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スティーヴン・ザイリアン監督『オール・ザ・キングス・メン』

2008-10-31 18:19:30 | ノンジャンル
 昨日発行されたフリーペーパー「R25」に、最近ハリウッドで3D(立体)映画の制作が次々と発表されているという記事が載っていました。技術革新で、疲れたり頭が痛くなったりという欠点が解消され、「タイタニック」のジェームズ・キャメロン、ティム・バートン、そして私の好きなロバート・ゼメキスといった監督たちが、今後は3D映画を中心に制作することを表明しているそうです。ゼメキス監督の3D映画の新作、今から楽しみです!

 さて、WOWOWでスティーヴン・ザイリアン監督の'06年作品「オール・ザ・キングス・メン」を見ました。
 ジャックは道案内をしてウイリー(ショーン・ペン)を判事の家に連れていきます。「その5年前」「ニュー・オーリンズ」の字幕。クロニクル紙の記者のジャックは、悪徳政治家を告発するウイリーの取材を命じられます。ウイリーは学校の校舎の建設入札の不正を告発していて、そのために妻とともに仕事を失っていました。そして校舎の非常階段が崩れて子供が3人死ぬ事故が起き、ジャックはその告発記事を書きます。ウイリーは勧められて知事選に打って出ますが、他の候補の咬ませ犬をさせられていたことを知り、それからは怒りを露にして演説をし始め、大衆の関心を引くようになります。ウイリーの記事ばかり書くなと上司に言われたジャックは、クロニクル紙を辞めますが、ウイリーは選挙に圧勝してルイジアナ州知事となり、ジャックを参謀に雇います。ウイリーは反対派の占める議会に対抗するため、議員たちの弱味を握って脅し始めます。ジャックの名付け親である判事(アンソニー・ホプキンス)は、ウイリーを告発する姿勢を見せ、ウイリーはジャックに判事の弱味を調べるように命じます。ジャックは判事の弱味を発見しますが、それを知った判事は自殺してしまいます。州議会でもウイリーに対する弾劾投票が行なわれますが、否決され、意気揚々と議会を出て来たウイリーは、ジャックの幼馴染みに射殺され、幼馴染みもその場で射殺されるのでした。
 ロバート・ロッセン監督の同名映画である傑作のリメイクですが、それには到底及ばない駄作です。ウイリーが正義感の強い朴訥とした農民から悪徳政治家へと変わる印象的な場面が、この映画ではそっくり省略されています。判事の自殺場面も描かれていませんし、ジャックの幼馴染みが何故ウイリーを殺すまでに至ったかもうやむやです。つまりこの映画では動機が描かれていないのです。ショーン・ペンの怒りをこめた演説の場面は印象的ですが、それ以外の場面ではブロデリック・クロフォードの足元にも及ばないといった感じですした。音楽もやたら扇情的で、場違いな感じは否めません。現在のハリウッド映画のひどさを再認識するにはいい映画だと思います。

吾妻ひでお『うつうつひでお日記 その後』

2008-10-30 19:42:19 | ノンジャンル
 昨日はマキノ雅弘監督の命日でした。マキノ映画はすべてが映画的な興奮に満ち満ちていて、外れの映画というものがありません。マキノ監督の人生が映画そのものとも言えるもので、そんな映画の「神様」であるマキノ監督に、改めて「素晴らしい映画をありがとうございます」と声を大にして言わせていただきたいと思います。

