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エドワード・ヤン監督『クーリンチェ少年殺人事件』その7

2018-09-04 10:19:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 警官、小四に「着替えなさい。立ちなさい」「俺のだ! 小明を取るな! ダメだ! ダメじゃないか!」。
 小馬「親父の刀だ。親父に尋ねてくれ」刑事「お前に尋ねている。日本刀を学校に持ち込んだ理由だ。無関係と思えん。僕らは馬司令官とも親しい。だから協力してくれ」小馬の母「あの子はうちの息子よ。うちは地位もプライドもある。変な疑いをかけないで」婦人警官「被害者の母が自殺したそうです」小馬の母「責任者は?」「責任者は私だ。お引き取り願いたい」。無理矢理連れて行かれる母。泣く小馬。「彼が唯一の友だちだった。今は……」
 若い医者のところにも記者が殺到する。彼と被害者の間に恋愛感情があったかと聞かれると、若い医者は記者全員をドアの外に締め出して、ソファに座り込む。
 「どんな事情です? 話して下さい。真相が知りたい」「そうとも。金の指輪らしい」「申し訳ないが、他のことは分からない」「殺人犯は知り合い? 話して下さい。被害者と恋愛関係だったのでは?」「その話が出てたぞ。君たち、それでも人間か! 出て行ってくれ!何様のつもりだ。やましいのか?」。「清く安らかなる場所♪ここに悪は忍び難く♪主イエスに近き場所♪慈悲なる救世主イエスよ♪神の懐から訪れた♪我ら願なくば♪神の懐へ♪」。
 “1961年の夏、台北市地方裁判所で小四は死刑の求刑を受けた。国民党政府が台湾に渡り、初の未成年者による殺人事件のため、異論も多く、高等裁判所の再審を経て懲役15年が下された。小四は30歳の誕生日前に釈放された。事件発生から2ヶ月後……”の字幕。
 刑務官「テープでいいって誰が言った? デタラメだろ? 聞いたこともない」小猫王「前回封筒を渡したら、検査でなくしやすいからテープでと言われた」「家族か?」「違います。テープでもいいですよね。ダメなんですか?」「誰に?」「張震」「そうか。置いとけばいいよ」。“小四、この歌を覚えてるか? 誰に送ったと思う? プレスリーだ! 返事までもらったんだぞ。自分の知らない島の国で人気があると感動して、プレゼントを送ってきた。見せられず残念。もらった指輪をはめてる。すごいだろ。でもいつお前に見せられるのか”という音声。刑務官「なんだ、これ? こんなもの」と言って、カセットテープを捨ててしまう。
 大掃除をする張家。ラジオを落とすと声が聞こえだす。「ラジオが直ったぞ」。名前が次々と話され、「以上が文学部合格者29名です」と話し、暗転して映画は終わる。

 4時間近くの映画ですが、一気に見られました。ロングショットの多い映画で、それは出演者が未熟であったため、それを補うために取られた戦略であったことを本で知りました。また、この映画がなぜ12歳未満の視聴がダメなのか、まったく理解できませんでした。

