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阪本順治監督『カメレオン』

2009-11-30 14:18:00 | ノンジャンル
 WOWOWで、阪本順治監督の'08年作品「カメレオン」を見ました。
 3人の老人からなる一座と仲間3人と組んで結婚詐欺を働いているゴーロ(藤原竜也)は、仲間とともにホテルの駐車場で1人の男が拉致されるのを目撃し、密かにその模様を撮影します。彼らの車はバイクに追跡され、信号止まったところで発信機を付けられます。やがて拉致された男が大臣の裏金疑惑で国会に証人として呼ばれる予定だった人物と知り、また自分たちが監視されていることにも気付いたゴーロは、張り込んでいる男たちに彼らのボスのところへ連れていくように言います。元傭兵だったボスにゴーロは一切ホテルで目撃したことは口外しないので監視を解くように言いますが、帰ると仲間の1人が拉致現場を撮った映像を金欲しさにテレビへ売ってしまっていました。マスコミにその事実が広まると、ゴーロの仲間二人が拉致され、ゴーロの元にも男たちが乗り込んできます。ゴーロは彼らを乱闘の末撃退しますが、唯一残った仲間の公介は襲ってきたバイクに殺されます。路上で西洋占星術をしていたところをゴーロと知合い、彼の元に身を寄せていたケイコとともに、ゴーロは公介の実家を訪ね、彼の両親に金を置いてきますが、その後ケイコと二人でいるところを狙撃され、撃たれたケイコは拉致されます。傷を負いながらも生き残っていたゴーロは男たちのアジトを襲って皆殺しにし、ケイコが生きているのを発見します。ボスが国会証言しているところへゴーロは乗り込み、ボスが拉致している写真を国会でばらまき、彼に外で待っていると告げますが、ゴーロは左手を失っています。最後に盲目であるらしいケイコの肩を抱きながらゴーロは人込みの中を歩くのでした。
 徹底した縦の構図が目を引きます。また、アクションシーンでのワンシーン・ワンカットぶりは、「遊戯」シリーズを思わせるものでした。後で知ったことですが、松田優作を念頭において作られた映画なのだそうです。見ごたえのある映画です。オススメです。

ピッキオ編著『虫のおもしろ私生活』

2009-11-29 12:33:00 | ノンジャンル
 月刊ソトコトで紹介されていた、ピッキオ編著の'98年作品「虫のおもしろ私生活」を読みました。
 まず、虫のいるところ別に、いる虫の写真が紹介され、次に場所別に、そこにいる虫の生態が細かく紹介され、次にマンガで進化上の虫の存在の説明が行われ、最後に形態上から虫を分類する仕方が図解で説明されています。
 主に小学生向けの観察の手引きとして書かれた本のようですが、豊富なカラー写真が面白く(特に交尾や食餌、羽化のものなど)、一気に読んでしまいました。子供が巣立ちするまで飲まず食わずで巣の中に留まり、最後には自分の体を子供たちの食料として与えてしまうハサミムシや、オスが他のオスと交尾して体内に精子を注入し、そのオスに自分の精子をメスに注入してもらうカメムシのような「へんないきもの」級の生態に言及したものは少なかったのですが、ほとんどの虫が機能的にとぎすまされていて、ロボットの説明を読んでいるような気になりました。しかし、これには実は根拠があって、進化の歴史で原生生物で枝別れした一方の最先端が人類だとしたら、もう一方の枝別れ、すなわち扁形動物、線形動物、環形動物、軟体動物、節足動物を含む進化の道筋の最高峰にあるのが昆虫を含む節足動物であることをこの本で知りました。ちなみに昆虫の中では、翅のないもの、たためない翅のあるもの、たためる翅のあるものの順で高度化していき、中でもサナギになる完全変態の昆虫が一番高度に進化したものであることも知りました。なぜなら、完全変態すれば親と子で競争が発生しないからなのだそうです。そして種類に関しては、昆虫が100万種類なのに対し、魚類が2~3万、両生類・は虫類が0.7~0.9万、鳥類が0.9万、ほ乳類が0.4~0.5万種類というのも面白い数字だと思いました。
 単なる観察図鑑というレベルを超えた興味深い本だと思います。生物の多様性に興味のある方にはオススメです。

