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ケン・ローチ監督『やさしくキスして』

2008-02-29 15:11:05 | ノンジャンル
 WOWOWでケン・ローチ監督の'04年作品「やさしくキスして」を見ました。
 スコットランドの町で、西欧社会がイスラム教徒をひとまとめにして考えることに反対する10代のパキスタン女性タハラ。彼女は演説後、男子達にからかわれ、音楽教師のロシーンに助けられます。タハラを迎えに来ていた兄カシムとロシーンは恋に落ち、肉体関係を結びますが、その後にカシムがいとこの女性と9週間後に結婚しなければならないと言うと、ロシーンは激怒し、部屋を出て行きます。カシムは家族がバラバラになるかもしれないが、いとことの結婚を断ると言い、2人は仲直りします。ロシーンは校長から正職員に採用したいと言われ、司教にサインをもらってくるように言われますが、司教は異教徒と同棲していることを問題視し、彼と別れることを要求し、サインはもらえません。それでも校長は正職員に採用してくれますが、しばらくして教育委員会からの命令で、今の学校は今週一杯で、来週からは無宗教の学校に移るよう言われます。またカシムの姉から家族の名誉に泥を塗らないでくれ、とカシムと家族の団欒の様子を見せられ、カシムも自分の家族と伯母の家族の名誉を傷つけないでくれ、と頼まれますが、2人はそうした妨害にめげず、将来もともに人生を歩むことを誓うのでした。

 冒頭の少女の演説から期待して見ていましたが、どうってことない映画でした。前回みたケン・ローチの列車の映画が面白かったのに、がっかりです。セックス・シーンが多く、しかも何か中途半端で、こんなに必要ないと思いました。ケン・ローチ監督が初めてのぞんだ本格的恋愛映画とのことですが、これを見るかぎり今後は恋愛映画は止めた方がいいでしょう。皆さんはどう感じられたでしょうか?

河瀬直美『殯(もがり)の森』

2008-02-28 17:29:08 | ノンジャンル
 河瀬直美監督が監督・脚本を手掛け、カンヌの賞を取った「殯の森」をNHK・BS2で見ました。
 森が迫る田んぼの道を葬列が進み、男たちは木を切り倒し、葬式に必要なものを作っています。
 舞台は老人ホーム。新人で繊細な感じの介護士マチコは自転車で自宅に戻り、祖母の写真に見入ります。入居者のシゲキは、僧侶に自分は生きているのか、と質問し、習字ではマチコの習字をめちゃくちゃにしてしまいます。食事の時、天国の話や、生まれて来る前の話、子供を亡くした話をする入居者。シゲキは誕生会を開いてもらい、上機嫌だ。シゲキはプレゼントのリクエストをされ、亡くなった妻の真子と答えます。夜に介護士とピアノの連弾をするシゲキ。自室で妻の写真に見入るシゲキは、ゴミだと思ってリュックを捨てようとするマチコからリュックを奪い取り、マチコを部屋から叩き出します。手を痛めたマチコは病院に連れて行ってもらい、主任から励まされます。
 木に登って落ち、逃げ出して帽子を投げ飛ばすシゲキ。彼を追うマチコと追いかけっこをして遊びます。そしてある日、リュックを背負ったシゲキと車で出発したマチコは、途中で道からタイヤを落としてしまい、助けを呼びに行っている間にシゲキは車を出てスイカを畑から盗んで逃げ回ります。シゲキはスイカを落としてしまい、割れたスイカを食べる2人。シゲキは森の中に入って行き、真子のところへ行くと言います。2人は道に迷い、携帯の電波も届かなくなります。自分より大事といってシゲキはリュックを離しません。雨が降り、鉄砲水の危険がある川を渡ろうとするシゲキに、マチコは「行かんといて」と泣き叫びます。シゲキは戻り、マチコを慰めます。夜、たき火で暖をとる2人。寒がるシゲキを裸になって暖めるマチコ。
 朝、シゲルが起きると真子がいて、2人で踊り、それをマチコは見ます。マチコはリュックを背負い、急坂を登り、シゲキがリュックを開くと、妻の日記帳と遺品が入っていました。シゲキは穴を掘り、その穴の中でリュックを抱きながら眠ろうとします。マチコはシゲキに礼を言い、上をずーっと見上げて、遺品を持ち上げ笑うのでした。

