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コーエン兄弟監督『ノーカントリー』

2009-05-31 15:01:00 | ノンジャンル
 WOWOWで、コーエン兄弟監督・共同製作・脚本の'07年作品「ノーカントリー」を見ました。
 代々保安官をしてきて、最近の犯罪は理解できないと言う保管官(トミー・リー・ジョーンズ)のナレーション。電話する警官を背後から手錠で絞殺するシガー。パトカーを使って車を停めると、ドライバーの頭を圧縮酸素で打ち抜くシガー。狩りをしていて群然に撃ち合いで全滅している男たちと残された大金を発見し、ネコババするモス。その夜別の死体を発見したモスは武装した車に襲われ、川に飛び込んで逃げます。彼は家を引き払い、妻には母の家に行くように言います。シガーはモスの追跡を依頼されますが、その場で依頼人の使いを殺します。保安官は撃ち合いの現場でモスの車を発見し、モスの自宅を訪れますが、すでにもぬけの空でした。モスはモーテルに宿泊しますが、虫の知らせで2つ先の部屋も取ります。金の入ったカバンの中の発信機の信号を手がかりにシガーがモスの泊まるモーテルに来ますが、隣の客を虐殺している間にモスは逃げ出します。次のホテルに着くとすぐに発信機に気付きますが、既にフロントの電話には誰も出ず、シガーが部屋に押し込んで来ます。部屋から逃げ出したモスは反撃してシガーにケガを負わせ、国境を越えます。シガーは車を爆破し、その騒ぎの間に医療品を万引きし、傷の治療をします。シガーに負わされたケガから入院したモスは別の追跡者のウェルズに見つかり、金を返さないと妻を殺すと脅されます。シガーはウェルズを射殺し、別の追跡者を雇ったということで、雇い主も殺します。モスは妻を呼びますが、妻の来る前にシガーにより殺されます。妻の母もガンで死に、その葬式から妻が帰るとシガーが待っています。そこを出たシガーは車を運転中に事故に巻き込まれ、腕に大ケガを負いますが、黙って立ち去ります。保安官は元保安官や妻と話しながら、自分の仕事に疑問を持つのでした。
 シガーの不気味さが圧倒的です。容赦なく出会う人を次々に殺していく様は圧巻でもあります。血が多く流れますが、それもそんなにえげつなくは見えず、むしろ鮮烈な原色としての美しさを感じたりもしました。また扉の穴から注ぐ光の束という映像がここでも見れました。これはコーエン兄弟の映画のシンボルなのかもしれません。クールな暴力を見たい方にはオススメです。

南・西伊豆、箱根の旅

2009-05-30 15:27:00 | ノンジャンル
 おとといから昨日にかけて、南・西伊豆を回って箱根を通り帰ってきました。訪ねたところは、シラヌタの池・シラヌタの大杉→かわづ花菖蒲園→青木さざえ店→石廊崎→岩科学校→土肥金山→柿田川公園→西南原生林でした。
 印象的だったのは、シラヌタの池、石廊崎そして西南原生林。シラヌタの池への道は、田舎の生活道路を辿っていくと、そのうち車一台がやっと通れる急勾配の山道になり、折からの発達した低気圧による強風で道には折れた大きな枝が落ちまくっていて、車の底をガリガリと鳴らし、冷や冷やしていたら、やがて見晴らしのいい場所に出たと思うと、そこは何と別荘地だったのですが、これが少し廃墟じみた別荘地で、これまた気持ちが冷えて来て、そこを抜けてまた山道に入ると、やっと池への入り口に辿り着くのでした。強風で木々の枝が無気味にうなり続ける中、勾配のきつい山道を歩くと、やっと神秘の池に辿りつき、池に張り出した枝に産まれた泡状のモリアオガエルの卵を初めて見ることができました。そして怖かったのは帰り。途中で道を間違え、車一台がやっと通れ、片側は谷という急勾配の山道に入ってしまい、ユーターンすることがなかなか出来ず、随分行ってやっと引き返すことができました。
 次は石廊崎。これも強風のせいか私以外は誰もいず、頭上をうなる風の音にびびりながら何とか石室神社が見えるところまで行けました。石室神社というのは石廊崎の先端にある岩を御神体とした神社です。ここで岬を回った瞬間に吹き付けてきた強風は、私が今までに体験した中で最大の強風でした。風の音、波の音、風にあおられる植物の音などに、ここでも恐怖を味わいました。帰り、この岬で自殺した人も何人かいるんだろうなあと思うと、道筋にあった、バス停の看板のようなものにビニールシートが紐で縛り付けられているものが死体を連想させ、それが動く気配を感じて何度も振り返ってしまったりもしました。
 そして西南原生林。箱根峠から伊豆箱根ランドに行くと、何とこれが巨大なレジャーランドの廃墟。その時点で嫌な予感はしました。それを通り過ぎて原生林の入り口に行くと、これまた人気がまったくありません。車を降りて林の中に入っていくとすごい登山道で、途中道に迷うようなところもあり、這這の体で帰ってきました。原生林の魅力は味わえましたが、原生林だけに途中の案内板はしっかりと掲げてほしかったと思いました。
 ということで、今回の旅で伊豆・箱根に関しては、行きたいところは大体すべて行くことができたように思います。伊豆はきれいな山と海を同時に見れるところで、観光地としては一級品だと再認識しました。まだ行ったことのない方にはオススメです。