ジョージ・A・ロメロ『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』

2009-11-28 15:22:00 | ノンジャンル
 WOWOWで、ジョージ・A・ロメロ監督・脚本の'07年作品「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」を見ました。
 妻子を殺して銃で自殺した男。3人の死体が搬出されようとする時、死体が動きだし人々に襲いかかります。その時から死体が突然動きだし人を襲う事件が頻発し始めます。大学の卒業製作のために映画の撮影をしていたジェイソンらは事件の記録のための撮影を続けたまま女子寮にいたデブラを救い出し、メアリーのトレーラーで逃げ出しますが、途中で歩く死体に出会い、それを轢いたメアリーは罪悪感から銃で自殺を図ります。病院にメアリーを運びますが、そこはゾンビだらけで、やがて死んだメアリーもゾンビと化します。仲間のゴードもゾンビに噛まれたことが原因で死んでゾンビ化したところを恋人のトレーシーから頭を撃たれて退治されます。車が故障し聾唖の老人の家で修理させれもらいますが、やがてそこは大量のゾンビに囲まれ老人は死に、何とか車を修理した彼らは脱出します。出会った黒人武装集団は必要な物資を分けてくれ、彼らのアジトでジェイソンはそれまでに撮影した映像を編集しネットにアップすると数分間で数万回のヒットを記録します。ジェイソンの恋人のデブラの家に着きますが、彼女の家族は既にゾンビ化していました。出会った州兵から物資を略奪された彼らは、黒人のアジトで連絡が取れた友人のリドリーの邸宅にやってきますが、まだ襲われていないかに見えたリドリーは既にゾンビに噛まれていて、しばらくして死んでゾンビ化するとトレーシーを襲います。助けようとせずそれを撮影するジェイソンに愛想を尽かしたトレーシーは車で逃げ出し、デブラは邸宅に作られていた避難所に入ることを主張しますが、ジェイソンはあくまで外を記録し続けることを主張し、結局リドリーに襲われデブラに頭を打ち抜かれるのでした。
 基本的にジェイソンの一人称カメラで写された映像で構成され、それにニュース映像や監視カメラの映像が混ざるという実験的試みをしていますが、特に違和感は感じませんでした。頭がまっぷたつになったりちぎれたりという残酷なシーンが多いですが、結構楽しめました。ホラー映画が好きな方にはオススメです。

川上未映子『ヘヴン』

2009-11-27 13:03:00 | ノンジャンル
 川上未映子さんの'09年作品「ヘヴン」を読みました。
 中学2年で斜視の僕はそれが理由で、学校で優等生をリーダーとするグループから暴力的な虐めを日常的に受けていますが、ある日筆箱の中に「私はあなたの仲間です」と書いてある紙を発見します。また新手の虐めと思いますが、手紙は机の中に場所を移して続き、ついに場所と時間を指定して会おうと言ってきます。そこで会ったのはやはりクラスで虐められているコジマでした。彼女は母に離婚された父を思うためにわざと自分の体を不潔にしているのだと言い、それからも二人は手紙を交換し、何度か直接会って話をします。ある日、僕は体育館に連れ込まれてひどいケガを負いますが、その場をコジマに見られていて、彼女は私たちは彼らを受け入れているのであって、弱い立場を選びとっていることが分かったのだと誇らし気に言います。僕はケガの治療のため病院に行った時、たったの1万5千円で斜視を治す手術が受けられることを知り、それをコジマに告げますが、彼女は僕を裏切り者扱いして去ります。それからコジマは僕を決して見ることがなくなりますが、僕は彼女に手紙を送り続け、ついにもう一度会ってくれるという返事をもらいます。しかし約束の場所に行ってみると、そこにはコジマだけでなく、男女の虐めのグループもいて、彼らの罠だったことを知ります。彼らは僕らにその場でセックスしろと言い出し、僕をブリーフだけの姿にし、彼女の服も脱がせろと言います。僕は石を手に持ちリーダーに襲いかかろうとしますが、コジマはそれを止め、自ら服を脱いで全裸になり、虐めのグループの連中を笑いながらなでてまわっているところを、人に見つかって僕らは保護されます。僕は母にこれまでの体験をすべて話すと、母はもう学校など行かなくていいと言い、僕は斜視の手術を受けることになります。そして手術後、僕の見た世界は今まで見たこともない素晴らしい世界だったのでした。
 虐めの場面の凄まじさは吐き気を催すほどで、「僕」が登場人物とかわす会話も平易な文章ながら中学生とは思えない哲学的なものでしたが、彼らの思いはストレートに伝わってきました。虐めを扱っている小説ですが、不思議に惹き付けられる小説です。青春小説が好きな方にはオススメです。

レオス・カラックス他監督『TOKYO!』

2009-11-26 18:33:00 | ノンジャンル
 WOWOWで、レオス・カラックス監督他の'08年作品「TOKYO!」を見ました。東京を舞台にしたオムニバス映画です。
 ミッシェル・ゴンドリ監督の「インテリア・デザイン」は、自主映画を撮る男の恋人の女性が彼の役に立たず椅子に変身できるようになってやっと人の役に立てるようになるという話。
 レオス・カラックス監督の「糞」は、マンホールから現れ路上で無差別大量殺人を犯した怪人が死刑を執行されるが、生き返って姿を消す話。
 「シェイキング・トーキョー」は、10年間引きこもっていた青年が一目惚れしたピザ配達の女性が引きこもりに入ったことを聞き、助けに走る話です。
 1話の発想とCGが面白く、2話は「次回はニューヨーク編 メルド・イン・USA」というラストの字幕がしゃれていて、3話も女性の「ラブ」というタトゥーのボタンを偶然押して彼女が恋する表情になるラストが幸福な気持ちにさせてくれました。どれも思わぬ展開が待っていて楽しめたと思います。オススメです。