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奥田英朗『空中ブランコ』

2006-06-30 16:35:27 | ノンジャンル
 奥田英朗氏が直木賞を受賞した「空中ブランコ」を読みました。「イン・ザ・プール」と同じく、頭の中は5歳児の神経科医・伊良部一郎とその患者の話です。
 第一話「空中ブランコ」は、空中ブランコ乗りが演技ができなくなり、情緒不安定になって、伊良部を訪ね、初めは他人のせいだと思っていたのが、ビデオを撮って自分が悪かったことに気付く話。第二話「ハリネズミ」は、先端恐怖症の男が、ナイフを身に付けてないと不安でしょうがないヤクザと会うことによって治る話。第三話「義父のヅラ」は、大学講師が学会の大物である義父のカツラをとりたい、という強迫観念にとらえられるが、伊良部と一緒に本人に気付かれないようにとることによって、強迫観念から逃れる話。第四話「ホットコーナー」は、突然サードからファーストへの投球ができなくなったプロ野球選手の話。第五話「女流作家」は、新作の登場人物の職業をかつて使った組み合わせではないか、と極度の不安に陥る女流作家が、再び初心に帰って書こうと決心する話。
 どの話でも「イン・ザ・プール」に比べて伊良部の占める割合が増えていて、第一話では、最後に自ら巨体を揺らして空中ブランコをしてしまうし、第三話はいうに及ばず、第四話でも、自ら野球をし、第五話では小説を書き、子供の作文のような文章を本にしろと編集部に食い下がる、というものです。特に「空中ブランコ」で空中ブランコをする伊良部のおかしさはかなりのもので、この辺が直木賞を受賞する決め手になったのかもしれません。まだ読んで無い方、オススメです。

奥田英朗『真夜中のマーチ』

2006-06-29 16:34:33 | ノンジャンル
 奥田英朗氏の「真夜中のマーチ」を読みました。
 パーティー券を法外な値段で売ってもうけていた横山健司(ヨコケン)は、パーティーに来た三田物産の三田総一郎(ミタゾウ)を三田ファミリーの御曹子と思い込み、女を抱かせて慰謝料を取ろうとしますが、単なる平社員だと分かります。丁度その頃横山の知り合いのヤクザ古谷(フルテツ)が横山にマンションの一室を借りさせますが、古屋がそこで丁半博打をしているのを横山は知り、三田と子分のアキラと一緒に売り上げ金を強奪しようとしますが、博打の客の一人の娘黒川千恵(クロチェ)に邪魔される。彼女は父白鳥を嫌っていて、父が博打仲間に絵画投資で10億円を出させたのを知り、それを強奪しようと考えていました。ヨコケンたちも協力しますが、博打の客の中の中国人二人に先をこされます。が中身は偽物でした。白鳥が別の場所に金を移したのをヨコケンたちは見抜き、中国人をおびき出し、フルテツもそれについてきますが、またもや中身は偽物。しかし結局白鳥は中国人につかまり、1億円を返し、ヨコケンたちは彼らを襲い、その1億円を強奪します。ミタゾウは念願のキリバス諸島へ移住し、クロチェは母とカフェをオープンし、ヨコケンは相変わらずの生活を送ります。
 犯罪小説なのですが、特に後半ヨコケンのグループと白鳥、フルテツ、中国人と多くの人物がからみ、シチュエーションが次々に変わっていくので、それに付いていくので精一杯でした。が、これだけ中身がつまってる話を300ページちょっとの中にまとめるというのは、すごいと思います。
 犯罪小説好きな人、必読の書です。

奥田英朗『マドンナ』

2006-06-28 16:07:53 | ノンジャンル
 奥田英朗氏の「マドンナ」を読みました。40代のサラリーマンが主人公の短編5編からなる本です。
 第一話「マドンナ」は、自分の課に転属してきた若い女性に恋する話。第二話「ダンス」は大学を目指していた長男がダンサーになりたい、と言い出し、最初は猛反対しながらも次第に認めていく話。第三話「総務は女房」は営業から総務に異動になった主人公が、総務の出入り業者との癒着ぶりに呆れ、何とか改革しようとするが、結局丸め込まれてしまう話。第四話「ボス」は海外で仕事をしてきた新たな女性の上司が、しきたりを無視して仕事の合理化を図るのにうんざりしていた主人公が、彼女が実はロッテの黒木のファンで一人で応援しているのを見て親しみを感じる話。第五話「パティオ」は会社の中庭「パティオ」に人を集める企画を考える主人公と、そこへ本を読みに来る老人との触れあいを描いた話、です。
 いつもの奥田作品のように、読みやすく、表現も的確で、登場人物の気持ちがストレートに伝わってくる、いい短編ばかりでした。特に第一話「マドンナ」は独身の私にも身につまされる話で、他人事には思えないものがありました。
 軽い読み物として、オススメできる本です。

ロベール・ブレッソン『ブローニュの森の貴婦人たち』

2006-06-27 17:20:06 | ノンジャンル
 久しぶりにDVDでロベール・ブレッソンの長篇第2作'44年作品「ブローニュの森の貴婦人たち」を見ました。
 ブレッソンはこの映画までは「普通の」の映画を撮っていたのですが、この映画のファンという人も多く、ジャック・ドミはこの映画で踊子の役を演じていたエリナ・ラブルデットを自分の映画「ローラ」に出演させ、彼女に「私、昔踊子をやってたのよ」と言わせて、見せる写真がまさに「ブローニュの森の貴婦人たち」の中の自分の写真である、という遊びをしています(というか、ブレッソンへのオマージュを捧げています)。
 映画の内容に関しては、「Favorite Movies」の「Robert Bresson」のところに書きましたので、そちらを参照してください。
 それから、このDVDは紀伊国屋書店から発売されているのですが、そのラインナップを見て驚きました。テオ・アンゲロプロス全集DVD-BOX1~4、エリック・ロメール・コレクションDVD-B0X全6巻などなど、ちょっと常軌を外れた素晴らしさです。先日、「リング」の脚本で有名になった高橋洋君からメールをもらった時、紀伊国屋書店には同志がいる、といったようなことを書いていたのですが、実体はこれだったんですね。今後はフリッツ・ラング全集、サミュエル・フラー全集、あと'50年代、'60年代のアメリカのB級映画など、よろしければ、ぜひ発売してください。

奥田英朗『延長戦に入りました』

2006-06-26 16:38:55 | ノンジャンル
 奥田英朗氏のエッセイ集「延長戦に入りました」を読みました。
 スポーツにネタを絞ったエッセイ集で、気軽に読めるものです。私が知ってるエッセイストと言えば、ナンシー関さんとリリー・フランキー氏ですが、彼らよりもずっと控えめで、毒も無く、読者の様子を伺いながら書いている感じで、割に強気に書いていても、最後にはちょっと謝っとこう、みたいなところが感じられました。
 ただ、書かれている内容は正論で、しかも普段我々が気付かないようなことをズバズバと指摘してくれるので、読んでて勉強にもなったし、小気味良かったです。
 それに、本職は小説家だけあって、描写で読ませるところもあり、女子の開脚が恥ずかしい、という話のところで、マット運動の開脚前転で「恥ずかしそうな顔で自分の演技を終えると、隠れるように女子の固まりの中に消えていった。」という描写など、絵が目に浮かぶようでした。
 奥田さんの次のエッセイ集を読みたくなるような、そんな本でした。