内田樹『ひとりでは生きられないのも芸のうち』

2009-05-29 16:49:00 | ノンジャンル
 昨日から今日にかけて南伊豆から西伊豆を回って来ました。そのご報告は後日改めてさせていただきます。

 さて、朝日新聞の特集記事「2008年 感動と発見の一冊」で推薦されていた、内田樹さんの'07年作品「ひとりでは生きられないのも芸のうち」を読みました。ブログの文章をリライトしたもので、「あまりに(非)常識的であるがゆえに、これまであまり言われないできたことだけれど、そろそろ誰かが『それ、(非)常識なんですけど』ときっぱり言わねばまずいのではないか」という動機に基づいて書かれた本です。
 まず、他人のこと、公的なものを批判する人ばかりになってしまったので、「『現行の社会秩序を円滑に機能させ、批判を受け止めてこれを改善することが自分の本務である』と考えている人たちをどのように一定数確保する」かが問題となっていて、その根拠としては社会秩序を維持するには5人のうち1人さえそのようなまっとうな人がいてくれればいいということだとして、常識の是非が語られます。また、具体的な常識としては、「『自分が手に入れたいもの』は、それをまず他人に贈与することでしか手に入れることができない。贈与した者に、その贈与品は別のところから別のかたちをとって戻ってくる。自分の所持品を堆蔵する者には誰も何も贈らない。」「人口容量が限界に近づくと、リソースに限りがあるので、『親世代は自らの水準を下げて子どもを増やすか、水準を維持して子どもをあきらめるか、の選択を迫られる。が、すでに一定の豊かさを経験している親世代は、それを落とすことを嫌うから、事前に晩婚や非婚を選んだり、結婚後も避妊や中絶を行って出生数を減らしていく』(「どうする少子化」毎日新聞2006年2月4日)」「家族がいない方が競争上有利であると人々が判断したから家族は解体したのである。逆に、家族がいる方が生き残る上で有利であると判断すれば、みんな争って家族の絆を打ち固めるであろう。」「人間は共同体を分かち合う他者がいて初めて人間になることができる。」「『個人の努力の成果は個人が占有してよい』というのは生存競争がほとんどない時代、リソースの分配競争に負けても餓死することのない安全な時代にだけ適用できる『特別ルール』である。」「他人と違う行動をすることから快楽を得るような生き方にシフトしたほうがいい。」などが語られます。他にも、自然を消費しつくしたヨーロッパ人がアメリカ大陸を発見してそこに原初の自然が残っているのを見い出した時から、狂気のようにその自然を破壊しつくしてきたこと、利益を十分享受していないマイノリティが利益の享受を期待してナショナリズムに走る傾向があること、周囲からの支援と尊敬のうちにいれば、人間はあまり病気にならないということも教えてくれます。
 内田さんの論理は、内田さんが師承と仰いでおられるらしいレヴィナスを通してのフッサールの現象学と、レヴィ=ストロースの構造主義によって立っているので、説得力があります。文体は難解な横文字もありますが総じてとてもユーモラスで、「例えば、『九条』である。あれは、よく考えたら、国際関係における『めちゃモテぷっくり唇』なのである。」のようなおちゃめな文章もあり、笑えます。楽しくためになる本をお探しの方にはオススメです。