エドワード・ヤン監督『クーリンチェ少年殺人事件』その6

2018-09-03 09:23:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 兄「おい、お金あるか?」小四「少しなら。いくら?」「いくらいるんだ? やめとくよ」。
 図書館で勉強する小四。(中略)
 母「一緒に食事して知り合うだけ。堅く考えないの」。ブザー。妹「おじさんだよ。私は連れていかないのね」「知らない人ばかりよ」「行きたいの」「お土産を買うわ」。
 姉「腕時計は?」老二「俺じゃない」「母さんにバレたら大変」。(中略)
 父と母、帰宅。母「チャンスだわ。オーナーの林さん、しっかりしてそう。迷わないで」「父さん、汪さんが来たわ」。母、妹に「お土産忘れたわ。次は必ず覚えておく」。
 小四「昨夜滑頭に会った。別人だったよ。人は変わるんだと慰められた気分だ」「何がいいたいの?」「小翠、僕ら長く一緒にいられるかな? 僕は君に穏やかな安らぎを与えられるかも」「随分真剣なのね。私を軽蔑してたはずよね? 私を変えたいのね? 実験のつもり? たいそうな理屈だわ。私は毎日自由に生きてる。私が変わらなければ? あなたの思い通りでなければ相手にしない? 自分勝手ね。何様のつもり?」。小翠、去る。小四「悪気はなかったんだ」「むしろ以前のことに私は感謝してる」「以前? 何のこと?」「とぼけてるの? 滑頭が217に襲われた時、一緒にいたのは小明よ。知らないの? 滑頭はハニーの報復が怖くて私だったことにしたの。私がバカだった。説教は小明にしたら? 私どころじゃないわ」。
 父、頭を抱えてしゃがみこんでる老二を板で殴り続けている。「この恥知らず! 早く認めろよ! この恥知らず!」母と姉「もう止めて」。次女、小四に「後で帰ってきなさい。皆、図書館にいると思ってる。犯人があなたと知ったら、二人はもっと悲しむ。兄さんがお金を工面してきて、腕時計を取り戻そうとしたけど、母さんにバレたの」。
 次女「孤独だと思わないで。私はいつも心配している。疑わなくていい。神があなたに力を与えてくれる」小四「でも運の悪い人が多すぎる。社会は不公平すぎる」「他人にこだわるから、自分のことばかり考えるから。キリストは私たちのため犠牲になった。兄さんだって、あなたをかばい罰を受けている。他人の思いに感謝して。あなたは他人に奉仕してる? 理解できるでしょ?」「ハニーも言ってた」「誰?」「良い友だちだ。姉さん、『戦争と平和』読んだ?」「明日、陳(チェン)牧師と話をする?」。
 小馬「何だ?」小四「話が済んでいない」「何だよ。とぼけやがって。女のためにケンカを売るのか? 何だよ、それ。女々しいんだな。勉強に専念するんだろ? まだグタグタ言うのかよ。不義理はない」「黙れ。聞きたくないね。坊ちゃんの理屈か? お前が小明と一緒だと分かる度に学校で待ち伏せしてやる」「せっかく“兄弟”扱いしてたのに。これがお前の態度なんだな。死にたいのか、クズめ。やってみな。殴ってやる」。(中略)
 映画監督、小四に「この間君と来た娘、探せるか? 引っ越して見つからない。君は知って
るか? あの子はすばらしい。演技が自然だ」「自然だと? 何も見抜けないで何が映画だよ。何撮ってんだ?」。
 スタジオに置き忘れた懐中電灯。
 「王茂は学校よ」「本を借りに」「どの本を?」「場所は分かります」。日本の女性が自殺にお使ったとされるナイフを手に入れる小四。
 小明「小四! どうしたの? なぜ学校へ? それ何? 何を持ってるの? 小馬を待ってるのね。そうなんでしょ? それはダメ」「君を馬鹿にさせない」「何を言うの? 勉強に専念していないの?」「小明、僕は全部知ってる。でも平気だ。僕だけが君を救うことができる。僕は君の希望だ。ハニーと同じだ。君は今もハニーを忘れない。そして今は僕がハニーだ」「助ける? 私を変えたいのね。結局は他の人と同じ。あなたは違うと思ってた。私の感情という見返りを求めて安心したい訳? 自分勝手だわ。私を変える? この社会と同じ。変わらないのよ。何様なの?」。小明、小四に腹を刺される。「君はダメな奴だ! 恥知らず! 小明、立てよ。早く立てよ。力を入れて。君は死なない。信じてくれ。急いで立つんだ。君にはできる。早く立ってくれ」。ピクとも動かない小明を前にしゃがみこむ小四。
 「どこでしょう? 私の弟です。きっと人違いだわ。少年が連行されたはず。張震です。どこですか?」。
 刑事「あいつか?」「分からない」「どこのグループだ?」「不良は全員知っているはずなのに」。女性警官「ポケットからです」と紙片を渡す。「瓊姉さん、ごめんなさい。姉さんだけが知っている。父さん母さんに説明して下さい。もう会えない時は……」と書かれている。「名前は?」「名前も書いてないぞ」「病気か?」。紙片には「小四」と書かれている。(また明日へ続きます……)

