあまり評判にもならず、清次も三太が女房を殺して金を持って逃げたと思っているらしいと新助は知り、お艶の行き先を探しますが、なかなか見つかりません。しかし三月下旬になってやっと、清次が懇ろの仲である博徒の徳兵衛が親許になっている、仲町の芸者・染吉ではないかと金蔵が聞き付け、すぐに新助が本人に会いに行くと、まぎれもなくお艶その人なのでした。お艶は二月まで清次に口説かれ続け、断り続けた結果、その後徳兵衛に預けられ芸者になっていたのでした。新助はお艶に懇願されてお艶の家に逗留し、二人で朝から晩まで酔っ払ていると、三日目になって徳兵衛が訪ねてきました。彼は前から約束していた、旗本を強請る仕事のために一晩お艶の体を貸してくれと言い、その間に新助が殺されてしまうかもしれないと考えたお艶は、新助は殺しのために明日自首するのだと徳兵衛に言うと、それを聞いた新助はすぐにも自首すると言い出しますが、お艶と徳兵衛は新助を何とか説得して、今夜の九つ時に箱屋に化けてお艶を迎えに来るようにさせます。新助がその時間に旗本を訪ねると、悪事が露見していて、お艶は旗本に斬られそうになっていましたが、何とか止め、深手を負った徳兵衛も連れて逃げ出します。途中逃げるのに邪魔になった徳兵衛をお艶が殺そうとし、徳兵衛も殺し返そうとしますが、お艶の言うままに新助は徳兵衛を殺し、お艶は徳兵衛の身ぐるみ剥いで顔を縦横に切り刻み、死体の正体を分からなくしてから、家へ帰っていきます。その後二人は面白可笑しく日を送りましたが、半月ばかりして金蔵がやって来ます。お艶は新助はいないと言い張り、金蔵はもし新助に会ったら、考え直して違った道を踏まないように言ってくれと言い残して帰っていきます。やがて清次は再びお艶に近づいてきますが、お艶は清次が新しく妾にもらったお市を殺せと清次に迫ります。七月になると清次の悪事がばれ、暫く田舎へ逐電することとなり、清次はお市を殺すから一緒に逃げてくれとお艶に言い出し、お艶は承知します。清次がお市を殺した後、新助とお艶は清次を殺し、五百両を我が物として、その年の暮れまでしたい三昧でそれを使いつくします。お艶は芸者の客をたらす事にばかり努力し、余所へ泊る度数もだんだん多くなりますが、新助が浮気を疑っても否定し続けます。正月三日に遂に厳しく詰問すると、旗本にも清次にも徳兵衛にも体を委せていたとあっさり白状し、今では旗本に惚れていて、新助にはとっくに愛想を尽かしていると言います。新助は考え直してくれと懇願しますが、二三日考えさせてくれと返事され、お艶は殺されるのを怖れて、その三日後の夜に逃げ出しますが、新助は追いついて、旗本の名を呼び続けるお艶を斬り殺すのでした。
 お艶の毒婦ぶりがすさまじく、血で血を洗う愛憎劇に魅了されました。お艶の台詞を読むだけでも読む価値のある小説だと思います。

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