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石井輝男監督『徳川いれずみ師 責め地獄』

2011-06-30 00:11:00 | ノンジャンル
 石井輝男監督・脚本の'69年作品『徳川いれずみ師 責め地獄』をスカパーの東映チャンネルで見ました。
 磔にされた女が腹を刺し貫かれて血がほとばしり、首だけ出して埋められた女は生きながら首をノコギリで斬られ、生首が転がる様子をバックにタイトル。夜、弦造の墓を掘り返し、死体を切り裂いて鍵を取り出した弓はそれで貞操帯を外そうとしますが、鍵が壊れてしまいます。病気の息子をかかえ、借金の形として身を売られた弓は、与力の鮫島(田中春男)の奇妙な間取りの屋敷に連れていかれますが、そこには刺青を入れられた大勢の女たちがいて、緊縛師の弦造が彼女たちを折檻し、それを見せ物にしながら女将が売春を取り仕切っていました。レズる女将。刺青師の秀(吉田照雄)は、兄貴分の辰(小池朝雄)と競い合い、将軍の御前試合で勝った方が師匠の彫五郎の名を継ぎ、その娘のお鈴と結婚することになっていました。刺青をした女の調達を南蛮人のクレードルに頼まれた鮫島は、女囚(由利徹、大泉滉をも含む10人)を脱獄させ、前科を示す刺青を隠すため、上から重ねて刺青をしてやり、2年の年季奉公を承知させます。一方、弦造が弓を縛り上げ犯しているのを見つけた女将は、嫉妬で怒り狂い、弦造の妹・雪を吊るして両目をつぶし、弓には貞操帯をはめ、その鍵を飲み込んでしまった弦造を撲殺してしまいます。秀は御前試合のための刺青を弓に施し、辰は女将に刺青をさせてくれと頼みますが、女将は辰に、申し分のない肌の持ち主である弓に施された秀の刺青に重ねて刺青を彫らせます。御前試合では辰が弓に彫った「責め地獄」が一旦は選ばれますが、秀が弓に酒を飲ませると、弓の肌に観音様が浮かび上がり、将軍は二人の引き分けを宣言します。弓は弦造の墓を暴いているところを捕り物に捕まり、海上火あぶりの刑で死にます。鮫島は彫五郎を殺して辰を仲間に引き入れ、彫五郎殺しの罪を秀に着せて島流しにさせると、女将の元にいた売春婦たちと刺青を施された女囚たち、それに雪とお鈴を船に乗せて、女将とともに長崎に向かいます。船上での売春婦たちと女囚たちの乱闘、そして「長崎」の字幕。クレードルは女たちを引き取ると、早速拷問機械にかけて犯して楽しみながら、女たちを外国に売り飛ばす算段を進めます。自分のものになるはずだったお鈴に彫り物を施していた辰は、鮫島とクレードルらがお鈴も売り飛ばす計画なのを知って、以後協力することを拒みますが、女将に麻薬を打たれ、言いなりになってしまいます。ついに彫り物が完成したお鈴は、雪と脱走し、出島の迷路のような雑踏の中に逃げ込みますが、やがて追いつめられ、秀と約束していた場所で秀と会い、自分のことを伝えてくれるように雪に言うと、自ら囮となって捕まります。雪は人買い(芦屋雁之助)に導かれて、島抜けをしていた秀の元に連れられていくと、秀は雪が持っていたお守りで彼女がお鈴の使いであることに気付き、自分をはめたのが鮫島とクレードルだったことを知ります。お鈴を助けに行った秀でしたが、彼女の元に駆けつけた時、絶望した彼女は既に毒をあおった後でした。復讐の鬼と化した秀は、クレードルの娘ハニーをさらい、彼女に刺青を施します。そしてクレードル主催の見本市で、辰が白人女性に彫った蛍光色の刺青を披露していた時に、秀はハニーを連れて乱入すると、辰は刺青で秀に負けたことを認めます。秀に斬りつけてきた鮫島を返り討ちにした秀は、クレードルに追いつめられますが、辰がクレードルに斬りかかり、二人は合い倒れます。辰は二代目彫五郎の名を秀に譲ると言って死に、秀はクレードルの館が燃え盛る中、死んだ父の元を離れようとしないハニーを見て、自分の犯した罪の重さを知り、ハニーを逃がして自分は炎の中で死んでいきます。女将は捕り物に捕えられ、股割きの刑に処せられ、足をもぎ取られるのでした。
 常軌を超えた残酷さ、国籍不明の摩訶不思議な雰囲気に、魅せられるとともに、高橋洋君らが石井監督に惹かれる理由が、この映画を見て、やっと分かったような気がしました。サドの『新ジュスティーヌ』を楽しめる方向きの映画かもしれません。

