「これが、アフガニスタンの女性たちが作った民族衣装の装飾に使われるものなの…素敵~」と思わず手に取るミモロです。
小さなビーズをひとつひとつ丁寧に布の刺し、まるでワッペンのよう。それは、連日、テレビに映し出される政情不安なアフガニスタンの女性たちが作った品なのです。
カラフルなビーズを使い、幾何学模様や星、花などが小さな布に描かれています。
「なんて素敵なんだろう…」とミモロ。
小さな花の形の中心部には、鏡を埋め込んだものも…。その鏡は、厄払いで、お守りのようなものだそう。
ビーズを刺した布は、帽子などの装飾にも使われます。
このアフガニスタンの雑貨があるのは、京都寺町にある少数民族の手仕事による布やリボンをはじめ、雑貨などを扱う「ADORN (アドーン)
」です。
その店の店長の石田さんとミモロは、お友達。寺町に来るたびにちょこっと立ち寄っています。
「コロナの拡大で、今までお付き合いのあるアジア諸国の工房などに仕入れに行けなくなりました。しかも、アフガニスタンやミャンマーは政情不安な状態…そこで働く人たちがどういう状況になっているのか、とても気がかりなんです」とおっしゃる石田さん。
「ADORN(アドーン)」が扱うのは、アジアでも、インド、中国、タイ、ミャンマー、パキスタンなどの北アジアに住む人々が作った布や装身具など。
「本当に、その地域には、素晴らしい手仕事が今も続いているんです。多くは、民族衣装に関わるもので、そもそも民族衣装は、そこに住む人たちを守り、幸せをもたらす模様などが織り込まれていたりするんですよ」と石田さん。
「なるほど、日本の着物なんかも、吉祥文様をたくさん使ってるよね」とミモロ。
本当に素晴らしい手仕事…多くの女性たちや職人さんたちが時間をかけて作り上げたものばかり。
店の奥の棚に収まっているのは、インドやミャンマーなどいろいろな国の布。
その中で、特に、店長さんが心惹かれたのは、ミャンマーのチン族の織物で胸当ての部分に使う布だそう。
細かい模様が複雑に絡み合ったような模様。「でも、ほら、裏側は、無地で、表の模様が出ないように織るのが技なんですよ」と。
「ホントだ~すごい~」と目を丸くして驚くミモロ。
「この布は、昔織られたもので、今、これだけの布を織れる人はほとんどいないんです。ますます政情不安になっているミャンマーで、このような布を織る技術が失われないように願っています」と心配そうな石田さんです。
アフガニスタンにしても、ミャンマーにしても、多くの素晴らしい手仕事は、平和だった昔に生まれ、継承されたそう。
「アフガニスタンの手仕事は、本当に美しいんです。以前は、パキスタンからアフガニスタンの品を仕入れていたんですが、今後、どうなるか…」と、現地にいる知人を気遣います。
また、ほかの棚に並ぶのは、インドで作られた染めの布など。
「わ~かわいいデザイン…これどうやって染めるんですか?」とミモロ。
日本の友禅などは型染めという技法で、いくつも版を作って、次々に別の色を染めてゆきます。でも、この布は、まるでスタンプのように色を乗せた版木を布の上に押して染めてゆきます。
「ほら見て…こうやって職人さんが何度も版木を布の上に押してゆくんですよ」と、以前、石田さんが現地の工房で撮影した作業の様子をタブレットで見せてもらいました。
「ホント、すごい技術…」と、寸分の狂いもなく、次々に版を押す職人さんに関心しきりのミモロです。
店内には、ほかにいろいろな模様が織り込まれたリボンも種類豊富。
インドや中国、ラオスなどで作られたリボンは、そこに住む人々の服を飾るもの。
「素敵な柄がいっぱい~」ミモロも以前、ここのリボンをお洋服に付けたことがあります。
「今日は、どれにしようかな?」と、訪れるたびに何か欲しくなるミモロ。
店のあちこちを見て回ります。
「今日は、やっぱりアフガニスタンのビーズのにしよう~」
ミモロが肩から下げる小さなショルダーバッグは、アフガニスタンのビーズのワッペンを組み合わせて作ったものだそう。
「どれにしようかな?」と、お気に入りのビーズのワッペンを探すミモロ。
う~これはかなり時間がかかりそう…
コロナ禍になり、昨年から現地に仕入れに行けないという石田さん。一日も早く現地の知り合いに会いたいという思いが募ります。
そのためにも、早くコロナが収束し、自由に海外旅行ができるようになることを願うのみ。
「本当にアフガニスタンとミャンマーの状況は、気がかりです。女性たちが安心して、手仕事ができるような世の中になることを望んでいます」と。
*「ADORN(アドーン)」京都市中京区寺町二条西側妙満寺町447-3 ☎075-255-5118 営業時間11:00~18:00 火曜・水曜休み
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