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ジャン・ルーシュ監督『人間ピラミッド』

2009-09-30 15:52:00 | ノンジャンル
 山田宏一さんが「教養主義!」の中で挙げていた、ジャン・ルーシュ監督の'59~61年作品「人間ピラミッド」をDVDで見ました。
 「この映画は黒人と白人の若者を用いた実験だ。作り手は演技の展開を撮影しただけだ」の字幕。コートジボワールの高校でジャン・ルーシュは生徒たちに物語を説明し、白人グループでは差別主義者を一人に演じてもらうと言います。名前と志望を発表する生徒たち。白人のナディーヌと黒人のドニーズは自分と仲間たちの日常を説明します。パリからやって来たナディーヌは教室内の黒人たちと付き合うことを白人グループに提案して、一人の女生徒から強硬に反対されます。交流を持ちかけられた黒人グループも疑心暗鬼になりますが、ドニーズが彼らを説得します。交流が始まり、黒人店員のナタリーが黒人に敬語を使わないことについて皆で議論します。恋の詩「人間ピラミッド」を授業で朗読する白人男子。ナディーヌは複数の白人生徒、黒人生徒とデートし、ドニーズからそのことを責められます。白人生徒はナタリーをどちらが取るかで黒人生徒と賭けますが、キスをした後心変わりしたことを黒人生徒に告げます。パーティで親しくなった黒人生徒とデートを繰り返したナディーヌは白人生徒に罵倒され、ドニーズにも非難されますが、ナディーヌの話を聞いてドニーズは納得します。座礁船に皆で遊びに行くと、またナディーヌのことでもめ事が起き、白人生徒が一人荒波の中に飛び込み水死してしまいます。それをきっかけにまた離反してしまう白人・黒人グループ。ナディーヌがパリに戻るのを飛行場で皆が見送る場面で映画の本編は終わりますが、ジャン・ルーシュは「物語はこれからも続き、出演者たちの友情もこの映画によって培われた」と言い、主要登場人物が仲良くパリの鋪道を歩く姿で映画は終わります。
 素人とは思えない自然で生き生きとした演技で、どのようにして演出が行われたのか不思議に思うほどでした。見事な青春映画を見た感じです。ヌーヴェル・ヴァーグの好きな方にはオススメです。

梨屋アリエ『スリースターズ』

2009-09-29 18:02:00 | ノンジャンル
 朝日新聞で紹介されていた、梨屋アリエさんの'07年作品「スリースターズ」を読みました。
 食事も与えてくれない両親を持ち、すぐに男の子を好きになる愛弓は、唯一の親友の彼氏とプールに行ったことでその子からも虐められるようになり、母が家出して退路を断たれ母の知合いの買春に応じてしまったことから絶望します。エリート教育のため分刻みで時間を母から管理されていた水晶(きらら)は、ふとしたきっかけで同級生たちから優等生ぶっていることを理由に虐められるようになり、合唱コンクールの伴奏を見事に果たして信頼回復しようと思っていたところが指を骨折してしまい生き甲斐を失います。会社のオーナーで忙しく金はいくらでも出しますが子供の方を振り向こうとしない両親を持つ弥生は、一日中ケイタイメールのやりとりで現実とつながり、他人の葬式に忍び込んでは死体の写真を撮ってブログにアップしていますが、ある日、中傷サイトで愛弓のことを知り、また死にたいと書いているブログで水晶のことを知り、二人を誘い出して練炭自殺させようとしますが失敗し、思いつきでテロを起こそうと提案すると、水晶は同時多発自爆テロを言い出し、弥生は以前に手製爆弾を爆発させたことのある小6の少女に爆弾の製作を依頼します。やがて水晶と愛弓は弥生が偽名を使っていることを知り、彼女の正体を探るうちに小6の少女に辿り着きます。少女は時限爆弾1つとスイッチを押すと同時に爆発する爆弾2つを注文されましたが、時限爆弾など作る技術はないので、弥生には秘密で1つだけスイッチを押すとすぐ爆発する爆弾にし後はただの箱にしておいたと言い、また弥生が実は寂しがり屋なのだと教えます。自分たちが生きる価値を感じ出していた水晶は、本物の弥生に会って彼女の力になりたいと思うのでした。
 愛弓の絶望的な状況、弥生の殺伐とした心象風景からどんな結末になるのかとハラハラしていましたが、絵に描いたようなハッピーエンドに脱力してしまいました。あまりにあっさりと解決されてしまっていて納得がいきません。これからというところでいきなり話を終わらされたような気がします。しかし、飛ばし読みすることなく最後まで読ませてくれたのは、その平易な文体と飽きさせないエピソードの重なりのおかげでしょう。ちょっと変わった青春小説を読みたい方にはオススメかも。