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原作・挿し絵;川崎ゆきお、脚色;北村想『戯曲 猟奇王』

2011-06-29 00:49:00 | ノンジャンル
 先日、長嶋有さんの著書『電化製品列伝』の中で紹介されていた、高野文子さんの『奥村さんのお茄子』(『棒がいっぽん』に所収)を読んでみました。醤油瓶に化けた先輩の宇宙人が、新たに開発した毒茄子を以前、奥村さんに食べさせたことを証明してもらうために、奥村さんの元を訪れた宇宙人(この宇宙人は人間の女性に化けているのですが、靴やメガネが体にくっついてしまっているなど、色んな部分が「勘違い」しています)と現在は電気屋を営む奥村さんとのやりとりを滑稽に描いた作品で、映画的なコマ割りと、独特の時間感覚を持つ不思議なマンガだったのですが、残念ながら長嶋さんが夢中になるほどのインパクトを私は感じることができませんでした。

 さて、原作・挿し絵;川崎ゆきお、脚色;北村想『戯曲 猟奇王』を読みました。
 猟奇的犯罪をもくろむ猟奇王とその弟分の忍者、そして忍者の手下である下忍1、2の主役グループ、そして猟奇娘と探偵・便所バエが組む第2グループ、そしてまた黒とかげ、光とかげが組む第3グループが、金持ちの社長が持つハテナの秘宝を手に入れようと争うというのがメインの物語で、秘宝を守るために社長の元にやって来た仲代刑事とその同僚の女刑事・西野も登場し、それに猟奇王の幼い頃の先生で、遠足の時に何者かに拉致された女センセ、そして先生に率いられて遠足に来ていた学童1から5まで、また彼らとは何の関係もなく、アドリブの権化として物語の主役を奪おうとする土方(どかた)三人姉妹のキリコ、コネコ、ウメコらも劇に色を添える、そんなナンセンス喜劇(?)でした。脱線に次ぐ脱線、くだらないギャグも思いつくままという感じで書かれていて、ウンコネタなど子供が喜びそうなネタも多くあり、あとがきで北村さんが書いている文章をそのまま引用すると「偉く面白かった(中略)このアホラシイ漫画を思い切って舞台化して世間の顰蹙をかおうと思いたった(中略)私はともかくアホラシク馬鹿らしい台本を書く決意をして、それを書いたのだけれど、まず観客の顰蹙をかう前に演じる方の役者から顰蹙をかってしまった」とのことでした。また一方、川崎さんの方はあとがきで、「猟奇王などでも言える事なのだが、メルヘンタッチの郷愁や、宮沢賢治的な空間を歩くのは非常に難しい。詩人のように思われるし、芸術をしているのがまる見えなので、非常にみっともないからである。(中略)(したがって)子供が夢想しているような、もう一つの現実世界(を作ろうとした結果)ロマンとリアリズムが混ぜ合わせたようなカウス焼きが出来上がってしまった」とも書いています。
 現代においてロマンティックな小説を書こうとした結果、その気恥ずかしさから、この戯曲ができがったと言えるのでしょうか? それを確かめるため、今度は川崎ゆきおさん著の『(小説版)猟奇王』の方も読んでみようと思っています。

