ポジティブな記憶

記憶力は割りといいほうだ
　
人と会話してても
　
「そんな事、よう憶えてるなぁ～！」
　
と、呆れられるほどの記憶力
小さな事ほどよく憶えているのは
それが衝撃的だっただけで、
もちろん、僕が今までの半生をすべて
巨大な頭に収納された脳みその
皺に刻み込んでいる訳ではない
　
青春時代の音楽を聴くと
当時の記憶が蘇るように
昔の記憶を呼び戻すときには
その場面だけでなく、音や匂いも同時に
蘇るものだ
　
いや、音や匂いがあるからこそ
記憶が蘇るということもあるだろう
　
そんな記憶力抜群の僕がいまだに思っている
感情がある　
　
中学１年生のある日、同じクラスの女子が
今、女子テニス部で話題になっている
男子がいる！と言うのだ
　
そして、それがこのクラスの野球部員
　
（まいったなぁ～）
　
当時の僕はすべてにおいてポジティブな男
熱い視線を感じてた実感があった
しかし、僕の感情とは裏腹に
周りの評価は低い
　
同じクラスには野球部員が５人いた
　
さすがに１年でレギュラーは居なかったが、
センスの塊のヤツは居た
他は似たりよったり
　
女子の話では“カワイイ”と、
アイドル的な人気だと言う
　
ますます、オレのことではないか？と
　
５人で会議が始まった
思春期の男子の事
誰もが、自分のことだと思いたいと思いながらも
硬派な一面もアピールしたい
　
「オレじゃないわぁ！」
　
それぞれが否定しつつ、
誰もが違うヤツだと想像していた
　
「いや！俺だと思うね！」
　
声に出してそう言いたかったが、勿論
その当時、僕にそんな勇気はなかった
自意識過剰なヤツにしては、肝心の行動力は
乏しかった
　
いまでも、密かに思い続けている
あの時、テニス部でカワイイ男子と注目されたのは
僕であったと
　
しかし、これは確認しないことに
している
たとえ、同窓会で確認できる機会があったとしても
その事をぶり返すことはしないと思う
　
真実を知るのが怖いわけじゃない
　
　
たぶん
　
　
こんな事を憶えているのは
僕だけだろうから
　
記憶力とは、そういうものだから