恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。
まず11月20日に掲載された「学ぶことは生きること」と題された前川さんのコラムを全文転載させていただくと、
「17日と18日に埼玉県川口市で開かれた第68回全国夜間中学校研究大会に参加した。対面形式の開催は三年ぶり。この三年で夜間中学は七校増えて四十校になり、来年度以降の設置を計画または検討中の自治体も多いため、参加者の顔ぶれは大きく変わった。
大会のハイライトは「生徒体験発表」だ。神戸の夜間中学に通う中国出身の女性は、本国で過ごした幼少期、暴力を振るう父親の下で学校に通えなかった。徳島の夜間中学に通う青年は、母親と死に別れたのちに預けられた里親の下で新設の夜間中学に入学することができた。東京の夜間中学に通う少女は長く不登校で引きこもっていたが、夜間中学で学ぶことによって自分は変われるのだと知った。彼らに共通するのは、夜間中学で学ぶ喜びを実感するとともに生きる喜びを見いだしたということだ。学ぶことは生きること。学習権は生存権でもあり幸福追求権なのだ。
増設の勢いがついてきた夜間中学だが懸念もある。設置自治体の中には夜間中学の意義を理解せず十分な支援を行わない自治体がある。夜間中学を減らそうとする自治体もある。入学者から次々に退学者が出ている新設夜間中学もある。
夜間中学に限らず学校は学習権と生存権という人権を保障する場だ。それを知らない教育関係者はまだまだ多い。」
また、11月23日に掲載された「防衛費より給食費」と題する斎藤のコラム。
「物価の高騰が学校給食を直撃している。国の交付金を利用しても、食材の調達や献立の工夫で経費を削減しても追いつかず、給食費の値上げに踏み切った自治体もある。
仕方がない?
いやいや、むしろ食費が家計を圧迫している今だからこそ、給食費はタダにすべきだと思いません? 実際、それができてる地域もあるのだ。
文部科学省の調査(2017年度)では、小中学校の給食費を完全無償化した自治体は全国で76市町村(4.4%)。人口の少ない町村が主だったが、ここへきて中核都市にも無償化の動きが急速に広がりつつある。
青森市は今年十月から完全無償化を開始した。大阪市はコロナ禍に伴う緊急措置としての無償化を来年度以降も継続する方針。東京都では葛飾区が23区ではじめて完全無償化を打ち出した。期間限定の無償化を決めた自治体は相当数にのぼる。
住民が要望し、議会と首長が合意すれば、無償化は可能なのだ。義務教育の無償を謳(うた)う憲法26条から見ても、地域間の格差をなくす意味でも、この機に国は全自治体での完全無償化を目指すべきではあるまいか。
一人当たりの平均月額給食費は小学生で約4300円、中学生で約4900円。防衛費の増額には反対しても、学校給食の公費負担に反対する人はあまりいないはずである。」
そして、11月27日に掲載された「赤木俊夫さんを忘れない」と題する前川さんのコラム。
「森友学園問題」で決裁文書の改竄(かいざん)を強いられたために自死に至った近畿財務省理財局長佐川宣寿氏を訴えた裁判で、大阪地裁が門前払いの判決を出した。国家公務員が職務で損害を与えた場合、公務員個人は賠償責任を負わないという理屈で損害賠償請求を棄却するのだ。という
しかし公文書の改竄は公務員の職務なのか? 改竄を命じる命令は職務命令だと言えるのか? こんな違法行為を部下にさせても国家公務員は国に守られるのか? 法は正義を実現するためにあるのではないのか? 裁判所はこのように消極的であっていいのか?