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ティム・バートン監督『マーズ・アタック!』その2

2011-06-28 05:53:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 ラスヴェガスも攻撃を受け、『It's not Unusual』を熱唱していたトム・ジョーンズも襲われ、元ボクサーでカジノの案内係をしていたバイロンらとともに逃げ出します。将軍はついに大統領に核使用を許可するサインをさせますが、発射された核は円盤が出した装置に取込まれ、馬鹿にする火星人たちに飲み込まれてしまいます。フランスの首相官邸も、ロンドンのビッグ・ベンも、タージ・マハルも破壊され、ロシュモア山は火星人の顔に刻み直され、モアイ像は巨大なボールでボウリングのピンのようになぎ倒されます。
 カンザス州でキャンピングカーのハンバーガー店を営む両親の次男であり、出征したばかりの兄を先日ネバダで火星人らに殺されたばかりのリッキーは、両親の制止を振り切って養護施設にいる祖母(シルヴィア・シドニー)を助けに行きます。今にも殺されそうになっていた祖母が彼に気付いて振り返ると、祖母が聞いていたヘッドホーンがジャックから外れ、スピーカーから音楽が流れ出し、それを聞いた火星人たちの脳は次々と爆発していきます。音楽が火星人の天敵だと知ったリッチーは、祖母を車に乗せて車のスピーカーから大音量で音楽を流し、巨大ロボットで追って来た火星人たちを撃退します。
 大統領の戦略指令室まで侵入してきた火星人らは、二丁拳銃で応戦する将軍を小さくしてから足で踏みつぶし、形の違いにこだわらず仲良くしようと力説する大統領と一旦は握手をするも、結局大統領を殺し、勝利の旗を掲げます。
 一方、リッチーはラジオ局からも音楽を流して、電波を受信していた火星人たちを撃退し、やがてそのことを知った軍も音楽を流して円盤を撃退していきます。ついに母艦も墜落し、首だけになったケスラーとナタリーは床に転がりながらキスして最期を迎えます。
 火星人がいなくなると、隠れていた動物たちが現れ、洞窟から出て来たトム・ジョーンズらに近寄っていきます。大統領の娘(ナタリー・ポートマン)はリッチーと彼の祖母に勲章を与え、生きていたバイロンは家族の家を再建するために家族の元へ戻っていくと、動物に囲まれたトム・ジョーンズは力強く『It's not Unusual』を再び歌い始めるのでした。

 冒頭のタイトルロールにシルヴィア・シドニーの名前を発見して驚き、どんなオマージュがこめられているのかと思っていたら、最初の傍役からあれよあれよと言う間に物語の中心に躍り出て、最後には見事に大統領(の代行となった娘)から勲章を与えられてしまうという、まさに彼女のためにこの映画が撮られたのではと思わせる、そんな映画でした。(ウィキペディアによると、この映画が彼女の遺作となったそうです。)フリッツ・ラング監督の『暗黒街の弾痕』での彼女が当然バートン監督の念頭に置かれていると思われて、その他にも『未知との遭遇』『M★A★S★H』『パットン大戦車軍団』『博士の異常な愛情』『宇宙戦争』『ジュラシック・パーク』『白雪姫』などの映画的記憶に満ち溢れた映画であり、CGによるものすごい破壊の画面の迫力もさることながら、トム・ジョーンズの使い方などに見られる、爆笑を誘うギャグのセンスも捨てがたく、蓮實先生がこれまでティム・バートンを評価してきた理由がここに来てやっと理解できたような気がしました。ティム・バートン監督の代表作の一つだと思います。

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ティム・バートン監督『マーズ・アタック!』その1

2011-06-27 00:00:00 | ノンジャンル
 ティム・バートン監督・共同製作の'96年作品『マーズ・アタック!』をスカパーの洋画★シネフィル・イマジカで見ました。
 「ケンタッキー州」の字幕。焦げ臭い臭いに気付く男たちの前を、背中を燃やした牛の大群が駆け抜け、頭上へ空飛ぶ円盤が飛び立ちます。タイトル。
 宇宙望遠鏡で火星からの円盤の飛来を察知した米大統領(ジャック・ニコルスン)は、高度な知能を持っているだろうから火星人は友好的であるはずだというケスラー教授の意見を採用し、テレビで彼らを歓迎する旨を放送します。ケスラーはテレビ局報道部のキャスター・ジェイソン(マイケル・J・フォックス)の妻であり、同じ局のバラエティ番組のキャスターであるナタリーの番組に出、お互いに惹かれますが、生中継中に火星人に電波ジャックされ、宇宙翻訳機で彼らの言葉を解析した結果、彼らがやはり友好のために来たと言っていることが分かります。
 大統領は攻撃を主張する将軍(ロッド・スタイガー)に歓迎の準備を命じ、ネバダの砂漠で大勢の人々が見守る中、円盤が着陸し、火星人の大使と護衛兵たちが降りて来ます。大使と将軍はお互いに友好の意を伝えますが、飛び立った鳩に驚いた火星人は鳩に銃を撃って一瞬にして骨だけにすると、それを発端にして将軍始め周囲の人間も銃を乱射し始め、一帯は修羅場と化します。ジェイソンも骨となり、ナタリーは火星人にさらわれ、円盤は飛び立ちます。
 ケスラーは誤解が元で起こった悲劇だとして、大統領に火星人に呼びかけてもらうと、火星人からも謝罪の言葉が返ってきますが、実際には円盤の中で火星人たちは地球人を嘲笑い、ナタリーは自分の首と胴体を飼い犬のそれとすげ替えられてしまいます。ワシントンD.Cに再び降り立った円盤から、火星人の大使は議会に招待されますが、再び議院らを虐殺し始め、ケスラーを拉致して立ち去ります。円盤の中で首だけになったケスラーと愛を語り合うナタリー犬。
 火星人は人間の女性になりすまして大統領報道官に自らをナンパさせ、ホワイトハウスに入り込むと、大統領を射殺しようとしますが、シークレットサービスに阻まれ殺されます。円盤でそれを知った火星人たちは地球への総攻撃を始め、無数の円盤でホワイトハウスを襲いますが、普段ゲーセンのシューティングゲームばかりしていて、たまたま社会科見学に来ていた子供たちは、死んだ火星人の銃を使って大活躍を演じます。(明日に続きます‥‥)