 さて、吾妻ひでおさんの最新刊「うつうつひでお日記 その後」を読みました。漫画家から鬱病、ホームレス、アル中と経験する「失踪日記」「うつうつひでお日記」の続編で、2006年11月末から2008年3月11日までの毎日を記録したものです。
 日記と言ってもひどく簡単なもので、例えば「仕事少しする。TVで見たおぎやはぎの漫才が、意外と面白かった。」とか、「仕事。抗鬱剤をたくさん飲む。夜、TV「相棒」見て早めに寝た。」とか、とにかくあっさりとしたものです。読んでいて気がつくのが、先ずほぼ毎日漫画を書く仕事をしていること。週7日仕事は当たり前です。が、ご本人曰く、仕事は1日2時間ほどとのこと。実際、仕事に関して「気分が乗らない」とか「才能が実はないのではないのだろうか」とか、仕事に関する愚痴のオンパレード。体調が良くない時は一日寝ていることもあり、やはり鬱病が治ってないのだなあ、と分かります。
 それからやたらに風邪をひくこと。本当にしょっちゅう咳に悩まされていらっしゃり、好きな煙草が吸えなくなることがしばしばです。散歩程度の運動しかされていないからでしょうか?
 そして読む本の数が半端ではないこと。ほとんど図書館で借りて読んでらっしゃるようですが、すごい時は長編の小説を1日で読み、マンガに至っては1日に5~6册読む日もあります。そして読んだ本に関して短いコメントをつけたり、評価を◎○△で付けています。コメントを読んでいるとその本が読みたくなり、以前「うつうつひでお日記」で○以上の評価を得ていた本を読破したことがありますが、意外に当たりが少なかった記憶があります。どうも私の趣味と吾妻さんの趣味はあまり合わないようです。
 もちろん吾妻さんは漫画家なので、マンガのカットも多数掲載され、楽しく読めます。美少女マンガのファンの方にはオススメです。

渡辺謙作監督『となり町戦争』

2008-10-29 16:22:09 | ノンジャンル
 感謝の言葉から必ず話し始めていた高橋尚子さんが昨日引退されました。彼女の姿を見るために、マラソン中継に釘付けになったことが何回もありました。しかし、東京女子マラソンで負けた時から、頑張る彼女の姿が痛々しくなっていき、早く引退して、いい人と結婚し、幸福な家庭を築いてほしいと思っていました。本当に今までありがとうと高橋さんに言いたいですし、またこれからの活躍にも期待させていただきたいと思います。

 さて、スカパーの707チャンネル「日本映画専門チャンネル」で、渡辺謙作監督の'07年作品「となり町戦争」を見ました。
 旅行代理店に勤める北原(江口洋介)は、となり町である森見町との戦争開始のお知らせが、町報に小さく載っているのを見つけます。「開戦2日目」新聞には小さく戦死者の数が載っています。町から戦時特別偵察員に任命され、町役場の香西(原田知世)に、通勤途中に通過する森見町で見聞きしたことを報告してほしいと言われます。「開戦23日目」夜に町役場を訪ねると、北原の偵察で町の損害率が3.6%低下したと知らされます。戦闘員は公募し、戦死者は53名だと知って、北原は憤慨します。「開戦26日目」深夜香西が訪ねてきて、戦時特任車両に乗せられ、香西と偽装結婚し、森見町を偵察するために森見町に住むことになったと聞かされます。「開戦29日目」香西はキスをしてきて、北原と寝ます。「開戦37日目」香西から家をすぐ出るように電話があり、脱出路で死体を見て声を上げようとするところを、香西の弟である兵士に助けられますが、その兵士は北原の元上司である森見町の傭兵に殺されます。北原は最終的に香西に助けられますが、性行為も業務の一部であったことを知ってしまいます。戦争は終わり、香西が訪ねてきて、弟は非戦闘地域で殺されたので、ゴミ焼却炉で焼かれたことを告げます。北原は上司に辞表を提出すると、上司は香西の弟の戦闘服の切れ端をくれ、北原がそれを香西に渡すと、香西は森見町の潜入員として森見町役場へ出向することになったと言います。別れの際で北原は香西を引き止めることに成功しますが、となり町への宣戦布告が出されたことをバルーンで知らされるのでした。
 前半は意図の分からないスローモーションが多用され、不自然なコミカルな演技も目立ち、後半はわざとらしい江口の演技と、冗長なラブシーンのオンパレードで、かなりひどい映画でした。三崎亜記さんの原作が乾いたタッチの面白いものだっただけに、映画化に際してかなりレベルダウンした印象はまぬがれません。原田知世さんが良かっただけに残念です。