雅子さんは損害賠償がほしくて提訴したのではない。夫を死に至らしめた者は誰なのか、その真実が知りたいだけなのだ。しかし、雅子さんが国を訴えた裁判で岸田政権は「認諾」という異常な手段で裁判を終わらせ、真相解明の機会を封じた。今こそ裁判所がそれを封じた。
公文書改竄事件の責任者は佐川氏だけではないはずだ。僕は当時の菅官房長官の指示があったと思うし、当時の安倍首相も了解していたと見ている。真の責任者は官邸にいたのだ。
この言説を名誉棄損(きそん)だと思うなら、菅氏は私を訴えたらいい。私は喜んで受けて立つ。その時こそ裁判所で真実を明らかにできるだろう。」
どれも一読に値する文章だと思いました。特に最後の前川さんの文章には勇気づけられました。
まず11月20日に掲載された「学ぶことは生きること」と題された前川さんのコラムを全文転載させていただくと、
「17日と18日に埼玉県川口市で開かれた第68回全国夜間中学校研究大会に参加した。対面形式の開催は三年ぶり。この三年で夜間中学は七校増えて四十校になり、来年度以降の設置を計画または検討中の自治体も多いため、参加者の顔ぶれは大きく変わった。
大会のハイライトは「生徒体験発表」だ。神戸の夜間中学に通う中国出身の女性は、本国で過ごした幼少期、暴力を振るう父親の下で学校に通えなかった。徳島の夜間中学に通う青年は、母親と死に別れたのちに預けられた里親の下で新設の夜間中学に入学することができた。東京の夜間中学に通う少女は長く不登校で引きこもっていたが、夜間中学で学ぶことによって自分は変われるのだと知った。彼らに共通するのは、夜間中学で学ぶ喜びを実感するとともに生きる喜びを見いだしたということだ。学ぶことは生きること。学習権は生存権でもあり幸福追求権なのだ。
増設の勢いがついてきた夜間中学だが懸念もある。設置自治体の中には夜間中学の意義を理解せず十分な支援を行わない自治体がある。夜間中学を減らそうとする自治体もある。入学者から次々に退学者が出ている新設夜間中学もある。
夜間中学に限らず学校は学習権と生存権という人権を保障する場だ。それを知らない教育関係者はまだまだ多い。」
また、11月23日に掲載された「防衛費より給食費」と題する斎藤のコラム。
「物価の高騰が学校給食を直撃している。国の交付金を利用しても、食材の調達や献立の工夫で経費を削減しても追いつかず、給食費の値上げに踏み切った自治体もある。
仕方がない?
いやいや、むしろ食費が家計を圧迫している今だからこそ、給食費はタダにすべきだと思いません? 実際、それができてる地域もあるのだ。
文部科学省の調査(2017年度)では、小中学校の給食費を完全無償化した自治体は全国で76市町村(4.4%)。人口の少ない町村が主だったが、ここへきて中核都市にも無償化の動きが急速に広がりつつある。
青森市は今年十月から完全無償化を開始した。大阪市はコロナ禍に伴う緊急措置としての無償化を来年度以降も継続する方針。東京都では葛飾区が23区ではじめて完全無償化を打ち出した。期間限定の無償化を決めた自治体は相当数にのぼる。
住民が要望し、議会と首長が合意すれば、無償化は可能なのだ。義務教育の無償を謳(うた)う憲法26条から見ても、地域間の格差をなくす意味でも、この機に国は全自治体での完全無償化を目指すべきではあるまいか。
一人当たりの平均月額給食費は小学生で約4300円、中学生で約4900円。防衛費の増額には反対しても、学校給食の公費負担に反対する人はあまりいないはずである。」
そして、11月27日に掲載された「赤木俊夫さんを忘れない」と題する前川さんのコラム。
「森友学園問題」で決裁文書の改竄(かいざん)を強いられたために自死に至った近畿財務省理財局長佐川宣寿氏を訴えた裁判で、大阪地裁が門前払いの判決を出した。国家公務員が職務で損害を与えた場合、公務員個人は賠償責任を負わないという理屈で損害賠償請求を棄却するのだ。という
しかし公文書の改竄は公務員の職務なのか? 改竄を命じる命令は職務命令だと言えるのか? こんな違法行為を部下にさせても国家公務員は国に守られるのか? 法は正義を実現するためにあるのではないのか? 裁判所はこのように消極的であっていいのか?
雅子さんは損害賠償がほしくて提訴したのではない。夫を死に至らしめた者は誰なのか、その真実が知りたいだけなのだ。しかし、雅子さんが国を訴えた裁判で岸田政権は「認諾」という異常な手段で裁判を終わらせ、真相解明の機会を封じた。今こそ裁判所がそれを封じた。
公文書改竄事件の責任者は佐川氏だけではないはずだ。僕は当時の菅官房長官の指示があったと思うし、当時の安倍首相も了解していたと見ている。真の責任者は官邸にいたのだ。
この言説を名誉棄損(きそん)だと思うなら、菅氏は私を訴えたらいい。私は喜んで受けて立つ。その時こそ裁判所で真実を明らかにできるだろう。」
どれも一読に値する文章だと思いました。特に最後の前川さんの文章には勇気づけられました。