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吉田豪『人間コク宝 ドトウの濃縮人生インタビュー集』

2011-06-26 05:20:00 | ノンジャンル
 昨日の朝日新聞の夕刊に、ピーター・フォークさんの訃報が載っていました。「(『刑事コロンボ』シリーズ)に出演する傍ら、00年代半ばごろまで他のテレビドラマや映画への出演もこなしていた」とありましたが、実際には、日本でよく知られていたコロンボ警部より、カサヴェテス監督の『ハズバンズ』('70)や『こわれゆく女』('74)、そしてオルドリッチ監督の『カリフォルニア・ドールズ』('81)などの映画で強烈に記憶に残る俳優さんでした。改めてご冥福をお祈り申し上げます。

 さて、山田詠美さんが著書『ライ麦畑で熱血ポンちゃん』の中で紹介していた、吉田豪さんの'04年作品『人間コク宝 ドトウの濃縮人生インタビュー集』を読みました。
 吉田さんによってインタビューされているのは、登場順に、坂上忍さん、岸部四郎さん、チャック・ウィルソンさん、安部譲二さん、カルーセル麻紀さん、三浦和義さん、田代まさしさん、真木蔵人さん、ジョニー大倉さん、高嶋政宏さん、稲川淳二さん、ジョー山中さん、山本晋也さん、梨元勝さん、ROLLYさん、桑名正博さん、中山一也さん、内田裕也さんという面々。読んでいてヒリヒリするほどに、ぎりぎりのところで生きている方たちが、率直に自分の言葉で自分のことを語っていることに驚嘆するとともに、マスメディアを通じて流れてくる情報というのが、いかに限られたものなのかということをも再認識させられる本でした。とにかく、語られるエピソードがすごいものだらけで、例えば、一人目の坂上忍さんの場合だと、幼少期、子役をやって目立っていたことから学校でイジメに会い、それを許さない父から「いますぐやり返して来い!」と言われ、家に帰って親父に殴られるよりはまだ得かなと考えて、相手の家に行って呼び鈴を鳴らし、誰も出て来ないので勝手に上がって、家族がちゃぶ台を囲んでご飯を食べているところで相手をブン殴って帰って来たとか、嫌な女教師には「このガマガエル! ガマガエルはドブ川でゲロゲロ鳴いてりゃいいんだよ」と言って、その女教師を泣かせたとか、「『たまにはちょっと親孝行しなきゃいけないから』と思って大晦日に実家で飯食いながら『紅白』見てたときも、松田聖子がどうのこうの神田正輝がどうのこうので僕と(母親との)意見が分かれて、突然ちゃぶ台ひっくり返されて。それが、なんでここまでの喧嘩になんなきゃいけないの、みたいな(笑)。」とかとか‥‥。これ以降も、俳優の川口浩さんが安部譲二さんの旧友で、「(高校生の時)ヤクザの女とスケベするもんだから、いつも脅かされて落とし前取られていて」結局慶応高校を退学させられたとか、高嶋政宏さんやジョー山中さんによる音楽の話とか、ROLLYさんの世間に対しての挑戦的で熱い語りありとか、プロデューサーとしての内田裕也さんの数々のエピソードとか、それはもう盛り沢山の内容の本でした。
 「世間の常識」などという言葉で、息苦しく毎日を送っている方々には特にオススメの本であるとともに、様々な分野で活躍してきていた、または活躍してきている方たちの現場の生の声を聞ける貴重な本としてもオススメです。