
梅の花が開いて春の準備が始まった。今日は冬タイヤを夏用に履き替える。タイヤの音が軽くなってその分心も軽くなる。身体を動かすことが身近なことに思えてくる。昨日寝入り前に聞いた昔話。魔法使いが主人公の女性を星の世界へ誘う話であった。夜風が気持ちよく、星空がよく見える夜。ベットから起き出した主人公が星の世界を飛び歩く話だ。宇宙船が飛ぶ時代だから魔法使いがいなくとも星の世界に入れるが、魔法の話はこの時代にあっても魅了的だ。そんな話が眠りの世界へ導いてくれる。最近グーグルウォッチで睡眠を計測しいるが、ここへきてスコアが80点を超える日が増えてきた。「春眠暁を覚えず」春は、心地よい睡眠の季節でもある。
夜の空に老幹の梅まばらなる 植山露子
昨日観たアマプラの映画は樹々希林主演の「あん」。ハンセン病の徳江が、刑期を終えて止むを得ず始めたどら焼き屋の店長を見かけるのは桜の咲く春の気持ちいい日。店長を見て徳江が惹かれたのは自分と共通する目であった。束縛されて自由にならないもの持つ暗い目。そこで働かせて欲しいと申し出る徳江。年老いた徳江に体力がないことを見抜いた店長は、その申し出を断る。2度目に店を訪れたとき、徳江は自分で作った餡、どら焼きの餡を持参する。実は店長は餡を自分で作るのではなく業務用のものを使っていた。徳江は施設で仕事として皆のための餡作り50年も続けていた。その餡のおいしさに店長は驚く。こんなにうまい「あん」があったのかと。
徳江の申し出を受け入れた店長は手の不自由な徳江を手伝いながら、餡作りの全てを知る。小豆を一夜うるかし、煮あがまるまでの行程は、店長には未知の世界であった。水換え、小豆との会話。徳江は鍋のなかで変化していく小豆の姿、匂いを目で鼻で耳で根気よく確かめる。仕上がりの部分の火加減は観る者さへ緊張させる。熱を入れすぎて焦がすようなことがあっては朝の起き抜けに始めた5時間もの努力が無になってしまう。世界に売り出し中の河瀬直美監督ならではのカメラワークだ。仕上がった餡のおいしさが画面を通して伝わってくる。徳江の餡を使ったどら焼きはたちまち評判を呼び、店には長い行列ができる。しかし徳江の病の噂が街に流れると客は打ち寄せる波のように引いていく。
ジェンスパークに依頼した映画の解説を掲げておく。
映画のクライマックスでは、徳江のあんこがどのように人々に影響を与えたかが描かれます。彼女の心の叫びや希望が、見る者に深い感情を引き起こします。この結末は、映画全体を通してのテーマである人間の絆と命の大切さを鮮明に表現しています。
この映画では、ハンセン病への偏見が重要なテーマとして描かれています。徳江の存在は、彼女がハンセン病元患者であることから、社会からの差別や偏見と闘う姿を通じて、観客に強いメッセージを投げかけています。このような背景によって、彼女の人間性や生き様が一層際立つのです。
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