エドワード・ヤン監督『クーリンチェ少年殺人事件』その5

2018-09-02 16:35:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
 「君は学校を非難するが、家庭の教育は?」小四の父「目上に対して無礼だぞ」「両親が躾ず、学校を責めるのか?」「もう一度だけ機会を」「無理だ。この状況で学校側が放置すれば正しい指導をしていないと言われる。もう私の手にいは負えない」「私の責任だ。衝動的な行為を許してやってくれ。再び減点になれば留年になる。それは息子にとって不公平だ」「前回は学校を批判した上に、減点するならしろと言ったくせに。今回は怖いのか? お互い公務員の身だ。あまりいい気になるな」。バットを手にする小四。それを大きくふりかぶって電球を割る。
 うつむきながら自転車を並べて押す小四と父。「父さん、退学でちょうどいい。夏休みは編入試験だ。昼間部に挑戦する。心配しないで。僕は忘れてない。父さんの言葉『自分の未来を信じろ』と『努力で未来を作れ』って。バットで殴ったのは相手が卑劣過ぎたからだ。前回は父さんが……」。(中略)
 大樹の根元に座る小四と小明。「次はいつ会えるの?」「僕の試験の後だ」「学校に会いに来て」「次に校門をくぐる時は昼間部の学生だ」「何だかハニーの台南話みたい」「機嫌が悪いね。君が心配だ」「勉強に専念しなさいよ。私は励ましたいだけ。今日の外出は止める?」「予定通りに行こう。小猫王と飛機も来る」。
 母「お手伝いさんがやめて人手が足りないの。ごめんなさいね」とジュースを出す。(中略)「他の人はどこに?」。
 軍隊ごっこをやる小猫王と飛機。(中略)小明も加わり、ふざけて拳銃の照準を小四に会わせて撃つと、実弾が発射される。驚く一同。小四は小明を平手打ちする。
 勉強する小四。
 母「お父さんは公務員として行き詰まる。夏先生の件で。皆、頑張ってくれて、特に小四、逆に安心したわ。退学したらやる気が出たみたい」。
 姉「母さん、卒業したら私、先に働くわ」「奨学金を得たらすぐ留年しなさい」「うちはあと3人子供がいるのよ」「今までも同じよ。アメリカに行ってから心配して」。雑貨屋の親父「お米4斤(きん)だね」「ツケでお願いできますか?」「水臭いな。俺は余計な口を出すと思われてるが、張さんと似てるのさ」「ピータン、ありますか?」「そこだよ。この間小四に助けられてね、大したことはできないが、恩返しさ」。
 母「林(リン)さんは本省人で、誠実な人だわ。青果の輸出を考えていて、有能な人材を求めている。最初の給料は少なくても、人に邪魔されないし、あとは努力よ」「倒産しないか?」「話をしてから判断すれば? 会わずに疑っても意味ないわ」「僕は公務員が長い。保証があり、生活が安定する」「今の暮らしが安定してる?」。
 テープレコーダーをいじる小猫王。小四「最近学校は?」「何も変わりない」「小明に会う?」「見かける。元気そうだ。勉強に専念しろ。何かあれば俺たちがいる。シャドーボクシングをする小猫王。
 母「張瓊(チャンチョン)、手伝って。7時に人が来るの。テーブルを片付けて」「小四は?」「映画を見にいかせたわ」。次女が本を落とすと、本の中から紙が落ちる。そこには「滑頭はXデーを避けられない」と書かれている。
 食堂の掃除をする娘。「滑頭ならずっと姿を見てないわ。この店であの子が斬りつけられて、父親も降格処分を受けた。向いの中山堂も例会程度で貸し出さない。ついてないのは私。お客が来ない。来るのはお巡りだけ」「もう閉店か?」「噂してたら現れたね」「小四、図書館で勉強してるんだって? 退学になったのか? お前変わったな。昔はイキがってた。毎日イカレてて、今思うとおかしい。昔のことは忘れてくれ。悪いと思ってる。どこを受ける?」「昼間部への転部入学」「さすがだ。俺は軍事学校がせいぜいかな。ケンカに明け暮れて、今はお互い憐れだ。女の問題も同じ結末か?」「どういう意味だ?」「小馬だ。ひどすぎる。お前も俺と同じで放っておくだろ? 小翠をひっかけて今度は小明だ。申請はいつ?」「英語と数学は最悪だ」「小四! 連絡し合おう」。小四、男を殴る。娘「またコトを起こすつもり? 警察を呼ぶからね。容赦しないよ」。小四、去る。
 「誰に用ですか?」「小馬いますか?」「少しお待ちください。名前は?」「小四」「久ぶりだな。何してる?」「お前こそ何だ? 俺が何をするんだ?」「小明がうちにいるんだ。この前一緒に来たろ? 使用人が辞めて小明がお袋に相談に来たんだ。お袋が小明を気に入ってる。小明はイケるぞ。上がれよ。小明もいる」「小明とどうなんだ?」「どうって? 女相手だろ。それだけだ。与えるものは与えて、いちゃつくさ。面白くないのか? “兄弟”が女ごときでもめるか? ハニーのことを話していたろ? お前といても不安らしい。女で腑抜けになるようなお前じゃない。上がれよ。数発撃つといい」「映画を見に行く」。(また明日へ続きます……)