宮崎誉子『派遣ちゃん』

2009-05-27 17:57:00 | ノンジャンル
 宮崎誉子さんの'09年作品「派遣ちゃん」を読みました。二編の中編と「おわりに」と題されたあとがきからなっています。
 「青瓢箪」は、大学卒業後就職せず、労働をテーマにした小説家になると言って部屋に閉じこもっている27才の兄を持つみゆきが、新たな派遣先としてパソコンの出荷前点検の仕事につきます。派遣仲間や様々な人と会話しながら、研修の毎日を過ごしますが、兄の肩を持つ母と兄の身勝手さについにキレたみゆきは家出をし、それをきっかけに兄は小説家になることをあきらめ、一日だけのバイトに付き合ってくれとみゆきに言います。倉庫のバイトに兄を連れて行くと、兄は仕事の途中で逃亡し、みゆきが家に帰って兄の部屋を探すと、やはり小説など書いていないのでした。そして兄はその後悪びれずに帰宅し、みゆきはそんな兄を羨ましく思うのでした。
 「欠落」は、19才の僕・鳩山太一は高い時給に惹かれて宅配のコールセンターに応募し、高い競争率を勝ち抜いて派遣として研修を受け始めます。周りの女性のおもちゃにされ、社員の女性に話し掛けられ、唯一ホッとするのは学生時代の知り合いで今は引きこもっているヤクマルの家に遊びに行く時です。前のコンビニでのバイトで一緒だった美雪さんは今はテレオペをしていますが、その時の店長と不倫していて、店長に離婚しろと迫っています。娘がかわいくて離婚したくない店長は、僕の目の前で美雪さんに刺され、僕はその場から逃げ出し、ヤクマルの家に行きます。そして話しているうちに、生きる勇気を取り戻してくるのでした。
 どちらの中編とも会話が圧倒的に面白く、またその合間にある、心情を説明する一文も秀逸で、1日もかからず一気に読んでしまいました。また「欠落」のラストの会話には、何か鬼気迫る凄みを感じ、単に面白いだけではなく、人間の本質をも描ききる力を持った文章だとも思いました。現役の小説家の中では、宮崎さんの作品の面白さは一番だと思います。次回作、今から期待です! なお小説の詳細に関しては、私のサイト(http://ceres.dti.ne.jp/~m-goto)→「Favorite Novels」→「宮崎誉子」のところにアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。

F・W・ムルナウ監督『フォーゲルエート城』

2009-05-26 16:12:00 | ノンジャンル
 スカパーの260チャンネル「洋画シネフィル★イマジカ」で、F・W・ムルナウ監督の'21年作品「フォーゲルエート城」を再見しました。
 「第1幕」の字幕。秋の狩りの季節、フォーゲルエート城には客人が集っています。そこへ弟をピストルで殺し財産を一人占めしたと噂されるエーチュ伯爵がやってきます。伯爵はまもなく弾丸が発射されると予言し、皆を動揺させます。伯爵の弟の未亡人はその後男爵と結婚し、その夫婦も訪ねてきますが、伯爵が来ていると聞き、帰ろうとします。しかし元伯爵の弟の親戚の神父がまもなく訪ねてくると聞き、滞在することにします。「第2幕」の字幕。雨が上がり、皆狩りに出かけますが、またすぐに雨が降り出し、帰ってきます。それと入れ違いに伯爵が狩りに出かけると、神父が到着します。男爵夫人は元夫の死について語り出します。「第3幕」の字幕。男爵夫人の元夫は旅から帰ってくると別人のようになり、聖典を読みふけり、夫人を相手にしなくなり、その頃夫人は男爵に知り合ったことを語ります。その後、神父は失踪し、客たちは不安に取りつかれます。「第4幕」の字幕。次の朝、何人かの客は気味悪がって帰っていきます。伯爵は男爵に殺人の経験があるか聞き、男爵は動揺して部屋に戻ります。元地方判事は伯爵が神父の失踪に関与していると城の主人に進言し、主人は伯爵に先程の発言に対して男爵に謝罪させようと言います。主人は伯爵の元に行きますが、伯爵に相手にされません。そして夫人は皆の前で伯爵が元夫を殺したのだと告発します。「第5幕」の字幕。伯爵は立ち去り、神父が現れます。夫人は神父に、元夫が聖典にのめりこんでいくにつれ、自分は邪悪なものに取りつかれ、殺人が見たいと男爵の前で言ってしまい、それを本気にした男爵が元夫と殺したのだと告白します。神父は男爵の元へ行き、変装を取って伯爵の姿になり、男爵を責めます。そして男爵は拳銃自殺し、城の主人は伯爵に詫び、その夜本当の神父が現れるのでした。
 すべての画面が見事な構図に収まっていて、見事という他ありませんでした。ストーリーは今から見れば陳腐なものですが、それでも画面で見せてしまいます。客が悪夢に悩まされ、窓から巨大な腕が伸びてきて、ベッドから窓外につまみだされるシーンはひどく幻想的で素晴らしいものでした。これぞ映画といった画面を見たい方にはオススメです。