『9.11~アメリカを変えた102分』

2009-09-28 18:05:00 | ノンジャンル
 今日、大井川鉄道と寸又峡に行っていました。峡谷の圧倒的な迫力を堪能しました。ちょうど紅葉の始まった季節だったようです。

 さて、スカパー370チャンネル「ヒストリー・チャンネル」で、アメリカのテレビ番組「9.11~アメリカを変えた102分」を見ました。9・11の現場に居合わせた人たち100人以上が撮った未公開映像・未公開音声102分で構成されたドキュメンタリーです。
 WTCノースビルから煙が上がっているところから始まり、やがてサウスビルに飛行機が突っ込み爆発が起こる場面が一瞬写ります。この時点でビル周辺の路上はビルの破片とビルの事務所からまき散らされた書類で埋め尽くされています。煙はビルからいくつのも筋状に出てビルを回り込むようにして横へたなびいています。やがてサウスビルが崩壊し火砕流を思わせる煙・ほこりの固まりが周囲に襲いかかり、人々を飲み込んでいきます。いくつかのカメラは撮影者とともに煙に飲み込まれ、その中での人々の様子を写し出します。引いたカメラではかなり広範囲にほこりの固まりが広がっているのが分かります。次にノースビルも崩壊し、これはサウスビルよりも高い部分で崩壊が始まったので、サウスビルの時よりも広い範囲にほこりの固まりが押し寄せ、人々は逃げまどいます。その様子をタイムズスクエアで見ていた人々は復讐を叫び、ほこりにまみれた自分たちの家へ避難先から徒歩や船で戻る人々の様子を写し、唐突に番組は終わります。
 2001年にニュースでこの事件を見た時は興奮しただけでしたが、今回は3回に渡って泣き出してしまいました。今年ニューヨークに行ったことでより身近にニューヨークの人々に感情移入できたこともあったと思いますが、実際に事件をリアルタイムで見ている人々の声を聞いたこと、またニュースで見たのよりもずっと近くから撮られた映像の生々しさ(ビルの真下から撮った映像もありました)などがそうした反応を起こさせたのかなとも思います。現場に居合わせた人々が上を見上げれば事件を生で見ることができ、その状況を様々なメディアで聞くことも同時にできたという、人類史上希有な出来事であったことも確認できました。編集に作為的な部分もあったような気がしましたが、非常に貴重な記録であることは間違いないでしょう。文句無しにオススメです。

