常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

屏風岳

2020年08月29日 | 登山
続く猛暑のなかで、高山は別世界。標高が100m高くなると気温は0.6℃下がる。標高が1800mであれば地上の気温よりおよそ11℃低くなる。9時30分の地上気温が31.5℃、その時刻には屏風岳の頂上にいたので20.5℃という計算になる。しかも、ガスが出て、ミストを浴びたような状態であった。猛暑を避けるのに、運動をしながら、こんなにもいい方法が他にあるだろうか。

エコーラインにある駐車場に車を置いて、不忘山方面への山道に入ったのは6時30分。ガスが立ち込めていた空はみるみる晴れ上がり、1500mほどのこの地点へも真夏の太陽が容赦なくふりそそぐ。暑い。しかし前山の傾斜を登るにしたがって、木陰や風が出てきて、かなりの涼感が得られるようになった。前山の途中の展望台から、衝撃の光景を見ることになった。山道でも、トドマツの立ち枯れを見ながら登ったが、これほどの縞枯になっていようとは。縞枯山
などで見られるシラビソは、生育地の傾斜や木の年数、陽当りや風などの条件が重なって起こる。この集団枯死は、その下床に稚樹が芽生え、更新して樹林を存続させるので、この景観は縞枯の帯と生きた樹林が縞模様をなして、愛される景観となっている。

近年発生している八甲田山や蔵王のアオモリトドマツの集団枯死は、トドマツノキクイムシの集団発生によるものだ。話には聞いていたが、目にするかぎりこれほど多くのトドマツやシラビソの立ち枯れを見ようとは想像もしていなかった。地元の観光協会は、冬の観光資源となっている樹氷の喪失に危機感を抱き、昨年から稚樹の移植を始めている。だが稚樹が大きくなって、みごとな樹氷をつけるまでには数十年の歳月を要する。キクイムシの大量発生は、シベリアなどでも見られ、その原因は分からないが、台風による倒木、トドマツの葉を餌とするある昆虫の大量発生で、葉を失ったトドマツにキクイムシの集団発生があるらしい。
目を足元に落とすと、山道の脇に、リンドウの花が美しく咲いている。ときおりアキノキリンソウなどもあって、やはり山では季節が進んでいることが分かる。木道が年数を経て、ボロボロになっている印象を受けるが、山道は整備されて歩きやすい。早朝に登ったためか前山から杉ヶ峰まで、わがグループ以外にはほとんど人と会わない。トドマツノ痛ましい姿に心は萎えるが、足元の花々が心を癒してくれる。本日の参加者8名、内男性3名。
ところどころにイブキトラノオやウメバチソウ、ウスユキソウなどが山道を彩っている。参加しているメンバーはあくまでも元気だ。杉ヶ峰までおよそ1時間、それぞれの思い思いの話題が弾む。蔵王といえば、山形へ来てから、折にふれて親しんで来たやまだ。真壁仁の詩の一節、蔵王を歌いあげる。

われは訪ひき いくそたび
落莫の溶岩丘に花を愛ずると
天の雫か 地の星か
たかき岩根に雲を巻くかの駒くさの花を愛ずると
蔵王よ
蔵王よ
あるとしもなき花の明りに昏れなずむ山

もうコマクサはその花期を終り、樹々は紅葉の季節の準備を始めている。
芝草平にはわずかに咲き残ったキンコウカ。あたりは草もみじの気配である。ベンチの腰をおろしてしばしの小休止。先客が二人、遠くの山並みを愛おしむように眺めている。歩行中には日はガスにかくれ、雨もない。ただ山道の脇に伸びた草には、しとどに露が降りている。「露払い」とはいい言葉だ。高貴な人が草生した野を行くとき、お連れの者が先行して露をはらう。相撲の横綱の土俵入りで片わらで控えるのは一人の露はらい。日本の古い言葉には、こんな慣習を伝えるものがしばしばある。

屏風岳には9時30分着。ここからさらに歩けば、南屏風岳にには40分と標識にある。最初の計画通り、ここで記念撮影のあと下山となる。頂上からは、烏帽子岳、不忘の山々が霞んで見えている。帰路、前山に至って11時15分。少し下って岩場の見晴らしのきく場所で昼食となる。上山温泉、材木栄屋日帰り温泉でゆっくりと汗を流す。入浴料450円。
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