 シゲキが妻のことが頭から離れない、というか、妻のために自分は生きているというのは分かるのですが、それに関わっていくマチコの立場が良く分からない。そういうシゲキが好きになったということなのでしょうか? カンヌではスタンディング・オベイションの嵐が上映後吹き荒れたそうですが、そこまでの映画には思えませんでした。ただ、冒頭の木を使った物作りのシーンは、ドキュメンタリーから入った監督ならではの見ごたえのあるシーンでした。とりあえず、この作品は河瀬直美監督の最高傑作との呼び名が高いので、彼女の作品を見た事の無い人は、ご自分で見て判断するとよいと思います。肯定的なご意見をぜひ聞かせてください。

内澤旬子『世界屠畜紀行』

2008-02-27 17:13:12 | ノンジャンル
 朝日新聞の年末の特集記事「2007年 心に残った一冊」のエンタメノンフ(楽しめるノンフィクション)のコーナーで紹介されていた内澤旬子さんの「世界屠畜紀行」を読みました。
 内澤さんは屠殺とのことを少しでもイメージを良くしようと屠畜と呼び、その手順を見るのが大好きな人です。モンゴルで始めて屠畜を見てそのあまりの面白さに衝撃を受け、もっと知りたいと思いましたが、日本には屠畜について書かれた本がありません。これはその仕事に関わる人が昔から差別されてきたこと(それも部落差別と関係があるらしい)を関係していたのだと言います。そうした現状を打破するべく、世界の屠畜の現状とそれに対する考え方を取材しようと思ったことが、内澤さんがこの本を作るに至った動機です。
 まず、韓国のカラクトン市場から。李朝時代から白丁(ペクチョン)という屠殺を業とする差別民がいたらしいのですが、現在ではいろんな人が関わっています。しかし、職業に対する差別はまだあるとのことです。
豚の屠畜は、まず狭い枠にはめて電気ショックで失神させますが、その瞬間キューと鳴きます。鶏は熱湯に生きたまま入れて羽をむしりやすくします。
 バリ島では、人口の9割以上がヒンドゥー教徒。成人男性なら豚の解体は朝飯前なのだそうです。小豚の丸焼きは、まずナイフで頸動脈を切って血を採り、体に熱湯をかけて毛をむしり、爪を外し、下腹部に切り込みを入れて内臓をずるんと引っぱりだし、腹の中を洗い、そこへ香辛料を詰め込み、口から棒を突っ込み、顎の骨を叩いて壊し、豚ごと垂直に立てて豚の重さを利用してお尻に棒を姦通させ、それを火の上で回転させながら焼きます。皆好きでやっていて、副業を持っています。食べるために動物をつぶすことは彼らにとってはいいことで、神からの恵みを感謝して食べるという宗教的な意味を含んでいます。
 この後も、エジプトでのラクダの屠畜、イスラム諸国での祝いや祭りの際の羊の屠畜、チェコでの豚の屠畜、モンゴルでの羊の屠畜、韓国での犬の屠畜、東京での豚・牛の屠畜、沖縄のヤギ・豚の屠畜などなど、さすがに途中で読むのを諦めました。ここまで屠畜にこだわって解体の様子をうまいイラスト入りで取材し続けるのは、著者が屠畜が大好きというのと共に、そこに屠畜に対する差別意識を少しでもなくしていきたいという意気込みでしょう。
 実際、エジプトでは職業差別が激しく、下から農民、タクシードライバー、地下の掃除、下水処理、ゴミ回収、ナイフ研ぎ、行商、鍵を作る人、道端で商売してる人、ベリーダンサー、女優、マイクロバスノ運転手、などとともに屠畜も差別されているそうです。(でも地下掃除、下水処理、ゴミ回収などはそれをやってくれる人がいないと差別する側の生活が成り立たない仕事ですよね。こういうところからも差別する側の自分勝手さが垣間見えます。)韓国も犬屠畜人への差別は激しいそうです。東京はというと、これも嫌がらせの手紙なんかが来るんだそうです。そんな手紙書いても何も変わらないのに。その一方で、イスラム諸国やチェコでは差別が全くないそうです。差別どころか、イスラム諸国では有り難がって殺して食べるのですから、その気持ちを私たちも持ちたいものです。
 「私たちが生きることは、ほかの生き物が血を流していることなんです。(中略)これから『いただきます』と言うときに、そのことを忘れないでね。」(本文P.123)そうですよね。「いただきます」って、神様に言うのと同時に、今から食べるために殺された動物・植物たちに向かっても言うという気持ち、大切ですよね。言うのは簡単、するのは難しいですが、なんかいいことを教えてもらった気がします。内澤旬子さんの「世界屠畜紀行」、オススメです。