早川いくを『続 取るに足らない事件』

2009-09-27 15:22:00 | ノンジャンル
 早川いくをさんの'08年作品「続 取るに足らない事件」を読みました。終戦直後の新聞から珍妙な事件の記事を集めて作られた本です。
 章立ては、なさけない犯罪の数々を紹介した「この小さき者たち」、なぜそんなことしたのかという「どしてそゆことするのかな」、エロをめぐる事件を集めた「エロの迷ひ道」、詐欺事件を紹介した「舌先三寸の男たち」、幼児性まるだしな「おとなげない人びと」、老人が起こした犯罪である「悪のお年寄り」、記事としての扱いがそっけない「そっけないじゃありませんか」、その題名通りの「良ひお巡りさん悪ひお巡りさん」、意外な犯人だった「捕らへてみればアラびっくり」、聞くに悲しい事件を集めた「悲しみよこんにちは」、美談を紹介した「人の世に情けあり」で、「犯罪ちょっといい話」と題された小特集では犯罪者が自らにつけた珍妙なニックネーム、ルパンを名乗った犯罪者たち、京都で開かれた「警察展」、戦後初めて現れた婦人警官が取り上げられ、章外として終戦直後のエロ風俗を詳述した「爆発するエロ」が掲載されています。面白かったのは、かっぱらいの犯人を「銀座マン」100人が一斉包囲し犯人が泣き出してしまった事件、幼児をだまし衣服をだまし取る「ハギトリ」という犯罪がはやり、風呂に入っていけと言ってデパートの中で5、6人の小学生からハギトリをした事件、選挙中に演説する候補者に「ホコリがたくさんついている」と言ってハタキをかけた事件、「恋人になれ、ならぬと今年中に何とかする」と脅迫状を送った事件、壁に「黒ルパン、ルルパン」と書き残して窃盗を行った事件、女性の職業によって結婚を警察が認めない制度が存在したこと、少女を交番に連れこみ強姦する警官や、人妻を強姦しようとして射殺してしまう警官、情婦の堕胎費用に窮して相手を射殺してしまう警官がいたこと、警察展で毒婦と呼ばれた女性の「変態性欲者陰部ホルマリン標本」、首吊り死体のミイラ、轢死体生首のアルコール漬け、一家六人惨殺事件犯人の頭部などがデパートの催事場で展示されたこと、全国紙にストリップの広告が堂々と掲載されていたことなどです。
 いくつかのものを除いて、前作と同じくインパクトに欠けた事件が多く、著者のユーモラスな筆力によってなんとか最後まで読めたような気がします。暇つぶしをしたい方にはオススメです。

ルイス・ブニュエル監督『銀河』

2009-09-26 15:57:00 | ノンジャンル
 スカパー260チャンネル「洋画★シネフィル・イマジカ」で、ルイス・ブニュエル監督の'68年作品「銀河」を再見しました。
 ヒッチハイクしようとする若者と初老の男の巡礼者は謎めいた紳士に出会い、これから訪れる町で子供を作り自分の言う名前を付けるように言われます。しばらく行くと無言で血痕のついた少年が道端に座っていて彼らのために車を止めてくれますが、彼らが神に感謝の言葉を言うとドライバーを彼らに降りろと言います。次に訪れた食堂では神に懐疑的な警官に飲み物をひっかけた神父が精神病院に連れていかれます。二人が野宿すると未知の言語で男に話しかけられ、森の中ではその言葉を話す大勢の男女が秘密の儀式を行っています。無賃乗車してツール駅で降りた二人は、従業員たちが神学問答をしているレストランを経て、野外で行っている学芸会で少女たちが異端の者に呪いあれと連呼するのに立ち至り、場面は一転宗教裁判になります。初老の男の靴が破れ足を痛め、ヒッチハイクで止まらない車に若者が「死ね」と言うと、車は事故を起こしドライバーは死にますが、そこへ男が現れ死者の靴を使うように言います。やがて修道女が磔の業を行っている礼拝堂に至ると、宗派の異なる貴族の決闘の立ち合いをするように頼まれますが、彼らは知らぬ間に仲良くなっていました。山中で彼らにロバと荷物を預けた二人の男は、町中で絞首刑が行われ聖者のミイラも火刑に処せられている町に戻り、人々の前で異端の説を叫び追われますが、夜聖母マリアが現れ二人とも信仰を得ます。巡礼者たちと宿で合流すると、司祭が聖母の逸話を披露します。宿の主人は男たちに夜誰も部屋の中に入れないように言いますが、男たちの部屋にはいつの間にか若い女性と読書する男性が現れ、再び現れた司祭は部屋に入れてもらえず扉の外から聖母の話の続きをします。巡礼者はやっと目的地に到着しますが、道端の車の中の女(デルフィーヌ・セイリグ)から聖者の遺体が偽者だと分かって巡礼に誰も来なくなったと聞き、女の誘いに応じて森の中に入っていきます。すれ違った盲人二人はイエスの一団に出会い、目が見えるようにしてもらいます。そして最後にこの映画のキリスト教をめぐるセリフはすべて歴史上実在するものから取られたことが字幕で示されるのでした。
 後の「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」や「自由の幻想」のように、脈絡もない不思議なエピソードが次々に出て来る映画で、楽しめました。BGMがまったくないのが新鮮で、これも魅力の一つとなっていると思います。映画好きの方にはオススメです。