東海テレビのドキュメンタリー『光と影 光市母子殺害事件 弁護団の300日』

2008-10-28 18:36:14 | ノンジャンル
 フジテレビで放送された東海テレビ制作のドキュメンタリー「光と影 光市母子殺害事件 弁護団の300日」を見ました。
 1999年に18才の男性が若い女性を強姦して殺害し、その女性の泣き叫ぶ幼子も絞殺したという事件。無期懲役刑が最高裁で差し戻され、広島高裁の差し戻し審で死刑判決が出た事件です。このドキュメンタリーでは、差し戻し審で被告人を弁護した弁護人たちの活動を中心に、その裁判で明らかにされた被告人の人となり、そして犯行の事実性が検証されていました。
 被害者に残された証拠から考えると、どうも最初から強姦目的で家に侵入したとは考えがたく、女性の悲鳴を押さえるために口に置かれていた手がずれて首を圧迫して殺してしまったこと、息子に関しては母を殺してしまったお詫びの意味で首につけたひもが皮膚をうっ血させ、結果としてひもが首をしめてしまい息子を死に至らしめてしまったことが分かってきます。また、被告人は父親のDVがひどく、首を吊って自殺した母の姿を12才の時に見た過去を持っていることが紹介されます。
 事件当日、被告人は水道の作業員として被害者宅を訪れ、仕事を終えて帰ろうとした時、テーブルの向こうにいた、幼い息子を抱いた被害者の姿を見て甘えたくなり、作業員という立場を忘れて被害者に抱きついてしまい、被害者を死に至らしめてしまった、という被告人の証言を、状況証拠から弁護団は真実の声なのではないかと確信するようになっていきます。
 したがって傷害致死だったのではないかというのが弁護人たちの主張になり、被告人の真実の声、検察と弁護団の戦い、そして世間からの被告人と弁護団へのバッシングの様子が描かれていきます。しかし、この番組で主張されているのは、事実誤認があったのではないか、ということだけではありません。それ以外で一番印象的だったのは、別の殺人事件の遺族が、死刑にならなかった被告人に対し、被害者の墓に参ってもらった上で被害者の分もこれから精一杯生きてほしいと語ったというエピソードを、弁護人の一人が、これから弁護士になることを目指す若者たちに語りかけるシーンです。死刑というのが復讐刑でしかなく、本当に命を尊重することとは矛盾するのではないかという問いを投げかけるシーンであったと思います。死刑の是非について、「寛容さ」「命の尊さ」という観点からもう一度考え直す時期に来ているような気がしますが、皆さんはどうお考えになるでしょうか?

石丸元章『KAMIKAZE神風』

2008-10-27 18:35:34 | ノンジャンル
 高野秀行さんが推薦する、石丸元章さんの「KAMIKAZE神風」を読みました。大平洋戦争の特攻隊の生き残りの人々にインタビューした本です。
 アメリカ人から取材を依頼され、著者は軽薄な相棒と、ドライバーに雇ったこれまた軽薄なオカマとともにバリバリのスポーツカーに乗って、特攻隊ゆかりの土地や特攻隊の生き残りの人を訪ねていき、時には日本刀で斬りつけられそうになったりもします。そうした中で、特攻というものがいかに無謀で、いかに作戦とは到底呼べないようなシロモノであったかが明らかにされていきます。また、現在の鹿児島空港が、大平洋戦争当時は海軍航空隊第二国分基地という、当時九州で唯一舗装された特攻隊出撃基地だったこと、海軍だけでなく陸軍も特攻をしていたこと、特攻隊員は普通の公務員の2倍以上の給料をもらっていたこと、軍服マニアが集まる軍装集会というものがあること、KAMIKAZEアタックを受けたアメリカ兵たちは恐怖に震えたということ、陸軍が「突撃一番」という名のコンドームを当時配布したこと、特攻隊員は出撃前に覚醒剤を飲まされたりもしたこと、標準語は様々な地方の者が集まる軍隊のためにそもそも作られたものであること、最近の自爆テロは特攻隊と同じ観点から見直す必要があることなどが知らされます。
 ということでとても勉強になる本なのですが、この本は読んでいてとてもイライラさせられます。というのも、文体が度を越してふざけているからです。普通の文の途中で「じゃーん、」と書いてみたり、いきなりでかい活字で擬音語を書いてみたり、自分のことをはでに自慢してみたり、自分のことを「オレ」と書いてみたり、「~であーる。」と書いてみたり、取材先の人をヤギ扱いしてみたり、ジジイと呼んだり、「です」を「DEATH」と書いてみたり、そしてやたらに出て来るのが、「Y‥‥E‥‥S‥‥」と、YとEとSをやたらに沢山並べてみたりと、悪ふざけにもほどがあると言うものです。いくら優れた内容でも、この文体では台なしです。しかし、このような文体を楽しめる方もいらっしゃる方もいるかもしれません。そういう方にはオススメです。