第80回米アカデミー賞授賞式

2008-02-26 15:11:21 | ノンジャンル
 WOWOWで今年の米アカデミー賞授賞式を見ました。今年は80回目ということで、これまでのアカデミー賞の歴史を振り返るコーナーがいくつかありました。
 まず、最初に司会者が「今日はデニス・ホッパーも来ています」と何とデニス・ホッパーが大御所扱い、と思いきや、「ここがどこか分かりますか?15分ごとに教えてあげるから心配しないで」と認知症扱い。こんなに高齢の方も来てますよ、というジョークなのでした。
 演出は面白いテレビ番組にしようという演出(例えば、映画に出て来る双眼鏡のシーン、悪夢から目覚めるシーン、蜂の出て来るシーンのオムニバス)が目立ちましたが、80年の授賞式シーンを振り返るコーナーでは、後半トリビュートすべき女優、男優(具体的には、ケーリー・グラント、スタンディング・オベイションを受ける老年のオードリー・ヘップバーン、フレッド・アステア、キャサリン・ヘップバーン、ジャック・レモン、ヘンリー・フォンダ、ジョン・ウェイン、ジェームズ・ステュアート、素晴らしいスピーチをしたラッセル・クロウ)の映像ときちんと出し、ラストを「ここにお招きいただいて光栄です」と話すチャップリン(彼は良心的な映画を作り続けた結果、50年代に赤狩りでアメリカを追放されて経歴を持ちます)で締めるという粋な計らいを見せてくれました。
 また、主要な賞の前には過去の受賞者が受賞の際に述べるコメントが見られ、これでは、助演女優賞にエステル・パーソンズ(「俺たちに明日はない」のボニーを毛嫌いする叔母さん役で有名)を始めとする味のある懐かしい顔が多く見られて楽しめました。ただ、最近になるにつれ、個性的な女優が少なくなっているのが気になりました。主演男優賞では、コメントを語るジョン・ウェインが際立ってかっこよかったです。ちなみに映像だけでなく、コメントつきで紹介されていた主演男優はウェインの他に、ジャック・レモン、トム・ハンクス、貧しい黒人に希望を持とうと話しかけたフォレスト・ウィテカーの4人でした。今でもちゃんとジョン・ウェインを忘れずトリビュートし続けるハリウッドも捨てたもんじゃないと思った次第です。
 またこの一年に亡くなった人の特集では、ラズロ・コバックスの名前が出て来ました。ラズロ・コバックスがアメリカでトリビュートされるなんて、感激しました。ちなみに彼はフランスで50~60年代にかけて若者たちが商業映画を撮り始めたヌーヴェル・ヴァーグの中で撮影者として活躍した伝説的な人です。
 そして、最後に一言。アメリカの授賞式はアカデミー賞に限らず、受賞スピーチで必ず家族へ感謝の言葉を述べますよね。彼らが家族に支えられて今の自分がいる、ということを照れずに公の場で口にできることが素晴らしい、と思いました。

ポール・シュレイダー監督『閉ざされた楽園』

2008-02-25 19:30:07 | ノンジャンル
 「アメリカン・ジゴロ」でリチャード・ギアをスターにしたポール・シュレイダー監督の'06年作品「閉ざされた楽園」をWOWOWで見ました。
 強盗に入られたことで、セキュリティシステムの行き届いた住宅地に引越したベンソン一家は、娘と同じ学校に通う娘を持つ隣人の婦人の執拗な誘いに悩まされます。そして、女子サッカーで全米一を誇る娘たちの所属するサッカーチームで、ベンソンの娘がメンバーに選出され、隣人の娘が選出されないと、隣人の母はベンソン一家の母ジェリーに娘のエリンにチームを止めさせれば、自分の娘がチームに選出されるかもしれないので、エリンがチームを辞退することをジェリーに迫りますが、ジェリーは拒否します。それ以後、隣人の嫌がらせが続き、エリンがドーピングしているという匿名電話でエリンはチームを外され、愛猫は惨殺され、ついにナイフを持った隣人がジェリーに迫ります‥‥。

 ナイフを持って斬り付けるところは、イーストウッドの「恐怖のメロディ」やキューブリックの「シャイニング」を思い出させます。隣人が異常な人間で、自分を襲って来るというストーリーは今までにも何回か出会った記憶があるのですが、具体的な名前は出て来ません。前半、ベンソンの夫婦がやたらにキスをするのがイラつきますが、後半のサスペンスはポール・シュレイダーまだ腕衰えず、といったところでしょうか。シーン転換がフェイドイン、フェイドアウトであり、無名の俳優ばかりで作られているのでテレビ映画を見ているような気になりました。いずれにしても、結構楽しめます。オススメです。