エドワード・ヤン監督『クーリンチェ少年殺人事件』その4

2018-09-01 07:26:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。
「楽しませようと誘ったのに、どうだキスできたか? これでもダメか? 拒否されたのか? 行けって。小翠を連れていけよ。何だよ。人の厚意にその態度は? もういいよ」。
 「山東饅頭とあんこ入りだよ」。自転車をこぐ小四。酔っぱらって歩く雑貨屋の親父が苦しみ始め、側溝に落ちる。急いで助け出す小四。(中略)
 雨。“小公園 かき氷の店”のネオン。
 「何する! このサングラス野郎! ひとでなし。私を騙したね」と女は外へ出る。
 「新入りの入団式が何で“台風”なんだよ。肝心の坊主頭は?」「卡五(カーウ)が連れてくる。イラつくな」。
 武装集団。トイレから出てきた男を斬り殺す。気配を感じたボスはロウソクの火を一気に吹き消す。暗闇の中で乱闘。(中略)
 死屍累々。瀕死の山東に「ハニーを殺したのか」と詰め寄る小四。山東に駆け寄り、「山東! 山東!」と泣く女性。
 刑事らが小四の家を訪れる。「張(チャン)さん」「何です? 明日の勤務時間内にでも」「特殊なケースなので」「それなら着替えます」母「また小四かしら?」。
 母「先に寝なさい。私が待つから。母さんが汪さんを訪れて2時間、父さんが連行された。警備総部らしい」。ずぶ濡れの小四を見て「どうしたの?」「雨具を持ってなかった」次女「心が落ち着かないのね」「布教しないでくれ」。
 父「私は生涯やましいことはしていない」刑事「それは分かっています」「帰っていいですか? 勤務があるので」「少しこちらで休んでください」。
 板張りの部屋に座り込む父。
 「また夏先生のことを話すのか?」「昨日は部分的だった。楽にして書いてください。では私は席を外します。「止まらぬ涙はあずき豆のようだ♪柳が緑に映えて春の花咲き乱れる♪眠れない黄昏に風雨に揺れる窓際♪過去の憂いも今の憂いも消し去れない♪ごちそうものどを通らず幾度も鏡に映すやつれた姿♪眉を緩める夜明けは叶わず心が沈んでいく♪眉を緩める……」。
 「李安婷(リイアンティン)は?」「大学の同級生だ」「なぜ書いてない?」「台湾に来ず、付き合いがない」「梁晉成(リャンジンチェン)は?」「記憶にない」「よく考えて確認しろ。1937年7月上海で会計に就いただろ? あんたの前任者だ」「あの梁さんか」「なぜ書かない?」「趙念如(チャオニエンルウ)は?」(この調子で取り調べが延々と続く)。
 「すぐ背が伸びるのね。下校の時、スカートを持ち帰りなさい」と妹に言う母。(中略)
 鏡を見て帽子をかぶり、銃を構えるマネをする小四。小明来る。「誰もいないよ」「来ると思った? この間言ったこと本当?」。うなずく小四。「私を騙さないでね。耐えられないから」「土曜だし、さぼらないか?」「やめとく。これから時間はあるもの」。
 小明去る。(中略)
 教室で小四、にんまり。「楽しそうだな」。
 授業終了後、下で待つ小四に駆け寄る小明。それを見て冷やかす女学生たち。
 取り調べ室。夜明け。「もう帰ってよい」。
 食堂で食事をとる父。それに気づく母。
 父「局内で異動があった。担当が変われば面倒もなくなる」「尋問のせいかも」「推測で物を言うな」「汪さんが早々と線引きをして保身を図ったのかも」「疑って何になる!」。
 屋外で泣く母。母「辛すぎる」「僕には君と子供しか残っていない。おどかさないでくれ」。父に抱きつく母。「あなたに覚悟があるのなら私は大丈夫」。
 バスケ。「師範付属ガンバレ、師範付属ガンバレ」。無気力なプレーをする小虎。
 「小虎、どうした?」。
 小四「やっぱり小虎と話せば? 仕返しが怖いの?」「大丈夫。もう済んだこと言わないで。小虎の話は聞いてない」「何を話せばいい? 私を追う人は多い。もう聞いてるでしょ? あの若い医者も。こんなこと聞いて面白い?」「彼らを放っておくのか? あちこちで恨まれていいの? それじゃ軽蔑される」「軽蔑されるのはあなたね」。自分の頭を小四の肩に置く小明。(中略)
 小明「あの女の人は誰?」医者「香利(シャンリイ)のこと? 僕たちは9月に結婚する」「あの人気に入らない。何か違う。彼女と気持ちが通じ合ってないでしょ?」「子供には分からない」「私は多くの男性に告白されるけど、何か問題が起こると皆逃げていく」「何か問題があるのなら、僕に話してくれ」「言わないわよ。あなただって言わないでしょ?」「お母さんの治療代は問題ない。親しいのだから協力は当然だ。まだ話したくない?」。
 注射。教師「張震、こっちへ。君たちのために忠告する。君たちの年頃の恋愛は正しい導きがいる」。看護婦「先生の前できちんと立って」「くそったれ! 何のつもりだよ! 警備総部か?」「何て言ったの?」「補導室へ来い」(また明日へ続きます……)